あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

凄絶な使い魔‐04


 第四話「ルイズの使い魔」


 ルイズの目はまっすぐに元親を見据えていた。
 眼前には半透明の球が漂っているが、既にそれはルイズにとって恐怖の対象ではない。

 今、相対する二人は、元親が剛とするなら、ルイズは勇である。
 決して引かない心、諦めない心、それがトリスティン貴族の誇りだ。
 幼少より叩き込まれた彼女の根底にある貴族の矜持、それがいまの彼女からは溢れ出ているようだった。
 前に向かうという其の姿勢は美しさとなって、彼女を内面から輝かせを、元親も一瞬、目奪われるほど神々しく見えた。

 私が、どうしたいか?
 そんな事は決まっている、誰からも後ろ指を指される事のない立派なメイジに成る事よ。

 そして、その為には…、
 チョーソカベ、貴方には私のそばに居てもらうわ!

 ルイズは優雅に貴族の子女らしく、目上のものに対する礼を元親に送った。

 「正式に名乗らせていただきますわ、ミスタ・チョーソカベ…、私はヴァリエール家が三女、ルイズ・フランソワー
ズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、貴方が東方から来た将軍である事を私はここに認めます、そして貴方を
召還した責任として、貴方のトリスティンにおける身柄の保障は私が絶対に守ることを、ここに始祖ブリミルに誓います」

 ルイズの宣言はまず、元親の立場と待遇の保証した、そして…

 「そして、命じます、この音の球を取り除き、オスマン学院長とコルベール師、二人の安全を保証しなさい」

 ルイズが元親に示せるものはただ一つ、毅然とした態度で臨むこと、それがルイズが選んだ方法だった。

 「そうか、だが嫌だと言ったら?」

 元親の目もまっすぐにルイズを見ている。
 口からの出まかせなら、通用しないと彼の目が語っている。

 だから、私も決意を…、覚悟をするだけ!

 「ならば、私は貴方を召喚した主人として、貴方を殺して二人を助けます」

 彼女はマントからするりと杖を抜くと、元親に先端を向けた。
 小揺るぎとしない杖の先端と、その先にあるルイズの目を見つめる元親。
 視線と視線がお互いの主張を真っ向からぶつかり合わせる。
 それは後ろで見ているオスマンやコルベールにしても驚きだった。
 歴戦の将である元親の重圧はオスマンと互角、それを目の前の少女が堂々と対抗しているのである。
 魔法の使えない少女に、なにか秘められた力が発現しているかのような……、そう思わずにはいられない光景だった。


 しばらくした後、元親の方が静かに目を閉じた。
 ルイズに発せられていた重圧が消えて、彼女だけが気構えて、目を閉じた元親の様子を窺っている。
 その時、一瞬だけチョーソカベが何か笑ったように感じた。

 「……俺を殺すか、……お前の技と俺の音、はたしてどちらが早いかな」
 「ッ!!」
 「フッ……、だが、命運を握った相手に、逆に死にたくなかったら助けろと言われるのは2度目だ、
……最初は俺が初めて仕えた男で、名を羽柴秀吉という」

 何を言っているの?…ルイズがそういう顔をしながら元親を見つめていると、元親が髑髏の付いた楽器を下した。

 「鳥無き島の蝙蝠がお前に興味がわいたと言っている、……この長曾我部元親、お前に仕えてやろう、ミス・ばりえーる」

 仕える?…つまり使い魔になるって事?

 「やった……」

 ルイズは脚の力が抜けたのか、ペタンとその場に座り込んだ。


 どうなる事かと見守っていたオスマンとコルベールもほっと胸をなでおろした。
 座り込んだルイズに手を差し伸べて立たせたあと、コルベールがオスマンに尋ねた。

 「なんだかんだありましたけど、……彼の処分はどうします?」
 「サモンサーバントで人間を召喚した場合は、前代未聞の契りが必要じゃった、
……そう言う事にしとくかの、誰が被害にあったわけでもないし」

 確かにと、コルベールもオスマンに同意した。


 ルイズは周囲の音の球が依然取り囲んでいるをムッとしたように元親に言った。

 「ところでチョーソカベ、さっさと、この音の球を消しなさいよ、動けないじゃない」

 音の球が漂い続けている中にいるのは正直いい気分じゃない。
 おもむろに元親は蝙蝠髑髏をまた肩にかけるとルイズの前までやって来た。
 そして、突然、ルイズめがけ音球を放つ。

 「わっちょっと何す……え?」

 別に触れても何も起こらない、音の球はそのままルイズの服の表面をツツッとすべり、背後へと流れて行った。

 「コイツはある種の波長意外には反応しない、触れても平気だ、……それに放っておけば自然に消えてゆく」

 ……元親の表情が少し意地悪に見えるのは気のせい?
 彼の言うとおり、時間が経った周囲の球は、形を維持することができなくなり、次第に消滅していった。
 それを見れるのは元親とルイズだけだが。
 おかげで、なまじ見えるルイズは、先ほどのトリスティン貴族の誇りもなんとやらといった、のけ反りっぷりを
披露する羽目になった。

 ルイズはこほんと咳を一つして、元親に近づくと、

 「…………だからと言って、口でいえば済むことを、…わざわざ私を脅かすとはいい度胸よね」
 「ただの冗談だ、許せ」
 「許すか!!」

 ルイズが元親を蹴っ飛ばそうと足を振りあげるが、簡単によけられる。

 「上等、だが足蹴りはもっと早く蹴らんと当たらん」
 「使い魔ならよけるな!」

 ルイズの杖が元親を向き、ファイヤーボールが……、もとい、ただの爆発が元親を吹き飛ばした。
 本来ならどこに飛ぶか本人にも分からない彼女の魔法が今回は目的の場所へと飛んだようだった。
 と、同時に背後でオスマンとコルベールの悲鳴が上がった。
 驚いてルイズが振り返ると、まるで至近距離で音球の爆発に巻き込まれたような無残な有様で二人がヒクついている。

 「なななな、一体、何が……」

 杖を持ったまま固まったルイズに元親が言った。

 「驚いたな、お前の魔法に音の球が反応して、炸裂した様だ、そしてこの威力、……なかなかやるな」

 そう言うと元親も気絶した。

 『誰にも被害が出たわけではない』…オスマンとコルベールは、
「「前言撤回じゃ」」、と心のなかで呟いた。


 結局、オスマンとコルベールの治療費をルイズは払う事になったが、
その件に関しては事故として扱われたので、ルイズと元親に対する処分は下されなかった。

 ルイズの爆発で気絶した元親は、そのまま部屋に運び込まれた。
 彼が気が付いたのは日が暮れての事で、元親に付添っていたルイズは、夕食をメイドに部屋へと運んでもらった。
 食事を終えたら、普通に平気そうな元親は、曰く、怪我など飯を食えば治るとの事、
いろいろと謎な体質の持ち主である事は間違いない。
 とにかくルイズとしては生まれて初めて、魔法が成功し、正真正銘、使い魔を得ることができたのである。
 日頃の山積した気持がウソのように晴れやかだった。

 「ねぇーチョーソカベ!」
 「なんだ?」
 「その楽器を見せなさいよ」

 元親はしばし考えたが、ルイズに蝙蝠髑髏を差し出した。
 自分の命令に従う使い魔にご満悦なルイズは早速、見よう見まねで撥と三味線を握る。

 「これって、かなりの重さね、……ねぇ、さっきの音の球ってどうやって出すの?」
 「こうだ」

 ルイズの隣に座ると手を取り、三味線の基本となる持ち方や音を出す勘定(コード)を教える。
 ふんふんと興味深げに元親の指導を受けていたルイズだったが、ふと、我に帰るとすぐ息のかかる距離に元親が
いる事に気がついて、みるみるうちに顔が紅潮していった。
 まぢかで見る元親は、やはり美形であった。

 「どうした?」
 「なななななななんでもないわよ」

 明らかに動揺しているがルイズは教えてもらった様に撥で弦を弾いた。
 が、ベベンと音が響くだけで音の球が出ない。

 「ちょっと出ないじゃないのよ」

 非難するような視線を元親に送るが、その向けられた方はあっさりとルイズから愛器を取り上げた。

 「当然だな……一朝一夕でできるなら苦労はない」

 ルイズは頬を膨らませるも、まぁいいわと考え直した。

 「私が使うより、貴方が使って私を守ればいいんだし」
 「守る?ここの治安はそれほど悪いのか?」

 まだ、元親がこのトリスティンに召喚されて、目にしたのは学院長室、そこまでに至る通路だけである。
 学院長室から女子学生寮のルイズの部屋までは元親は気を失っていたので道すら分からない。
 だが、それほど荒んだ所でもないように思えるのだが。
 そう、元親がルイズに尋ねると、ルイズは違うと首をふった。

 「使い魔はね、まず主の身を守るものって大事な使命があんの」
 「使命か、……仕える身なら当たり前だな」

 ふんふん、と満足そうにルイズ腕を組んで頷く、このマジックアイテムを操るチョーソカベなら問題なさそうだ。

 「あとは私のために秘薬とかを探してくるんだけど……無理よね」
 「秘薬自体どんなものか想像がつかんな、宝珠ならわかるがな」
 「宝珠って何?」
 「武器に新たな力を宿すものだ、たとえば紅蓮宝珠を付与された刀で切りつけられた相手は、
切られた太刀筋から炎をあげ、焼け死ぬことになる」

 暑苦しいモブ武将が焼け死ぬシーンがなぜかありありと脳裏に想像できた。

 「なんだか物騒ね……、その楽器にも宝珠がついてるの?」
 「おそらくな、この蝙蝠髑髏(へんぷくしゃれこうべ)には修羅の宝珠が仕掛けられているはずだ……」

 話に聞くと、人を一撃で死に至らしめる属性らしい……、オスマンとコルベールは耐えられたようだと、元親は涼しい顔で
言ったが、ルイズはぞっとしていた。
 しかし、宝珠は東方にある専門の鍛冶師しかそれを武器に付与できないため、この国にいる限り見つけても無意味だろうと話していた。

 「そうね…、あとは主人の目となり耳となる能力ってのがあるんだけど、見えないよね」
 「見えん、…しかし、みす・ばりえーるは俺の「音」を見ることが出来た、今まで俺の音の球を直感でよけた奴らはいたが、
見えた奴はいなかった……、これは感覚の共有といえるかもしれん」

 そうね、とうなずくルイズ。

 「それから、あと一つ言っておきたい事があるの」

 それは元親の発音についてだった。
 ルイズは元親という使い魔にそれなりに満足してはいる、だが人前で、ばりえ~るなどと呼んでほしくないという気持ちもあった。
 その意見に対して元親はしばし考えた後、

 「……ルイズの部分はどうだ、これなら言えるが」
 「…そ、そうね、そっちの発音の方がきれいだし、お前とか童女とか呼ばれるよりずっと良いわ、これから名で呼ぶことを許すわ」

 名前で呼び合うのって、ちょっと親しすぎるかもしれないけど…とは思ったが。
 (ルイズはチョーソカベがファーストネームだと思ってる)

 そんな話が終わった後、ルイズは眠気に襲われてきた。

 「…そろそろ寝むくなっちゃった、…わたし寝るわ」
 「そうか、俺はどこで寝ればいい?」

 うっ!
 そうよね…一緒のベッドで寝るわけにはいかない、いやいや、それ以前に結婚前の淑女が同じ部屋に男を泊めていいの?

 ううううううううううっと一人呻きはじめたルイズだったが、ぴたりと動きを止めると、

 「ゆゆゆ許す!、使い魔と主人は一心同体!、毛布あげるからこの部屋で寝なさい!」
 「……やんごとなき名家出の子女が同じ部屋に男を泊めてもいいのか?」
 「うっ……いいのよ、チョーソカベは使い魔、使い魔とメイジは一緒に生活するのは当然のことなの!」

 そういうと毛布を元親に放るとベットにもぐりこんだ。
 ルイズが指を鳴らすと明かりが消えた。
 元親は毛布を拾うとややルイズのベッドから離れた場所に腰をおろした。
 ちょうどカーテンを閉めてない窓から夜空が見える場所だ。

 「……ねぇ、チョーソカベ」

 明かりを消して暫くしたら、ルイズが声をかけてきた。

 「どうかしたか?」
 「………ありがとう」
 「何がだ?」
 「……なんでもない、おやすみ」
 「ああ……」

 やがて、ルイズの寝息が聞こえてきた。
 夜空に浮かぶ2つの月を元親は感慨深く眺めていたが、やがて彼も蝙蝠髑髏を抱いたまま目を閉じた。


新着情報

取得中です。