あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

mission 02 「Don't be Afraid」


 剣を振るい、打ちのめす。

「はぁっ!」

 打ちのめされた男を即刻捨て置き、また別の一人の相手をする。
 周りの連中は自分の技量の数分の一程度だが、数が多い。気は抜けない。
 そこで、自分を狙う存在に気づいた。
 10メイルほど離れた場所で、矢をつがえた者がある。
 踏み込むのは到底間に合わず、間に合ったとしても周りの者がそれを阻むだろう。故に、アニエスは迷わず剣から放した左手を突き出す。

「ブリザド!」

 放たれた氷塊が強かに弓兵を打ち据え、反動で矢は明後日の方向に放たれた。

「め、メイジか!?」
「い、いや、杖を構えてないぞ!?」
「なら、え、エルフだってのか!」

 恐怖に引きつる顔の連中は皆盗賊団で、この山を根城にしているこいつらを討伐することが今回の仕事だった。
 自身の魔法に盗賊が浮き足立ったところで、再び左手をかざす。

「サンダラ!」

 完全に逃げ腰となった者達を蹴散らすのは難しくなく、程なく大半の者がアニエスの剣や魔法に倒れるかこの一帯から逃げ出していた。

「っふぅ……」

 剣を鞘に戻して軽く汗を拭う。こうして武具を纏った連中を相手にすると、やはり剣の消耗が激しい。今回は特に念入りに研いでおかねばなと考える。

「無事だったか」

 縄で巻かれた男を引きずりながらスコールが現れる。

『ひゅー、流石だぜアニエスさん。全部のしちまいやがった』

 今日スコールに『接続』しているのはゼル・ディンだ。

「ああ、当たり前だ。お前から教えられた擬似魔法もある。こんな奴ら相手に遅れは取らない」
「だが、あんたはジャンクションはしてない……俺程身体能力は高くないはずだ」

 ジャンクションによる魔力の底上げがなければ、擬似魔法はそこまでの威力を得られない。それ故にガルバディア、エスタ両軍は擬似魔法に頼らず、戦闘を支援するための機動兵器をそれぞれ開発していたのだ。

「元々の私の技量があれば、G.F.のジャンクション無しの擬似魔法だけでもかなり戦えるだろうと言ったのは誰だ? レオンハート」

 しかし、それでも一応遠距離攻撃の出来る魔法は歩兵用の銃火器に匹敵する役割を担うことも出来る
 スコール達の世界では特筆する程の力ではないが、ハルケギニアでは十二分な力と言える。
 そして何よりも、遠距離攻撃を使っても手は他の武器を持っていられるというのは、何よりも得難いメリットと言えた。

「……悪かった。あんたの技量を疑って」

しぶしぶといった風に謝罪を口にする。

「それで、魔法の消耗は」
「ブリザドが二発に、サンダラが五発だ」
(ブリザドに、サンダラ……か)

 何か思考を深めるスコール。

『ん? その二つがどうかしたのか、スコール?』

 だがその思考は意識の表層に現れることはなかったため、ゼルが読み取れないままスコールは平素の思考に立ち返った。

「わかった。ケツァクウァトル、中クラス魔法精製」

 アニエスがストックしているサンダーがサンダラに昇華されていく。

「こいつからブリザドもサンダーもドロー出来る。取れるだけ取っておけ」

 盗賊の頭目を縛っている縄を軽く掲げながら言うと、そうさせてもらう、とアニエスは頭目からドローを開始した。


 二週間前、スコールはアニエスに擬似魔法理論、ジャンクションシステムなどを全て教え、その指導も行った。だが、アニエスは頑なにG.F.のジャンクションは行わないとしていた。

「記憶を、失うかも知れないんだろう。ジャンクションとは。ならば私は、ジャンクションはしない」
 どうやら、是が非にも忘れたくない事があるらしかった。


 依頼主から報酬を受け取って、ついでに近場の領主に頭目を突き出して報奨金を受け取った帰り道。
 以前から気になっていたんだが、とアニエスが尋ねてきた。

「その剣、銘はライオンハートと言ったな? お前の家名と似ているが、何かのゲン担ぎか?」
『そういや……お前はラグナ大統領と名字が違うよな』

 アニエスの問いに、スコールはゆっくりと口を開いた。

「いや、元々はこいつの名前だったのが、俺に与えられたらしい」

 と、軽く柄を叩く。
 考えてみればおかしな話だったのだ。
 孤児院に引き取られたときのスコールはまだ幼く、名前など名乗れるはずがないが、一緒に来た義姉のエルオーネはちゃんと名前だって言えた。
 それならばスコールの名前だってレウァール姓でなければおかしい。母親であるレインの墓にはレイン・レウァールと刻まれているのだから。
 それを変えたのはイデア・クレイマーだった。
 エルオーネが狙われていたことを知ったクレイマー夫妻は、エルオーネを白い船に乗せて脱出させた。だが、それでは同じ姓を持つスコールが目立ち、エルオーネを捕まえるためにスコールが利用されてしまうかも知れない。
 それを恐れたが故に、スコールからレウァール姓を消し、そして

「ママ先生……孤児院の人に、ライオンハート……俺たちの言葉で『獅子の心』という意味のこいつから名前がつけられた」

 おそらく、あの時間圧縮現象の最中僅かな邂逅を果たした自分のことを過去のイデアは覚えていたのだろう。そして、アルティミシアに対抗するためにガンブレードを抜いたことも。
 それ故に、ガンブレードの中でも最も最良の出来と言われるライオンハートの名前を想起したのかもしれない。

「獅子の心……か。なかなか勇ましい名前だな」

 アニエスの感想は、これは……

「獅子を……ライオンを知っているのか?」
「? そりゃあ知っている。本物は見たことがないが、ライオンだろう? どこかの貴族だったかは、家紋にライオンの意匠を使っていたと思うが」
(この世界……ライオンも居るのか)

 馬や牛を見かけたからもしやと思ったのだが。

『ああ、そういやさっきの村に居たよな。あれはおっどろいたぜ』
(もしかしたら、ああいった動物は想像上のものじゃなくこちら側で誰かが見たのを書いたのかも知れないな)
「おかしな奴だな」
「いや、俺たちのところではライオンはあまり知られていなかったんだ。だから、少し驚いただけだ」
「ライオンがなぁ……」

 不思議そうにアニエスが呟く。

「俺からも一つ聞いて良いか」
「何だ?」
「あんた……火が嫌いなのか?」
「えっ?」


 驚いた様子でアニエスがスコールを見上げる。

「ファイア系の魔法をあんたが使った覚えがほとんど無い。練習で最初の一、二回ぐらいじゃないのか」
「そう……か? ……そうか」

 スコールの言葉に、いくらかショックを受けた様子で、進行方向に目線を戻す。

「……アニエス?」

 黙り込んでしまったアニエスに声をかける。

「……すまん……確かに、私は火を嫌っているのだと思う。無意識のうちに……」
「何か、理由があるのか?」

 こくり、と思い詰めた表情で頷く。

「力になれるかは判らないが……話は聞いてやれる。無理に聞こうとまでは思わないが……」

 以前、キスティスに悩みを相談されたときには、話を聞いてくれるだけで良いという彼女の言葉に「壁とでも話してろよ」と切って捨ててしまったスコールだが、今は判る。誰かに聞いて貰えるだけで気分が楽になることはあるのだと。

『スコール……お前って嫌な奴だったんだな……』

 新事実を知ったゼルの言葉は、もちろんスコールには聞こえなかったが。

「……すまん……お前のことを信頼していないわけではないが……私の方でまだ整理が付いていない。話せん」

 苦しそうにひねり出した言葉に、スコールは首を振る。

「いや、いい……俺だってまだあんたに話してないことはいくらでもある。人ってそんなもんだろう。お互いを理解するのに、すごい時間がかかるもんだ」
「ありがとう……」

 礼を述べるアニエスに、軽く頷き返した。気にするな、という気持ちを込めて。


 馴染みの酒場で、馴染みの情報屋に声を掛ける。

「おう、アニエスか。盗賊退治、ご苦労さん」

 ちなみに、この男からはライブラがドロー出来た。おそらく情報を扱う職業故だろう
 使った日には、彼が後ろを向いたときなどにこっそりとドローさせてもらっている。

「ああ、それで何かいい話はあるか?」
「おう、何でも例の土くれのフーケがまた現れたって話だ。それも、魔法学院の宝物庫に忍び込んだっていうから驚きだぜ」
「土くれのフーケ?」
「ああ、レオンはしらねぇか」

 ざんばら髪を掻きながら、情報屋が説明してくれる。

「土くれのフーケってのは、メイジの怪盗でな。泥棒らしく忍び込むこともあれば、時として土くれの二つ名に相応しい、土で出来たとんでもなくでかいゴーレムを駆使することもある奴なんだ。土のトライアングルか、さもなきゃスクウェアだって言われてる」
「スクウェア……」

 初めて聞いたときからどことなく心惹かれる単語だ。

『メタだって……』
「面白い話ではあるがな……私たちは傭兵であって賞金稼ぎじゃない。それはパスだ」
「まぁ、そう言うだろうとは思ってたよ……あんたらならフーケも相手に出来る思ったんだがな」

 少しつまらなさそうに情報屋は呟く。

「最近じゃ名前も売れてきたんだぜ?凄腕の傭兵タッグなのに、任務の難易度の割に低料金で仕事を受けてくれるってな」
「低料金で受けるのは、私たちが二人だけだからだし、どんな仕事も受けるのは……」

 ニッとイタズラっぽい笑みを浮かべながらアニエスは呟く。

「私たちが強いからだろう」
「ははっ!流石、傭兵メイジともなれば言うことが違うね!」
「間違えるんじゃない。先住のメイジは私じゃないぞ?」

 と、スコールを指し示す。

「おやぁ? 何でも、あんたがメイジになったって話も、ちらほら聞くが?」

 無精髭が生えている顎を撫でさすりながら、情報屋が尋ねる。

「栓のない噂だ」

 ふん、とそっぽを向きながらアニエスは相手にしないポーズを取る。
 擬似魔法のことを黙っているように言ったのは、スコールだ。
 貴族とメイジの関連性については、魔法学院の教師から聞いていたが、その貴族が6000年もの間支配者をやっていることを聞いて、スコールは危機感を抱いた。


 系統魔法が多大な恩恵を人類にもたらしたことは間違いないだろうが、それと共に特権階級となった者達が存在するのだ。
 貴族の全てが傲慢で、強圧的だとは思わないが、そうでない貴族ばかりだったとは到底考えられない
 人間とはえてしてそういうものだ。権力を持てば、心の弱い者程歪んでいく。
 そして、現在の平民達の中にそうした特権階級に対し敵愾心を抱いている者が居ないとも限らない
 もし、そうした輩が擬似魔法を主力とする戦闘部隊を作れば、ハルケギニアは戦乱の世に落ち込む。
 実のところジャンクションしていない擬似魔法は、先住魔法に劣ると言われている系統魔法にも及ばない力しか発揮出来ない。
 だが、問題なのはその威力ではなく数である。
 メイジよりも、非メイジの方が、その数は圧倒的に多い
 それが逆ならば、その力のベクトルは支配ではなく排除に向かっていただろうが、今はそこは関係ない。
 これまでは系統魔法という圧倒的な力がその均衡を保っていたが、擬似魔法によってその力の差は圧倒的とまでは言えなくなってしまう。
 その革命を恐れるが故の、スコールからの提案であった。
 擬似魔法は確かに誰でも使えるが、戦闘にしか使えない。様々な物を生み出す力のある系統魔法を駆逐することにも繋がるメイジの排除など起きるのか、
 とスコールの提案をアニエスは疑問視したのだが、世の中の人全部が全部アニエス程冷静に物を見ることはできないのだと、スコールはそれを否定していた。
 結局、情報屋もそれ以上探ろうとはせず、今回は海岸付近の村が海賊の被害に悩んでいるらしいと言う情報を買って終えた。


 翌朝、海岸へ向かう準備の途中スコールは本屋に立ち寄った。

「……どうだ、目当ての本は見つかったか」
「いや、それらしいものは見あたらない」

 首を振りながら、外で待っていたアニエスに告げる。
 アニエスにはよくわからないが、何でもスコールの故郷に関しての文献を捜しているらしい。

「まぁ、そう簡単に見つかるモノでもないだろう。ハルケギニアに一般的に出回っている地図には、お前の故郷……バラムという島も描かれていないのだし」
「そうだな……」

 しかし何故、故郷に関しての本が見つからないと言うだけで、こんなにも物悲しい顔をこの男はするのだろう、と疑問は残った。

(これでは獅子と言うより子猫だな)

 なんて、少し可愛い想像をしてみながら。



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