あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロと世界の破壊者-01

第1話「召喚、契約」


 ———ここはトリステイン魔法学院。

 多くの貴族の子息子女が在学し、メイジとして、貴族としての在り方を学ぶ魔法学校である。
 ここにはトリステインは元より、他国からの留学生も多く在籍しており、また多くの優秀なメイジを輩出した由緒正しき場所でもある。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール———」
 今日、ここでは毎年恒例春の使い魔召喚の儀式が執り行われていた。
 それは2年生への進学試験であると同時に一生を共にする使い魔を呼び出す大切な儀式であった。
「宇宙の果てのどこかにいる,私の僕よ———!」
 昼になってから魔法学院の中庭で行われていた儀式であったが、もう殆どの新2年生となる生徒が儀式を終わらせ、各々の使い魔と親交を深め合っていた。
 ———現在、召喚の呪文を唱えている桃色がかったブロンドの髪の少女、ルイズだけを除いて———
「神聖で、美しく、強く、雄々しく、気高い使い魔よ———!」
 儀式を初めて、もう何度目になるであろうか。
 何度もサモン・サーヴァントの呪文を唱えても使い魔は一向に召喚されず、巻き起こるのは無意味な爆発、爆発、また爆発。
 始めの内こそ「またゼロのルイズが失敗した!」と野次を飛ばして嘲笑っていた生徒達だったが十を超えた所で飽きがまわり、今では爆発が起こっても「またか」とぼやき「いい加減にしてくれ」とただただ呆れているだけとなっている。
「わたしは心より求めるわ———!」
 もしこのまま使い魔を召喚出来なければ、ルイズは確実に留年、落第である。
 そんな事になれば実家に強制送還され、永遠に籠の中の鳥にされる事は必死———そんな事は真っ平御免である。
 そう思うと、自然と呪文を紡ぐ言葉にも力が入る。
 すると今度こそ、次こそ、自分は立派な使い魔を召喚出来る———そんな根拠の無い自信が沸き起こってくる。
「我が導きに応えなさい!!」
 そして言葉を紡ぎ終えると同時に力強く杖を振り下ろす。
 と同時に"それ"は巻き起こった。

 『大』爆発であった。

 今までのものとは比較にならない程の巨大な爆発。
 轟く爆音が大地を激しく揺らし、巨大な爆煙が空へと舞い上がり、快晴だった空に一時的に影をさした。
 その爆心地の一番近くに居たルイズは爆風に吹っ飛ばされ、儀式を監督していたコルベールの足下まで転がる。
 その余りの巨大さに無視を決め込んでいた他の生徒達も思わずそちらの方に視線を向けた。
 突然起こった大爆発に驚いた一部の使い魔達がその場から逃げ去る。
 学院長室で優雅に煙管を銜えていた学院長のオールド・オスマンは突如起こった轟音に驚き、咽せて咳き込んでしまった。
 授業中だった他学年の生徒達も、学院に奉仕として仕えてる平民も、皆突如起こった巨大すぎる爆発音に、一体何事かとその爆心地である中庭に視線を集めた。
 やがて爆風は収まったものの未だに『ゴゴゴ…』と地響きがなり続けていた爆心地の近くでは、巨大な煙の柱の前でルイズはお尻を押さえながら呆然としていた。
「い、一体何が…」
 自分が引き起こした事態ではあるが、自分でも一体何がどうなっているのか全く理解出来なかった。
 これまで何度も魔法を失敗させ爆発を起こして来たルイズだったが、これほどまでの規模となる爆発は生涯で初めてだった。
「…あれ?」
 すると徐々に晴れてゆく煙の向こうから、何か巨大な影が見えて来た。
 ルイズの顔が自然と綻んでゆく。
「…やった…私、成功したんだ…!」
 それも影の大きさから判断するにかなりの巨体である。
 先程風竜を召喚した少女も居たが、明らかにそれよりも巨大な影。
 それに気付いた他の生徒達がにわかに騒ぎだす。「ゼロのルイズが何かとんでもないものを召喚した」と。
 その大きさから、未だ見ぬ煙の向こうの自分の使い魔への期待に胸を膨らませるルイズだった。
 しかし煙がだんだんと晴れてゆくにつれ期待一色だった表情が⇒怪訝⇒不安⇒そして絶望と変化してゆき、煙が完全に晴れた時点でルイズの顔は真っ青になっていた。

 ルイズが起こした爆発の中心地には、一軒の『家』が建っていた。

 貴族の屋敷と言うには小さいが、平民の家の中ではかなり立派な二階建ての家だ。
 壁面にはガラス越しに幾枚かの絵が飾られ、見た事も無い文字の看板が玄関口の前に置かれていた。
 が、どれだけ立派であろうと所詮は『家』なのだ。
「…あの…ミスタ・コルベール…」
 あまりの惨状に思わず隣に居たコルベールに助け舟を求める。が、コルベール自身も困惑した様子で目をまんまるにしていた。
 使い魔として召喚されるのは『生き物』である事が基本にして絶対条件で、風竜やサラマンダーはもとよりたとえ平民の少年が召喚されたとて前例が無いと言うだけでそれほど問題ではないのだが、しかし『家』である。生物ですら無い。
 『家』が丸ごと召喚されるなどコルベールが教員を始めてからこれまで———と言うかそもそも『家』が使い魔として召喚されたなどと言う話、聞いた事無い。
 たとえこの館の主が使い魔召喚に応じ召喚されたとしても、召喚されるなら家主だけであろう。
「…で、ではミス・ヴァリエール…コ、コントラクト・サーヴァントを行いたまえ…」
「…って、この家とですかぁっ!!?」
 反射的にルイズからツッコミが入る。
 どうのこうの言っていても仕方が無い。前例が無いのならば作るのみ。
 たとえ家でもサモン・サーヴァントに応えて召喚されたのだ。だとすればこれと契約するのが当然の流れである。
 とその旨をルイズに伝えるコルベールであるが、当然ルイズはそれを拒否する。
「冗談じゃありません!ミスタ・コルベール!やり直しを要求します!」
「ミス・ヴァリエール、あなたの気持ちは判るがそれは認められない。春の使い魔召喚の儀式はすべてにおいて優先する神聖なもの。たとえ家が召喚されたとしても、それを受け入れなければならないのだ」
「だからと言って家…家ですよ!?家なんて使い魔にしてどうするんですか!?これならまだ平民の少年を使い魔にした方がマシです!!」
 ルイズとコルベールの口論がヒートアップしてゆく。
 周囲の生徒達も一拍遅れて状況を把握したものの、「平民の家を召喚した!」と野次を飛ばすに飛ばせなかった。なにせ『家』である。幾ら何でも常識外れにも程がある。彼らを支配している感情は『驚き』と『困惑』に他ならない。
 そんな周囲の事など目にもくれず、ルイズはコルベールに召喚のやり直しを要求するが。幾らそれらしい理由を連ねても悉く却下、「神聖な儀式、やり直しは認められない」の一点張りである。
「ならせめて…せめて、あの家から最初に出て来たものを使い魔に———!」
 それはルイズの最後の譲歩だった。家なんかと契約するなんかより、家の住人を使い魔にした方が遥かにマシだ、と言う考えに至ったのだ。
 すると、そんな進言に呼応したかの様に、その家の扉がバタンと開かれ、そこから長身の男性が外に出て来た。
 扉が開いた音に気付いて振り返ったルイズと、その男性の視線が交錯した。

 外へ出るや士は一瞬固まった。
 何故か光写真館の周りを、同じ様な格好をした外人と思しき子供達が取り囲んでいたのだ。中には見た事も無い生物も居た。
 一瞬この世界のモンスターかとも思ったが、子供達に襲われている様子は無い。
 次にぐるりと周りを見渡す。
 何故か光写真館は周りを壁で囲まれた敷地のど真ん中に建っていた。
「ちょっと待ってください士くん」
「士!夏海ちゃん!」
 士が周囲の異常に頭を捻らせていると士を追って夏海とユウスケも外へと出てくる。
 そして二人とも同時に固まった。
「…あの、ここ、元の世界…じゃ、ない…ですよね…?」
 固まった身体から夏海は必死に声を絞り出す。
「あぁ、そうらしいな」
「…あの子達は…?もしかして、外人?てことは、ここは、外国?」
「かもしれん」
 今まで幾つもの世界を訪れたとは言え、基本的に日本から出た事は無かったので、それだけでも驚きである。
「あの子達と一緒に居るの、モンスターかな?…もしかしてこの世界も、キバの世界みたいに人間とモンスターとが共存してるとか?」
「さあな。まぁ少なくともあいつらに敵意は無さそうだ」
「…そう言えば士くん、今回は服が変わっていませんね?」
 すると夏海はいつも世界が変わると生じていた変化が今回は起こっていない事に気がついた。
 夏海の言葉で気がついたらしく、ユウスケも「本当だ」と相づちを打って士の姿を不思議そうに眺めた。
 これまで異世界を巡る毎に士はその世界で必要とされている職業・身分を与えられ服装も変更されるのだが、今回に限ってその変化が起こらず、士の姿は先程写真館を出る前と同じ姿のままであった。
「…って、今はそんな事を言ってる場合か?」
 士に言われ二人ははっとなる。が、沸き上がる疑問は尽きない。まったく現状が把握出来なかった。
「考えて判らなかったら、人に聞けばいい」
 そう言って士は子供達に交じって立っていた一人の中年男性に近付いて行った。

「…出て来ちゃった…」
 出て来た人物は3人。最初に出て来た長身で茶髪の男性。続いて出て来た黒髪で髪の長い女性と、その女性と一緒に出て来た黒髪の男性。三人とも随分と変わった恰好をしているが、どうやらただの平民のようだ。
 3人は一様に思わぬ場所に出て来た事で困惑している様子だった。まぁ無理も無いだろう。突然家の外が全く別のものに置き換わっているのだから。
 他の生徒達は家から人が出て来た事で声を上げたが、彼らが平民であると判ると、イコールルイズが召喚したのは平民と結果付け「さすがゼロのルイズだ」「最初は驚いたが平民しか召喚出来ないなんてゼロらしい」等と野次を飛ばし出す。
 ルイズも自分が平民を召喚したんだと理解し大きな溜息と同時に肩を落とした。それでももの言わぬ家と契約するよかマシか、と頭の隅っこで思いつつ。
 すると最初に出て来た長身の男性がこちらに近付いてくると、コルベールに話しかけた。
 どうやら見た目的に一番年上の彼がこの場の責任者であると判断した様子だ。
「Excuse me?」
 男性は突然ワケのわからない言葉を発した。これにはルイズもコルベールも首を傾げた。
「え?あ、あの、これは異国語…なのかな?」
 と、コルベールが困っていると、男性は一瞬「ん?」となって、
「なんだ、日本語通じるじゃないか」
 と、今度はルイズ達も理解出来る言葉で喋った。ルイズ達は『ニホン語?』と聞いた事無い単語に再び首を傾げた。
「まぁ良い。おいアンタ、ここは何処だ?」
 言葉が通じると判るや、男性はコルベールに対して不遜な態度で問い質した。
 平民の分際で何たる礼儀知らずと憤慨するルイズだったが、コルベールは何も気にする様子も無く問いに応える。
「ここはトリステイン魔法学院、君たちは春の使い魔召喚の儀式でこちらのミス・ヴァリエールに召喚されたのです」
「トリステイン?魔法?使い魔?」
 男性は明らかに困惑した様に首を傾げ、コルベールに示されたルイズを怪訝そうに眺める。
「士!何だって?」
 するとさっき一緒に出て来た男性と女性もこちらに近付いてくる。
 どうやら最初に出て来た男性の名はツカサと言うらしい。
「お前ら、トリステインって地名に聞き覚えはあるか?」
「トリステイン…ですか?」
 ツカサが二人に問いかけると女性は首を傾げ視線をすぐ後ろに居た男性へと向ける。男性も首を傾げる。
「トリステインも知らないなんて、アンタら何処の田舎もんよ?」
 と言うルイズだったが、ツカサはそれを無視して言葉を続けた。
「どうやらコイツらの言う魔法とやらで写真館ごとここに飛ばされて来た…らしい」
 そんなツカサの態度にルイズは少し機嫌を悪くする。
 もし先程の進言をコルベールが鵜呑みにするのであれば、ルイズはこのツカサと使い魔の契約を結ばねばならないのだ。
「何やら事態に困惑しているみたいですな。ですが起こってしまった事は仕方ありません。さあ、ミス・ヴァリエール、彼と契約を」
「…ってこのタイミングでぇっ!!?」
 これまでの話の流れをぶった切るような話運びに思わず突っ込まずにはいられないルイズであったが、コルベールは続ける。
「ミス・ヴァリエール、貴女は先程「最初にあの家から出て来た者となら契約する」と確かに言ったね。私も鬼ではない、物言わぬ家と契約しろ等と無理強いはしない。あなたにも選ぶ権利はあるからね」
 この禿、さっきの言葉しっかり鵜呑みにしやがっていた。
 ルイズは心の中で悪態をつきつつも冷静に事態を分析した。
 今自分の使い魔に出来る候補は4つ。家か、その家から出て来た3人の平民か。
 家は…まず真っ先に却下。あんなの使い魔として使えるワケが無い。
 ならば3人の平民…平民、と言う言葉の響きにげんなりする。
 男2人は体格も良いし、腕っ節も強そうだが、男である。自分のファーストキスをどちらかに与えなくてはいけないのかと考えると気が滅入る。婚約者のワルド様ともまだなのに…。
 なら女となら無効か?とも思ったが、使い魔とするには心許ない。
 などと迷っているとコルベールから「この試験を終わらせなければ進級出来ませんよ?」とのお達し。
 進級と言う単語を持ち出されてルイズの心は決まった。と言うか、もうヤケクソだ。
 ファーストキスなどと言う一時の気の迷いで一生を棒に振るってたまるか。そもそも使い魔との契約の儀式、これはノーカン、ノーカンだ!
 そしてルイズは目の前の長身の男、ツカサにキッと目を向ける。
「ねぇアンタ、ツカサって言ったわね。今すぐその場で屈みなさい」
「はぁ?何言ってんだいきなり」
「良いから屈みなさいって言ってんのよ!」
 相変わらず不遜な態度を取り続けるツカサに気を悪くしたルイズは服の裾を引っ張って無理矢理屈ませようとする。
 仕方なくツカサはその場で屈んでルイズと視線の高さを合わせる。
「これで良いのか?ガキンチョ」
 最期の単語に一瞬ピキッとなったがここは寛大な貴族の精神で我慢する。
 そしてルイズは左手をツカサの頬に添え、右手に杖を構える。
 一体何が起こるんだとツカサも、その後ろに居る男女も固唾を飲んで見守っている。
「アンタ、感謝しなさいよね。貴族にこんな事されるなんて、本当は一生無いんだから」
 ツカサの顔を目前にして、改めて見たら結構良い男かもと思ったら、ファーストキスを差し出す事への負い目が少しだけ和らぐ。
 そのままルイズはツカサの目の前で小さく杖を振るうとコントラクト・サーヴァントの呪文を口にした。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン、この者に祝福を与え、我の使い魔と為せ」
 言葉を言い終わると同時に、ルイズはツカサと唇を重ねた。
 ツカサは目を見開く。後ろの二人も絶句した。
 と、ルイズはいきなりツカサに突っ放される。
「い、いきなり何する!!?」
 ツカサはかなり動揺した様子で手の甲で唇を拭いながら後ずさっていた。
 あ、ちょっと可愛いかも、とルイズは自分もハンカチを取り出して自分の唇を拭いながら思った。
 すると、ツカサは突然胸を押さえて苦しみ出した。
「…くっ!な、なんだこの痛みは…!!」
「使い魔のルーンが刻まれているだけよ。少しだけ我慢なさい」
「使い魔ぁ…!?」
 傍らに居た男が心配そうにツカサの肩を擦っている。…あれ?女の人は何処行った?
 などとルイズが訝しく思っている内に痛みが引いたのか、ツカサは落ち着きを取り戻し始めた。
「サモン・サーヴァントは何回も失敗したが、コントラクト・サーヴァントはきちんと出来たね」
 傍らのコルベールが言う。
「何なんだ一体…」
 ツカサは自分に何が起こったのか確認する為上着を捲り胸を露にさせる。
 予想以上に肉付きの良い胸板を目にし、ルイズは少し顔を赤らめる。そこには言わずもがな使い魔のルーンが刻まれていた。
「ほぉ、これは珍しいルーンですね。スケッチさせてもらっても宜しいですかな?」
 と前置きはするがコルベールはツカサの許可を待たずにそのルーンのスケッチを始める。
「おい、俺に一体何をした?使い魔ってどういう事なんだ?」
 ツカサはコルベールにスケッチを続けさせたまま、ルイズに尋ねる。
 するとルイズは立ち上がり、「フッフッフ…」と含み笑いをすると、ビシッとツカサを指差した。
「これで今日からアンタは私の使い魔となったのよ!つまり私の手となり足となって働くのよ!判ったわね!この下僕!!」
 そう、高らかに言い放った。
 が、ツカサは「はぁ?」と呆れ返った。
「まさか…それがこの世界での士の役割…?」
 そう言ったのはツカサの肩を抱いていたもう一人の男。
 女性の方は、やっぱりいつの間にかその場からいなくなっていた。
「…アホらしい」
 ツカサは立ち上がって服装を整え直す。コルベールのスケッチが完了したのだ。
「さて、これで全員使い魔召喚の儀式は終わったね。では皆、教室に戻りなさい」
 そうコルベールが言うと周りに居た生徒達はそれぞれ『フライ』や『レビテーション』を唱え空を飛んで教室へと戻ってゆく。
 そんな様子に驚いて声を上げる、黒髪の平民。
「お、おい見ろよ士!子供が空飛んでってるぞ!」
「あぁ、どうやら、本当に魔法の世界に迷い込んだらしい」
 身体全身で驚きを表現する黒髪の男に対し、ツカサはと言うと妙に落ち着いていた。ルイズとしては黒髪の方が何故そんなに驚いているのかが不可解であったが。
 なんて二人を観察していると、コルベールがルイズに話しかけて来た。
「ミス・ヴァリエール。貴女は残りの授業は出なくて良いから、彼らに状況を説明しておきなさい。授業が終わったら私も後であの家に行くので」
「…判りました」
 そう言うコルベールの眼は何処かキラキラ光っていた。彼の頭に負けない程。
 コルベールにそう仰せ使わされたならば仕方が無い。正直気は進まないが彼らもかなり混乱している。状況説明が必要だろうとルイズも思い直した。何より少しでも早くツカサには使い魔としての自覚を持ってもらわねばならないのだし。
 それにあっちの事情も少しだけ気になった。
「と、言う訳でアンタ達にいろいろ説明してあげるから。立ち話もアレだしあっちの家に案内してよ、お茶くらいは出してくれるんでしょうね?あぁ、お茶菓子も忘れないでよ」
「…クソ生意気なガキだな」
 今日何度目かのピキッがルイズのこめかみを走った。
 どうやらこの使い魔は貴族に対する礼儀作法から教育し直さねばならないらしい、とルイズの中で教鞭が振るわれた。
 するともう一人の男がツカサの肩をポンポンと叩いてツカサを宥めた。
「まぁまぁそう剥れるな士。…えっと、ミスバリエールちゃん?」
「ルイズよ、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」
「ルイズ・フらんす…ルイズちゃんだね。俺はユウスケ、小野寺ユウスケだ。宜しく!」
 ユウスケと名乗った男はルイズに対して手を差し出す。握手を申し出ているのだ。
 が、ルイズはそれに応じず、冷ややかにユウスケが差し出した手を見つめている。貴族は易々と平民と握手などしないのだ。
 気まずい空気が流れ、たまらずユウスケが次の行動に移す。
「あ、あぁコイツは士…って、もう名前知ってるよね、門矢士。見た通りひねくれたヤツだけど悪いヤツじゃないから」
 そう言ってユウスケは士の肩を抱いて引き寄せる。士はと言うと、腕組みしたままルイズと眼を合わそうとしない。
「えぇ…っと、あぁ、お茶だったね。あそこは写真館だけど、コーヒーは格別だから!俺が保証する!」
「シャシン?」
 聞き慣れない言葉に、ルイズは首を傾げる。
「写真も知らないって…お前何処の田舎者だ?」
 さっきのお返しとばかりに言い放つ士。聞こえないふりしてしっかり聞こえてたのかコイツは。しかも根に持ってる。
 流石に我慢の限界とルイズは杖を握りしめ、制裁を加えてやろうと士にじりじりと詰め寄るが、それを静止させようとユウスケが間に入る。
「はいはいはいはいそれまで!ルイズちゃんも落ち着いて!士も、いい加減にしろよ!」
 仕方なく、ここはユウスケに免じて怒りを納めるルイズ。士は相変わらずそっぽを向いている。
 そしてユウスケが先導してルイズは自分が召喚した『家』へと案内される。
 するとその道すがら、思いも懸けず士の方からルイズに質問が投げかけられた。
「お前…『仮面ライダー』を知ってるか?」
「カメンライダー…?何よそれ?」
 突然自分の使い魔が発した謎の単語に思わず正直に応えてしまう。
 すぐにさっきの様に田舎者呼ばわりされると身構えたルイズだったが、士はそれっきり何も言わなかった。

 ———決定的だった。
 少なくともここのライダーは世間一般に認知されてない存在のようだ。いや、むしろ存在していない確率の方が高い。
 もしここがライダーの世界だとしたら、そのライダーを捜す所から始めなくてはならない。骨の折れる作業だ。
 いや、それでもまだ存在してくれるならまだマシな方だ。もしもここが仮面ライダーの存在しない世界だとしたら、士は、この世界で何をしろと言うのだ?
 そもそも、9つの世界は全て巡り終わった。にも関わらず、この10番目の世界に、『仮面ライダー』が存在しないかもしれない世界へ辿り着いた、その理由は———?
 士はふうと息を吐いた。
 いくら考えても、判らないものは判らない。なら考えても意味は無いと結論付けた。
 この世界で過ごしていれば、いつかその答えは見えてくる。今までだってそうだった。
 何も変わらない。こいつの使い魔とやらがこの世界での役割と言うのなら、その役割をこなすだけだ。今までの世界と同じように。




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