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とある魔術の使い魔と主-31


シエスタは、幼い兄弟を抱きしめ、不安げな表情で空を見つめていた。
当麻達が学院へと戻り、しばらくこの休暇を家族と満喫しようかと思っていたが、先ほどラ・ロシェールの方から爆発音が耳に突き刺さってきた。
何事かと思い、庭にでると、シエスタの目に惨劇が入り込んだ。
何隻もの船が空で燃え盛り、無惨にも落下し、山脈へ、森へと消え去っていく。
この様子は、もちろん他の村の人達にも見ていたため、辺りは騒然と化した。
しばらくすると、こちらに巨大な船が艦隊となりやってきて、空から降りてきた。村人達が見守る中、草原に鎖のついた錨を下ろし、上空に停泊した。
その上から、何匹ものドラゴンが飛び上がり、こちらへと向かってきた。
「!? 早く家に入りましょう!」
異常に気付いたシエスタは、不安な表情を抱える幼い弟や妹を家の中へと走らせた。
窓から様子をうかがっていた父も、母を抱えて窓から遠ざかる。
轟ッ! と風の唸りをあげて、敵のドラゴンは一瞬にて村の中まで侵入、辺りの家々に火を吐きかけた。
「きゃあ!」
母が悲鳴をあげ、幼い子供達がビクッと震え出す。
シエスタも怖い。怖いけど内へと隠さなければならない。
自分が一番年上なのだから、他の子に弱さを見せてはいけない。それでも体は素直にも震えてしまう。必死に止めようとするも、言うことを聞いてくれない。
家に炎を吐きかれて、高温灼熱によって窓ガラスが盛大に割れ、飛び散った。
村が、平和な村が一瞬によって悲鳴と怒号が混じった混乱に陥る。
父は気を失った母を抱いたまま、他の子供達と一緒に怯えているシエスタに向かって叫んだ。
「シエスタ! 弟たちを連れて南の森に逃げるんだ」
「は、はい!」
少女は願う。こんな中、ヒーローのように助けてくれるであろう少年と、約束してくれた内容を。
それは、無理に決まっている。どうしようもないとわかっている。
それでも、願わずにはいられない。
(トウマさん……助けてッ!)

タバサ達が学院に着いたのも、トリステインからの使者が着いたのも、翌日の朝であった。
使者は、一緒に到着したタバサ達にオスマン氏の居室を尋ねると、早足で駆け去っていった。
その何かとんでもない事が起きてしまった様子に、タバサ達は顔を見合わせた。そして、真実を確かめるべく後をついていった。


オスマン氏のいる居室の扉が、勢いよく叩かれた。
「誰じゃね?」
それでも、冷静に対処するオスマンはやはりと言うべきなのだろうか?
返事と同時に扉もまた勢いよく開かれ、使者が叫び声で用件を述べた。
「王宮からです。申し上げます! アルビオンがトリステインに宣戦布告! 王軍は、現在ラ・ロシェールに展開中! したがって学院におかれましては、安全のため、生徒及び職員の禁足令を願います!」
しかし、その冷静さも耳へと入ってくる使者の言葉に崩れ去っていった。
「宣戦布告とな? 戦争かね?」
平然を装ったが、内心は焦っている。
「いかにも! タルブの草原に、敵軍は陣を張り、ラ・ロシェール付近に展開した我が軍とにらみ合っております!」
「アルビオン軍は、強大だろうて」
オスマン氏の言葉に、使者は悲しげな声へと変わる。
「敵軍は、巨艦『レキシントン』号を筆頭に、戦列艦が十数隻。上陸せし総兵力は三千と見積もられます。我が軍の艦隊主力はすでに全滅、かき集めた兵力はわずか二千。
 未だ国内は戦の準備が整わず、緊急に配備できる兵はそれで精一杯のようです。しかしながらそれより、完全に制空権を奪われたのが致命的です。敵軍は空からの砲撃をくわえ、我が軍をなんなく蹴散らすでしょう」
「現在の戦況は?」
「敵の竜騎兵によって、タルブの村は炎で焼かれているそうです……。同盟に基づき、ゲルマニア軍の派遣を要請しましたが、先陣が到着するのは三週間後とか……」
その発言で、オスマン氏は見据えると、ため息をついた。
「……見捨てる気じゃな。敵はその間に、トリステインの城下町をあっさり落とすじゃろうて」

学位長室の扉に張りつき、聞き耳を立てていたキュルケとルイズは顔を見合わせた。戦争と聞いて、ルイズの顔が蒼白になった。
一人当麻は何の感情を見せず、廊下を歩き出した。タバサは黙ってちょんちょんとルイズをつつき、気付かせた。ルイズは慌てて当麻のあとを追う。

ルイズは駆け足で当麻へと近づき、腰に抱きついた。後ろから、タバサとキュルケが続く。
「どこに行くのよ!」
「タルブの村だ」
「なっ……何しに行くのよ!」
「シエスタを助けに行く、それだけだ」
そう言うと、当麻は進む。ルイズが全体重をかけても、ゆっくりとだが前へと進む。
「ダメよ! 戦争してるのよ! あんた一人行ったってどうにもならないわ!」
「タバサ」
なに? と呼ばれた者が小さく聞いた。
「シルフィードを使ってもいいか?」
振り返るその体は怒りに満ちていた。
まるで、触れればそれだけで静電気でも飛び散りそうな怒気が全身を包んでいた。
「構わない」
なっ!? とキュルケとルイズが目を疑った。当麻はサンキュと言い、再び歩き出す。
「ダメよ! あんたが幾ら強くても、あんな大きな戦艦相手に勝てるわけじゃないの! わかんないの? あんた一人行ったって、どうにもならないの! 王軍に任せておきなさいよ」
ルイズは必死に当麻を説得しようとした。この使い魔は何も知らない。戦争という名において、いかに個人という存在がちっぽけであることを。
しかし、少年は決して足を止めない。何があろうとも進むその姿勢を崩さない。
「見たくないからだ」
「え?」
「見たくないからだ! 学院長が言ってたじゃねえか、ここが占領されるって。それってあれだろ? アルビオンで起きたようなことがまたここで味わうんだろ!? んなもん俺は二度と味わいたくねえんだよ!」
「だ、だからってあんたが行ってどうなるってのよ!?」
「約束を守る為だ」
当麻は告げる。自分の道を。
「おまえやアンリエッタの世界、それにシエスタを守る。そう約束したんだから守るだけだ」
それにな、と少年は続ける。
「自分がのうのうと暮らしている陰で、別の誰かが苦しんで、血まみれになって、助けを求めて、そんなことにも気付かずに! ただふらふらと生きていることなんかできるわけねえ!」
当麻はを誰よりも『幸せ』なのだ。
世界一『不幸』な『幸せ』を得た少年だから宣言できる。


そうだ。
フーケを捕まえたのだって、
ワルドを倒して、王女の任務を達成したのだって、
上条当麻がこの世界にきたことだって、
きっかけはほんの偶然が重なった『不幸』によるものだったら、その一点だけは誇るべきだ。
今回だって、本来ならタルブの村にいたはずだ。そこで今回の事件にも巻き込まれたはずだ。
それなのに、『幸運』にもその前に自分が去ってしまい、シエスタとその町の村の人達が『不幸』にも危険にさらされている。
幸運にも、不幸にも。
幸運にも不幸にも幸運にも不幸にも!!
シエスタ達は何も悪い事をしていない。そんな一言のために皆が殺されるだなんて耐えられない。
いや、どんな理由があっても許せない。
本来なら自分も受けるはずの痛み。巻き込まれないだけでこんなに辛いものだとは思わなかった。
(くそったれが……ッ!!)
今のもぶちギレそうな感情を押さえ込む。
だから、邪魔をするな。
俺に『幸運』なんぞ押し付けるな。すぐ側でみんなが苦しんでいる事に気付けずに、ただ一人のうのうと生き続けるなら、『不幸』に苦しむ人々にいくらでも巻き込まれてやる。
そう宣言した上条当麻だからこそ、宣言する。
「たとえ戦争でも! なんであろうと俺はいく! 人を助けるのに躊躇とか迷いとか理由なんぞいらねえんだ!!」

瞬間、左手に刻まれた文字が輝きだした。


当麻の思いにこたえるかのように、
意志を持っているかのように、
輝きだす。眩しいくらいに光が満ちている。
(……これはッ!?)
今まで読めなかった文字が、わかる。頭の中にその言葉が意味となって語られてくる。
それは、『ガキの喧嘩で解決』できるレベルを越している代物であった。
「は、」
不覚にも笑ってしまった。
アルビオンの巨大な戦艦を倒せる自信はない。ないのだが……、
少年の左手には、可能性が残されたたった一つの切り札。それが眠っていたのだとわかったのだ。
「ルイズ」
当麻は再びルイズの方に体を向ける。
「戦争だろうが何だろうが、俺はシエスタを助けに行くだけだ」
ルイズは呆れた声で言った。
「ばかじゃないの? あんた、もとの世界に帰るんでしょう? こんなとこで死んだらどうすんのよ!」
死なねえよ、と言い、当麻はルイズの頭にポンと乗せる。
「お前の世界を守る約束があるからな。どんなに惨めな姿になろうと生き延びてやる」
笑みを浮かべて。
獰猛で、野蛮で、荒々しく、上品さのかけらもない、
けれど確かに最高に最強な笑みを浮かべて、この上ない『力』を感じさせる言葉を出した。
その笑みを見て、ルイズはウェールズとの一件を思い出す。この少年は同じなのだ。どんなに説得しても行ってしまう、ズルイ人間。
少女がやれる事は、もう一つしかない。
「なら、わたしも行く」
「……は?」
「わたしも行くの! わたしを守るなら離れちゃダメでしょ!?」
「いやまあそうだけど……」
当麻は困った。戦場にルイズを連れていってはまずいに違いない。
この少女も、少年と同じく一度決めたら絶対にやり過ごすタイプなのだ。困っている人間に、手を差し伸べるというタイプ。
当麻は考えたが、時間はかけなかった。ここで無駄に消費したくない。故に短く言った。
「早く行くぞ」
ルイズは当麻の腰から手を離し、二人して駆け出した。


広場に出て、ピューッと甲高い口笛をタバサは吹いた。すると、一瞬のうちにシルフィードが降り立ってきた。
「二人、乗せてあげて」
シルフィードは短く鳴いて了解の意を主人に伝えた。
「悪いタバサ。でも絶対に傷つけさせないからな」
タバサはコクリと頷く。キュルケもタバサも行くと言ったが、人数が多いとダメなんだ、と当麻に断られた。
「ダーリン! 絶対死なないでね!」
「ああ!」
そう言ってシルフィードの背に乗る。そして、左手で頭を触ってやった。
瞬間、ルーンの文字が再び輝く。
「俺の友達を助けて欲しい。迷惑だってのはわかる……けど、頼む!」
当麻の悲痛な願いがシルフィードに伝わる。
ルイズがひょいっと飛び乗って当麻の腰に手を回した。
「振り下ろされんなよ」
「え?」
同時に、シルフィードは力強く羽ばたいた。一瞬のうちに高く空に浮かび、鮮やかに飛び去っていった。
「早いわね~」
キュルケがポカンと口を開けて言った。今まで見たことがないスピードであった
「最高速度」
タバサも目を丸くしていた。

「はははははははやすぎ!! どれだけ速度をだしてんのよぉぉぉおおおッ!?」
ルイズの絶叫が、上空にて響き渡った。


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