あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

凄絶な使い魔‐07


第七話 「凄絶なルイズ」

 自分の部屋のドアをたたき壊す勢いで開け放つと、ルイズの目に飛び込んできたのは、
 先日使い魔となった元親、そしてキュルケの姿だった。
 元親は使用人から借り受けたシャツとズボンを身につけているが、シャツのボタンが止められていない。
 その開いたシャツのボタンをキュルケが留めてあげている時にルイズが現れたのだ。

 「あらルイズおかえり」
 「ななな何がおかえりよ、キュルケあんた、一体なにやってるのよ!!」

 烈火の如く怒鳴り散らすルイズに、キュルケはやれやれと言った風に肩をすくめる。

 「別にぃ、彼がボタンの止め方を知らなかったから、教えてあげただけよ、ねぇ」
 「ああ……、こちらの服の着方を俺は知らん」
 「そんな事、私が教えてあげるわよ!、そんな事よりなんで私の部屋にツェルプストーがいるのよ!」

 私の使い魔がツェルプストーの女といちゃついてる、しかも私の部屋で!!
 その事について当の使い魔は、これほど主人が腹を立てているにもかかわらず、主の側に立たないで
仇敵を弁護するような発言までして!!

 「チョーソカベ、あんたの主人は誰?」
 「ルイズ……、お前だ」
 「そう、ならばその女をさっさと、私の部屋から追い出しなさい、今スグにね」

メラメラと怒りに燃える目をキュルケに向けながら、ルイズは元親にそう命じる。

 「はいはい、出ていくわよ、……それじゃ~またね元親!」
 「どうやら、もう来ない方がよさそうだがな」

 腕組しながらそういってキュルケを部屋の外に出すと、ドアを閉める。

 「チョーソカベ、ちょっとこっちに座りなさい!」

 キュルケが消えた後はルイズの怒りは元親へと向けられるようだ。
 目を三角にしたルイズを見て、思わずため息が漏れる。

 「よほど……、仲が悪いらしい」


 それから、ルイズの説教が始まった。
 ヴァリエールとツェルプストーの確執から始まった話は、キュルケの学院での素行や男癖の悪さ、
そして、いままで受けた細かな厭味まで、延々と続きそうな話だった。
 結局、朝の講義までの時間がない事を思い出し、残りは授業が終わってからという事で、とりあえず終了した。

 「とにかく、絶対ツェルプストーの女とは仲良くしちゃダメなんだから!」
 「先祖代々からの恨み辛みか……、キュルケ自身はそれほど気にかけてはいなかったと思ったがな」

 そう呟いた元親の声はルイズには聞こえなかったのは幸いだ、ルイズは急いで教室へと向かって走った。

 「早く来なさい、チョーソカベ、使い魔は主人と一緒にいなきゃだめなのよ」
 「まるで……小姓か側役だな」

 今更ながら、子供のようなルイズに従っている自分が不思議な元親であった。
 反骨こそが自分の精神の柱と思っていたのだが、この少女の言う事をなぜか聞いてしまう……、
 家康を討った後、その喪失感で心が弱くなったのか……、考えても分からない気持ちの変化に元親は
奇妙な感覚を覚えていた。


 教室にはいると、ルイズと元親に生徒の視線が一斉に集中した。
 特に元親は、楽器を片手に、教室の全メイジの視線が集中する中を悠然と歩いていく、その立ち振る舞いは、
とても平民の様には見えなかった。
 ルイズは、前の席に座ると、隣に元親を座らせた。

 「おい、ルイズ、なに平民を貴族の席に座らせてるんだよ、床に座らせろよ」

 後ろから声が飛んだ。

 「うるさい、「風っぴき」、彼の身分は私が保証する準貴族よ、この椅子に座る事に何の問題もないわ」
 「準貴族?シュヴァリエの勲章をそいつが持ってるのか?」
 「彼は召還される前までは、他国の将軍だった人よ、その彼を床に座らせるなんて、トリスティン貴族の
面子にかかわる問題だわ」

 そのルイズの発言で、教室はちょっとした騒然とした様相になった。
 元親の態度を横柄だと言う者、それに対し、でも他国の身分のある人物なら当然のじゃないか?という者、
 どう考えても役者か楽師だろという者、
 別にどちらでも構わないけど、男は顔よね~と大半の女子、
 ……気にいらねぇと一部の男子。

 そんな中、女性教師が教室へと入ってくると、騒ぎは一応おさまった。

 「皆さん、春の使い魔召還は大成功の様ですね、このシュヴルーズはこの時期皆さんが召喚した様々な
使い魔たちを見るのが楽しみなのですよ」

 そう言って教室の使い魔たちを見渡す中年の女メイジは、ヴァリエールの横の座る男性に目をとめた。

 「そういえば、ミス・ヴァリエールは少し変わった使い魔を召喚したようですね」
 「はい、…ですがチョーソカベは」
 「ええ、彼の事についてはオールドオスマンからの言付けられています、授業を妨害しないのであれば、そこに座る事を認めます」

 シュヴルーズの言葉にまた教室がどよめいたが、静かにさせるために数人の口に粘土を張り付けて、授業は始められた。

 やはり、この世界は何でもありだな
 魔法の授業を眺めながら元親はそう思った。
 これほど簡単に唯の石ころを金属に変える事が出来るなら、七日七晩炉を燃やし続け、砂鉄を放りこみながら
鉄を作り出す元親の知る製鉄は明らかに効率が悪い。

 メイジの格によって、作れる金属が決まっているようだが、それでも鉛玉程度なら無数に作り出せるに違いない。
 信長が作った3千丁の鉄砲隊、いや、兵すべてに鉄砲を持たせた軍もあるやもしれん。
 戦術にしても、空中を飛ぶだけで驚異だ、空からの敵に対して何が出来るだろうか……。
 そして、俺の想像もつかぬ兵器もあるはずだ……。
 あらためて、この世界は日本とは違いすぎると元親は思いなおした。
 そんな思いつめた表情の元親にルイズが小声で話しかけた。

 「どうしたの、真剣な顔して……」
 「いや、この世界の魔法について思い直していた、もし敵がメイジならば、ルイズを守る事も容易ではないな」
 「え、チョーソカベも、強力なマジックアイテムをもってるじゃない」

 そういうルイズに元親は首を振った。

 「一人、二人なら平気だろう、四、五人なら不意を突けば何とかなる、だが十を超えるメイジをどう相手をするかだな」
 「メイジ十人って、そんな状況って有るかしら……」

 元親が想定した状況を考えていると、シュヴルーズの声がルイズに飛んできた。

 「ミス・ヴァリエール、私語は慎みなさい」
 「は、はい」
 「そうですね、せっかくですから、貴方に前に出て錬金を実践してもらいましょう」

 にこやかにシュヴルーズはルイズを指名した。

 「わ、私ですか?」
 「そうですよ、さ、前へ」

 この後の自分の運命を知らない中年女教師はルイズを手招いた。

 「先生、危険ですわ…、やめた方がいいと思いますけど」

 ルイズが逡巡していると、後ろから聞き覚えのある声が響いた。
 元親は声の方へ視線を向けると、キュルケが真剣な表情で訴えかけていた。
 あらん限りの言葉で、女性教師に気持ちを変えさせようと熱心に説いた。
 そして、同時にその情熱は、彼女の属性が示すように、ルイズのやる気という導火線に火をつけたのだった。
 それは教室が爆風で吹き飛ばされる一分前の出来事だった。


 教室には二人、ルイズと元親だけが残っていた。
 窓はすべて割れ、教室はルイズの魔法の洗礼を受け、見るも無残な状態だ。
 ミス・シュヴルーズは爆心地近くにいた為、衝撃で黒板に叩きつけられ、そのまま気絶。
 爆発のショックで暴れ出したその他の使い魔たちの騒動が、終わるころ、その他の生徒から口々に「ゼロのルイズ」
という言葉を投げかけられ、その間、ルイズは悔しそうに下を向いていた。
 その後、失神から回復したシュヴルーズは医務室に連れて行かれる前に、この教室の掃除をルイズに命じたのであった。

 残骸の中でルイズは気落ちした様にうつむいていた。
 元親はルイズのそんな様子をしばし眺めていたが、ポツリと語りかけてきた。

 「……お前に怪我はないのか?」
 「……別に無いわ」

 そうか、と呟くと元親は瓦礫を撤去しはじめた。
 細身の体だが、筋肉質な元親は見た目よりもはるかに筋力がある。
 大きな机の残骸などを次々に片付け始める。

 「チョーソカベ……、私……いつもこうなの、……魔法を使うと必ず爆発しちゃうの」
 「そうか……、理由は分からないのか?」

 ルイズは力なく首を振る。

 「今まで魔法が一度も成功したことがないの、だから私の二つ名はゼロ、ゼロのルイズなの」
 「さっき言われたのはそれか」

 力なく頷くルイズ。

 「貴方を召喚したのが初めて成功した魔法、そして使い魔として契約したのが、その次に成功した魔法、
フフ、……思えば、あの後ファイアーボールを唱えて失敗してたっけ」

 ルイズの胸中には希望があった。
 元親を得て、これから変わる自分の未来への希望が。
 希望があった分、反動も大きい、突き付けられた現実は彼女により深いショックを与えたのだった。


 べべべッッッん

 教室に蝙蝠髑髏の音色が鳴り響いた。
 ルイズが顔をあげて振り返ると、教室の最上段、そこに積み上げた瓦礫の上に元親が立ち、三味線を掻きならしている。
 それは聞きなれない音色だが力強く、悲しさ、優しさ、怒り、喜び、全ての感情が元親の三味線によって
表現されているようにルイズには感じられた。
 元親が力強く弦を弾く度に、蝙蝠髑髏から炸裂する音の球が無数に吐き出され、教室を漂う。
 学長室で脅された時は、恐怖で仕方なかった音の球が、いまのルイズの目には元親が立つ瓦礫の山から舞い降りてくる
光の球のように、とても美しく映った。

「……なんて、綺麗なの」

 窓からの光をバックに無我夢中で音を紡ぎだす元親をルイズはとても美しいと思った。

 最後に激しい旋律を奏でると、元親の演奏は終わった。
 教室の中は元親が作り出した音の球で溢れんばかりだ。
 他の誰にも見る事は出来ない、ルイズと元親だけにみえる幻想風景。
 淡く溶けるように、音の球が消滅していくのを、手を伸ばしながらルイズは見つめていた。

 「ルイズ……」

 教室に元親の声が静かに、しかし力強く響く。

 「俺には魔法の事はわからん、お前がありとあらゆる努力の末、それでも魔法を成功させる事が出来ないのなら、
それはお前の運命なのだろう」

元親から発せられた言葉は、ルイズの想像したやさしくいたわる様な言葉ではなかった。

 「だが抗え、……たとえその身が砕け散り、影すら無くそうとも意志ある限り抗い続けろ」
 「抗う……」
 「そして凄絶に自らを意志し続けろ、他の誰でもない自らの存在を」
 「私の存在……」
 「ルイズ、上ってこい」
 すり鉢状の教室の最上段に積み上げられた瓦礫の上で元親はルイズに言い放つ。
 ルイズは最初半ばおぼつかない足取りで歩きはじめ、そして、だんだんと力強く、元親のもとへと駆け上がる。

 「来たわよ、チョーソカベ……」
 「ルイズ、振り返ってみろ」

 元親に言われて教室の最も高い位置から全てを見渡す。
 それは凄惨な教室の風景、ルイズによって一瞬で破壊された教室。
 しばらく呆然としていたルイズだったが、彼女は元親が何を見せたかったのか理解した。
 フフフ……、元親の横でルイズが笑いだした。

 「ねぇ、チョーソカベ、私って……実は凄いんじゃない?あんな錬金でここまで教室全体をぶっとばしちゃうんだから!
あなたにこんな真似できる?」

 ルイズが肘で元親の脇をつつく。
 元親は薄く口元に笑みを浮かべる。
 彼の作戦は成功したようだった。

 「ゼロの二つ名を不名誉と言ったな……、俺の二つ名は「鳥無き島の蝙蝠」だ、かつて俺の島へと攻めてきた
魔王と呼ばれる男が、俺の事をそう蔑称した」
 「どういう意味?」
 「土佐には鳥がいないから蝙蝠ごときが空を飛んで増長できるといった意味だ」
 「何よそれ」

 ルイズは自分の事のように腹を立てた、それを穏やかに見つめながら元親はやさしくルイズの肩に手を置いた。

 「だがその魔王も土佐の蝙蝠がどれ程凶暴か、身を持って知ったがな……」
 「……じゃあ私をゼロと呼ぶ奴らも震えあがらせないとね!」
 「その時はなるたけ外でやれ、……片付けが容易ではないのでな」

 ルイズはひとしきり笑った後、瓦礫から降りると、自分から部屋の掃除を始めた。
 元親もまとめた残骸を外へと運び出す。
 二人が掃除が終わったのは昼休み前になってからだ、ルイズは元親を連れて食堂へと向かった。
 元親と一緒に昼食を取りたかったからである。


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