あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

虚無と十七属性-04


 結局月を眺めた後、地理を把握するために30分ほど学院内を動き回り、部屋に戻った。するとまぁ、他の生徒まで巻き込んで俺を
捜していたらしいルイズから、勝手に動き回るなと折檻され、使い魔がなんたるかを20分ほど説教され、そして改めて、ルイズが就寝した
のを見届けてから、バッグを枕代わりにして、一枚の毛布を身体にくるんで寝た。
 それで、日付が変わった今日。俺は何をしているかというと、何でも使い魔の雑務と託(かこつ)けて洗濯をやらされている。
ああ、水が冷てぇ。


虚無と十七属性


第四話

 シエスタはメイドである。
 日々甲斐甲斐しく働く、黒髪黒目、白い肌にそばかすのある可愛らしい彼女は、故郷のタルブ村から、この魔法学院に奉公に出ている。
 まだ貴族達が寝静まっている、まだ外気が冷たい朝霧のある頃に起き、いくら消化しても翌日にはまた現れる貴族達の洗濯物を、
同僚のメイド達と分けて手で洗うのだ。
 それを、毎日毎日延々と繰り返しているシエスタだったが、今日は早々、決定的な違いがあった。
「あれ、誰でしょう」思わず、大量の洗濯物を持ったまま立ち止まる。
 この時間帯ならば、自分以外が来るはずのない洗濯場で、誰かが洗濯をしているのだ。
 変わった服装の青年だった。謎の半円の模様がある、鍔のある赤い帽子を被り、赤いマフラーに、白と黒のグラデーションがかかった
Tシャツ、素材の分からない青い長ズボン。腕には、何か青くて四角い異形の物が、ベルトで巻き付けられているように見えた。
 とりあえず、洗濯などしているので、貴族ではないだろう。シエスタは話しかける事を決意した。
「あのー、何をなさっているのですか?」できる限り、明るく振る舞ったつもりだ。
「洗濯だ」青年は簡潔に答えた。いや、それは分かっているのだけれども。
「……基本的に、洗濯は使用人の仕事なのですが、引き受けましょうか?」
「そうなのか?」今初めて知ったというような顔をして、青年は答えた。
「ええ。そうですよ。あなたは使用人の方ではないようにお見受けしますが……えっと……あなたは」
「……俺は使い魔だ。名前はまだ無い。ついでに記憶を失っている」
「あぁ、使い魔の方でしたか! 話題になってますよ。ミス・ヴァリエールが平民の使い魔を召喚したって。それにしても、大変ですね。
記憶がないなんて。私なら、多分そう平然としていられませんよ」
「……基礎的な知識は覚えている。現に、洗濯のやり方も覚えていた。断片的ながら、自分の記憶があったという事はわかるし、
記憶の戻る日は近いかもしれない」青年はそれだけ言うと、再び手を動かし始めた。
「ああ、いいですよ。後は私がやっておきます。部屋の中に籠があるので、明日からはそこへ入れておいて下さい」
「そうか、ありがとう。とりあえず今日は、手伝ってくれるとありがたい」
「はい! お任せ下さい」
 シエスタはメイドとして叩き込まれた0エキュースマイルを浮かべた。

◇◆◇◆◇◆

 ピピピピ! ピピピピ!
「……ん~~?」
 聞き慣れない音に、微睡む意識の中、ルイズは目を覚ました。
 辺りを見回すと、窓からは光が溢れ、二人は寝られる大きな貴族用ベッドは陽気に包まれている。いつもと変わらない部屋の中。
そこには、いつもとは明らかに違う、鳥の囀りとも似つかない音が響いていた。「何の音……?」
「起きたか」生気のまるで篭もっていない男の声が聞こえた時には、本当に、心臓が飛び出るかと思った。
「! だっ……誰よ! アンタ!」
「……お前が呼んだ使い魔だ。お前も記憶喪失か?」
 言われて、あぁ、と納得した。同時に、平民を召喚してしまった現実に、夢から引き戻された気分になった。妙な倦怠感が身体を支配し、
再び夢の中へと旅立ちたくなる。
「あぁ……私が呼んだんだっけ」
「そろそろ朝食だ。早く身支度を済ませたほうがいいぞ。俺は先に、使用人たちと食べてくる」
「ん」生返事を返した。
 使い魔は、腕につけた青い物体をいじりながら、部屋を静かに出て行った。あの音は、あれから出た音なのだろうか。
だとしたら、アレは何なのか。
 ふと、それで、着替えの事を使い魔に頼むのを忘れたのに気がついた。
 部屋の外に寝間着のまま出るのも躊躇われたので、寝惚けた頭のまま、できるだけ昨日の事を忘れるために、普段通り身支度を調えて、
部屋を出た。
「あれ、使い魔、どこ行くって言ってたっけ……ま、すぐ戻ってくるかしら」
 これが、後に恥をかく事になってしまった原因となった。ちゃんと聞いておくべきだった。

 アルヴィーズの食堂に特別に連れて行ってやろうと思ったけど、何故か肝心の使い魔はいなかったし、
そのただでさえ不機嫌な状態の時に、憎きツェルプストーの使い魔自慢を聞かされて、ルイズは今、とにかく不機嫌だった。
 一限目の授業が始まるという時、使い魔はひょっこりと、唐突に目の前に現れた。
 教室前で、腕をくんで、帽子を被ったまま、壁に寄りかかっていたのだ。どことなく威圧感があるのは、さて、何故か。
「……来たか」こちらに気がつくと、使い魔は壁から離れた。
「っ……!」
 こっちはこんなに苛立っているのに、自分の僕がこうまで余裕でいるのは、なかなかに腹が立つものである。そもそもこのイライラの、
そもそもの原因は何だったか。
「どこ行ってたのよ! 探したわよ!」怒鳴ってやった。ここが教室前だという事は、すっかり忘れていた。
「この学院の使用人たちと先に食べてくる、と朝言った筈だ。片付けも少し手伝ったが」
「でも、勝手に動き回るなって言ったでしょ!」
「今朝、了承の返事は貰った」
「誰に!」
「他でもない、目の前にいるご主人様に」
「…………あ」思い出した。思わず赤面してしまう。
「授業が始まるから、早く席に着いた方がいい」
 使い魔の余裕な態度に、行き場のない怒りがどんどん膨張していく。
「ま、ルイズ、今回ばかりはあなたが原因ね」いつからそこにいたのか、憎きツェルプストーがそう言った。
 それと同時に、どっと笑いが起きた。どこからって、そりゃ、面白がって話しを聞いていた教室内の連中からだ。ここで漸く、
ここが教室前だという事を思いだした。
「ル、ルイズ……! 使い魔の平民に言い負かされるなよ……っ!」腹を抱えながら、一人の生徒が笑いながらうずくまった。
「面白すぎだろ!」
「笑い死にさせるつもりかよ!」
 ただ単に面白がられているのか、それとも馬鹿にされているのか。
 ルイズがこの事にどう収拾をつけようか、もういっその事教室を爆破してやろうかとも思ったが、そこで教師、シュヴルーズが
現れたので、とりあえずは感情を抑え込み、席についた。使い魔が席をひいてくれた事に、多少気が紛れた。
 まぁ、使い魔としての仕事はこなしてるし? 平民という割にはしっかりしてるし、丁寧語を使わないところ以外は礼儀正しいみたい
だし? 今朝だって、良く言えば、自分で食事を獲得したのだ。おどおどしてるよりはずっといい。
 ルイズは自分自身を納得させて、今度執事の服でも着せようかしら、前向きな事を考える事で、なんとか自我を保っていたのだった。
 新任の先生が入ってきたと同時に、周りの会話と笑いが止んだ。

◇◆◇◆◇◆

「まずは皆さん、進級おめでとうございます。今年度より、この魔法学院へ赴任しました、ミセス・シュヴルーズです。二つ名は『赤土』。
これから一年間、皆さんに土の魔法を抗議させて頂きます」
 魔女だった。見紛うことない、誰がどう見ても魔女だった。
 ローブと同色の、円錐のとんがり帽子を被ったその先生は、俺の世界で認識されている、魔女の格好そのままだった。
ふくよかなおばさん教諭は続ける。
「さて、みなさんの春の使い魔召喚の儀は、大成功だったようですね。このシュヴルーズ、こうして春の新学期に、生徒達の様々な使い魔を
見るのがとても楽しみなのですよ……。おや、ミス・ヴァリエール、随分と変わった使い魔を召喚したようですね」
 俺の方を見て言った。嘲りともとれるその言葉に、何の悪意も含まれていないところが、タチが悪い。
 なんとなく、軽く会釈をしてすませようかと思ったが、そうは問屋が卸さなかった。
「ゼロのルイズ! 魔法が使えないからって、そこらへんの平民を連れてくるなよ!」
 太っちょ金髪の生徒が、捲し立てた。子供か。
 それに対して、ご主人のルイズも対抗する。子供だった。
 そういえば、昨日キュルケが、子供っぽいところがあるとは言ってたな。……可愛げ、ないけど。
 なんとなく眺めていたら、一対一の子供の口げんかは、他の生徒達も巻き込み、多数対ルイズの虐めもどきにまで進行していた。
いい加減鬱陶しくなってきたし、主人が集中砲火を浴びているのは気分のいいものではなかったので止めようかと思った時、騒いでいた生徒達が一瞬で静かになった。
「静かになさい。笑っていた人も同罪ですよ。貴族たる者の自覚を持ちなさい。それに、お友達を悪く言うんじゃありません。
そのまま授業を続けなさい」
 おお、なるほど。主人を攻めて騒いでいた生徒の口には、余すことなく、先生の二つ名の『赤土』が詰め込まれていた。
これが、魔法の力らしい。
「授業を始めます」
 静かになった生徒を見て満足したのか、シュヴルーズ教諭は授業を開始した。さて、魔法の授業って、どんなだろうな。楽しみだ。

「それでは、魔法の四大系統を……、そこの、あなた、答えて下さい」
 シュヴルーズ教諭は、赤土を詰められた、口げんかの発端となった太っちょの生徒を一人、杖で指した。すると、赤土が口から取り除か
れ、宙に浮く。まだ浮かせているところを見ると、また詰めるつもりなのだろうか。それとも、正解したら赤土を消すのか。
「はい。四大系統は、」
「すいませんが、まだ、全員の名前は覚えておりませんので、名前を言って下さい」
「『風上』のマルコリヌ・ド・グランドプレです。四大系統は火、水、土、風の四つです」
「その通りです」
 シュヴルーズはそう言うと、杖を一振りして、マルコリヌの赤土を消した。
「おさらいになりますが、魔法は火、水、土、風の四大系統から成り立ち、そのうち、土の系統は……」
 ――どうやら、この世界では、魔法は生活に密着したものであるらしい。建造物や、生活に関わる多くの工芸品は土のメイジが作り出して
いるとの事だ。この学院に洗濯機がなかったのも、魔法が科学技術の発達を妨げているからであると想定できる。洗濯用の魔法はないのか。
それにしても……
「……4属性か。随分と少ないんだな」
「へ? 属性が少ない?」俺の独り言を、隣のご主人様が聞いていた。
「……ああ。俺の元いた所では、ノーマル、炎、水、電気、草、氷、格闘、毒、地面、飛行、エスパー、虫、岩、ゴースト、ドラゴン、悪、
鋼の、17の属性があった。尤も、魔法の属性じゃないが」
 確かに、属性があったのは記憶している。だが、それが何の属性だったか、その記憶があやふやだった。何故だろう。とても、大事な事の
気がする。
「魔法じゃない属性? それって一体、」
「ミス・ヴァリエール!」ルイズがこちらへ質問を寄越そうとしたその時、シュヴルーズ教諭の喝が飛んだ。
 それより、どうして俺のご主人は名前を覚えられているのだろうか。成績優秀か、若しくはその逆か、はたまた大貴族の家柄だからか。と
りあえず、内心でルイズにスマン、と謝る。
「随分と余裕をお見せになっているようですけれども」
「あ……すいません」
「それでは、あなたにやって貰いましょうか」
「……すいません、聞いてませんでした。何をですか?」
「この小石の錬金です」シュヴルーズ教諭は、目を閉じてそう言った。



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