あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

世界最強コンビハルケギニアに立つ-10





「さて、何から話そうか?」

壁にもたれかかる暁の前に四人の少年少女がいる。
ルイズ、タバサ、ギーシュ、キュルケの――

「何であんたまでここにいるのよ!」

ごく自然に輪の中に加わっていた赤毛の少女の存在にようやく気付き、ルイズが吼えた。

「面白そうだからに決まってるじゃないの」

悪びれた様子もなく、余裕の表情でキュルケが答えを返す。
その態度を挑発と受け取ったのか、ルイズのこめかみに青筋が浮く。

「堅いこと言ってるとそれ以上背が伸びないし胸も大きくならないないわよ」
「背も胸も関係ないじゃない!」

どうもルイズにとっては背も胸も、魔法が使えないこと並に――下手すればそれ以上に――コンプレックスであるらしい。
顔を真っ赤にしてルイズがキュルケに食って掛かる。
ルイズは相当キュルケのことを嫌っているらしく、このままだと取っ組み合いの喧嘩になりかねない雰囲気であった。
二人の様子をギーシュはオロオロしながら見、タバサは我関せずといった感じで視線を向けようとすらしない。
どうやら暁しか止める人間はいないらしい。

(ボーと関ってからこういう役回りが多い気がするんだが……気のせいか?)

暁は目の前で口論している二人と、今はここにいないとてもやかましい相棒のことを頭に浮かべ、大きなため息を吐いた。

「よー、話はいいのか?」

うんざりした声音で二人に言葉を投げかける。
その声に反応し、キュルケからは苦笑が、ルイズからは恨みがましい視線がそれぞれ暁に向けられる。
ルイズは何事か――おそらく文句の類だったのだろうが――を言わんとして口を開きかけたが、それを遮るようにタバサが言葉を発した。

「あなたの世界について」

唐突であまり現状にそぐわない言葉に暁は一瞬首をかしげる。
だがそれが彼の最初の問い、『さて、何から話そうか?』に対する返答であると察し、苦笑した。
どうやらこのタバサという少女は必要以上に言葉を発しないようだ。
……メイジというのは基本的に変人なのかもしれない。

「んじゃあそれから話すとしようか」

それでいいか、と視線でルイズとキュルケに問いかける。
ルイズは渋々といった様子で、キュルケは特に問題はないといった様子でそれぞれ頷いた。

「私は構いませんわ。えーっと、ミスタ・アカツキイワオ?」

とても妙なアクセントでキュルケが暁のフルネームを発音する。

「こっちで通じるように名前を並べるならイワオ・アカツキだ。暁でいい、ミスタはつけないでくれ」

とりあえずの訂正を入れた後、暁は語りだした。


暁が語ったことはおおむねルイズに向けて語ったことと変わらない。
どんな場所で、どんな物が存在し、人々がどう生きているか。
そして魔法やそれに近いことをできる人間がほとんどおらず、魔法が無い事での不便性が存在しないこと。
だが、聞き手の反応が以前話した時とは明らかに違った。

「その……師匠は本当に魔法をつかえないんだね?」

非常に困った表情でギーシュが問い掛けてくる。
同様の表情をキュルケも浮かべていた。
決闘の際にボーが『魔法は使えない』と断言したのだが、やはり納得できなかったのだろう。
タバサはいつもと変わらない無表情だったが、ほんの少しだけ――落胆に近い色が窺えた。

「分身の術に関して言うならあいつはただ速く動いてるだけだ。
 あいつが何人もいるように見えたのはただの気のせいであって、魔法じゃない」
「『ただ速く動いてるだけ』と言われて納得しろという方が無理よ」

ルイズが憮然とした表情で言い放つ。

「まぁそうなんだが、そこは『ボーだから仕方ない』と思ってあきらめてくれ」

正直なところそれに関しては暁としても同意見なのだが、彼としてはそれ以上説明しようが無いのも事実だった。
ついでに言うならボーに説明させるのも無理である。
おそらく、いや間違いなくボー自身が一番理屈として分身の術を理解していない。

「異世界というのは信じられませんが、色々と理解できないことが多い場所からいらしたというのはわかりましたわ」

そう言ったキュルケは苦笑いを浮かべていた。
当然の反応だろう。
暁にとってこの世界――ハルケギニアは御伽噺の世界でしかないのと同様に、ルイズたちにとって暁の世界は理解しようがない場所なのだろう。

「アカツキも彼――ミスタ・ブランシェのように強いんですの?」

暁も苦笑を浮かべながら頭を掻いた。
そしてルイズの方を見る。なぜか彼女は不機嫌そうな表情を浮かべていた。
自分がキュルケとほぼ同じ質問をしたことが嫌なのかもしれない。

「速さに関してはあいつの方が俺より数段上だね、そういう意味では俺はあいつのようには強くない。
 逆に俺にできてあいつにできないこともあるから、比べても劣ってはいないと自分では思うな」

それにしても――と暁は思う。
ルイズに説明している時も思ったことだが、他人の強さを語るのはまったく問題ない。
だが自分の強さを語るとなると話が変わってくる。
なんというか、恥ずかしい。
特に今回の場合、雇い主への売り込みでもなんでもなく、少年少女に自分の強さを語って聞かせている。
ボーであれば何の恥ずかしげもなく自慢げに語るのだろうが、暁はそんな変な感性は持ち合わせていない――つもりである。
そのため、暁としてはこの辺で話題を切り替えたかった。

「見せてくださりません?」

だが、願いとは裏腹に暁が自分の強さを説明しなくてはならない時間は続く。
彼の心情を知ってか知らずか、要求を口に出したキュルケは微笑を浮かべていた。

「そうだな……ボーほど派手なことはできないんだが……」

暁は苦笑を浮かべつつ考える。
やる以上は、何か強く印象に残ることをやってやりたかった。
だがボーのように『魔法じみた動き』が暁にできない以上、どうやっても地味になってしまう。
それが嫌なあたり、暁はよっぽどな負けず嫌いである。

(これが手っ取り早いか……)

手元にあるL字型の鉄の塊――彼の世界の『銃』に目を落とす。

「ギーシュ、ちょいと錬金で的作れるか?」
「的?」
「お前さんの作れる範囲の金属でいいから、薄い板作ってそこの窓に置いてほしい。できれば固定してな」

わかった、と頷きギーシュが窓の方へと向かう。
そして窓を開き、窓枠に向かって薔薇を振るった。
花びらが舞い、それが窓枠に根を張った金属板へと変化する。

「あらギーシュ、まだ青銅しか錬金できないの?」
「うるさいな、僕はメイジとしてはまだこれからなんだよ」

キュルケがギーシュをからかい、顔を赤くしながらギーシュがそれに反論する。
どうやらギーシュの錬金で作り出された青銅は、メイジの実力としては低レベルに位置しているようだ。
暁としては魔法が使える時点で評価に値すると思っているが、どんな世界でも実力によるランク分けはなされているらしい。

(お嬢さんは――『ゼロ』か)

改めて思う、『ゼロ』と言う二つ名に込められた意味は強烈な侮蔑であるのだと。
魔法などというものをまったく使えない暁にとっては、ルイズの起こす爆発も十分に魔法であるが、それを言うことにおそらくは何の価値もない。
それに、気安く彼女を励ます理由も意味も暁にはないのだ。
そういう類のことは――おそらくボーの方が適任だろうから。

(参ったね、たった一日で情でも移ったか)

なんだかんだでルイズを気にかけている自分に呆れつつ、銃を拾い上げ暁は立ち上がった。

「それのどこでもいい、適当に印をつけてくれ」
「印かね?……ルイズ、筆を借りるよ」
「いいわよ」

ルイズの同意を得、ギーシュは机から拝借した羽ペンで金属板に控えめに丸印をつけた。

「これでいいかね?」
「ああ、すまんな。さて――」

暁は的が備え付けられた窓とは反対側の壁際に立った。
そしてルイズたちの方に銃をかざす。

「とりあえずこれが俺の世界の銃なんだが」
「……そんな小さいのが?」

彼女たちの反応は暁にとっては予想通りのものだった。
怪訝そうな、疑いのまなざし。
おそらくこの世界の銃は、中世ヨーロッパ程度の技術力の銃なのだろう。
まだここまでの小型化はなされていないようである。

「とりあえずこいつを三発くらい、その印に向かって撃つ。
 一応印に当てられる自信はあるが、全部命中したら拍手してくれ」

「こんな小さい丸にかね?」

自分が金属板につけた小さな丸と離れた位置に立つ暁、二つを見比べながらギーシュが尋ねる。
ああ、と暁は頷いた。

「強いところを見せろ、と言われても俺はボーほど派手なことはできないんだよ。
 だから俺ができることの中で一番わかりやすいことをやる、地味だが。
 ついでにこっちの世界にないもの――まぁ、銃自体はあるんだろうが、それが見せられて手っ取り早いかと思ってな」

苦笑しつつ暁が説明する。
地味だが、の部分に若干力が込められているあたり、気にしているのだろう。

「んじゃ、撃つぜ。やかましいから耳塞いだ方がいい」

勧めに応じ、ルイズたちは耳を塞ぐ。
それを確認し、銃を的に向けたところで――暁は何か違和感のようなものを感じた。

(……なんだ?)

奇妙な感覚だった。
銃を標的に向け、狙いを定める。
幾度となく繰り返してきたはずの動作に感じた微妙なブレ。
そして――何かを誇示するかのように光る、左手に刻まれた契約のルーン。
それらの違和感に眉をひそめながらも的――その中心の小さな印に狙いを定め、引き金を引いた。

銃声。

銃口からは弾丸が、上部からは薬莢が飛び出す。
硬い音がし、銃弾が印に命中したのを目に留め、再度違和感を感じながらも銃を構えなおし、もう一度引き金を引く。

銃声。

腕に響く反動がいつもより緩い。
そしてやはり構え、狙うという動作に感じる若干のブレ。
それでも銃弾は印に命中した。まるでそれが当然のことであるかのように。
最後にもう一度、引き金を引く。
銃声とともに飛び出したその銃弾もまた、金属板に描かれた小さな丸印へと吸い込まれた。
そして薬莢が床に転がる硬い音が響き、部屋に数秒間の沈黙が訪れた。


ルイズはゆっくり、恐る恐る耳から手を離す。その目には涙が浮かんでいいた。
銃から弾丸が発射された際の雷に似た爆音は、耳を塞いでいたにもかかわらず鼓膜を大きく震わせ、
ベッドに腰掛けていた体が数サント浮き上がるほどの驚愕を彼女にもたらしたのだ。
要するに、今現在ルイズは銃声にびっくりして涙目になっていた。

さて、結論から言うならば、暁の銃から放たれた三発の銃弾は全て的――それもギーシュがつけた丸印の中に収まっていた。
三度立て続けに発射された弾。
そしてそのすべてが小さな丸の中に当たったと言う事実。
実際に銃というものを見たことのないルイズには、彼女の世界と暁の世界の銃の違いなどわかろうはずもない。
だが、少なくとも今暁がやったことがすごいことだというのは容易に理解できる。

「……すまん、思った以上に地味だった」

数秒の沈黙の後、自分が一番失望したと言わんばかりに暁が肩をすくめた。

「いやいやいや、十分すごいと思うけどね!?」

間髪いれずにギーシュがそれを否定する。
キュルケとタバサも頷き、彼に同意した。
彼女たちの視線はどちらかといえば暁の持つ銃に注がれてはいたが、おそらく先程の技を評価している事実は変わらないだろう。

「ボーの野郎に比べるとどうしてもなぁ・・・・・・。やらなきゃよかったぜ」

それでも納得できないのか、暁は難しい顔で眉間を押さえながら大きなため息を吐いた。
ボーという男が身近にいると、こういう妙な部分でも苦労するようである。

「……ところで、聞きたいことがあるんだが構わんか?」

もう気にしても仕方ないと悟ったのか、再度ため息を吐きつつ暁は問いを口にする。

「何よ?」
「銃を持つとこの――使い魔のルーンだったか?これが光るんだがこれはなんなんだ?」

言いながら暁が左手をルイズたちの方へとかざす。
見ると確かに彼の言うとおり、使い魔のルーンが光を放っていた。

「何それ?なんで光ってるのよ?」
「いや俺が聞いてるんだが、お嬢さんがたでもわからないか?」

ルイズはしばし考え込んだものの見当がつかず、わからないと頷いた。
他の面々もそれに同調する。
そもそも人間を使い魔にした例が過去に存在しないのだ、わかれという方が無理な話である。
ふとルイズの脳裏に、トリステイン王室直轄の研究機関であるアカデミーに問い合わせればわかるかもしれないという考えが浮かんだ。
しかしその思考は一瞬で頭の中から追い払われる。
アカデミーに暁やボーのことを報告すれば、アカデミーはおそらく彼らを実験材料として扱うだろう。
暁はもちろん嫌がるだろうし、ルイズとしてもそんなことは御免であった。

「うーん、先生方や学院長であるオールド・オスマンならわかるかもしれませんわ。お会いになる機会があれば聞いてみるとよろしいのでは」

ルイズとしてはキュルケに同意するのは癪だったが、おそらくそれが妥当だろうと納得した。
特にとても永い時間を生きていると言われる偉大な魔法使い、この学院の学院長であるオールド・オスマンであれば何か知っているかもしれない。
機会があれば自分も聞いてみようとルイズは心に決めた、やはりキュルケの発言に従う形になるのが少し癪ではあったのだが。

「そうだな……そうさせてもらうか。ありがとよ、キュルケお嬢さん」
「いえいえ、何かわかるとよろしいですわね」

ところで、とキュルケは言葉を続ける。
その視線は再び暁の銃へと向けられていた。

「その銃なのですけど、弾はいつどうやって込めているのでしょう?そのような動作は見られなかったのですけど」

ハルケギニアの銃と暁の銃の構造は根本的な差異が存在する。
つまるところ弾込めと点火、その動作なくしてハルケギニアの銃を撃つことはできない。
それは実際にはその存在を見たことのないルイズでも、知識として知っていることだった。
暁が銃を撃つ際、その行動は一切省略されていた。

「ああ、元々入ってるんだよ。ほれ、これだ」

手馴れた動作で暁が銃の部品、剣の柄のように見えるものを抜き出す。
そしてその中に入っているモノを取り出し、キュルケたちの方にかざした。

「ごごご、ゴールド!?」

キュルケが目を見開き、驚愕の声をあげる。
取り出されたそれは、黄金色に輝く獣の牙のような物体だった。

「いや、金じゃない」

彼女の放つ雰囲気に若干気圧されながらも、暁は銃弾について説明する。

「とりあえず火薬と弾丸がこんな風にまとめられてて、もう何発分か中に入った状態ってこった。
 詳しい理屈は面倒だしたぶん聞いても面白くないだろうから、この辺で勘弁してくれ」

暁は部品を再び銃の中に戻していく。
その様子をルイズたちは皆、興味深げに眺めていた。

「へぇ、面白いですわね。その弾はハルケギニアでも作れますの?」
「作ろうと思えば作れるかも知れんが、俺は作り方なんて知らない。
 だからこっちの世界に持ってきてる分撃ち尽くしたら、この銃はただの鉄の塊に早変わりだ」

暁は苦笑しながらその場に腰を下ろし、窓――正確には窓に作り出された金属板に目を向ける。
的は正確に三発分、穴が穿たれているにもかかわらず、彼の表情はどこか納得がいっていないようだった。

「ありがとなお坊ちゃん。それ外しておいてくれ」
「ちゃんと外しなさいねギーシュ。跡残ったら引っ叩くわよ」
「わ、わかったよ。わかったからそんなに睨まないでくれルイズ」

明らかに自信なさそうな表情でギーシュが金属板を取り外す為、錬金の呪文を唱え始める。
ルイズはとりあえず乗馬用の鞭がある場所はどこだったかを思い出しておくことにした。

「ところでこっちの世界で一般的な武器ってどんななんだ?」
「えーっと、剣に槍、あとは弓矢ですわね」

問いに答えながらあごに手を当て、何か考え込んでいたキュルケだったが、不意に何か思い浮かんだように笑みを浮かべた。
暁に向けられたその笑みはどうしようもなく意地悪な、ルイズにとっては何か不安な気持ちになる表情だった。
そして、その不安は的中する。

「もしよろしければ、私が武器を買って差し上げましょうか?」

予想外の言葉だったのだろう、暁が不思議そうな表情を浮かべる。
ルイズはと言うと、あからさまに嫌そうな表情を浮かべていた。
そしてそんな彼女の表情を見たキュルケは満足そうに頷き、言葉を続ける。

「アカツキは今後、何か武器を必要とすることがあると思いますの。でもルイズはケチだから、きっと使い魔には何も買い与えませんわ。
 面白いものを見せていただいたお礼です、私が貴方に何か名剣をお贈りさせていただきたいのですが、いかがでしょう?」

『ルイズはケチだから』と『名剣』の部分を強調し、わざわざルイズのほうにも笑顔を向けてキュルケが言い放つ。
暁もルイズも呆然とキュルケを見た。
タバサは我関せずと本を読み耽り、ギーシュは錬金に四苦八苦している。

「ま、まぁそりゃありがたいんだが」
「決まりですわね、次の虚無の休日に一緒にトリステインの城下町までまいりましょう」

ルイズはキュルケの目的を悟った。
彼女はルイズから暁を奪いたいのだ。
キュルケの家系であるフォン・ツェルプストー家はトリステインの隣国ゲルマニアの貴族であり、その領地はヴァリエールと隣り合わせである。
そのため、戦争のたびに両家は多くの血を流してきた、いわば因縁の間柄だった。
その上ヴァリエール家はほぼ代々と言っていい頻度でフォン・ツェルプストー家に恋人や婚約者を奪われ続けているのだ。
そして今、キュルケはルイズの使い魔を奪おうとしている。
ルイズは――いや、誰だってそんな歴史の一ページに自分の名前が載るのは嫌である。

「私が買ってあげるわ」

いまだ苦戦し続けているギーシュ以外の人間の視線がルイズに集中する。

「私がアカツキの武器を買ってあげるわ。今度の虚無の休日、城下町まで付き合いなさい」

決意表明のようなルイズの言葉。
すかさずキュルケが心底楽しそうな表情でそれに反応する。

「あら、無理しなくていいのよルイズ?」
「無理じゃないわ!武器くらい買ってあげられるわよ!」

顔を真っ赤にして、ルイズが吼える。
この瞬間、彼女はもう後には引けなくなった。
そして――

「やったよ!成功した!」

ギーシュの空気をまったく読んでいない歓喜の叫びが響いた。 





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