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ゼロの黒魔道士-50


ルイズおねえちゃんは、正直に言ってしまうと、口を開ければ小言が多いし、
余計な意地を張っちゃって、あんまり良いことが無いなぁって、思うことが数えきれないぐらいある。

「きみは、上流階級の子じゃないか?」
……だから、ルイズおねえちゃんの『ずっと黙っている接客』は大正解だと思うんだ。
ルイズおねえちゃんは、貴族の子達の中でも、礼儀作法とかは1番ぐらいに厳しいから、
黙って一礼するだけ、とか、ちょっと後ろに下がるだけ、とかでハッとするほど綺麗に見える。

「とある貴族のお屋敷にご奉仕していたとか?そこで行儀作法を仕込まれたんだろ?」
お客の男の人は、黙ってるルイズおねえちゃんを見て、あれこれ想像してるみたいだ。
ルイズおねえちゃんは、ただただ、にこやかに笑って黙っているだけ……
うん、そうやって黙っていると、ルイズおねえちゃんが本当は持ってるはずの優しさとかが出てきて、
お客さんにもウケがとってもいいみたいだ。

「君みたいな可愛くておとなしい子が奉公していたら、ただじゃすまんだろ。
 行儀作法だけでなく、あんなことや、こんなことまで……。
 仕込まれそうになったりしたんじゃないのかね?」
……どうでもいいかもしれないけど、このお客さん、流石に想像力がありすぎ、じゃないかなぁ?
もしかしたら、お芝居の台本を書くお仕事してる人かもしれない。
何か、自分の言っていることに興奮してくるところとか……すっごく“芸術家”っぽいと思うんだ。

「く!ひどい話だね!きみみたいな可愛い子に……。
 でも、どうして奉公していたきみがこんな店で……、そうだ!分かったぞ!
 あんなことやこんなことを仕込もうとする無体な旦那に嫌気が差してお屋敷を飛び出したんだな?
 でも、両親が残した借金が残ってる。それを返すために必死で働いてる。そんなとこだろ!」
……なんか、ボクまでルイズおねえちゃんが可哀想に思えてきた……
すごいお話作るんだなぁ、このお客さん……

「なんて可愛そうな子なんだ。ふむ、じゃあこれをその借金の返済にあてなさい。
 ところで、その、あんなことやこんなことって、どんなことだね?話してみなさい。いいね?」
……でも、そのお客さんのお話はそこで終わりだった。
ルイズおねえちゃん、チップだけもらったら、一目散に逃げてきちゃった……
流石に、それって接客としてどうなのかなぁ……?

「……ハァ、ハァ」
緊張してたのか、急に走って疲れたのか、ルイズおねえちゃん、ものすごく息切れしてたんだ。
「やるじゃねぇか、娘っ子!黙ってりゃいい女、ってか?ケケッ!」
「ルイズおねえちゃん、お疲れさま……はい、お水」
最初っから終わりまで厨房で見てたから、疲れてるだろうなって思って、お水用意しといて良かったって思った。

「ありがとね……ふはぁ~! あ、あったりまえじゃない!チョロいわよ、チップなんてね!ふんっ!」
そうは言っても、ルイズおねえちゃん、とっても嬉しそうだった。
こんなにいっぱいチップをもらえるなんて初めて、だもんね。
さっきのお客さん、ホント気前がいいなぁって思うんだ。
あ、そういえばさっきのお客さんと言えば……
「ルイズおねえちゃん?あの、ね……」
「ん?どうしたのよ、ビビ?」
「……『あんなことや、こんなこと』って……何?」

……ペコッて持ってたコップではたかれちゃった……
どうしても意味が分からなかったから聞きたかったんだけどなぁ……?

……今度コルベール先生にでも聞いてみよっかなぁ……?



ゼロの黒魔道士
~第五十幕~ いかにして彼等はその地に立ったか


「ふ~ん。調子出てきたじゃないの、あなたの“お姉ちゃん”」
「あ、ジェシカおねえちゃん……はい、お水」
ルイズおねえちゃんが次のお客さんに取り掛かったすぐ後に、ジェシカおねえちゃんが厨房に顔を出してきたんだ。

「ん!気が利いていてよろしい! っふぅ~!生き返るわ~……」
今日は、暑いから、みんなお水ですっごく喜んでくれるのが嬉しいなって思うんだ。
「最後にみんな追い上げてきちゃったし、こりゃお姉さんもうかうかしてらんないねぇ!
 あ、これ3番さんね?よし、丁度いいわ!もうちょっと頑張ってくるわね~!」
「いってらっしゃ~い……」
それにしても、ジェシカおねえちゃんって、すごいなぁって思うんだ。
テクニックとか、色々と……

「おいおいなんだジェシカ。機嫌が悪いじゃないか!」
「さっき誰と話してたの?」
例えば、今行った3番テーブルのお客さん、ちょっと他の店員さんと話していたのをきっちり見つけて、
ちょっと力をこめてテーブルに料理を叩くように置く。
すごい演技力だなって、思うんだ。
まるで……ホントにヤキモチを妬いているみたいに見えてしまうんだ。
ボクも、最初に見たときは騙されそうになった。
(そのときに「あの人のことが好きなの?」って聞いたら、思いっきり笑われちゃったんだ……)

「な、なんだよ……機嫌直せよ」
「別に……、あの子のことが好きなんでしょ」
「ばか!一番好きなのはお前――」
……これで、このお客さんは、ジェシカおねえちゃんの機嫌を直そうとチップを多目に出してしまうんだろうなぁ。
ジェシカおねえちゃん、役者さんも十分できそうだなって思うんだ。
……ルイズおねえちゃん、勝てるのかなぁ?こんなスゴい人相手に……
 ・
 ・
 ・
「これはこれは、チュレンヌさま。ようこそ『魅惑の妖精』亭へ……」
騒がしかったお店が、急に静まりかえる。
お店に入ってきたのは、沢山の男の人達……
「ふむ。おっほん!店は流行っているようだな?店長」
そして、その先頭に立っていたのは、ヘッジホッグパイみたいにでっぷりと太ってて、
髪の毛が海藻みたいにベットリと頭に張りついている貴族の人だった。
……なんか、顔つきがニヤニヤとしてて感じがすっごく悪い。
「いえいえ、とんでもない!今日はたまたまと申すもので。いつもは閑古鳥が鳴くばかり――」

「……店長さん、どうしちゃったんだろう?」
いつも豪快な店長さんが、ペコペコと頭を下げてばっかりだ。
「ぁ~ん?いかにも俗物ってぇ声だなぁ。どーせ木端役人の類だろーぜ?」
……お役人さんって、そんなに偉いのかなぁ……?

「なに、今日は仕事ではない。客で参ったのだ」
「お言葉ですが、チュレンヌさま、本日はほれこのように満席となって――」
「私には、そのようには見えないが?」
どうも、その役人さんの後ろにいる人達も貴族の人みたいだった。
お役人さんがチラッと目配せをしたら、一斉にギラギラと趣味の悪いぐらい光る杖を引き抜いて、周りのお客さんを威圧したんだ。
……他のお客さん、その迫力に圧倒されちゃったのか、みんな逃げちゃった……
料理やお酒、まだ残ってるのに……もったいないなぁ……
「どうやら、閑古鳥と言うのは本当のようだな。ふぉふぉふぉ!!」
頭の上に乗っかっている藻と同じぐらい、ベットリとした声で笑うお役人さん。
うーん……これは、流石に、“なんとなく”、なんてもんじゃなくて……

「……すっごく感じ、悪いね……」
「ほんっと、感じ悪いわよね」
ボクの意見に、いつの間にか厨房まで逃げてきていたジェシカおねえちゃんが同意した。
「あ、ジェシカおねえちゃん……あの人、誰?」
「このへんの徴税官をつとめているチュレンヌって豚よ。
 ああやって管轄区域のお店にやってきては、わたしたちにたかるの。いやなやつ!
 銅貨一枚だって払ったことないんだから!」
……ちょーぜいかん……ちょっと、どういうお役人さんかはよく分からないけど、
とにかく、自分の担当している地域で悪いことをしているお役人さんってのはよく分かった。
「俗物どころか金の豚ってなとこか、なるほどなぁ」
「貴族だからっていばっちゃって!
 あいつの機嫌損ねたら、とんでもない税金かけられてお店が潰れちゃうから、みんな言うこと聞いてるの」
お店が潰れちゃうんだ……嫌な奴だけど、それだと言うことを聞かなきゃいけないんだろうなって思った。
こんなに活気があって、みんなが楽しくお仕事をしているお店が潰れるなんて、もっと嫌だしね……

「おや!だいぶこの店は儲かっているようだな!このワインはゴーニュの古酒じゃないかね?
 そこの娘が着ている服は、ガリアの仕立てだ!どうやら今年の課税率を見直さねばならないようだな!」
……でも、これはやりすぎ、だと思う。
何より、貴族の人らしい、ルイズおねえちゃんにあるような上品さの欠片も無かった。

「ほらほら!女王陛下の徴税官に酌をする娘はおらんのか!この店はそれが売りなんじゃないのかね!」
「触るだけ触ってチップ一枚よこさないあんたに、誰が酌なんか――」
チュレンヌの言葉に、ジェシカおねえちゃんが苦々しくつぶやいた。
「――しそうな娘っ子、1人だけ心当たりあるぜ?」
「あ」
……デルフの言うとおり、確かに、1人だけ、そんなチュレンヌにお酌をしそうな人がいたんだ……

「なんだ?お前は?」
「お客様は……、素敵ですわね」
……ルイズおねえちゃんって、ときどきスゴいって思うんだ。
教科書とかマニュアルとかをきっちり暗記したりするのもスゴいんだけど、
それをどんなときでも、そのとおりに言ったりやったりしてしまうことがスゴいって思う。
……何も、こういうときに限ってきっちりやらなくてもいいとは思うけど……

「なんだ!この店は子供を使っているのか!」
ルイズおねえちゃんは、黙ってニコニコしてた。
……スゴい。1週間前のルイズおねえちゃんとはまるで別人だった。
1週間前だったら、“子供”って言われただけで、そこら辺のワイン瓶で殴りかかってたと思う。
「ほら、いったいった!子供に用はない。去ね!」
……そして、殴りかかってなくて良かったって思う。
嫌な奴だけど、お店が潰されるのは困ってしまうし……

「なんだ、よく見ると子供ではないな……ただの胸の小さい娘か」
……なんで、このチュレンヌってお役人は、こうルイズおねえちゃんにクリティカル攻撃してしまうんだろうなって思うんだ。
ボムが自爆する前にプクッて膨らむみたいに、ルイズおねえちゃんの気迫をむわって感じた。

「どれ、このチュレンヌさまが大きさを確かめてやろうじゃ――」
チュレンヌの手がわきわきと、まるで虫の足みたいに嫌な動きでルイズおねえちゃんに触れようとした瞬間、
ドンッと大きな音がして、真ん中のテーブルに料理の乗ったお皿がおかれた。
あんまりにも大きな音で、チュレンヌも周りの軍人さんもビクッとするぐらいに。
……ボクも、ほんのちょっぴり、ビクッてした。

「――料理、お持ちした」
その料理を運んで来たのは、メガネの店員さん……ルイズおねえちゃんのちょっと前にお店に入ってきたらしい、あの新人さんだ。
無口で、あんまり愛想が無くて、チップがあんまりもらえていない、あの新人さんだった。
……初めて声聞いたけど、なんか聞き覚えがあるような……?
「き、君なぁ、私が今から楽しもうと言うときに――ははぁん、そうか!君もお楽しみの輪にくわわりたいと、そういうことか!」
「……」
「ふむふむ、黙っているとみると、肯定かな?ふふふ、メガネの下はどんな美人かなぁ?こっちの洗濯板よりよっぽど楽しめそ――」

「……洗濯板はないんじゃないの?」
ボムの、自爆。
……昔は、アレほど怖いものは無いやって思ってたけど、
そんなの、まだまだ全然だなぁって、この時思ったんだ。
お店のテーブル、料理、椅子、壁……
色んな物が消し飛ぶ大爆発。それも続けざまに、沢山。
……ルイズおねえちゃん、『エクスプロージョン』って魔法、詠唱するのがすっごく速くなったんだなぁ……
「ひ!ひぃいいいい!」
ルイズおねえちゃんにクリティカルな攻撃を続けていたチュレンヌが、一番怖がっていた。
「なんでそこまで言われなくちゃならないの?この私がお酌してあげたのに、洗濯板はあんまりじゃないの?覚悟しなさいよね!」
なおも、爆発が続くという宣言をして、杖をチュレンヌに差し向ける。
さっきまでチュレンヌと一緒になって驚いていた軍人さん達も、
冷静になったのかルイズおねえちゃんに向けてギラギラ光る杖を何本も向けようとしている。

「……デルフ!」
「おうよ!久方ぶりの俺様大活躍ぅっ!」
流石に、もう黙って見ているわけには、いかなかったんだ。
ルイズおねえちゃんが、このまま暴れるのも良くないし、
かといって、ルイズおねえちゃんが傷つくのは絶対に見たくない。
とりあえず、この場を止めなくちゃいけない。
……止めた後、『お店は潰さないでください』って謝って、なんとかしてもらおうって、思ったんだ。
そう思って、デルフを片手に厨房から飛び出した直後に……

「え、えぇぇい!何をボサッとしておる!そ、そこの娘をただちにひっとら……え?……て……お前達ぃいいいい!?」
「あれ?」
「おん?」
それは、あっという間の光景だったんだ。
軍人さんが、空に舞い散ったと思ったら、その真ん中にいたのは、メガネの新人店員さん……
「……税の過剰徴収並びに私有化、兵の私有化、徒党を組んでの弱者迫害、並びに女性に対する不届き千番……」
低く、呪文を唱えるように、新人さんはチュレンヌの悪行を言っていく……
バタバタと、まるで本棚の上のホコリを払ったときのように、軍人さん達が落ちていくその真ん中で、
新人店員さんが静かにメガネを外した。
あれ、この顔って……
「え?ちょ、あ、あの、え、私は、女王陛下のちょちょちょ徴税官であるぞ!」
「女王陛下直下の銃士隊、アニエス・シュバリエ・ド・ミランが許さぬ!!」
長い金髪のカツラを外して、どこに隠していたのか、紋章入りの銃をチュレンヌに突きつける新人店員さん、いや……
「じゅ、銃士隊っ!?女王陛下直下!?」
「あ、アニエス先生!?」
店員さんがアニエス先生で新人さんで妖精さんで?な、なんか混乱してきちゃった……
 ・
 ・
 ・
「――なんで、こんなところに?」
チュレンヌや、それ以外の軍人さん達を縄で縛りながら、ルイズおねえちゃんがアニエス先生に聞いたんだ。
「……それは、こちらのセリフだ。何故お前らがこんなところにいる?」
アニエス先生は、いつもの鎧とマント姿じゃなくて、
ルイズおねえちゃんと同じ服の、色違いのスミレ色のものを着ていた。
なんか、ちょっと新鮮に見える。
「え、えっとー……ボク達は……」
「よりによって!なんでこんなところにいるのだ!」
……なんでだろう、さっきからアニエス先生がすっごく焦ってるように見える……

「え?え?」
「貴族であることを良いことに、悪さをしているという腐った輩を捕まえる任務と聞いて志願すれば?
 よりにもよって恥ずかしい服装で客に色気だの愛想だのをふりまかなくてはならない潜入任務?
 変装をしたとはいえ知り合いが来て露見するのを恐怖に怯えていたら?何でお前達が同じ店に?何故だっ!?」

……何故だ、って聞かれても、ちょっと答えに困るし、
流石に「お姫さまからの任務用にもらったお金を使い果たしちゃったから」っていうのは言いにくいし……
アニエス先生はすごい剣幕で怒ってるから何も言えないし……

「え、えっと、あのー……」
「せめて目指す獲物が来なければ、バレない内に店を変えて待ち伏せしなおすつもりでいたら?
 なんでよりによってこの屑はこの店に来てしまうというのだ!?あぁ、もうっ!!」
アニエス先生、なんでそんなにイライラしてるんだろう……?
服、似合ってるんだけどなぁ……?
「――偶然って、恐ろしいもんだぁな」
ルイズおねえちゃんと、デルフは同情したように、アニエス先生の言葉にうなずいている。
……ボクだけ、アニエス先生の気持ちが分かってあげられないのは、ちょっと悲しかった。

「――ルイズっ!!」
「は、はひ!?」
アニエス先生がものすごい剣幕のまま、ルイズおねえちゃんをにらんだ。
……ものすごく、怖い。

「……お互い、この店にいたというのは、その……秘密にしないか?」
「――大賛成、ね」
「――交渉成立だな」
目と目で、分かりあって、ルイズおねえちゃんとアニエス先生がガシッと握手した。
……言葉が無くても分かりあえるって、良いなぁって思うんだ。
ボクも、もっとアニエス先生やルイズおねえちゃんのことを分かろうって、そう思った。

「――……あれ?おい、ちょっと?おれっちの活躍の場は!?」
……デルフの気持ちは、なんとなく分からないでも無いんだけど、ね。


ピコン
ATE ~青竜は荒野を越えて~

「きゅいきゅいっ!!」
翼が、もぎ取れそうだった。

「きゅいぃぃ!!」
風の刃が、身を貫くように、刺さる。

「きゅい、きゅいぃっ!!」
それでも、彼女は、懸命に、疾く飛んだ。

タバサが地に伏した直後、あのエルフに真っ先に食らいついた。
後先を考えず、ただ、怒りに身を任せて。
結果など、分かっていたはずだった。それでも、戦わずにはいられなかった。

「魂まで蛮人に売り渡したか、韻竜よ。使い魔とは、哀しい存在だな」
違う。それは決して哀しいことなんかではない。
主を助け、主を守り、主と共に歩むこと。それこそが使い魔なのだ。
シルフィードは、エルフに片手で制されながら、そう思った。
思った直後に……頭に衝撃を受け、昏倒した。
エルフの前では、韻竜も赤子にしかすぎないというのであろうか?

目を覚ますと、エルフの姿も、お姉さまの姿も、影も形も存在しなかった。
「きゅぃいいいい!!!」
叫んだ。哀しい、叫びだった。
消えた主の手掛かりを求めるように、風に叫んだ。

……そして、意外なことに、手掛かりはすぐに見つかった。
地に落ちた、血の痕。
それと、風に乗って香る、ハシバミ草やムラサキヨモギの香り。

それは、間違いなく、彼女の主の痕跡だった。

シルフィードは、飛んだ。
そのワザとらしいタバサの足跡を、罠と知りながらも、
彼女は、疾く飛んだ。
全ては、彼女が使い魔であるために。

何時間飛んだか分からない。
太陽が傾いて、沈み、また昇った。
夏の日差しが彼女の体力をさらに奪い取ろうと真上に来たときに、彼女は見つけた。
それは、砂に囲まれた、要塞。
それは、彼女の主を封じ込めた、悪魔の城。
そこから香るは、タバサの血と、彼女の好む香草の香り。

シルフィードは、考えた。最善手を。
本能は、今すぐにでも城に乗り込みたかった。
だが、ここには、あのエルフがいる。
彼女を赤子のように軽く片づけた、この地で最も恐ろしき存在が。

そして、彼女が考えた最善手は……

「きゅいきゅいっ!!」
翼が、もぎ取れそうだった。

「きゅいぃぃ!!」
風の刃が、身を貫くように、刺さる。

「きゅい、きゅいぃっ!!」
それでも、彼女は、懸命に、疾く飛んだ。

彼女が考えた最善手、それは。
「きゅぃっ――ビビちゃんっ!お願いっ!!」
死の淵から帰ってきた、奇跡のスーパー精霊さん。
心優しき、彼女のお友達。
彼に頼ること、それが彼女の考えうる、最善手だった。

体力も限界で、涙も涸れ、向かい風に目が乾く。
それでも、青竜は荒野を越え、トリステインを一直線に目指した。

全ては、彼女の主を助けるために。
全ては、彼女の友を助けるために。


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