あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

虚無と十七属性-06


「これで分かったでしょ? 私がどうしてゼロと呼ばれるか」
「……」
 目を覚ましたシュヴルーズ教諭に命じられた、教室の後片付けを黙々とこなす中、ルイズが突然沈黙を破った。
「魔法成功確率、ゼロのルイズ……。さんざん平民だ何だ言って、結局私も貴族になりきれていないのよ。私って滑稽ね……・。笑いたき
ゃ、笑いなさいよ。魔法が使えない貴族って馬鹿にされて、もう名誉なんてあったものじゃないわ」
「……確かに成功はしていないかもしれないが、魔法は使えている」
「そんなの、ただの屁理屈よ!」
「あれだけの高エネルギーを、精神力と呼ばれるものからひねり出し、ここまで惨状を生み出したのは誰だ? 教室一つを使い物にならなくする破壊力で、短時間詠唱、そして、衣服を含めなければ自分は傷一つ負わないという都合の良さ。
今の爆発だけを磨き、コントロールできるようになれば、それは十分立派な魔法だと思う。戦いの場、その攻撃に於いて重要なのは、素早さと攻撃力、それと正確性だ。
この『失敗』と呼ばれるものでも、命中率と攻撃力を高められれば、立派な攻撃だ。属性の事を考えなければ、火や、風の魔法にもひけをとらない。
仮に一対一の戦いを想定して、『錬金』の一言で、少なくとも、避けない相手を気絶させられる破壊力を持つルイズと、絶対に一発で相手を瀕死にできる、一撃必殺の、長い詠唱を必要とするトライアングルスペル、どちらが勝つ確率が高いと思う? 答えはルイズだ。『素早さ』
の高い攻撃で、『命中』が100で、相手を確実に怯ませる事ができるからな。一方的な攻撃が可能だ。何なら、その魔法で気絶させておいて、別の方法でとどめをさしてもいい」
「……」ルイズが、1、2、ぽかん、とまるで記憶喪失になったかのような、間が抜けた表情を浮かべた。
「……どうした」
「いや、アンタ、普段は喋らないのに、途端に饒舌になったから」
「そうか」
「後、素早さが高いとか、命中が100とかって、なんか、おかしくない?」
「……そうかもしれない」
「……ふ、ふん! ま、まあいいわ。あ、アンタのご主人様を気遣う態度が、よくわかったわ! そ、そう! これは試験だったのよ!
ご主人様への忠誠心の抜き打ちテスト! こんな、私がこんな風にめそめそするわけないじゃない!」
「そうだな、そんな気もしてきた」……自分に、棒読みだ、と突っ込みした。
「ほ、ほら、アンタは合格よ! しゃきっとしなさい!」
 弱気なところを見せたくない、耳を赤くした、子供っぽいご主人様に、この世界に来てから初めての笑みを――
 名前のない、俺は浮かべた。


虚無と十七属性


第六話

「おいギーシュ、今は誰と付き合ってるんだよ? モテる男は羨ましいなぁ、この!」
 アルヴィーズの食堂内。メインの食事を平らげ、デザートが配膳される僅かな時間の間で、金髪太っちょ、坊ちゃん気質のマルコリヌは、
友人であるギーシュにちょっかいを出していた。
「付き合う? 僕にはそのような特定の人物はいない……。薔薇はいつでも、多くの人々を楽しませるためにあるのだからね」造花の薔薇の
真っ赤な杖を、ギーシュは、どこからともなく取り出した。
 全く、この気障な台詞は、いつ聞いても笑える。自分を薔薇に例えるとは、大したナルシストだ。
 でもまぁ、そんな事をいちいち気にしているようじゃ、こいつの友人は務まらないけどね。
 どうしたらギーシュは彼女を暴露するかと考えていたその時、デザートの配膳をしていた男がこちらへとやってきた。
「……ん? 君は確か、ゼロのルイズの使い魔じゃないか? 一体何のようだい」疑問を簡潔に述べる。
「落としものだ。隣の、薔薇を持った君」
 男が差し出してきたのは、決して禍々しくない紫色の液体が入った、ガラスの小瓶だった。はて、どこかで見た事があるような……。これ
は、香水? という事は……。
「ん、それはモンモランシーの香水じゃないか?」同じ事を思ったのか、ギーシュを挟んで向こう側の友達は言った。
「そうだ、思い出した! しかも、この色はモンモランシーが自分のために調合した特別な香水だ!」
「とすると……今、ギーシュが付き合ってるのはモンモランシーだろう!」
「な、何を言っているんだい? 第一、それは僕のものではないぞ!」
 ギーシュは目に見えて焦った様子で、給仕をしっしっと追い払う素振りを見せた。
「焦ってますな、ギーシュさん」
「恥ずかしがる事は無いのですぞ?」友人と二人で、ギーシュを追い詰める。
 ギーシュが、ああ、うう、とかしか言わなくなり、視線を左上に泳がせた。間違いない。これは確定だ。
「ギーシュ様!」と、そこへ、ギーシュを救うかのように、栗色の長髪の女子生徒が現れた。
 茶色のマントの色から察するに、恐らくは一年生だ。
「……やはり、ミス・モンモランシーと……」栗色髪の少女が、目に涙を溜める。前言撤回。彼を救うためではなく、状況をさらに掻き回す
ためのようだった。
「ち、違うんだケティ! 彼女とは何も……!」
 ギーシュは必死に弁解しようとするも、そこへ金髪巻き毛の少女が現れ、僕とギーシュの間に割って入った。
「何も?」そして、冷気の塊のような視線を、ギーシュに向けた。
 おっと、これは超展開。
「……あ゛――ッ! モンモランシー! いや、これは……その……」
「へえ……やっっぱり、この一年生に手を出してたんだー……へえーそうなんだー……」
「違うんだモンモランシー! 彼女はただ一度だけ、ラ・ロシェールまで遠乗りしただけで……」
「そんなっ! 私の事は遊びだったんですか!? 『僕の心に棲んでいるのは君だけ』という言葉は偽りだったのですか!?」
「いや、決してそんな事はないんだよケティ。僕の心は……」
「『僕の心は広すぎて、何人でも棲めそうだ』なんて言うわけじゃないわよね、ギーシュ」
「いや、そうじゃなくて、」
 ああ、終わったな、こりゃ。
 一閃、ケティと呼ばれた少女は、ギーシュの頬に真っ赤な紅葉を落とし、モンモランシーはテーブルのワイン瓶をひっつかむと、躊躇なく
ギーシュの頭に大雨洪水制裁を食らわせた。
 二人が去ったのを呆然と見送ったギーシュは、溜息を一つつき、なんでもないといった風で、
「……どうやら二人は、薔薇の存在理由を知らないようだ」
 と言った。ここまでくると、ある意味尊敬するよ、ギーシュ。
「さて、どうしてくれるんだ、給仕君。いや、ゼロのルイズの使い魔君だったかな? 君の軽率な振る舞いのせいで、二人のレディが傷つい
てしまった。この責任、どうとってくれるん、」
「ギーシュ?」ギーシュの隣の友人が、話しかけた。
「何だ」
「誰に話しかけてたんだ?」
「誰って、そこの、小瓶を拾った……って…………あ゛ーっ!」
 なるほど、既に、給仕の男はいなかった。

◇◆◇◆◇◆

 使用人達と昼食を済ませ、配膳を手伝った後、俺は自室へと戻っていた。といってもルイズの部屋なのだが。
 さっきの授業であった、爆発のようなハプニングが起きたときに、リュックが無かったのは致命的だった。そして、その反省として、これ
からはリュックを常に持ち歩こう、と思ったわけだった。
 リュックを背負ってみると、何故か、安心する。逆に、今までどうして背負っていなかったのだろうと疑問に思うほど、その黄色いリュッ
クは自分に馴染んでいた。
 と、その時だった。轟音を立て、この部屋に闖入者が現れたのは。
「……ぜえっ……ぜえっ……ぜえっ……」
 息が切れ切れのその金髪男は、確か、さっき、落ちていた小瓶の近くにいた男だ。どうしたんだろう。もしかして、さっきの小瓶、やっぱ
りこいつのだったんじゃないか? 悪いが小瓶は、ここに来る前にコルベール先生に渡してきたぞ。
「……どうした」でも、まあ、これだけ急いで来たのだから、もしかしたら、何か緊急事態が起きたという可能性もある。
 金髪の少年は、手で、待て、と制すると、15秒ほど息を整えてから、造花の薔薇をこっちへ突きつけた。
「……決闘だっ!」
 誰が? どこで? 誰と? 主語や目的語はしっかりしてくれないと、困るのだが。

 ――で、なんだかんだで、説明を受けずにヴェストリの広場に来てしまったんだが。
「僕、ギーシュ・ド・グラモンは、この、ゼロのルイズの使い魔が無礼であるのが原因で、公衆の目前で恥を掻いてしまった! よって、グ
ラモン家の名において、ここに決闘を申し込む!」
「……俺が何かしたか?」ギーシュと名乗った少年に、何故か決闘を申し込まれてしまった。
 曰く、君が小瓶を拾ったせいで、二人のレディが傷ついた――つまるところ、浮気がバレたということ。そして、謝れば許してやったの
に、剰え、俺がその場から逃げ出したという事――らしい。
 この金髪君は、相当おつむが足りないらしい。
「……逃げ出した、というのは語弊があるだろう。俺は、事の端末を今知った」
「言い訳にしか、聞こえないのだがね。……まぁ、いいだろう。誠心誠意謝るのならば、今ここで許してやらん事もない」
 言われて、辺りを見回すと、何だ何だと集まってきたギャラリー達が、1、2、3……10人ほどいる。こんな公衆で、自分に非のない事
を分かっているのに謝るなど、馬鹿げている。
「……断る。俺の名は、そこまで安くはない。そもそもの原因は、ミスタ・グラモンが二股をした事にあるのではないか。俺に非はない。小
瓶を拾ったのは親切心だ。君が手で払ったときにも、俺は立ち去った。もしもの時を考えて、機転を利かせたつもりだ。以上から考えて、こ
れは只単に君の……所謂、逆恨みというやつじゃないか」
「いいぞ平民! そうだギーシュ、二股したお前が悪い!」少ないギャラリーから歓声が上がり、その声がまた、人を呼んだ。昼食の時間を
終えた生徒たちが、漏れなく集まってきた。
「……一度ならず、二度までも! 平民の分際で、貴族に楯突くのか、君は!」
「平民ではない。社会的階級で表すのなら、俺は使い魔の筈だ。ここで引き下がっては、主人の貴族の名に、泥を塗ることにもなるのでね」
 言い終えた後で、「もっと言ってやれー」とギャラリーからの声が上がった。ギーシュの顔が、真っ赤になった。
「いいだろう! 決闘だ! 僕は貴族だ。よって魔法を使わせて貰う。よもや、異論はないだろう」
「……」一応頷くが、内心、駄目だコイツは、と溜息をついている。

 バラおとこのギーシュが しょうぶをしかけてきた!


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