あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロのロリカード-38


「ハァ・・・・・・ハァ・・・・・・」
一人の少年が、疲れから深呼吸を繰り返していた。

(クソッ・・・・・・、クソッ!!!また届かなかった・・・・・・僕の糸は・・・また・・また・・・・・・ッッ!!)
悔やんでも悔やみ切れない。少女の後ろ姿を見つめながら、歯噛みする。

「よう、ウォルター」
振り向いた少女が口を開く。

「最後の一人は・・・・・・おまえか」
ウォルターは目を細め、少女アーカードを見つめる。

「残念でした、少しばかり遅かったなあ」
嘲笑するように、アーカードは言う。


 ウォルターは空を仰ぐ。
「・・・・・・く・・・はは・・はは!!ははは・・・・・・ははッははははははははははは!!」
哄笑が黎明に木霊する。本ッ当に自分自身に嫌気が差す。
どこか悲しげなその笑いは、少しずつ小さくなり、そして乾いた笑いへとなっていく。
自分は道化師のように滑稽な、喜劇役者。いつだって・・・・・・主役にはなれない。

 ウォルターは一転して、ボーっと目の前のアーカードを見つめる。
コロコロと変わるウォルターの様子に、アーカードは眉を顰め怪訝な顔をした。
「・・・・・・気でも狂ったか?」

 アーカードの言葉にウォルターは少しだけ考えた後、自然な柔らかい笑みを浮かべて言った。
「なぁに、お前に会えたのが・・・・・・素直に嬉しい。そう、思っただけさ」
その言葉にアーカードは呆然と見つめる。
いよいよ以てボケ始めたのかこの餓鬼は。とすら少し思ってしまうほどに。

 一方でウォルターは実感する――――――自分が望んでいたこと。
前の世界でアーカードが消えた時に、その心に去来したもの。

 ウォルターは嘆息をつくと、自虐的に言葉を吐く。
「・・・・・・ひっどい末路さ。アーカードの言った通りだった。みっともないよねぇ」

 暫しの沈黙が続く。
ウォルターは感慨に耽り、アーカードは裏切り者とは特に話す気がないという感じだった。


 心を整理し、感情と折り合いをつけたウォルターは、語りかけるように口を開いた。
「"彼女"は・・・・・・"ミナ"は、燃やしといたよ」

 "ミナ・ハーカー"。
『ドラキュラ』が愛し、『ドラキュラ』が攫い、『ドラキュラ』がその全てを捧げようとした女性。
アーカード・・・・・・『ドラキュラ』が血を吸い、吸われた唯一の存在。
『全ての始まり』。

 ヘルシングに『ドラキュラ』が倒され、彼女は人に戻った。
だが、アーカードは死んでいない。彼女の中にはアーカードがいる。
彼女自身がどうなろうと、彼女の奥深くには存在する。
聖餅でも、聖水でも、十字架でも、どうにもできない、吸血鬼の血が。

 それゆえアーカードの『模倣』の為に、彼女はその墓をあばかれた。
そしてかわいそうな彼女は、ミレニアムに研究され、残骸にし尽くされた。
それを、解放した。ミナが辱められる事は・・・・・・もう無い。

 その事を、消えてしまったアーカードは知らない筈だ。
他の顛末はともかく、そのことだけは伝えておかないと・・・・・・そう打算なく思ったのだ。


「・・・・・・そうか、手間を取らせたな」
何のことはない、と言った風なアーカード。
しかし瞳には優しげな色、口には微かな笑みが見えた。

「構わないさ、僕が勝手にやったことだ。・・・・・・アーカード、僕はね。
 あの一夜一幕の茶番劇で、できるだけいい役が演じたかった。それだけなんだ。
 それがこの様だ。全てを賭け、全てを失った。こっちに来てもおんなじだ。
 いや、今回はBETすることさえ出来なかったな。いつだって僕は・・・・・・っっ!!」

 ウォルターは顔を下に向ける。
その噛んだ唇から、握った拳から、ポタポタと血が滴り落ちる。
そんなウォルターの様子を静観していたアーカードは、やれやれと言った感じで話し出す。

「ああ・・・・・・そうだな。糞餓鬼だ、お前は。どうしようもないガキ」
ウォルターに追い討ちをかけるように、アーカードは続ける。

「そうさ、お前などただの裏切り者だ、ただの。・・・・・・前にも言ったな?
 私は生まれてこのかた裏切り者は、一人だって許したことはありはしない。
 お前はそんなものなんだ。そんなものの余興に、児戯に、つきあう義理はない」

 そしてアーカードは一度だけ目を瞑り、ゆっくりと開く。
「・・・・・・が、その余興に、児戯に、茶番に、ガキの喧嘩に、少しだけ付き合ってやる」


 ウォルターは「えっ・・・・・・」と呆けた声を漏らし、顔をあげる。
アーカードを見つめたまま、次の言葉を考えあぐねていた
そんなウォルターを見兼ねたのか、アーカードはその理由を示してやる。

「なに、ただの気まぐれだ」

(お前の気まぐれが、ミナに安らぎを与えたくれたように・・・・・・な)

 当然アーカードはそんな思いを、決して口には出さない。
ウォルターが裏切り者である事に変わりはないし、調子に乗られても困る。

 恩を着せる為ではなく、純粋にミナを解放して、さらにその事を伝えてくれた。
その気持ちに報いてやろう、というわけではない。
感化されたわけでもない。
ただの気まぐれ。そう・・・・・・ただの気まぐれに過ぎない。


 知らず知らずウォルターの顔に笑みが浮かぶ。
「そんな嬉しそうな顔をされても、いつまた気が変わるかわからんぞ」

 アーカードはサディスティックに笑って、少しいじわるをする。
ウォルターはハッとして、緩んだ顔を引き締めた。

「礼は・・・・・・言わない、気まぐれというのなら。だから気が変わる前に――――」
気を取り直したウォルターは、糸を振り構える。

 しかしそれを、アーカードは手を出して制止した。
「零号開放はしない、する理由がないからな。飽くまで私の気まぐれだ。
 何でもかんでも、お前の都合に合わせる事もしない。己でどうにかしてみせろ・・・・・・あの、少佐のようにな。
 ・・・・・・それに、もう夜が明けた。腹も満たされたし、かなり眠い。我が主も待っているのでな、私は帰る」


「・・・・・・新しい、主人?」
踵を返すアーカードに向かって、ウォルターが問い掛ける。
アーカードは首だけ振り向かせた。

「お前にもいるだろう?使い魔として召喚されて・・・・・・恐らくはガリアか」

 デルフリンガー曰く、虚無の担い手はブリミルの直系子孫にのみ発現する。
トリステイン、アルビオン、ロマリアは既に揃っているから残りは自ずとガリアになる。
ウォルターは少し迷う。ガリアの事を言うべきか否か。

「何故お前までが、こんなアルビオンくんだりにいるのかは知らんがの」

 もうすぐにでも、この戦に参戦する事を言うべきか・・・・・・。
と言っても、既に戦争は殆ど終結している。
アルビオン軍七万はアーカードにより殲滅。レコン・キスタも自分が滅ぼした。
ガリアの立場として、後の諸国会議で敵の中枢を叩いた事を主張するだろう。
特段隠し立てしておく必要もない。と、ウォルターは話す事にした。


「・・・・・・僕は今、ガリアのとある人物の執事として働いてる。ちなみにもうすぐガリアの艦隊が来る」
「ほぅ」
「そしてその主人の命令で、レコン・キスタの連中をつい先刻殺してきた」
「なに・・・・・・?」

 アーカードは少し考える。
レコン・キスタが殺されたということは、クロムウェルも含まれている筈だ。
「ふむ・・・・・・首長のクロムウェルは、指輪をしてなかったか?」
「へっ?」

 ウォルターは言葉に詰まる。何故指輪の事を知っているのか。
と、アーカードは何かに気付いて、振り返る。

「む・・・・・・ウォルター、お前・・・指輪をしておるのう」
見ればウォルターの指に、リングが光っていた。

「ッッ・・・!?あ・・・・・・あぁ、その・・これは・・・・・・」
「アンドバリの指輪か?」
「ぬ・・・むぅ、そう・・・・・・だけど?」
誤魔化し切れないと直感したウォルターは、渋々認める。

「それは丁度良かった。とある約束での、それは元の持ち主に返さねばならんのだ」
アーカードは今すぐ渡せと言わんばかりに手の平を突き出し、有無を言わさぬ圧力をかける。
「ぐっ・・・・・・」


 ウォルターは葛藤する。
アンドバリの指輪で、連合軍を離反させた事はバレていないようだ。
仮にアンドバリの指輪によるものと知っていたとしても、恐らく自分がやった事だとは思うまい。

 しかしアーカードを零号開放させるのに、この指輪は必要だ。
零号開放をさせるには、軍団がいる。
時間的にも物量的にも、アーカード一人では如何ともし難い、急迫した状況を作る必要が有る。
・・・・・・かと言って、今ここで渡すのを渋れば疑われる。

 何故か元の持ち主の水の精霊と約束までしているようだし、理はあちらにある。
指貫グローブだからって、指輪をつけてるんじゃなかった。
と、後悔しても時既に遅し。後の祭りだった。

 ウォルターは観念し、指輪をはずして放り投げる。
「すまんの」
アーカードは指輪を受け取ると、ポケットにしまう。

(しょうがない・・・・・・か)
こうなったら、己が動かせる駒を全部使う。ジョゼフを焚きつけ、ガリア軍を動かす。

 アーカードの存在を教えれば、間違いなく乗り気になる筈だ。
そうだ、あの狂人ならきっと乗ってくる。
狂い方のベクトルは違えど、少佐のそれと似ているあの男なら。
そしてどうにか零号開放させて、今度こそアーカードと闘ってみせる。



「アーカード!」
ともすると息を切らして、ルイズがやってきた。
ウォルターを見るなり首を傾げ「誰?」と言う。

「ちょっとした知り合いさ」
と、アーカード。
それを聞いてルイズは「そう・・・・・・」と呟き、とりあえず納得した様子を見せる。
しかし何かを考えているのか、ウォルターを値踏みするように眺め始める。

(この子が・・・・・・)
ウォルターは目の前の桃色髪の少女が、アーカードの新たな主人だろうと推察する。
と言うか、それ以外の人間がこの場にいるとは思えない。

 ・・・・・・この少女が零号開放の命を下したのであれば、随分な胆力である。
『鉄の女』と形容できるインテグラとは、大分印象が違う。
尤も、インテグラも昔は少女らしい少女であったが・・・・・・。

 本質としての、人間の強さ。それがこの少女にもあるのだろう。
だからこそアーカードは仕えているのだろう。


(インテグラ・・・・・・お嬢様、か)
ウォルターは想いを馳せる。
アーサーの代から、・・・・・・生まれた時から仕えてきた主人に相応しき主人。
裏切った身としては未練は・・・・・・ない。しかしアーカードはどうなのだろうか。

「インテグラと・・・・・・セラスに、会いたくはないのかい?」
気が付くとウォルターはそんな問い掛けを口にしていた。
アーカードだけの、愛しい主と、恋しい下僕。
少佐の策に敗れ、世界から消え去り、そしてここにいる。不本意な別れだった事だろう。

「会いたくないわけなかろう。確実な方法を見つければ帰るさ・・・・・・」
そう言ってアーカードは笑みを浮かべ、ルイズの肩に手を置くと「いずれな」と付け加えた。
その一方で、ルイズは眉を八の字にして疑わしげにウォルターを見つめている。


 ルイズは考えていた。ちょっとした知り合いって、・・・・・・前の世界の知り合いなのかと。
でなければ、アーカードが話していた主人と下僕、インテグラとセラスの名が出るわけはない。

「・・・・・・もしかして、裏切った執事とかいう・・・?」
青年の特徴が、アーカードが話していた特徴と、どことなく一致している。

「・・・・・・ぁ・・・ああ、そうさ。はじめましてお嬢さん。アーカードの新しい主人だよね?」
ウォルターはルイズが頷くのを確認すると、さらに続ける。
「僕はウォルター、ウォルター・C・ドルネーズ。元ヘルシングゴミ処理係、まぁその・・・・・・裏切りの執事さ」

 深く礼をした後、少し苦々しく笑う。
裏切りと言えばその通りなのだが、なんだかばつが悪かった。

「あっ、これはご丁寧に。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールです。
 その、一応・・・・・・アーカードの主人をやってます。えっと・・・・・・よろしくお願いします」

 ルイズはウォルターに倣うように頭を下げる。そして顔を上げようとして、ある事に気付いた。
「ッッ!!?・・・・・・ちょっと待って、ということは虚無の担い手が四人揃ったってこと?」


 ハルケギニアとは違う、地球という世界の人間が召喚されるのは、虚無の担い手が召喚した際の共通項だ。
そしてシュレディンガーのような例外じゃない限り、被召喚者。

 ウォルターを合わせれば、使い魔は四人となる。
使い魔は原則として一人だから、召喚者も当然四人。
虚無の使い魔ウォルターを召喚した、虚無の担い手がいるということだ。

「そういうことになるな。・・・・・・こやつの主が虚無に目覚めているのかは知らんが」
「・・・・・・そういえばさっき、最後の一人とか言ってたのはそういうことか」
ウォルターは最初の方のアーカードの言葉を思い返す。

「あぁ・・・・・・しかも使い魔四人全員が、今このアルビオン大陸にいる。なんともまぁ偶然は重なるものだ」
「他には誰が?」
「アンデルセンとワンちゃん。ついでにシュレディンガーだ」

 アーカードはあっさりと答える。隠すほどの情報でもないということか。
それにしても、アンデルセンと大尉・・・・・・さらにアーカードを殺した元凶シュレディンガーとは。
色々と厄介な面子だ。と、ウォルターはそこで気付く。

「五人・・・・・・?」
「シュレディンガーは、召喚された時には既に私の中から分離していた。
 私の中にいたままでは、この私共々消えてしまうからの。明確な理由は私にもわからんが・・・・・・。
 恐らく召喚された際に、弾かれでもしたんだろう。死んだ者が召喚される世界、何が起こっても不思議はない」


「そう・・・・・・なのか」
ウォルターは呟くように言う。
とりあえず今のところ、アーカードが突然消える心配はないということか。
 零号開放させなくとも、どうにかしてシュレディンガーを喰わせればまた殺せるだろうか?
いや、少佐と同じ様な手で倒すのは不本意である。
そもそも、本来の"闘って勝ちたい"という目的からはずれる。
それに・・・・・・零号開放の隙を利用したとしても、同じ手は二度と喰らってはくれないだろう。

 やはりアーカードの命を残り一つにして、純粋に打ち倒す。それ以外にない。


「・・・・・・それで、お前の主人は誰だ?ガリア王か?」
黙り込んで思考しているウォルターに向かって、アーカードは問うた。
これまでの会話の内容から、一つ思い浮かんだ事があったからである。

 何故ガリア王と名指しで問うたのか。
直系の子孫と言えど、その数はかなり多い。
しかしウォルターにレコン・キスタの殲滅を直接命令する者など、相応の地位の者。
現段階でパッと思い付き、且つ確実なのは王家の血に連なる者。その筆頭がガリア王である。

「ん・・・・・・あぁ、その通りさ」
ウォルターはあっさりと答える。
既に予想がついているようだったし、別段隠す意味もないと感じたからである。


(タバサの仇・・・・・・か)
アーカードは心の中で呟く。それこそが、わざわざ主人を聞いた理由。

 タバサの任務の付き添いで、ギャンブル場へと行った時のこと。
タバサの昔馴染みであったというトーマスが、タバサの父親を殺したのは王政府だと言っていた。
同時に呼んだ名前が、"シャルロット"。
ガリアでシャルロットと言えば・・・・・・最初に思い浮かぶのは一人だけ。
"シャルロット・エレーヌ・オルレアン"。
現ガリア国王ジョゼフの弟であった、亡きオルレアン公シャルルの娘。

 現王ジョゼフに殺され、王位を簒奪されたと専らの噂。ひいては王政府に殺されたとも言える。
容姿や年齢、また名を変えて学院に通っていることから推察しても、ほぼ間違いない。

 何故憎むべき仇の手足となってまで、王政府に従い騎士として任務をこなしているのか。
アーカードはタバサの決意を知っている。そこから推察するのは至極簡単だった。
つまりは自己鍛錬と忠誠心を見せる為。
来るべき時まで己を鍛え続け、それまで相手に自分を信用させ・・・・・・最終的には寝首を掻く。


(似ているな・・・・・・)
そう、かつての自分と似ている。境遇は違えど、己の幼少時と似ている。
だからこそ、タバサの決意と行動の理由がよくわかるのだ。
敵国の人質となり、神を信じ、慰み者にされながら、復讐を胸に必死に学んだ自分と重なるのだ。

(尤も、タバサが信じているのは自分自身だろうが・・・・・・)

 神を信じ、神の為に、戦った私とは違う。
神を第一とし、復讐を二の次とするのではなく。
アニエスのように忠誠と復讐の二つに生きるのではなく。
復讐の一念のみで、日々を戦い続けている。

 かつての私のように、本質的には孤独の中で生きているタバサ。
敵の腹中で、その素振りを一切見せず、ひたすら己が刃を研ぎ続けているタバサ。
見事成し遂げるのか、或いは失意に沈むのか、少しばかり楽しみだ。



「さて・・・・・・これ以上仲良く話すこともあるまい」
他に気になる事項も無いアーカードは淡白にそう言うと、ルイズを促して歩き出す。

「・・・・・・アーカード!!」

 ウォルターは、振り返らず歩き続けるアーカードに向かって宣戦布告する。

「必ず倒す!!僕の全てを以てッッ!!!」

 アーカードは背を向けたまま、欠伸をおさえた手をひらひらと振る。
ルイズは会釈をして、アーカードと共に歩いて行った。


 ウォルターは大きく息を吸う。数秒止めて、ゆっくりと肺の中の空気を吐き出した。
夜は完全に明け、陽の光が目に染みる。
「これから忙しくなるかなあ」とウォルターは一人ごちると、緩慢に歩き始めた。




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