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僕らは、恋をして生きていく-05


第4話「ある休日の出来事」

「い、痛い。痛いですギーシュ様」
ヒカリがつい先刻、「う、生まれ初めて見ました。思ってより、黒くて大きくて硬くて熱いんですね。ちょっと、怖いです」と言って恐る恐る手を伸ばして触れていたモノの上にまたがりながら。僕にギュっと抱き着いて来る。
やっぱり、これが初体験であるヒカリには、少し厳しかったかも知れない。かく言う僕も、激しく揺れる中、ベニャっと押し付けられた膨らみの感触に冷静では居られなかったりする。

「ヒカリ! やっぱりこっちに乗りなさいよ。下手糞なギーシュと違って私は上手よ!」
隣からルイズが、そう声を張り上げる。
失敬な。確かにルイズは上手だけど、僕だって下手なわけじゃない。
子供の頃から鍛えられてきたんだ。ただ……後ろに乗っているのが可愛い女の子で、力一杯抱き着いてきてて、む、む、胸が当っているから、冷静にたずなをさばけないだけなんだよ!

さて、そろそろ、説明が必要だろう。
今日は、虚無の曜日だ。
決闘の後、三日間寝こんだ僕が目を覚ましたらヒカリが看病してくれていた。
今回は、そのお礼(兼お詫び)と言うことでトリステインの城下町に案内がてら、必要なもの(ヒカリは、着の身着のままで召喚されてきたからね。メイドの物を借りるにも限度があるし)を買いに行く途中なのだ。
ちなみにルイズは、

「あ、あんな好色魔をヒカリと一緒にはさせておけないわ! 私もついて行って監視する! そ、それに買い物のお金はギーシュに慰謝料として払わせるにしても、あいつと一緒じゃ、買いにくいものもあるでしょ? 
だから、私も一緒に行く! 大体、主と使い魔は一心同体なんだからね!」
と主張してついてきた。

いや、助かったんだけどね。
ヒカリと二人っきりで、猛烈なアタックをかけられたら、理性が持つ自信は無いし。
……ちなみにあれ以来、モンモランシーは一言も僕に口を聞いてくれない。
今日の目的の一つは(内緒だけど)、街でモンモランシーの機嫌を直せるような品物を探すことだったりする。

そういうわけで、僕とヒカリとルイズは馬に乗って町に向かっている最中だ。
でも今日が馬を見るのも触るのも乗るのも初めてというヒカリには、ちょっときつかったかもしれない。
帰りには、クッションを買って、鞍の上にくくりつけよう。
あっ、町の門が見えてきた!


僕たちは、門の側にある駅に馬を預けて町の中に向かう。
ヒカリが馬から下りるのを手伝う。ちなみにヒカリもルイズも乗馬用のズボンを履いている。
これはこれで美しいけど、やっぱりスカートが良かった。出来れば学院の制服のミニスカート。
そういえば、何年か前に、女子生徒たちの間で、フライの時用にスカートの下に短いズボンを履くのが流行った事があったそうだ。
その時は、貴族の婦女子にあるまじき格好、伝統に反するとのオールド・オスマンの鶴の一声で禁止され。
それ以来、僕ら男子生徒の間では、代々オールド・オスマンの偉業をたたえ、『偉大なる』の二つ名で呼ぶように語り継いでいる。

「帰りは、馬車にしましょうね。この馬は後で使用人にでも取りに入ってもらいましょう」
ちょっと過去に偉人のなした偉業について心を馳せている間に、ルイズがそんなことをヒカリに言っている。
その馬車の代金は、誰が払うんだろう……いや、男の僕がいるのにいくら実家がうちより金持だからといって女の子に払わせるわけにはいかないよな。
実家からの仕送りと、青銅の小乙女像(裸婦)シリーズを売りつけて稼いだお金で足りるだろうか。
でも、恥ずかしげに太股を押さえてひょこひょこ歩くヒカリと、心配そうに寄り添っているルイズの姿を見ているとなにかイケナイ妄想が……。
ふ、二人とも同じ部屋で……ひ、一つしか無いベッドで……毎晩毎晩、駄目だルイズの髪の色と同じ妄想が……は、鼻血が出そうだよ。

「ギーシュ様、どうかしたんですか? あ、あのっ、顔が赤いですけど。もしかして怒っています? 
わ、私のような根暗なゴミ虫の為に休日を台無しにされて、馬に乗っている間、身のほど知らずにもヒルのように抱きついた挙句、お股が痛いとかいって迷惑かけて……ご、ごめんなさい! 
私なんて、暗い穴倉の中で身動きもせずにじっとしているのが分相応ですよね! 調子に乗ってすみませんすみません。生まれてきてすみません」
唐突にネガティブモードに入るヒカリ。

「ギーシュ!」
ルイズは、ルイズで問答無用で呪文の詠唱を始めるしっ!

「怒ってない! 全然怒ってないよ! いや僕はヒカリみたいな可愛い娘が着飾るのを見るのが大好きだからねえっ! 楽しみだなぁ! あっ、ヒカリ喉乾いてないかい? 
ほら、あそこで売り子が飲み物を売っているよ! ルイズも、ほらっ、僕がおごるからねっ!」
そう言って僕は、町に行き来する人相手の飲み物売りの所に駆け寄った。
さすがに城下町だけあって、メイジと契約しているのだろう大きな氷を入れる保冷用の木箱が置いてある。
値段は高くなるけど氷も買おう。
ヒカリは、使い魔も知らないような田舎から来たようだから、飲み物に氷を入れるなんて初めてかもしれない。
ワイン……は、やめておいたほうがいいかな何となく。


「う~ん、今が旬なのはヴェルジュース(柑橘類の汁、すごく酸っぱい)かな。君、蜂蜜たっぷり、氷付き、三つで」
頼むと、あいよっ! という威勢の良い言葉と共に、売り子が木箱の氷を削ると手早くコップに入れ、蜂蜜をかけてその上からヴェルジュースを注ぐ。
ご丁寧に良くかき回す為の細い木製のマドラーまでついている。さすが都会は違うね。
ヒカリも最初は「私なんか、泥水で」とか言っていたけど(いい加減ワンパターンかつ、ルイズに睨まれるので勘弁して欲しい)、進められるとおそるおそる口をつけていた。やっぱり氷が珍しかったんだろう。

町の中に入っても、メイジも見たことが無いような田舎から来たヒカリは、僕らにとっては当たり前の光景にいちいち驚いてウイウイしい。
子供の頃、初めて兄に連れられて町を探検した記憶を思い出してしまうね。
僕もブルドンネ街の5メイルもある大通りを見たときはビックリしたっけ。
道端の露店を一つ一つ覗きこんで、そうそう、あの時はモンモランシーに初めてのプレゼントを買って。今思うと随分安物の子供向けのオモチャのような指輪だけど、凄く喜んでくれたなあ。

「色んなお店があるんですねぇ。あっ、あれはゲームで見たこと有ります。ポーションを売っているお店ですよね。あっちのは武器屋ですか?」
そういって、ヒカリが指差したのは……やっぱりヒカリは凄い田舎から来たんだなぁ。

「あっちの壜の形をしたのは、酒場の看板。でもこういう所の酒場はガラの悪い連中が集まるから入っちゃ駄目よ。あっちのバッテンは、衛士の詰め所。いざとなったらヴァリエールの名を出して助けを求めなさいね」
自分より背が高いヒカリに、ルイズが、お姉さんぶって得意げに解説をしている。

「ポーションとかは、路地裏に入ったところにピエモンの秘薬屋があるし、武器屋も近くにあったと思うわ。ヒカリ見たいの?」
「あっ、いえ、そんなこと全然無いです。毒消し草とか銅の剣とか、まったく必要ありませんし」
まあ、ヒカリにうかつに刃物を持たせると、護身の前に自分に使いそうで怖いしね。大体、裏路地は汚いし治安も悪いから僕も行きたくないのでほっとしたよ。

……なのになんでだろう、何かとりかえしのつかないことをしてしまっている感じがするのは。
黒猫ルイズにゃん? 
駄目だ、僕の頭はおかしくなってしまったのか? 
秘薬屋や武器屋に寄ったからって、ルイズがそんな格好をするなんてことあるはず無いじゃないか。まったくどうかしているよ。

「あっ、ヒカリ! あれよ、あれ! あの店!」
ルイズが目的の店を見つけて大きな声をあげて指差した。


ルイズが指差したのは、それなりに大きな服屋だ。
ルイズのような大公家の令嬢の正装を仕立るような高級店では無いけど、学院のメイド服なども卸している店だ。
中に入って、店員に話を聞くと思ったより高い。僕の手持ちのお金じゃ他に買うものを考えると、かなりギリギリだ。
というか、ルイズが無茶な注文をつけるからね……。

「ルイズさま、そんな素敵な服。わ、私には勿体ないです」
「何、言ってんの。ヒカリは、私の使い魔なのよ。ちゃんとした格好をする義務があるし、私にはさせる権利があるわ!」
ルイズが指した服は、確かにヒカリに似合っていたけど。

「ルイズ。今の僕の手持ちだと、足らないんだ。それにそこにあるのは見本で仕立てるのに時間が掛かるし、今日は別の物にしようじゃないか」
ルイズが、小さな女の子のようにむくれる。

「いいわよ。お金は、私が出す。私がプレゼントするの」
「だ、駄目ですよ。私なんかはボロボロになった布切れとかで十分ですからっ!」
ルイズとヒカリが押し問答を始める。

僕としては、可愛い女の子には、綺麗に着飾って欲しいんだけど――ボロボロのあちこちで、お肌が覗いて見える服というのも、それはそれで、物を大切にするという観点で一考の価値があるような。
でも、結局、間に入った店員の取り成しで何故かペアのドレスを買うことになった。
普段着を買いに来たはずなんだけどね。いや、ドレスを買うことに依存はないさ。
貴族の令嬢が着るにはかなりシンプルな、それゆえにそれを着る者の資質を選ぶタイプの作りだ。
ルイズなんか、オーダーメイド以外のドレスなんて着るのは初めてじゃないだろうか。
ドレスのサイズ合わせの為――本人の名誉のため、特にどこを直す必要があったのかは言わないで置こう――ルイズが店員に連れられて行く。

ヒカリと二人っきりだ。
目が合った。ヒカリが慌てて目線を下げる頬が見る間に紅葉していく、か、可愛い。
思わずクラっとしかけたけど、脳内のミニモンモンが怒って浮気心に芸術的な関節技をかけたおかげでなんとか自制する。
しばらく、沈黙が辺りを漂う。
気まずい。
何か会話、会話をしよう。


「それにしてもヒカリ。家族が心配しているんじゃないかい?」
って、しまった。
よりにもよって、なんてことを口にしてしまったんだ。
そんなの心配しているのに決まっているじゃないか。

「いえ、向こうには私の居場所なんてありませんでしたから。向こうでは、辛くて、悲しくて、寂しくて、そこから死んで逃げ出したいとばかり思っていました。でも」
ヒカリは、静かに首を振り。

「私は嬉しいんです。ここにきて、初めて誰かに必要だって言ってもらって」
その夢見るような瞳を見て、僕はなんか胸の奥がワサワサするのを感じた。

「私のような、なんの取り得も無い蛆虫にも劣る寄生虫の分際が、ルイズ様の過分なご好意をいただいて分不相応にも使い魔になって」
微笑みながら、

「だから、私は今、とても死にたいんですよ」
微笑みながらヒカリはそんなことを、まるで薔薇色の将来の夢を語るかのように口にする。

「今までは辛いことばかりで、でも今は幸せで、無くしたくないほどに幸せで、失いたくないほど幸せで、私なんかにはもったいないほど幸せで。だからこの幸せが失われる前に、今、幸せなまま死んでしまいたいです」
今が、人生で一番の幸せの絶頂だろうからと言うヒカリに、僕は何も言えなかった。

さっきまでフライで飛んでた気分が、一気にヴェルダンテの掘った穴の中へ落ち込んだのを感じる。
僕は、ヒカリがこれまでどんな人生を送ってきたのか知らないけれど、それは決して幸福なものでは無かったのだろう。
彼女の好意を知っていて、それに応えられない自分が、まるで世界で一番汚れた存在のように感じられる。
だからといって、彼女の気持ちを受け入れることは出来ないけれど、そんな偽りでは、誰にとっても不幸な結末しかまっていないと思うけど、
せめて、彼女が幸福な時間を当たり前として、受け取れるように。幸福な時間の終わりでは無く、延長を望むようになるまで心をささえる友達になりたいと、そう思った。

「自信持ちなさいよ! ヒカリは凄いのよ。もっともっと幸せになれるわよ!」
そういったのは、戻ってきたルイズだった。


「料理とか作れるしっ! 美味しいしっ!」
そりゃあ、自炊しない貴族の子女と違って、平民の年頃の娘なら大抵は、それなりに料理を作れると思うけど黙っていよう。
確かにあれから何度か食べたけど、ヒカリの手料理は美味しかった。多分、平均よりも。

「そんな、私不器用ですけど、お肉とか切るのは馴れてるだけで……ほら手首とか?」
それはやめたまえ。
おしゃれなリボンを巻いた手首を振りながら言われるとシャレにならないよ。

「冗談ですよ。本当は小動物を色々と……」
ふう、そうだよね。安心したよ。
僕も狩に連れて行ってもらったときに、捕まえたウサギを料理したことがあるよ。

「ぬいぐるみさんやお人形さんなんかは、悲鳴を上げないですから、ご近所の方も騒がないので安心です」
「そうそうヒカリは、藁を使ってお人形を作れるのよ!」
へえ、田舎の女の子は藁なんかで人形を作るのか、今度、ちゃんとした人形をプレゼントしてあげよう。

「いえ、あれは、まだ完成品じゃなくて……中に……髪の毛を入れないと、でも手に入らなくて……」
困ったような顔で、ヒカリが小声でつぶやく、田舎独特の健康祈願かなんかのおまじないだろうか。

「編み物も出来るのよね!」
ルイズがわがことのように、誇らしげに言う。

「は、はいっ。秋になっても生きていましたら、ルイズさまに何か編もうと。ギーシュさまにも、な、何か編みましょうか!? ついでに私の髪の毛を、い、いえっ、なんでもないです! 私なんかのっ」
いや、それまで生きている気になってくれるなら大歓迎だけど。でも何で髪の毛なんだろう。
また自虐モードに入りかけたヒカリを、ルイズが励ましているうちに店員がヒカリを呼んだ。
直すところはルイズほど無いけど、ついでに他の物も一式見て、予備もそろえるようルイズが言ったので多少は時間がかかるかな。

「しかし、ちょっと意外だよ。君がヒカリとあんなに仲良くなるなんて」
ルイズのことだから、自分が「平民」を呼び出したことを認めず、意地をはって動物の使い魔と同じ扱いしたりとか、いや、さすがにそれはないか。

「……あんたには、分からないわよ」
そう言ったルイズは、今まで見たことが無いほど暗い眼をしていた。


「『青銅』のギーシュ。普通に、当たり前に魔法を使えるあんたには、わたしの気持ちは、絶対にわからないわ。『ゼロ』なんて二つ名をつけられて、使用人たちにもバカにされて、でもね。

そんなことはどうだっていいのよ。

腹が立つけど、悪意には敵意で返せるわ。……善意で、心配されて同情されることに比べれば、そんなのは何でもないのよ。
子供の頃から母さまや姉さま方に言われてきたわ。なんで魔法が使えないのかしら、でも大丈夫、大きくなったら使えるようになるわ。今はまだコツが掴めないだけ、努力すればすぐ使えるようになるわよってね。
ねえ、知っている? わたしの姉、エレオノール姉さまも、ちい…カトレア姉さまも、婿をとらずにお嫁に行くのよ。普通に魔法を使えるから、大公家の正統を継げなくても、結婚相手が見つかるからよ。
『ゼロ』の出来損ないは、公爵家の家門つきでもないと結婚相手も見つからないだろうから、誰も魔法を使えないメイジの血なんて家に入れたくないだろうから、三女のわたしが公爵家を受け継ぐのよ。
それだけじゃないわ。姉さま方は、結婚の申し込みを受けても、婚約しても、結婚してはイケナイの。もしも子供が生まれたら、その子がわたしの継承を脅かすかもしれないから。
わたしが、学院を出て結婚して跡継ぎを生むまでは、どんな才能・家柄・美貌を持っていても姉さまは、どんな素敵な殿方とめぐり合っても結ばれることは出来ないのよ。
でも、そのことについて誰も責めないの。どうすればいいのよ。大好きな人たちに迷惑をかけながら、心配されて、生きていくつらさがわかる?
がんばれば、努力すれば、大丈夫って言われて、がんばったわよ、努力したわよ。
呪文書や魔道書を一字一句暗記するほど何度も読み返して、喉がかれるほど呪文を唱え続けて、手の皮が剥けて豆がつぶれるほど杖を振り続けて、これ以上どうすればいいのかわからないぐらいがんばったわよ。
ねえ、それでも駄目だったら、どうすればいいのよ。いつまで、どれだけ、努力すればいいのよ。
わたしね。母さまや父さま、姉さまが好きなのに、顔をあわせるのが嫌なの。優しい言葉をかけられのが、陰口の何倍も辛いの、大好きなのに、消えてしまえと心の中で思ってしまうの。
悪いのは、期待に応えられないわたしなのに、わたしはっ、期待を、信頼を、愛情を、わずらわしく思っているの、憎んでいるの。
苦しいわよ、辛いわよ、もう諦めてしまいたいわよ。このままずっと魔法を使えなかったらどうしようかと不安に思いながら、あきらめたほうがよっぽど楽だと思いながら、あきらめることも許されないの。
魔法を使えるように努力する限りは、わたしは未熟なメイジでいられるけれど、諦めてしまったら、ただの出来損ないになってしまうから。
わたしをどんなに心配してくれているか、愛してくれているか、知っているから。ずっとずっと、がんばり続けなきゃいけないのよ。
もしかしたら、今度は、次は、次の次は、次の次の次は、成功するかもしれない、そう思いながら、呪文を唱えて杖を振るの、その度にわたしがどんなに絶望してきたかわかる!?
わたしね夢を見るの。
ある日、赤ん坊のときに取り違えられた、『本物』のルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールが現れる夢。
美人で胸が大きくて、魔法が使える女の子。
母さまがその子に涙を流しながら抱きついて、父さまや姉さまたちがその様子を笑顔で見守っているの。
わたしね。その夢を見て、悲鳴を上げて飛び起きて、でも悲鳴をあげながらほっとしている自分もいるの。もう努力しないんでいいんだ。がんばらなくていいんだってね」

知らなかった。
ルイズが、そんなことを考えていたなんて。

魔法が使えないルイズが、他の誰よりも貴族である生き方に拘るのを見て、バカにしていたクラスメイト達を思い出す。
逆だ。
魔法が使えないからこそ、ルイズは、誰よりも貴族としての生き方をしなければならなかったんだ。


そして、そのせいで嫌われても、ルイズとっては、それこそ望むところだったのだろう。
魔法が使えなくても、公爵家の人間であるルイズと仲良くしようという人間はいくらでもいたはずだ。
でも、ルイズが求めていたのは敵意。
同情や、心配をされることこそ、耐え切れないほどの苦痛。

でもだからって、そんな生き方が辛くないわけがない。

「……ヒカリがね、言うの、この出会いこそが魔法だって。
ヒカリはね、初めてわたしが成功させた魔法で、それだけじゃなく、いてくれる存在そのものが魔法なの。
わたしのままのわたしを無条件に貴族として認めてくれる存在。
メイジとしての能力や家柄関係なしに、期待では無く、同情では無く、あるがままのわたしを受け入れてくれる存在。
それがどんなにありがたいか、あんたには想像もつかないでしょうね。
だから、もし、ヒカリを泣かしたら相手が誰であっても、私は許さないわ。
期待に押しつぶされそうになっていたわたしが、期待をして欲しいと、
求められるのに応えなければならないのでは無くて、わたしから応えたいから求めて欲しいと、
そう思った、初めての人なんだから」

ルイズが、そして親しくも無い僕に内面を打ち明けたのは、どうやら僕に釘を刺すためだったらしい。

僕としては、ヒカリとは(可愛いから、浮かれているときは、ときおり心がぐらつくけど)恋人同士になるつもりは無いし、もしつきあっても、ヒカリが……ルイズが、望むように幸せにしてあげられる自信は無い。
友達にはなりたいとは、友達として支えてあげたいとは、思っているけど。

だからと言って上手に、勘違いさせないで「友達」になるのも難しいよなぁ。
実は正直言って、好意を持ってくれている女の子を断った経験無いんだよね。モンモン以外は、思っていたのと違うとかいって自然に離れて言っちゃうし。
モンモンどうしているかな、はあ、気が重いよ。

そんなことを悩んで、考えていたのが良くなかったのか。
それから、戻ってきたヒカリを案内して、様々な日用品を馬車2台分も買い込みながら、モンモランシーにプレゼントを買うことをすっかり忘れていたことに気がついたのは学園の門をくぐった後だった。


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