あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

絶望の街の魔王、降臨 - 14


 ルイズはアンリエッタに今後の事を相談していた。
 ルイズが信じていた、いや、恐らくこの世界にいる全ての人間が信じて疑わない魔法至上主義が音を立てて崩落し、平民による技術の片鱗を知った今、ルイズが恐れるのは平民による革命だ。それをアンリエッタに進言していた。
「ニューカッスル城の堅牢さは、王党派の生き残りの方々が証言しています。戦艦の主砲を長く受けつつも、城は微塵も揺らぐことはなかった、と。しかし、固定化の魔法に護られた城は、実際にジルが爆破しています。たった一人で、いとも簡単に、です。そして、やろうと思えば、一発の砲弾でロンディニウムを焦土にすることも可能だったそうです」
 核については、ジルはルイズに威力と効果しか教えていない。しかし、『爆心付近には何も残らない』『都市を一つ、地獄に変える』といった言葉を、信じざるを得なかった。あの夢を見たからには。
「ジルの国にメイジも貴族もいません。ですが、魔法よりも遥かに強力で簡単に扱える兵器が存在します。それこそ、世界を何度も焼き尽くしてお釣りがくるくらいの兵器が」
 夢に出てきた化物も兵器なのだが、のことをルイズは知らないし、知っていてもアンリエッタには理解できないだろう。生体生物兵器、B.O.W.など。
「トリステインは窮地に立たされています。アルビオン新政権、ガリア、ゲルマニア、いずれの国に攻め込まれても負けるでしょう。ジルの持つ情報源からは、レコン・キスタの背後にはガリアがいることが報告されています。ゲルマニアは同盟ができますでしょうが、トリステインが危機に陥ればあっさり切り捨てるでしょう。彼らからすると、トリステインは楯に過ぎません」
 ジルの情報源、即ちエルザとロングビル。エルザは先住魔法を駆使し、各国で誰にも見つかることなく諜報活動を行っている。ロングビルはフーケだった頃の独自の情報網から、学院にいながらにして臭い情報をジルに送っている。エルザとロングビル、二人の情報網は、国が放つ間諜より遥かに広く細かく正確であり、国家戦略から戦術的に重要な情報までがジルの元に集まるのだ。
「メイジの兵力だけならば、トリステインは最強でしょう。しかし、相手が物量で攻めてきたら? 戦艦主砲で飽和攻撃をしてきたら? メイジはあっというまに精神力が切れ、あるいは手も足も出ずに全滅するでしょう。魔法は物量戦に全く向かないのです」
「ですが――――」アンリエッタが久しぶりに口を開く。「スクウェアの風メイジ、例えば烈風のカリン様なら……」
「いいえ姫殿下。戦争は変わりつつあります。たとえ烈風カリンであろうと、そのレベルのメイジがそう何人もいる訳ではないのです。先のアルビオン内戦では、兵力に物を言わせた多方面作戦により、退路も撤退先も潰され、ジェームス一世が討ち取られています。戦場が複数ある場合、数の少ないスクウェアメイジだけではカバーしきることは不可能と見ていいでしょう」
「だったら、どうするというのですか?」
 ルイズの話が否定的になればなるほど、アンリエッタの顔は蒼くなる。ルイズは恐怖を並べてているが、確か彼女は最初に『提案』をしにきたと宣言したはずだ。
「姫殿下、魔法だけが力ではありませんわ」



 トリスタニアと魔法学院の距離は、往復40分である。条件はただ一つ、時速400リーグを出せること。このハルケギニアには、メイジだろうが飛行生物だろうが絶対に出せない速度である。一部の異邦人を除いて。
 爆発を見てから爆風を避けられる反射神経と筋肉の反応速度、そしてその馬鹿力によって初めて御しえる最高速のガスタービンバイクで、甲高い音と土煙を巻き上げながら街道をゆく。道ゆく人々もその噂を耳にしているので、貴族も平民も不穏な音が聞こえたら道を譲る。知らない者はその光景に首を傾げるが、すぐわきを掠めるようにカっ飛んでいった何かの風圧にフっ飛ばされ、その意味を知る。
 別にそう急ぐ必要もないが、調子がいいのでついついアクセルを開けっ放しにしてしまう。そもそもガスタービンエンジンの特性でアクセルの応答速度が遅いので、アクセルワークなんてろくにできないのだが。
 ルイズはアンリエッタに用があるとかで城に残っている。ジルに旅の荷物を持たせ、明日の朝に着替えを持ってくるように言いつけた。特に断る理由もないし、アンリエッタからウェールズの件に関する書状をついでに預かっている。オスマンに渡すものであるが、普通に使者を出すより遥かに早いのでジルが渡すこととなった。
 ちなみに、これらはすべてジルにとっては『ついで』である。ジルの目的はマルトーの料理を食べること、この一点にある。
 ニューカッスルのパーティーで振舞われた料理、これが『まるでイギリスのように』イマイチだったため、学院の食事が恋しくなったのだ。トリステイン王宮では毒味やら厨房が遠いやらで、食べる頃には冷えていた。
 魔法学院の城門が遠くに見える。ともすればアクセル全開のまま突っ込んでいきたい衝動に駆られるが、アクセルを切り慣性のみで突き進む。



 マルトーの料理が凄まじかった。
「なに……これ」
 戦艦にいてもおかしくない腕のマルトーが作るものとは思えなかった。どどめ色のシチューなんて初めて見た。アルヴィーズの食堂は阿鼻叫喚の地獄画図、かとおもいきや、不穏にざわめいているだけで騒ぎにはなっていないようだった。
「シエスタが視察に来た貴族に無理矢理連れて行かれてからあの調子さ。さすがに貴族どもに出すわけにはいかないから俺達が作ったが……賄いともども、ご覧の有様だよ」
 コックの一人が教えてくれた。当のマルトーは魂が抜け、真っ白な灰になって、どどめ色のシチューの鍋をかき混ぜていた。
「じゃあ、DAKKANしないとね」



 四次元BOXから持てるだけの武器弾薬を装備して、サイドパックに着替えを詰めて、すぐにガスタービンに火をつける。弾丸のように飛び出して、トリスタニアに向かう。
 まだまだ日は高く、城下は人で賑わっている。ここをバイクで突き抜けるのは吸血鬼に命令されたどこかの政治家の仕事であって、ジルにはできる真似ではない。しかし、徒歩で疾走するのに邪魔はない。誰もが、貴族も平民も関係なく、その姿を見ると道を譲る。触らぬ神に祟りなし、生存本能は正直だ。モーゼの十戒のごとく、人垣が割れ、できた道を全力疾走するジル。向かう先は城。
 城門の衛士ですら、その気迫に一歩後退る。賊ではない、しかしこんな恐ろしいものを入れてもいいものか。以前彼女に思いっきり一瞬で無力化された彼等は、感情に関係なく逡巡した。
「どきなさい。急いでるの」
 もはや素直に従うしかない。叱責や厳罰よりも、目の前の魔王の方が恐ろしかった。
 すぐにルイズは見つかった。まだアンリエッタの私室で何かを話しているが、彼女への用はすぐ終わる。
「ルイズ、着替えよ。明日の朝にはまたこれると思うけど、遅れるかも知れないわ」
 おつかい完了。
「何があったのよ?」
「シエスタがどこかの馬鹿貴族に連れていかれたの」
 何があったのかだけを簡単に報告される。直接的ではないが、そのいでたちが『ブっ潰す』と如実に語っている。ベルトリンク弾こそないものの、スリングベルトで吊り下げられた銃、砲、なんかよくわからないもの。
 止める間もなく、ジルはすぐに出ていった。
「…………」
「…………」
「……案外、戒めになるかもしれませんね」
「そうですね」
 二人は関与しないことにした。



「おや、ヴァレンタイン様。どこに行かれるのですか?」
 恐れることなくジルに声をかけたのは、ケイシーと呼ばれていた使用人だった。
「シエスタってメイドを奪還するの」
「シエスタ?」
 思わぬところに食いついてきた。
「そのシエスタというのは、魔法学院の黒髪黒目の娘ですか?」
「ええ、そうよ。知り合い?」
「はい。同じタルブの村の出身です。シエスタは妹のようなものです」
 外見からすると確実に娘なのだが、見た目に反して若いのかもしれない。
「ところでDAKKANでその姿とは、穏やかではありませんね。手伝いましょう」
「相手はモット伯よ。それでも?」
 ケイシーはにやりと笑い、
「所詮、メイジです」


新着情報

取得中です。