あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロの天使試験-1

「あんた誰?」

 ここはトリステイン魔法学院。今行われているのは、進級試験である使い魔の召喚であった。
 試験課題として、各人一匹以上の使い魔を召喚、ならびに契約する事が求められていたが、今の挑戦者ルイズ・ド・ラ・ヴァリエールは既に二桁を超える失敗をしていた。
 もう、失敗は出来ない。成功していないのは私だけ。試験監督官のコルベールが試験終了を告げようとしている空気を敏感に感じ取ったルイズは、最大の気合いを込めて召喚に挑む。


 果たしてそれは、成功した。
 爆発、そして煙幕の向こうに影が見える。

「何か見えるぜ?」
「ゼロが、やっと成功したのか?」

 幻じゃない!やっと成功したんだ!
 そんなガッツポーズさえ決められそうな喜びは、煙が晴れて現れた姿に悲嘆へと変わった。

「女の子……なんだ平民かよ!」
「所詮はゼロのルイズか!」

 周囲からの嘲りも耳に入らない。ワイバーンやトロルならまだしも、平民を呼び出してしまうなんて……!
 その思いから吐き出された、最初の言葉。しかしそんな苦しみを知らず、呼び出されたとおぼしき少女は辺りを見回し、そして正面の桃色髪少女を見て、全包囲からの視線を受けながらおずおずと、しかし脳天来な声を出した。

「……は、ハロー?」
「ミスタ・コルベール! もう一度やらせて下さい! 平民を使い魔にするなんて聞いた事がありません!」
「だめだ、ミス・ヴァリエール。召喚した者が何であろうと、契約するのが伝統なのです。
 それは揺るがせないのです」
「え、スルー? あたしはどーすればいーのよ?」
「はぁ……分かりました。
 あんた、感謝してよね。こんな事、平民は絶対受けないんだから」
「あのー、もしもーし?」

 少女は目の前に近付いて来たルイズに何度も尋ねるが、何か呟く彼女は集中して聞いていないのか、分かって無視しているのか、返事をしようともしない。

「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
 五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
「ちょっと聞いてよ!貴方、対しょ―――ムグ」

 抗議ついでの質問は、口づけによって遮られた。
 一分が一秒にも感じられるくらい時間が経ち、やがて放されても少女はぼんやりとしていた。ぼんやりし過ぎで、刻まれるルーンの痛みに気付かなかったぐらいだ。

「契約は成功したようだね。ふむ……珍しいルーンだね」

 コルベールはすらすらとスケッチをし終わると、生徒達に終了を告げ、ともに宙に浮いて去って行く。後に残されたのはルイズと、まだ情勢を把握できない少女だけだ。

「……で、あんた誰よ?」

 結果はともあれ試験には成功し、漸く落ち着きを取り戻したルイズは、初めて使い魔をゆっくりと観察した。
 少女を一言で言い表すと、黒一色。黒いヘッドドレスを頭に被り、舞踏会で着るような、ひらひらがやたらとついたゴシックロリータ調の真っ黒なドレス。
 そのインパクトに少し驚きはしたが、続いて細かい部位に視線を移す。
「聞いてる? おーい、もしもーし」

 こちらを見つめる顔はかなり整った顔立ち。腰まで届く栗色の髪と合わせ、召喚したのが少女だとやっと分かった。ちなみに胸は余り無さそうだ。それは良い。

「……ん? 何よ」
「何よはこっちのセリフよ! 突然キスしてきて、こういうの……レズって言うんだっけ?」
「私は正常よ! それと聞くな!
 ……契約よ、使い魔の。詳しい事は後で話してあげるから、ついてきなさい!」


***************


 部屋に辿り着くまで、ルイズは自分の召喚した使い魔がただの平民の少女だと思い込んでいた。否、自室に入れるまで、そう思っていたのだ。
 なんで平民なんか……と思っていたのだが、話をする前にそれはややこしい現実に取って変わられる事になってしまった。

「あんた……背中の飾り、何?」

 律義に部屋のドアを閉める少女の背中についている物を見つけ、尋ねる。

「背中に鳥の翼をつけるのが、平民で流行ってるのかしら?」
「もしかしてこれ……見えてる?」
「当然じゃない。そんな大きな白い飾り、見えない方がおかしいわよ」

 さっきまで気付かなかったけどと言うセルフ突っ込みは、喉の奥に飲み込む。不安になりすぎて、周りに目が向かなかったのよ!
 一方、それを聞いた少女は喜色満面になった。

「よかった! いやあびっくりしたわよ、あたしの試験開始ってこんなんかー、って流石に不安になっちゃったけど、ちゃんと対象者に会えたみたいね」
「対象者? それに試験って?」
「あ、今から説明するわね」

 饒舌になり出した少女の姿に、(あれ、主導権取られた?)とルイズ。

「あたし達天使見習いは、ちゃんとした天使―――地上じゃアークエンジェルって区分けになってるって聞いたっけ―――になる為に、卒業試験で地上に降りる事になってるのよ」

 何故か双脚を伸ばし、神操舵手が動かす空中船を幻視した。
 が、そんな事より、

「天使? 天使って神の御使いとかっていう、あの天使!?」
「地上じゃそんなイメージみたいね。まあ合ってるわよ、見習いだけど」
「まさか、ね」

 冗談よね、と背中の羽根を無許可で引っ張り、

「いたたたた!」
「え……うそ!?」
「本物だって。急に引っ張らないでよ、いたたた……」

 その翼は確かに手応えがあった。手のひらサイズで、ルイズが知識で知る翼人のよりは一回り小さい。
 ルイズは歓喜に震えた。
 ただの平民と思っていたら、とんだ隠し玉だ! 何が出来るか分からないが、目茶苦茶珍しい使い魔である事は揺るぎない事実なのだから!

「あ、この羽根、他の人には見えないから」
「……え?」
「普通の人には見えないのよ。
 見える基本は天使かそれに近しいもの、そして対象者―――つまり貴方だけ。オーケイ?」
「……え、ええ」

 興奮は地に墜ちた。
 羽根が無かったらただの平民にしか見えない。黄色くなくて電気を出さないネズミと同じだ。
 ていうか、翼が見えてたら召喚の時点で平民とか言われない筈だ。

「それから、羽根はついてるけど飛べないのよ」
「まだ何も言って無いわよ」
「何となく聞かれる気がしたのよね。これは見習いだからって訳じゃなくて、天使自体が飛べる方が珍しくなってるから。
 昔はみんな飛べたらしいから、人間の天使に対するイメージはそこから来てるようだって習ったわ」
「ふぅん……」

 それは大した情報じゃない。小話レベルだ。

「んじゃ、続き行くわよ? 卒業試験は約一ヶ月、目的は『対象者を幸せにする事』」
「幸せって?」
「その基準がはっきりしてないのよね、どう幸せにしたら合格なのか。
 試験終了後、天界に帰ってからやっと、合格不合格が分かるのよ。まさに神のみぞ知るって奴ね」
「対象者―――私がしなきゃ行けない事は?」
「無いわよ。言うなら、あたしと一緒に暮らす事。まああたしは試験の為にうろちょろする事もあるけどね」

 ややこしい事になった。試験自体はそんなに気負わなくていいみたいだが、これでは役割的でも実力的でも純粋な使い魔としての役割は望めそうにないだろう。
 何とか約一ヶ月乗り切り、後で次の使い魔を召喚する方針で行こう。

「卒業試験とかについては分かったわ。納得出来ないけど理解した。
 で、ゴタゴタで聞いて無かったけど、あんたの名前は何?」
「人の名前を聞く時は、まず自分から言うってのが、地上のお決まりじゃないの?」
「くっ、平み……じゃないのよね。まあいいわ。
 私はルイズ・ド・ラ・ヴァリエールよ」
「ルイズ・ド……ド……ドラえもん?」
「誰が青ダヌキかっ!? ルイズでいいわよ、ルイズ」
「ルイズね。オーケイ、刻んだわ。
 あたしは遊羽。これからよろしくね」
「ユンね、分かったわ」


 続いて、ルイズは遊羽に使い魔のイロハを伝授する。

「えー、平等な権利をちょうだいー」
「私はともかく、みんなあんたの事を使い魔と思ってるから、権利は期待しない方がいいわよ。
 まあ悪いようにはしないわ」

 まずは主人の目となり耳となる力。

「偉い天使様ならともかく、あたしみたいな見習いに求められてもね」
「無理……と」

 次は、主人が使う秘薬の材料集め。

「エーテルじゃ駄目なの?」
「エーテル?」
「天界での万物の源。天使もエーテルから生まれるのよ。地上には無いけど」
「これも無理……と」

 そして、主の身の回りの世話ならびに護衛。

「あ、護衛は無理よ? 試験期間はそういう闘う行為は禁止になってるから。元々闘える天使自体が珍しいけど。
 家事は出来るわ」
「……何か特技ぐらい無いの?」
「占いが得意よ。命中率、70%オーバーよ」

 えっへんと無い胸を張る遊羽とは対称的に、ジト目で睨むルイズ。

「うわ、かなり役立たずだこの使い魔。つか、ホントに天使?」
「あ、その反応ギガむかつくぅ~!
 あたしの友達はちゃんと飛べるんだからね!」
「そんなのメイジや翼人なら出来るわよ! さっきの珍しいってのはどこ行ったのよ!」

 ルイズは天を仰いだ。窓の外はいつの間にか夜になっていた。誰か変わりに試験受けてくれる奇特な人間はいないだろうか。
 こんな脳天気でにぎやかなのと1ヶ月もいなきゃならない事を思うと、頭が痛くなった。地に墜ちた興奮はドリルで潜って行き、冬眠し出した。

「……もう、寝るわ。いろいろありすぎて、疲れちゃった」
「寝るの? じゃ、あたしも……ベッドは一つか。おじゃましまーす」
「まあ、いいけど……はぁ」
(誰か、何とかして)

 せめてこれが夢であるように、ルイズはさっさとベッドに入り、眠る事にした。現実逃避した。

 明日になれば無理だと嫌でも分かるのだが。

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