あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

虚無と十七属性-02


「~~~~ッ!」
 胸板にじんじんと伝わる痛みで、俺は目を覚ました。
「! 目が覚めましたか!」
 身体を起こさないで視線だけを声の主の方向けると、そこには、見覚えのあるようなないような、髪の毛の薄い男性が、
鈍器になりそうな分厚い本を開いていた。
「ここは、何処だ……」痛みの中で、なんとか声を絞り出した。
「トリステイン魔法学院です。毎年行われる、春の使い魔召喚の儀式であなたが呼ばれたのです。
いやはや、あなたがコントラクト・サーヴァントであそこまで苦痛を強いさせてしまうとは、本当に申し訳ありません」
 何のことだか、さっぱり分からない。
「……」
「ああ、何が起きたか分からない、といった顔をなさっていますね。詳細を説明しますと、あなたは、桃色髪のこの学院の生徒に
使い魔として召喚され、そしてその契約である接吻を終えた後に、それに伴う激痛で気絶されたのです。……思い出せましたか?」
 そうは言われたものの、さっぱり意味が分からない。トリステイン? 使い魔? コントラクトサーなんとか?
 聞き覚えの無い単語の羅列で、頭は既に追いつけていない。
 俺はさっきまで、確か――何やってたっけ? というか、あれ?
 俺って誰だっけ?


虚無と十七属性


第二話

 俺は、誰だ。
 もしかして、いや、もしかしなくても、俺は記憶喪失らしい。
 と言っても、記憶を何もかも失ってしまうわけではなく、こうやって人と喋る事はできるし、知識もきちんと残っている。
だが、不思議にも、自分の生活に密着した部分だけが、どうしても思い出せないのだ。母親や父親の顔、自分の住所、自分の部屋の様子、
というか、そもそも自分の部屋があったのかどうかすら思い出せない。
 とりあえず、自分の目の前にいる、このマホー学院の保険主任だかなんだかの人物に、自分の今の状態を話す。
 記憶が殆どなくて曖昧だが……なんとかベール、神秘のベール……そうだ、確か、マスター・神秘のベールとか呼ばれていた気がする。
「記憶喪失、ですか?」
 神秘のベール(仮)に首肯で答え、再び激痛で魘される。
「それは、その……すいません、大変なご迷惑をお掛けしました。召喚された時から、となると、サモン・サーヴァントが原因かも
しれませんね。だとしたら不可抗力だとはいえ、本当に申し訳のない事をしました……もしかしたら、ルーンの影響か……」
「……いや、構わない。ところで、使い魔召喚とは何だ?」会話の中で疑問に思っていた事を訊く。もしかしたら、これは常識で、
たまたま記憶喪失の際に幾つかの記憶が飛んでしまっているのかもしれない。
「使い魔というのは、メイジが使役する、所謂、護衛兼パートナーといった存在の事です。基本的には、獣や鳥、後は幻獣などが
召喚されて、その中で高位なものとなると、ドラゴンやマンティコア、グリフォンなどが召喚されます」
「……メイジ、とは何だ?」マンティコアとグリフォンも何なのかはさっぱりだが、とりあえずドラゴンに並ぶ凄い生き物だというのは
想像できた。
「メイジを聞いたことがないのですか?」
 ああ、俺は常識まで記憶吹っ飛んでいるらしい。
「記憶が飛んでしまったからな」
「ああ、そうでしたね。メイジというのは、簡単に言えば魔法使いの事を指します。魔法が使えるメイジの殆どが貴族と分類されて、
魔法が使えないのが平民と呼ばれています。思い出しましたか?」
 魔法?
 魔法とはアレか。マジックの魔法か。いくら記憶喪失だからといって、馬鹿にされちゃたまらない。それが非現実のものである
という事くらいは、覚えている。
「失礼だが、マスター・神秘のベール、いくら俺の記憶が曖昧だからって魔法が無いって事くらいは――」
 そう言った時に、神秘のベールの後ろにある巨大な窓から、人が飛んでいるのが見えた。
 あれ? 飛んでる?
 空飛ぶ人間数名は、こちらを見に来た野次馬らしく、こちらを杖で指して、なにやらこそこそ喋っている。
マントに杖。魔法使いに見えなくもない。というか、これで円錐の帽子なんかを被ったら、魔法使いにしか見えない。
「……」絶句した。
「魔法が無い?」神秘のベールが訝しげにこっちを見た。
「…………いや、なんでもない。気にしないでくれ。マスター・神秘のベール」
「私はコルベールです。ミスタ・コルベールと呼んで下さい」
「……はい」
 なんかもう、どうでも良くなってきた。多分、おかしいのは俺の頭なのだろう。きっと俺がいた世界では魔法が普通に存在していたんだ。
記憶がちょっと、何か巨大な悪の組織によって改竄されたんだろうな。そう、ギンガ団みたいな。
「……?」
「どうかなさいましたか?」
「……いや……ギンガ団、という組織に聞き覚えはないか?」
「はて、ギンガ団……いや、ありませんな」
「悪の秘密結社に記憶は?」
「ひみつけっしゃ? ……いえ、ありません」
「……そうか」
 確か、他にもロケット団、アクア団、マグマ団というものがあった気がしたのだが。自分はどれだったかそれに関わって……?
 その記憶が戻りそうな時に、激しい痛みに見舞われた。
「くっ……うっ……ああああああああ!」
「ミスタ!?」
 胸が焼けるように熱かった。服は脱がされて、胸には包帯が巻いてあったが、包帯が焦げ出さないのが不思議な程、熱かった。
だかしかし、どういうわけかものの数秒で痛みが柔らいだ為に、気絶する事はなかった。
 コルベールが慌てて、瓶に入った液体の薬をとり、包帯を丁寧にほどいた。
 窓の向こうで、魔法学院の生徒が顔を覆い、逃げ帰っていくのが僅かに見えた。
「……こ、これは……」
 そして、その時のコルベールの表情は、まるでこの終わりが突然訪れたかのような、最上級の驚愕に歪んでいた。
「ル、ルーンが増えている……」
 その言葉と同時に、今度は激しい頭痛に襲われた。一難去ってまた一難。
 このままでは俺は死んでしまうのでは無いかと思えた程だった。
「~~~~ッ!」
「落ち着いて! 今水メイジを呼んで来ます!」
 薬を塗ってもまるで効果がないと判断したコルベールは、急いで部屋から駆けだした。ドアが乱暴に開けられ、壁に激突する音が、
脳に妙に響いた。
 だが今度は、先ほどの短い胸の痛みよりも、更に早く、痛みも小さいままに終わった。頭だという事で余計に痛くは感じられたが、
不思議と後は引かなかった。今は頭よりも、自分で掻き毟ってしまった胸が、遙かに痛んだ。
 暫く悶えていたが、不意に視界に、黄色いリュックが映った。丸っこいデザインのそれをみると、記憶など無いはずなのに、
何故か無性に親しみが溢れてくる。これは恐らく、自分の持ち物でいいはずだ。
 歩くたびに胸に響く激痛に耐え、なんとかリュックまでたどり着く。もしかしたら、自分の記憶を取り戻す手がかりがあるかもしれない、
という淡い期待を持っていた。
 少し震える手で、リュックを手前に引き寄せようとした刹那、リュックに触れた瞬間に、自分の頭の中に何かが入り込んできた。

 どうぐ
~~~
ほのおのいし×65
みずのいし×42
かみなりのいし×56
リーフのいし×41
やみいし×3
ひかりのいし×4
めざめいし×3
まんまるいし×2
つきのいし×25
たいようのいし×21
かわらずのいし×87
ずがいのカセキ×17
たてのカセキ×16
………
……

かいふく
~~~
キズぐすり×35
いいキズぐすり×18
すごいきずぐすり×45
かいふくのくすり×39
げんきのかけら×43
………
……

 リュックの中身が手に取るように分かり、そのアイテムを手に取ると、その能力や用途が自然と分かったのだ。
『キズぐすり:HP20回復』
 なんだかよく分からないが、とりあえず、使おう。
 俺は直感でスプレー式の傷薬をバッグの中から取り出すと、自分に吹きかけた。
 すると、自分が掻き毟った傷口は、意志を持ったかのようにみるみる塞がり、数秒後には痛みどころか痕すら残らずにすっかり消え、
ルーンと呼ばれた、謎の増える呪印の痛みも無くなった。 
「……」
 効果の強さに若干驚きながらも、脱がされていた服探して着てからから、意外に軽いバッグを背負う。
 痛みが引いたから、さてどうしようかと迷い始めたのと、
「ここです!」
 血相を変えたコルベールが、轟音と共にドアを開けたのはほぼ同時だった。

◇◆◇◆◇◆

 ルイズは不貞寝していた。
 サモンサーヴァントができて、なんとか進級こそできたものの、召喚されたのは平民だったからだ。
 あの後教室に戻ったら、召喚に成功した皆に、ゼロのルイズだと指をさして笑われて、自尊心をズタズタにされ、
心の虚構が広がり、何一つ言い返せない自分が嫌いになった。
 ただ、コルベール先生が何故か黙っているように言った、謎のルーンだけは気がかりだったが、どうせ、ゼロと蔑まれる自分だ。
たいしたものではないのだろう。若しくは無駄に長いだけで、普通の使い魔のルーン以下かもしれない。
「感覚の共有とかさえ、できなかったりして……」
 今は医務室で眠っている、自分の使い魔の事を思い、ルイズは着替えもしていないのに、枕に顔を埋めた。
「ちい姉様……」不甲斐ない自分に、涙が零れそうだった。
 日は既に落ち、数多の星と二つの巨大な月の光が空から零れていたが、それでも、明かりを灯していない部屋は暗く、
まるで私の心情を表すかのようだった。
 その時だった。二つの足音が廊下を叩き、こちらへと向かってきたのは。
 どうせまだ寝付けていない女子生徒だろうと、大して気にはしなかったが、その足音がちょうど自分の部屋の前で止まったのは驚いた。
『……あ、この部屋ですね』聞き慣れた、髪の薄い教師の声だった。
 慌てて涙が溜まった目元を拭い、ベッドから飛び起きて、ランプを付けて部屋を照らす。
『……手を煩わせてすまなかった』
『いえ、元よりこちらが呼び出してしまったのです。これくらいはさせていただかないと。後は、ミス・ヴァリエールに聞いて下さい。
では、私はこれで』
 コルベールの立ち去る足音が聞こえるのと、扉が二回叩かれるのはほぼ同時だった。
 多少ふらつく足取りで扉を開けると、
「……」
 そこには、私の使い魔が、自分が召喚した時と寸分違わぬ変わった格好で、そこに仁王立ちしていた。


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