あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロの使い魔~我は魔を断つ双剣なり~-19


「あ……は……ぁ…………かっはっ……はぁぁ……ぁぁぁあ……んぅッ!」
のたうつ。灼ける。全身を、裂く。痛み。
苛烈なまでの激痛、憎悪、還り、抉る。
斬られ、裂かれ、割れ、燃え、溶け、砕く。

全身が/精 神が/ 書が/              た呪詛=悪夢/

             亡 霊 が/返され   破壊された術式

破れた     斬られ・た        潰れ
    壊&れ 
                        !抉れ       燃え

見える。壊れ、た、あの傷が返って、肉を焼、く。

「うっ………ぐぅぁ……がっ……はっ……ぁぁ……ぅあああ……あぁぁぁ……!」

それはあらゆる(それ)はそうです。あれです。ますます寒く暑く辛くなる世界の中心半分
愉快辛苦痛烈開会です。知ってます私の彼は私にそれはその時知りましですか。はい、それらは
歩いて殴ります、知ってます。ですね、私は悪霊を得て、悪霊はあって、あるときを消します。
消した私、私、彼、それ、どれ、あれ、です。です。得ます、捨てます、捨てる時は、が見える
闇はいます。中に巣食って、司令をだす、守護者はです。悪です、%%&から着ます。着てるのは
初期から、後で、(もしく)は、あるます。また、だれが、そうなのです。そうであって、
知ってます。
回る時には、私で見て、中を覗くことで、静かななのです。共通は物質で、吸って、歩きます。
いますは、中に、アレです。呼びます、それは呼ぶことで蹴ります。囁くのはそれです。脳が
手を出して、(転んで、がデータになってあのころは、でと強制します)が言います。
どれがあの人であるかを潰れて呼びます。強制です。人形はゲートで見えないです。そうです。
あれはははは、$’$%%&で、が、君は、P++*GFで、☆でららららららららららら
でででえうyっはあはぐyふぁいぶち君とは、ウアskさbksstydq7いうぇぼx
そうであってこそ(CJDCU%Y的に、予測指導的にで、ある)ものが呼ぶあるのです。
いぐなああうbヴktびうbt、中にいる、いるイルイ瑠璃ルルるるいるるるるるるるるるるるる
私、あれはいるのでででえ、止めて、助けけけけえええええええええええええええええええ
ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ
ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ
ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ
えええええええええええ


「――――あああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!」

返された呪詛が、全身を切り刻んだ。血の代わりに、灼けるような激痛がフーケの身体を襲った。
いっそ血を流した方が楽になるのではないか、そう思うほどの激痛に、身を掻き抱く。
「うぅぅっ! うぁっ……あぁっ……がっ……ぐっ……うぅぅ……!」
叫ぶ/荒れ/狂う痛覚が、全身/魂を・麻痺・壊死させる。
動け・ず・路地裏の薄汚れた地面に倒れこむ。
「痛い……いたい……たい……いたいいたいいたいいたいいたいたいたいたいたいたいたい
 いらい……いらいぃ……いたい……いた……っ……ぁぁ……!」
赤子のように身体を丸め、身体を竦める。何度、痛みを口にしても、それが消える事はない。
体内で、返された呪詛が暴れる。皮膚の下を這うような蟲の感覚がおぞましい。
本来ならば理解すらできないはずのその事象を、フーケは脳に刻まれた情報で理解する。
身体を食い荒らされている、食い破られている、臓腑を咀嚼されている。
呪詛は一切の慈悲なく、フーケを苛む。
「――――っ!」
脳内に刻まれた【式】で強制的に痛覚を遮断する。式を選び出し、実行する。
呪詛を体外へ排出、精神的高揚状態を構築、血流安定、字祷子構成安定、肉体は一時的に賦活。
「ぐ、ふっ……うぅ……ぐぅ……っ! うぁ……うぅ……!」
痛覚の残滓を引きずりつつも、立ち上がる。胸中に宿る憤怒で己の肉体を操作する。
「そ……ぅさ。私は……あぁっ! あ、あ、アイツらを…………あいつらを……貴族を……!」
その瞳にあるは憎悪。全てを燃やし尽くさずにいられぬ闇色の炎。全てを奪われた女の、怨嗟。
フーケ、否、マチルダ・サウスゴータという女の持つ怒りがそこにはある。

――いや、ソレは本当に彼女=マチルダであったのだろうか

「あ……はは。そうさ……そうだった。私にゃ力があるんだ……。だから……だから…………さぁ」
双眸は天を仰ぐ。それはこの世を怨むような色を帯びている。→だが、それはホントウ?
「壊してやる……壊す……全部……あいつらを……。でも――――」
双眸に宿る色が変じた。言うなれば黒が紅に、青が赤に、緑が黄色に、汚濁した虹色へと変じた。
そこには、異界の、外道の智識が見せる姿があった。それは、あのヴァリエールの娘と
彼女の召喚した使い魔。書の持つ奇跡が幻視する異次元の光景。
「――あはっ☆」
その唇が唐突に薄い半月に歪んだ。無邪気に虫の手足をもぐ子供の酷薄な笑みが張り付いていた。
「なーんだ。なんだなんだなんダァ。それってばぁ、超KY邪魔邪魔チャンじゃなぁいのヨ☆
 殺す? あったりまえじゃなイ。邪魔するのって空気読めて無いって感じ? みたいな?
 じゃあ、やっぱりあの子達は、殺さないと駄目よねぇ?」
喜色に歪むその顔、そこには既に苦痛はなく、ただただ愉悦と快楽――そして、狂喜が在る。
「ふふっ……んぅっ……んぅっ。あはぁ……あははっ……はは……ぁ、んっ……あはっ」
上気し、紅く熟れた唇に舌が這う。身体を掻き抱く仕草は妖しく、艶やか。はだけた裾から
覗く太股へ指先が蛇の如く、蛆の如く這う。漏れる喘ぎは、悦楽に溺れていた。
「あ……はっ。じゃあ……んぁっ……どうすれば、良いかしら? あ、あ……あ、ある、ジャナイ。
 そ、そそうだわ、宝物庫、宝物庫。あそこ……んぅ、いっぱいいっぱいあるの。あら、ソウ!
 釣れる……んっ、かしら? つれるわヨン☆ そうカナ? そーゥYO!イイ、イイわぁ!
 アンタってばナイスアイデアだわぁ♪ ははっ……あははっ☆」
まるで道化師のようにフーケはくるくると踊りだす。袖を長く長く垂らして振り回す。
その姿がまるで彼女ではなく別の何かが乗り移っているように見えたのは、なぜか。
「はぁっ……ああん……んふふっ……あはっ。はは……んっ……くすっ……んぅ……」
誰も通らない路地裏に女の/道化師の笑い声/狂笑が。

夜が来る。トリステイン魔法学院の宿舎に宿る光はそこにある暗闇を和らげ、安息の時を約束する。
連なる安息の灯の一つ、ルイズの部屋の中はと言うと――
「…………死ぬる」
「ああ…………死んだ」
瀕死の状態の少年が二人、床にぶっ倒れていた。厨房で延々と皿を洗い続けたギーシュ、ホールで
女装させられたまま働かされた九朔、無銭飲食分働いたお陰でもうライフポイントはゼロだ。
「アンタ、馬鹿でしょ」
「でも、ダーリンってばかわいかったわぁ。アタシがヴァリエールの代わりにメイドさんで雇って
 あげたいくらいよ」
「そこ、ダーリン言うな。あと、勝負に負けたんだから部屋からとっととゲラウッ!」
「やぁねぇ、ヴァリエールったら。細かいことを気にしたらハゲるわよ? コッパゲ先生みたいに」
「だれがハゲるか!」
「自業自得」
頭上で繰り広げられるかしましい十字砲火に一言物申したい九朔だが、あの妖蛆と戦った後、再び
妖精亭に戻って働かされたのだ、おまけにルイズやキュルケ達に見られる羞恥プレイつきで。
もう、肉体疲労と精神疲労で身も心もヴォドヴォドだった。
「クザク…………耐えよう」
「ああ……」
突っ伏したまま、ギーシュと共になぐさめあう。
(しかし……)
そんな中、九朔は昼の事を思い出す。取り戻した記憶、巨大な蛆、血に宿る魔術の智識。
(虫食いの書物だな、まるで……)
今はまだ黒塗りにされたままの項【ペヱジ】を思う。それがペヱジとは気づかないままでも、
魂に刻まれたソレが九朔に妙な確信を与える。
(戦うたびに戻ってるのか、己【おれ】の記憶は)
一度目はギーシュとの戦い、二度目はあの妖蛆との戦い。確実に戻る智識【ちから】を感じる。
(だが、今はまだ何も言う必要はないか)
やかましく自分の仇敵だという少女と騒ぎあう自分の主を思う。自分を無力だと思っている彼女の
ことだ、下手な事を言って傷つける事になるのは明白。
この世界へ呼ばれてそこそこ日が経つが、実に分かりやすいルイズの性格はそういうところで
ありがたいものだった。
「こうなったら勝負よ! 今度こそぐうの音も出ないくらいにしてあげるわ!」
「あらぁ。貴族同士の決闘はご法度じゃなかったっけ?」
「け、決闘じゃないからいいのよ!」
そして、こういうところも。
「でも、それって言い方変えただけじゃなくて?」
「へ、へぇ……まま、負けるのが怖いのかしら?」
「別にぃ。昼間はこっちはこっちで色々立て込んでただけだったし……まあ、ヴァリエールが
 やりたいなら良いけど? ああ、でも、時間も遅いしちゃっちゃと終わってくれると嬉しいわ。
 ほら、ヴァリエールと違ってお肌のお手入れ大変だから♪」
にこにことからかい半分に挑発するキュルケにルイズの顔が一気に真っ赤になる。血圧無限大で
変身できそうだ。
「きぃぃぃぃ! それなら勝負よ、勝負! 外に出なさいツェプルストー!」
「仕方ないわねぇ、おこちゃまって。じゃ、お付き合いしてあげましょっか」
そういって、キュルケとルイズが部屋を出て行く。もちろん、ギーシュと九朔を放置して。
静かになった室内でタバサの本を捲る音だけがする。

「行ったようだね……」
「ああ……」
立ち上がり、ギーシュと九朔は床に腰を下ろした。
「いや、彼女達の喧嘩は毎度の事だが、よく飽きないものだ」
「お互い、なんだかんだで楽しんでるとしか思えん」
「そうだな」
うんうんと、九朔とギーシュは頷く。そして、そんな二人の後ろでルイズのベッドに腰掛ける
タバサは変わらず本を読んでいるばかり。
「しかし、タバサ。汝は行かなくて良いのか? キュルケは友達だろう?」
「そういえば。君はいつも彼女と行動しているな」
「見なくても結果は明白。行く必要がない。それよりも――」
言いながらタバサはほんのページをめくり、ちらりと九朔へと目を向けた。
「あなたに話がある」
「我か?」
特に心当たりがないのだが、と思う九朔。そして隣では驚愕の表情を浮かべるギーシュが。
「ク、クザク……君って奴は……なんという色おとこたわらばっ!」
最後まで言わせず顔面に裏拳を叩き込む。ある種パターンになっている気がしないでもない。
のびたままのギーシュを放置し、九朔は眼の前で読書を続けるタバサへ翡翠の瞳を向ける。
「で、話とは?」
「ここでは話せない」
そういって本を閉じ、のびたままのギーシュを指差す。
「ついてきて」
ベッドから降り窓へと向かうと、タバサは口笛を吹いた。そしてすぐさま、窓の外に一匹の竜が
現れる。
「シルフィードか」
「彼女に関係がある。乗って」
シルフィードの背に乗るタバサに誘われるがまま、九朔も一緒にその背に飛び移る。
「そういえば」
「何?」
「ギーシュは?」
「…………」
視線の先で気絶したままのギーシュ。幾らか間が空いたが、タバサは答えた。
「こうする」
『レビテーション』の魔法を手早くかけ、窓の外へとギーシュを運び、
「で?」
「部屋に」
部屋の窓へとシルフィードを向かわせると、そのままギーシュの体を放り込んだ。実に小気味
良い音を立てて室内をバウンドして転がり、停止するギーシュ。
そのまま生命活動まで停止いなければ良いのだが――
「もんもらんすぃ~……」
前言撤回、心配の必要すらなかったようだ。頭にたんこぶを作りながら鼻の下を伸ばすギーシュに
呆れつつ、九朔は前に座るタバサへ声をかけた。
「いくか」
「じゃあ上に――シルフィード」
「きゅい!」
そして、シルフィードの背に乗りはるか上空へと向かう。


見る見るうちに豆粒のようになる学院。広がる風景、眼下には夜の帳の中に燈る人の生活の灯が
ちらほらと見えるばかり。
「しかし、ここまで来る必要があるのか?」
声をかけた九朔へとタバサが振向く。青の瞳は変わらず感情の色を見せない。
「学院内は目がある。ディテクトマジックでも油断は出来ない」
「そうか。しかし、そこまで気を使わねばいけない話なのか?」
「その通り」
そういってタバサは頷く。

「少なくともシルフィードは韻竜、既に滅びたと思われる種族。その存在が露呈するのは余計な
 騒ぎを招く恐れがある。だから、貴方には彼女のことを黙っていて欲しい」
「別に構わぬが、またどうしてなのだ?」
「アカデミーに連れて行かれる可能性がある」
「アカデミー? なんだ、それは? その口ぶりからは、余りいい話ではないようだが」
「トリステイン王立直属の研究機関。あまり良い噂を聞かない場所」
そこまで言って、タバサがちらりとシルフィードへと目配せをした。
「様々な実験を行なう機関と聞く。魔法の実験では飽き足らず、希少な種族を捕獲し生体実験に
 用いたり、ばらばらに解剖するという噂もある」
一息で言い切るタバサ、それに絶句する九朔であったが、何よりもそれに一番衝撃を受けたのは……
「きゅ、きゅきゅきゅいきゅい~~~! お、おねえさま! シルフィそれ初耳の話なのね!」
シルフィードだった。さすがに後ろに乗せてる九朔とタバサを振り落とすほどではないが、相当に
驚いていた。というより怯えていた。
「ししし、信じられないのね! ややや、やっぱりお姉さまに召喚された時に話さなくて良かった!
 してたらシルフィはばらばらだったのね! いやー! シルフィは死ぬのいやー!
 もう話さないのね! 下でなんかぜ~~ったい話さないのね!」
「うるさい」
「あいたー!」
杖で頭を殴られ、鳴き声を上げるシルフィード。
「またぶったなのね! 両親にもぶたれたことないのに!」
「殴られもせずに一人前になったものはいない」
「し、シルフィは一人前どころか十人前だってへーきなのね!」
「……」
「……」
沈黙。ひゅー、という風の音が鳴るくらい寒い空気が流れた。
「きゅ、きゅい? おねえさまもクザクも何で黙るの?」
「あー……」
「別に何もない」
「き、気になるのね! なんかシルフィがすっごいお馬鹿さんみたいに聞こえるのね、その言い方!」
そして、再び沈黙。九朔とタバサは互いに顔を見合わせ、無言の内に頷く。
「なに、大丈夫だ。強く生きていけばいつか良い事もあろう」
「人生はまだ長い」
両者、どちらも声にこれといった感情はこもっていない。が、しかし、明らかに
「まあ仕方ない、シルフィードだし」的な響きが含まれていた。
「う、ううう~~~~~! 人をお馬鹿にしくさって二人ともシルフィの背中から落として――」

――ドクン

異質な音ならぬ音、三人の表情が一斉に変わった。そして全員がある一点へと視線を送る。
眼下、夜の暗闇の中で一際大きい灯を輝かすそれに――トリステイン魔法学院に。
微かな振動音が遥か下方から、大きな灯が揺れる。
「タバサッ!」
「シルフィード」
「りょうかいなのね!」
風を斬り、大気を裂き、翼を鋭角に大加速を行なう。引き剥がされぬよう九朔とタバサは身を屈め
必死にシルフィードの背に掴まる。天上の星のような大きさであった灯が、数える間もなく眼前で
明確な形を持った建造物に変じる。
そして――
「なんだ、あれは――!?」
九朔はその翡翠に見た。
学院の中心、塔に張り付くソレ。岩と汚濁した粘液質とを混ぜ合わせた皮膚を布で覆う歪な巨人。
夜の中にあっても灯に照らされたそれはおぞましいほど醜悪、有機と無機のヒトガタは吼える。

「あのようなゴーレムは初めて見る」
「きゅい~~!」
タバサの声とシルフィードの鳴き声を聞きながら九朔は下方を見る。学院に張り付いた巨人の
その姿、既視感<デジャヴュ>がある。
(我は、一度これをどこかで見たことがある……?)
頭の片隅で鳴り響く鐘の音がひどくうるさい。
見たことがある。それは、遥か昔に。遠い未来に。酷い矛盾が脳内でメビウスの輪を作る。
全身を掻き毟りたくなるような違和感、頭を割らんばかりの鐘の音に叫びそうになる。
だが――
「あ」
タバサの声に、現実へと引き戻された。覚醒する意識、こちらの様子を気づかれないよう、
再び下方へ視線を、翡翠の瞳を向ける。
そこに映るのは巨人の手が学院へと伸びる光景。そして、学院の壁へと触れ、壁が。

――腐り堕ちた。

そう表現するしかない。まるで草花の一生を早送りで見るようだった。溶け落ちた壁だったものは
液体とも個体とも付かない状態で地面へと落ち、その周囲すら腐らせた。腐臭が辺りに漂う。
「酷い匂い」
眉を微かに顰め、タバサが口と鼻をマントで押さえる。
「きゅい~~!」
それはシルフィードも同様で匂いが届かない位置まで距離を離す。だが、九朔は変わらず巨人を
見続けていた。そして、見た。巨人の中から現れるその影を。フードを被り、延ばした袖を垂らす
奇怪なその姿を。
「人……なのか?」
それは、夜の中でも目立つ派手な色合いの服装。まるで道化師のような格好。
その人影はゆっくりと、楽しげに、まるで見せ付けるように、右へ左へと踊りながら巨人の手を
伝って穴の開いた塔の中へと入っていく。
「恐らく、あの場所は宝物庫」
「宝物庫? じゃあ、あれは盗賊の類という事か?」
「まず、間違いなく。相手は『土くれのフーケ』と思われる」
そう言って人影の消えた穴へと視線を向けるタバサ。その視線の先から、先ほどの奇抜な服装を
した人物の姿が穴の中から、箱を片手に現れた。
「捕まえられぬのか?」
「無理。何故か分からないが、シルフィードが先ほどから怯えっぱなし。近づく事もできない」
「だが――――っ!?」
氷を流し込まれたような悪寒が九朔の全身を駆け巡った。腐臭を伴った粘着質の気配に肌が粟立つ。
邪悪な波動、それは確かに眼下から。翡翠の瞳がそれを見る。そこにいるモノを見る。
それは道化師の仮面。笑顔を貼り付けた、薄気味の悪い仮面。
ピエロのようなド派手な衣装と仕草と相まって、その不気味さが相乗される。
だが、それまで。
脇に挟んだ箱を抱え、道化師がこちらへ一礼する。そして同時、道化師は巨大な質量と共に
一瞬でその場から消えた。跡形もなく、まるで奇術のように。
「今のは……なんだったのだ」
今、先ほどまでそこにいたはずの巨大な質量の在ったその空間を見つめ九朔は呟く。
騒ぎに気づいた人々がようやく外に出てくるのをその視界に収めながら。

ルイズとキュルケはその光景を下から見ていた。勝負を始めようとした矢先の出来事だ。
20メイルはあろうかという巨体が突然底に現れた。少なくともトライアングル級以上にしかできない
芸当のそれ。だが、何故か、それが普通のゴーレムではないとルイズだけは思っていた。
理由は分からない。だが、あれは、【途方もなく危険な代物】だと、ルイズは識っていた。
「あれ、もしかして最近有名な『土くれのフーケ』かしらね……だとしたら、近づかない方が
 無難といったところね。ヴァリエール、離れましょ」
「…………」
「ねえ、ちょっと?」

どうして識っているのだろう。あれは、【ゴーレム】ではなくて【■械■】だなんて。
いや、あれはまだ【■械■】じゃない。だって、あれにはまだまだ【位階】が足りない。
アレを呼び出しているわけじゃない。【ゴーレム】を媒介に中途半端な【招喚】をしているだけ。
【■械■】を呼び出すには……必要なのは……

「ルイズ!」
「……え?」
気づくと、眼の前にツェプルストーの顔があった。何をしているんだという顔で、ルイズはキュルケ
の顔を見返す。
「驚くのは良いけど、ここでぼーっとするのはやめてよね。下手して踏まれたらこっちが寝覚め
 悪いでしょ。ほら、行くわよ!」
「え……うん」
腕を引っ張られるがまま、ルイズはゴーレムと距離を取る。だが、ルイズの瞳はソレから離れない。
自分が今何をしていたのか、ルイズはまだ気づいてはいない。
記憶は閉じられ、彼方へ。
今はまだその時ではないのだから。


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