あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロのぽややん 5

back / top / next


「おーそーいー!」
 ルイズは食堂で、ワイン片手に管を巻いていた。
「なによあいつ、せっかく今度はここの料理を食べさせてあげようと思ったのに、
『あ、僕、ちょっと用事を済ませてくるから先に行ってて』
 て、別れてからどんくらい待たせる気よ!」
 苛立たしげにフォークをつかむと、手近にあった腸詰に突き立てた。
 その腸詰が、ちょっとあれなやつに似ているせいで、男子生徒の何人かが顔をしかめる。
 ルイズはそれを、躊躇なく噛み千切った。
「……ッッ!!」
 リアルに想像した男子が、股間を押さえてうずくまる。
 面白くなさそうに音をたてて咀嚼していると、なにやら後ろが騒がしい。
 ルイズは振り向くと、
「あ、いたいた。おーいルイズぅ」
 大きな銀のトレイを持って、手を振りながら近づいてくるアオを見て、
「ブッ!?」
 噴いた。

「ああ、あんた、なんて格好してるのよ!?」
「え、なんか変かな」
 顔を真っ赤にして怒鳴るルイズの前で、アオ、その場でくるりと一回転。
 それに合せてふりふりエプロンが揺れる。
 似合うを軽々と通り越して、その可憐さに周囲が息を呑むほどだった。
 ルイズはその姿に、女としてなんか負けた気がした。
「て、ちがーう!」
 その考えを振り払うかのように、ルイズが叫ぶ。

「食堂でそんな大声だしてたら、みんなに迷惑だよ」
「あ・ん・た・ね。誰のせいだと思ってるのよ!」
 アオ、首をかしげる。
 その姿とあいまって、ルイズは思わずよろけた。
 こいつ、わざとやってるんじゃないかしら。
 なんとか体を支えながら、埒もないことを考える。
「はい、イライラしている時には甘いものが一番だよ」
 アオはそう言って、持っていたトレイからパイを一切れつまみ出すと、ルイズの皿に盛った。
「なによ、これ」
「アップルパイですわ。アオさんが作ったんです。美味しいですよ」
 アオが答えるよりも早く、別のテーブルで同じようにパイを配っていたメイドが答えた。
「誰よ、あんた」
 何回か見たことある顔だが、名前は知らない。
「失礼しましたミス・ヴァリエール。私、ここでご奉仕させていただいているシエスタと申します」
「なに、シエスタ。これを作ったのがあいつってほんと?」
「はい、アオさんが今朝から準備していたんです」
 辺りを見回すと、他のメイドたちが配っているのも同じアップルパイだ。
「まさか、今配られてるデザートって全部」
「はい、アオさんが作りました。すごいんですよ、あのコック長のマルトーさんが、アオさんの腕をべた褒めしてたんですから」
「そ、そうなんだ」
 ルイズは冷や汗をかきながら、アップルパイを口に運ぶ。
「! 美味しい……」
 ルイズが嬉しそうにアップルパイを食べるところを見て、優しく微笑むアオ。
「材料とかいろいろ都合をつけてもらったお礼に、配膳の手伝いをしているんだ。ほんとは、すぐに君に届けたかったんだけど、ここって広いから。じゃ、僕は、残りを配ってくるよ」
「それでは失礼します」
 アオとシエスタは、再びデザートを配り始めた。
 アオが通った辺りから、黄色い声が上がる。アオの姿に興奮した女生徒たちが騒ぎ出しているのだ。隠れながら窺うように見て、顔を火照らせた生徒の中に、男もいるのは気のせいだろうか。
 ほんと、なんなのあいつ。
 今更ながら、ルイズは思った。

 さて、それからちょっと時間が経過した後。
「ギーシュさま……その香水は、もしやミス・モンモランシーの」
「ケ、ケティ!?」
 気障なメイジことギーシュが、ピンチだった。まあ例によって、二股がばれたのだが。
「よかった」
 ギーシュが言い訳するよりも早く、ケティが手を叩いて喜んだ。
「はい?」
「それではミス・モンモランシーとお幸せに。さよならギーシュさま」
 唖然とするギーシュを尻目に、ケティは手を振りながら去っていく。彼女が向かう先には、アオのエプロン姿に沸く集団が。
 ポンと、ギーシュの肩を、友人の一人が叩く。
「お前、ふられたな」
「はいいいぃぃ?」
 しかも、これだけでは終わらない。
「ギィィィシュ!」
 地の底から響くような声と共に、ドリルにも負けぬ見事な巻き毛をした女の子が近づいてくる。
「モンモランシー!?」
「やっぱりあんた、あの一年生に、手を出してたのね」
「えと、その、彼女とはもう終わったっていうか」
「二股してたのは事実でしょうが!!」
 モンモランシーは、体重の乗った見事な打ち下ろしの右で、ギーシュをテーブルに沈めると、
「ふんっ」
 大股で去っていった。
「その、まあ……生きろ」
 本来なら「ざまあ見ろ」と言いたいところだが、あまりの痛々しさに友人たちの見る目が優しい。
 ギーシュは脳震盪で揺れる頭を振りながら、薔薇を片手に言った。
「ば、薔薇とは孤高のもの。これもまた宿命さ」
 ギーシュは脳内で、さながら悲劇の主人公のような自分に酔いしれる。
「ときに、君。 なんて事をしてくれたんだ」
 そして始まる責任転換。
 餌食になったのは、香水の壜を拾って届けたメイド、シエスタだった。

「なにやってんのよ、あいつ」
 ルイズは呆れながら、メイドに八つ当たりするギーシュを見た。
 このルイズ、魔法はダメでも、心は貴族。
 知らぬ仲(ついさっき名前を知ったばかりだが)でもないことだしと、シエスタに助け舟をだそうと立ち上がったところで、ギーシュに近づくアオの姿を視界に捉えた。
 手に持つトレイには、水がなみなみと注がれたジョッキが載せてある。
 ちょっと、あいつまさか。
 いやな予感がした。
「そこまでだ。少し頭を冷やそうか。その娘は困っている」
 アオは後ろから、ジョッキの水をギーシュの頭からかけた。
 いやな予感的中。

 しんと、辺りが静まりかえる。
 なにが起こったかわからずに、きょとんとしていたギーシュだったが、肩を震わせて振り返った。
「決闘だ!」
「うん、いいよ」
 あっさり受けるアオ。
 うおーッ! と歓声が巻き起こる。
「ギーシュが決闘するぞ! 相手はルイズの平民の……えとお名前は」
「アオです」
 マイク代わりに向けられた杖に、にこやかに答えた。

 キャーっ! とさっきとは別種の歓声が巻き起こる。
「あの方、アオさんとおしゃるのね」
「ちょっとギーシュ。その方に下手なことをしたら承知しないわよ」
 すっかりアオのシンパと化した女生徒たちの野次に、ギーシュがよろけた。
「こ、この僕が……こんな、こんな事があっていいわけがない……こんな、こんな」
 美少年を自負してきたナルシストのギーシュには、かなりのショックだった。
 親の敵を見るような目でアオを睨むと、くるりと体を翻す。
「ヴェストリの広場で待っている! さっさと来るんだな!!」
 ギーシュは、そう言って友人たちを引き連れて、食堂を出て行った。
 その後について行こうとしたアオの袖首を、誰かがつかみ止めた。
 シエスタだ。
 涙目でアオを引きとめようと訴える。
「だ、だめですアオさん。貴族と決闘だなんて、殺されてしまいます」
「そうだね。殺さないよう気をつけるよ」
 二人の会話が微妙にかみ合っていない。
 シエスタは、アオの笑顔を見て、自分の聞き間違えだと思うことにした。
「と、とにかく、今ならまだ謝れば、許してくれるかもしれません」
「そのメイドの言う通りよ、謝っちゃいなさいよ」
 アオが振り向くと、駆け寄ってきたルイズがいた。
「やあ、ルイズ」
「やあ、じゃないわよ! メイジと平民が決闘だなんて、一体どういうつもりよ。正気とは思えないわ」
「シエスタは困っていたんだ。義を見て立たざるは猫なきなりってね……なにもしなかったら、僕は猫にも劣る事になる」
「……意味がわかんないわよ。とにかく謝りなさい。これは命令よ」
 ルイズの瞳を見て、首を横に振るアオ。
「それはできない。僕が謝れば、彼女の非を認めることになる。
 理不尽を見て、見ぬフリをする生き方を、もうする気はないんだ」
 シエスタはアオの言葉に、両手で口元を抑えて、息を呑んだ。
 ため息をつくルイズ。
「……いいわ、この決闘、許可してあげる。怪我して後悔しても知らないからね」
 アオは笑った。
「それだけは、しないことを約束するよ」


back / top / next

新着情報

取得中です。