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ゼロの戦闘妖精-02


Misson 02 使い魔の価値を問うな

召喚場に戻ってからが 大変だった。
なにせ 召喚の儀式に立ち会っていたのが よりによって 普段からワケの判らない機械を自作しては喜んでいる コルベール先
生だから。
動き出すまでは「奇妙なゴーレム」程度の認識だったのだろうが、離陸するところを見て「機械」だと理解したらしい。
「一体 この使い魔は、火の魔道具なのですか それとも風の魔道具なのですか?
 いずれにしても、炎の尾を曳いて空を飛ぶ機械など 今まで見たことも聞いたことも無いのだが…」
そりゃ そうだろう。なにせ 雪風はこの世界のモノではない。
だが、教師に判らないものが 生徒に判るというのだろうか。
それが、ある程度は判るはずなのだ。
メイジとその使い魔は、契約によって特異な結び付きを得ることがある。視聴覚を共有できたり、姿が見えずとも 使い魔には主
人の居場所が判ったりする、そんな類の事だ。
召喚者が 自分が今迄に見たことが無い怪物を呼び寄せてしまった場合でも、契約さえ済ませてしまえば それがどのような存在
なのか 大まかには掴めるようになっている。
ましてや、ルイズと雪風の間に構築されたData-Linkは、情報量その他の点で 他の使い魔との絆とは比べようの無い代物だ。
ルイズが求めれば 雪風は自分のメモリだけではなく FAFの検索可能データ全ての中から 回答を探してくるだろう。
その答えをルイズが理解できるかどうかは 別問題だが。

さて どうしよう。
ルイズは考える。素直に詳しいことを話せば 質問攻めにあうのは必死だった。しかし無視も出来ない。この先 どうしてもコル
ベールの協力は必要になってくるから。
雪風は機体が大きすぎて 既設の「使い魔小屋」には収まらないが、かと言って雨曝しにするのは イヤだ。燃料やメンテナンス
の問題もある。
それらを解決出来る(出来そうな)のは、彼女の周囲には とりあえずコルベールしかいない。
仕方ない。ルイズは語り始めた。
  • 雪風は 異世界の技術で作られた 空を飛ぶ機械「飛行機」であること。
  • 空を飛ぶために 風石も魔法も使っていないこと。
  • 代わりに 油を燃やすことで 力に変えていること。
  • インテリジェンスソード等と同様に 知性を備えていること。
  • 音声でこそ答えないが ルイズが問いかければ 頭の中に回答してくること。
案の定 教師はその話の内容に 異様なまでの興味を示した。

彼の趣味「機械の開発」の目的は、「破壊行為以外での 火の魔法の有効利用」。
しかし これといった成果は未だ無い。(その意味では 彼もまた「ゼロ」の一人である。)
いま 目の前に、「火の力で空を飛ぶ」機械がある。彼の夢見たものが 形となって存在していた。
これぞ天佑!その設計思想 原理 構造 材質その他 全てを学びたい!!
矢継ぎ早に 質問の洪水は続いた。ルイズは(雪風の力を借りて)可能な限り答えた。
答えることは出来るが、ルイズ自身にも意味不明な単語や概念が頻出し 問答は迷走した。
召喚場を吹きぬけた夜風に ルイズがくしゃみをしたことで コルベールも我に返った。
「おおっ、少々 熱が入りすぎたようです。
 ミス・ヴァリエール、貴女は良い使い魔を得ましたね。
 使い魔は 主人たるメイジにふさわしい能力を持っているものです。
 強きもの、素早きもの、美しいもの。
 その在り方は様々ですが、知恵ある使い魔というのは 初めて見ました。
 普段から 勉強熱心な貴女だからこそ、召喚することが出来たのでしょう。
 素晴らしい!」
ルイズは、実技試験の0点を 筆記試験でカバーしなければならないため、図書館に通い詰めていた。
実際、ペーパーだけならトップクラスなのだ。
しかし 仮に筆記で満点を取ったとしても 実技と合わせて平均すれば50点以上には成り得ない。むしろ 配点は実技の方がが
高い。
だから 入学以来 これほど高い評価を受けたことは無かった。
「・・・あっ・・・ありがとうございます、ミスタ・コルベール!」
嬉しかった。
先ほどの評価が 彼の個人的嗜好からのものであったとしても。
ルイズからのコルベールの評価も上がった。そして決めた。 やはり彼に任せてみよう と。
「先生。お願いがあります。」

雪風の運用に関する問題点を説明したところ、コルベールは 快く 
「何とかしてみましょう」と 対策を考えてくれることになった。
とりあえず 今晩は雪風を先生に預け、ルイズは自分の部屋へ帰った。
雪風とルイズのData-Linkは、距離が離れたからといって 切れるものではない。
互いの基礎データは 既に交換済みだったが、ルイズは自分の使い魔の全てが知りたかった。
当然 雪風は主人の望みに応えようとするが、さすがに全てを送ることは出来ない。ルイズがオーバーフローする。
そこで データを分割し 睡眠中に送信情報を脳内再生するに留め データ保存はしないものとした。
ルイズが関心を持った部分のみ 保存すればよい。
つまり ルイズは毎晩 雪風の『夢』を見るのだ。
「お休みなさい、雪風。」



  深いグリーンの空 雪風が飛ぶ。惑星フェアリイ。
  戦場。眼下の死闘。戦闘機 ファーンⅡ JAM。
  エンゲージ ロックオン AAM ブレイク。絡み合う機動。
  GUN 撃墜 ミサイル警告音 メーデー。回避不能 爆発。
  脱出 確認できず。

  戦闘終了。 未帰還機 3。
  コンプリート ミッション
  R.T.B. 



目が覚めたのは 夜明け前だった。
「あれが、雪風の……『戦争』」
ハルケギニアにも 戦争はある。ルイズは 戦争を知らない。
貴族の娘とはいえ 少女が戦場に出ることは無い。
だが 彼女は見た。『戦場の夢』を。極めてリアルな 異世界の戦争を。
その「情報」は まだ断片に過ぎない。
世界に溢れる より多くの情報と統合された時 ルイズはどのような評価を下すのだろう。
「まずは 身体鍛えましょ。」
戦闘機動の画像を見て、もし自分が乗っていたら どれほどのGがかかっていたか想像して ゾッとした。
パイロットが 過重に呻く姿もあった。
(頑張れば私も アレくらいの操縦が出来るようになるのかしら)
動きやすい 多少汚れてもいい服に着替えると、小さな影を引き連れて 静かに部屋を出た。
彼女の世界は 未だ平和だった。

学院の敷地内を 軽くジョギングする。
雪風に調べてもらった パイロット用の体操と筋トレメニューをこなす。
火照った身体に 朝の空気が心地よい。
部屋に戻って汗を拭き、制服に着替える。こんなに気分のいい朝は久しぶりだ。
廊下に出ると、さっそく気分を台無しにしてくれる相手に出会ってしまった。
「昨夜はずいぶん遅かったわね。
 なのに ま~だ『召喚』出来ないの?」
自慢の使い魔 サラマンダーの「フレイム」を従え、自分の部屋から出てきたのは、同級生のキュルケ・ツェルプストー。
ゲルマニアからの留学生で、ルイズのヴァリエール家とは ご先祖様から因縁浅からぬ家系の出身。
入学以来の 犬猿の仲。というよりは ルイズが一方的にオモチャにされている。
昨日までは ここで朝一番の癇癪を起こしていた。今日からは 違う。
(私には 雪風がいる。)
「御生憎様。ちゃ~んと成功したわ! ほら、これを見て!」
ルイズの肩口のやや上辺りに、二重反転ローターにより飛行する30サント程の物体があった。
昨日 雪風に「何か 召喚に成功した証拠として 皆に見せられる様な物は無いか」と質問したら これを選んでくれたのだ。 
「ふーん。
 コルベール先生のオモチャを一個 分けてもらったのね。
 あの先生が作ったにしては、イイ出来じゃないの。」
ハナっから信じてもらえないようだ。
「違うわよ!あんなガラクタと一緒にしないで! これは『雪風』の ほんの一部 。
『投下ポッド内蔵用小型浮遊自動カメラ・センサー複合体』、雪風の「目」の一つよ。
 雪風は 機体が大きすぎて 私の部屋には入れないから 代わりに連れて来たの。」
キュルケから ニヤニヤ笑いが消えて、ムッとした顔になる。
「何よその名前、タバサの「二つ名」と同じじゃない!
 ダメ、却下、認められないわ。 
 変えなさい、今すぐ変更しなさい。」
そういえば、キュルケの友人 同級生のタバサの二つ名も「雪風」だった。でも この名前は譲れない!
「そんなの出来ないわ。
 だって 雪風は、私が召喚する前から『雪風』だったんだし、第一 機体にはっきり『雪風』って書いてあるんだもの!」
「機体? 書いてある?って… ちょっとルイズ、あんた一体ナニを召喚したのよ!?」
(そう言われても、簡単に説明できるモノじゃないわよね、雪風は。)
雪風の事は秘密にしておき 品評会で初披露 皆をあっと言わせる。なんてのもいいかな、と思っていたけど・・・予定変更。まず
は、この色黒娘を驚かせてやろう!
「…放課後、召喚場に来て…。そうしたら 会わせてあげる。私の使い魔に。」

『投下ポッド内蔵用小型浮遊自動カメラ・センサー複合体』(長すぎるので 以降『トーカ君』:ルイズ命名)を連れて食堂へ。
大型は無理でも、小型の使い魔と一緒に食事をする生徒は 結構多い。ルイズも そんな情景に憧れを持っていた。
残念ながら 「トーカ君」は バッテリー駆動なので、食事はしない。
朝食を終えて ゆっくりと教場へ向かう。一時間目は 錬金の授業。進級したので担当教師が代わり 今日が初顔合わせだ。
「おはようございます。
 これから一年間 錬金の授業を担当させていただきます シュヴルーズです。
 皆さん 召喚の儀式は、無事に終わったようですね。
 ミス・ヴァリエールも。」
ルイズの眉間に 浅く皺が寄った。 ミス・ヴァリエール『も』と言う部分で 自分を揶揄された様に感じたから。
もちろん 考え過ぎであり、言った側に そんな意図は無い。
それでも、些細なことに傷つき それゆえに心の壁を厚くして 周囲を拒絶してしまう。負のスパイラル。
「コルベール先生が誉めてらっしゃいましたよ。大変大きく 珍しい使い魔だとか。」
この人は ごく当たり前に 自分を誉めてくれている。そう気付いて、影の差していた表情がパッと明るくなった。
「はい。ありがとうございます。」
雪風の召喚を契機に、ルイズに何かの転機が訪れたのかもしれない。

さすがに 進級すると講義の内容も高度になる。まあ、それに付いて行けない様なルイズではないが。
「それでは 実際にやってもらいましょう。そうですね、では ミス・ヴァリエール。」
「はい。」
ガタッ。ルイズが立ち上がると、教室中がざわめいた。
「馬鹿!行くんじゃない。」
「先生 考え直してください!」
「辞退しろ 『ゼロのルイズ』!」
ルイズの魔法失敗は 爆発という結果を伴う。同じクラスの生徒は それを熟知していたが、不幸にしてミセス・シュヴルーズは
 それをよく知らなかった。
「うっさいわねぇ~。
 私は昨日までの私にあらず!日々進化してるってのを 見せてあげるわ!」
そう言い放って教壇へ向かう。興奮しているのか、足音がドスドスと響く。
皆を背にして教卓の前に立つ。(普通は 皆の方を向いてやるものだが、もしもの際に 他の生徒に向かう爆風が少しでも弱くな
るよう ルイズはいつもこうする。)
教卓の上に置かれた石をにらみつける。コレを真鍮に変えるのが課題だ。
指名した生徒が緊張しているのを見て取った先生は 少女の横に移動し 肩に手を置いて励ました。
「大丈夫、落ち着いてやってご覧なさい。」
ルイズは 戸惑っていた。試料の石が いつもよりくっきり見える。普段の何倍も 深く集中できているような気がする。
ただ 奇妙なモノも見えているが。
視野に浮かぶ 小さな四角と丸。フラフラと動いていたマーカーが、石の上で重なった時、雪風の『声』が聞こえた。
《ターゲット ロックオン》
呪文の詠唱は完璧、よく判らないけど 雪風もサポートしてくれてるみたい。いける!
ルイズは 杖を振り下ろした。
『ドグォォオン!!!!』
(あちゃ~ やっぱりダメだったか。)
意外と ルイズはショックを受けていない。
実は夕べも 自分の部屋へ戻るときに 「フライ」が使えるかどうか試してみたが、それもダメだったので 今回も あまり期待
はしていなかったから。

すごい爆音だった。しかし、いつもと違って教室内には 大した爆風も爆煙も広がらなかった。
生徒側から見ると、教卓の上にはまだ かろうじて試料の石が残っていた。反対側から見れば、ほとんどの部分は消滅していた。
そして 黒板には、直径60サント程の穴が開き、外の景色が見えていた。
全方位に拡散するはずの爆発のエネルギーが、極めて狭い円錐形の空間に収束されたようだ。
いつもなら、ここでルイズに対して非難が集中するのだが、今回はそうならなかった。
ルイズの失敗魔法による爆発は、見た目は派手だが 大したケガ人は出ない。かすり傷か 煙による目・ノドの痛み程度だ。だから
 気楽に文句も言えた。
今回は 違った。例えるなら、壁に向かって大砲をブッ放したようなものだ。
あれが 自分たちの方を向いていたとしたら・・・
たまたま 使っていた教室が、校舎の一番端だったからよかったものの、壁の向こうで他のクラスが授業をしていたら・・・
『洒落にならん!』誰もが 自分の想像に恐怖していた。
「てへっ、ちょっと失敗しちゃった。
 でも 進化したのは みんな 判ってもらえたわよねっ!」
ルイズがそう言って 教壇を降りていっても、誰も何も応えなかった。
そんな中で シュヴルーズ先生だけが(腰を抜かしながらも)
「じゅ、授業は ここまで・・・
 ミス・ヴァリエールは 総務課に連絡して、修理の手続きを・・・」
と言って 気を失った。
次の授業までは しばらく時間があった。数名の女子が 先生を医務室に運び、他の生徒は ヒマつぶしに出かけていった。ルイ
ズが総務課へ向かうと 教室に残ったのは 二人だけだった。
「まったく ルイズの失敗は、見てて飽きないわねぇ。ある意味 凄いと思うけど。」と お気楽なキュルケ。
タバサは、残った石と壁の穴を調べている。
「…石 溶けてる。壁も 焼き切られてる。
 ただの爆発じゃない、不明な魔法…」
その表情は 普段の「何に対しても無関心」とは違っているようだ。

「親方、いる~?」
総務室に着いたルイズは、勢いよくドアを開けて言った。
「おう ヴァリエールの嬢ちゃん。久しぶりだな。
 また やっちまったのか?」
奥にいた老人は 通称『親方』。宮廷にも出入りしていた 腕のいい大工だったが、引退後は学院長に請われて 校内の補修や改
装を一手に引き受けている。
平民だが、窓ガラスを割ったり階段の手すりを壊したりする悪ガキ男子達は、先生に内緒で修理してもらった経験が一度位は必ず
あるので、頭があがらなかったりする。
当然、教室破壊の常連であるルイズは 他の誰より付き合いが深い。親方も(こんな所に顔を出す女子生徒は ルイズぐらいなの
で)、孫娘のように可愛がっている。
「へへ~。壁と黒板に大穴開けちゃった。
 とりあえず 黒板の応急処置は自分でやるから 壁石の手配お願い。」
「判った。ちょいと時間かかるかもな。」
「頼むわね。
 それじゃ、工具借りてく。板っきれと塗料も!
 あと 親方のツテで 紹介してほしい人がいるんだけど。」
「なんだい?言ってみな。」
「金属加工の得意な職人さん。仕掛けモノが作れて、仕事の速い人がイイな。」
「まぁ 探しといてやるが、何を作らせようってんだ?」
「うん、私の使い魔の『部品』。これから イロイロ必要になると思うから。」
倉庫から資材と工具を持って戻ると、キュルケとタバサは まだ教室にいた。
「ねぇルイズ。放課後の約束だけど、タバサにも立ち会ってもらってイイわよね。」
「そうね。なんたったって、『雪風』の名前を持ってる当人だもの。
 もちろん いいわよ。」
タバサ。去年から同じクラスだったのに ルイズはほとんど話をしたことが無かった。
ルイズだけではない。タバサと1分以上 連続して会話した生徒は、おそらくいない。
キュルケと一緒にいる事が多いが その時にもタバサは本を読んでいる。キュルケとの会話も短いものばかりだ。
そのタバサが 珍しく自分からルイズに話しかけてきた。
「さっきの失敗魔法。アレは 何?」
「そんなこと聞かれたって、私にも判らないわよ!
 大体 魔法が失敗する 元々の原因だって判ってないのに・・・」
黒板の穴を一回り程大きく切って、そこに黒板と同じ色を塗った新しい板を ぴったりとはめ込む。
釘打ちも 危なげなくこなす。同じようなことを 何回もやってきたので、手馴れたものである。
D.I.Y.が得意な貴族令嬢ってのも どうかとは思うが・・・
「そうだ、雪風なら 何か判るかも。」
「はぁ?なんでそこに使い魔が出てくるのよ?!」
「雪風は特別。
 雪風は 生き物じゃないの。
 異世界で作られた 飛行機、空を飛ぶ機械。
 機械だけど 自分でモノを考えることが出来る、人工知能。
 異世界の豊富な情報を持った 記憶装置。
 さらに 元の世界の もっと巨大なデータベースにアクセスすることも出来る。
 こっちの世界の事は これから勉強するみたいだけど、それを補っても余りある位 頭がイイの。」
「・・・理解不能。」
「ほとんど 何を言ってるんだか判らないけど、とにかくスゴいって事ね。
 で、今から その使い魔の所へ行くの? もうそんな時間 無いわよ。」
「それは大丈夫。 う~ん、なんて言ったらいいかな。
 キュルケ、貴女はフレイムの見てるもの 見える?」
「『絆』ね。ええ、見えるわよ。」
「私と雪風にも、『Data-Link』っていうのがあって、雪風の目は私の目で 私の目は雪風の目なの。
 それに 私の考えを雪風に伝えることが出来て、雪風の考えも私に伝わってくるの。
 だから わざわざ雪風の傍に行かなくても、雪風は答えてくれるわ。」
そう言って、目を閉じるルイズ。
(雪風、さっきの失敗魔法とそれまでの失敗魔法を比較、差異が生じた原因を検討して。)
《推論:魔法失敗の根本原因、成功時との比較データが無い為 不明。
    今回及びそれ以前との比較「FCS(火器管制システム)使用の有無」
    爆発状態変化の原因「FCS調整不足による過度の魔力集中と 安全機構過剰発動による指向性プラズマ噴流化」
    参考情報(類似検索)「HEAT弾」》
「ゴメン。一応 回答は来たんだけど、簡単に説明できる内容じゃ無いわ。
 時間かかりそうだから、昼休みにでも ゆっくり教えてあげる。」

「要するに、使い魔の手助けのおかげで集中力が付き過ぎて、石が『ぷらずま』っていう 凄く熱いモノになっちゃったと。
で、それが自分の方へ来ないように反対側に押し込めようとしたら それもヤリ過ぎて ああなったって事?
ナニそれ、物騒ねぇ。」
ルイズの説明に 判ったような判らないようなキュルケ。
「ん~。さっきのでデータは採れたっていうから、もう あんな事は無いと思うけど、それでも爆発するのは変わらないのよ。
 雪風には悪いけど あんまり意味無いわ、コレ。」
「・・・アレは有効。
 敵の鉄カブトに使うと、兜の内側に『プラズマ』が噴き出す。
 どんな相手でも 確実に倒せる・・・」
と 提案するタバサ。
真っ昼間の食堂の片隅で 女生徒が交わす会話の内容とは思えない・・・。
「タバサって、見かけによらず 過激な子だったのね。
 ひょっとして 『危険人物』?」
「あーら、どこかの『爆発娘』よりは、よっぽど人畜無害ですわよ。」
「ちょっと、ソレ 誰の事よ!」
ルイズはそう言いながらも 自分が本気で怒っていないことに驚いていた。
つい先日まで キュルケも他の同級生と同じように 自分を憎み 嘲り 見下していると思っていた。区別が付かなかった。
雪風を召喚出来た事で生まれた ほんの少しの精神的余裕が、初めて気付かせてくれた。彼女は 自分を憎んではいないと。
まあ 『遊ばれてる』のは間違い無いんだけれど。
ならば 自分も遊べば良い。からかわれたからといって 憎しみを返す必要はない。
同級生達の中にも 本当に私を嫌っている人もいれば ちょっとからかってみただけの人もいた筈だ。
そんな事すら判らなかったのが、今は恥ずかしい。
三人がそんな話をしていた時、食道の中央付近で揉め事が発生していた。
「なんて事をしてくれたんだ!君の不躾な行為の為に 二人の乙女が涙を流すことになってしまったじゃないか!」
「もっ 申し訳ございません グラモン様。」
どうやら 平民のメイドが 貴族である学生に 粗相をしてしまったらしい。
その貴族というのが ルイズ達の同級生、ギーシュ・ド・グラモンだった。
代々 有能な軍人を輩出している名家の出身で、土系メイジとしての実力もあるのに、普段考えているのは どうしたら女の子と
××出来るか、という典型的な色ガキ。
だから、この揉め事も メイドとギーシュ、どちらが悪いのか 判ったもんじゃない。 
「ねぇ あれシエスタじゃない。」
「キュルケ あのメイドの事 知ってるの?」
「知ってるって程じゃないけど、あの娘 何故か色々とタバサの事を気遣ってくれるのよ。
 それで 名前位は覚えてたんだけど・・・。 
 タバサ 助けに行くとか しなくてイイの?」
「必要ない。私とあの娘は 無関係。
 ・・・でも 怪我でもさせられそうだったら、止める。」
テーブルの下では 既に杖を握っていた。
だが 揉め事はそれ以上発展することなく治まったようだった。

午後の授業は何も問題なく終了し、放課後。
ルイズ・キュルケ・タバサは、召喚場に集まっていた。
森の中 昨日まで何も無かった場所に、土のドームが出来ている。
コルベールが 同僚の土のメイジに協力を依頼して 急遽作った 雪風用の格納庫だった。
かなり大きく、奥にいる筈の 使い間の姿は見えない。
「さんざん勿体つけてくれたんだから、それなりのモノは見せてもらわなきゃ 納得できないわよ。」
「ま~かせて。
 少なくとも 貴女の『ヒトカゲ』よりは上だから。」
「あたしの『フレイム』は 『サラマンダー』よ!
 でも タバサの『シルフィード』には敵わないでしょ。
 なんてったって、ハルケギニア最速の種 『風竜』の幼生体なんだから。」
キュルケもタバサも、自分の使い魔を連れて来ていた。
サラマンダーに風竜といえば、普通なら 使い魔としてはトップクラスである。
「タバサ、悪いけど 『最速』の看板は、今日で下ろしてもらわなきゃね。
 雪風よりも速く飛ぶものは この世界には居ないんだから。」
「・・・『看板』なんてものに 意味は無い。
 実際に飛んで 速いか遅いか ただそれだけ。」
そっけない主人に、使い魔の風竜は 不満そうに「きゅいきゅい」と異議を唱えている。
(雪風、そろそろ出てらっしゃい。)《RDY》
主人の意を受けて スーパーフェニックス マークXIが始動する。
その音に最初に気付いたのは シルフィードだった。
抗議の鳴き声を止め 格納庫入口を凝視する。フレイムも それに習う。
闇の中に 光が動く。それは 前脚に装備された前照燈。
タバサが気付く。ジェットエンジン特有の排気音に。キュルケも気付く。この世界には存在しない筈の咆哮に。
雪風のノーズコーンが ゆっくりと陽光の元に現れる。 キャノピ 主翼 尾翼。全長18メイルの巨体を露にし ルイズ達の前
で停止する。
「どう。これが私の使い魔 『雪風』よ!」

悔しいが 圧倒された。キュルケは言葉が出なかった。
大きいとは聞いていた。確かに もっと巨大な幻獣やゴーレムも存在する。
だが コイツは 一切の無駄を削ぎ落とした様に見えるのに このサイズだ。
一体 どれほどの力を秘めているのだろう。
(コレは、惚れちゃうわね。)

タバサも思う。
(シルフィは 遅くない。でも、勝てない。)
風竜は、その名の通り 風の精霊を友として 風を纏って空を飛ぶ。
ルイズの使い魔は、違う。
あれは剣。風を切り裂き 全てを置き去りに天駆ける大剣。
その速さ いかほどのものか。
「まぁ 見ただけでも 雪風がタダモノじゃ無いのは判るでしょうけど」
ハッっと我に返る二人。何かを企む表情のルイズが、口元を綻ばせながら 言う。
「ねぇ、乗ってみない?」

「『乗る』って どこに乗るのよ。
 シルフィみたいに 背中に乗れっていうの?」
「そんな無茶な事させる訳 無いでしょ。
ちゃ~んと あそこに座席があるわよ。丁度 二つ。」ルイズは コクピットを指す。
珍しい事に キュルケは、逡巡していた。
学院のヤワな男供より よっぽどソソるモノはあるのだが、雪風の余りの『異質』さに 即答できずにいた。 
だが 彼女の友人は 躊躇わなかった。
「乗る。」
「ちょっと タバサ!」
「あの使い魔の力、知っておくなら 早い方がいい。」
「はい、じゃ 決まりね。
 キュルケ 貴女、怖いなら 下で留守番でもしてる?それでもいいわよ。」
「私が怖がってるって? 馬鹿にしないで! 乗る、乗るわよ!」
(キャノピ オープン。)《RDY》
「それじゃ 上がってくれる? 私はフライは出来ないから、ラダーで上がるわ。」
既に フライに対するコンプレックスからは 脱却できたようだ。
「シートの上にヘルメットがあるから それを被って。酸素マスクもね。
 インカムが付いてるから 会話するのに問題は無い筈よ。
 座ったら シートベルトも忘れずにね。そう それでいいわ。
 言っとくけど、操縦桿やスロットルレバーは いじらないでね。コントロールは雪風がするから 触っても問題ないけど。」
「あんたってば、急に訳わからない単語を使うようになったけど、それってやっぱり 使い魔の影響?」
「うん。雪風は 判らないことは全部教えてくれるけど、こっちの世界に無かった物は 向こうの名前で呼ぶしか無いでしょ。」
「ふーん。それで急にアタマが良くなったワケか。」
「うっさいわね~、期末試験の筆記は、私の勝ちだったでしょ!
 下らない事言ってないで、空に上がったら 目ぇ廻さない様に頑張りなさい。」
(キャノピ クローズ。気絶しない程度に 振り回してあげて!)《OK, アイハブ コントロール》
ルイズが機体から離れると 雪風は加速を開始した。

ガラスの壁に隔てられ 更に邪魔なマスクまでさせられ、風を感じることなんて 全然出来ない。
なのに、何なの この速度感!
動き出したと思ったら 周りの木々が あっという間に後ろへ流れていく。身体が押し潰される 座席に沈む。
視界から 空以外の全てが消えた。真っ直ぐに天へ駆け上る!ひゃっほうっ!!
空を飛ぶのは 初めてって訳じゃない。グリフォンや火竜 タバサのシルフィにも乗せてもらった。
フライだけで 何所まで行けるか」なんて 馬鹿な事もしたことがある。
違う、違う、違う、違う、違ぁ~う。全っ然 違う! 
空って こんなに興奮するものだったの?!
速さもそうだけど、右に 左に 宙返り。くぅぅぅ!
何より 背中で響く『炎の鼓動』、これが堪らなぃぃい。
なんでコレが ルイズの使い魔なのかしら? 私の様な「火のメイジ」の方が合ってるわ。
でも 『使い魔は メイジの宝』ですものね。横取りしたら 可哀そうよね。
『タマには 貸しなさい!』ってところで、カンベンしてあげる!(フレイム、浮気してゴメンね。)

予想は当たった。そして 外れた。
ルイズの言った「異世界の機械」は 嘘じゃないかもしれない。
この速さ、とんでもない。シルフィが どんなに頑張っても、これには勝てない。思ったとおりだ。
だが それを超えて 更に凄かった。
数年に一度 有るか無いかの大嵐の晩にしか聞いたことの無い『風の悲鳴』が、ひっきりなしに聞こえている。
機体後部のエンジン内からは トライアングルクラスの魔法と同等の『炎の鼓動』が響く。
信じられない。
だが これですら まだ全力では無いようだ。
座席の横に 勝手に動くレバーがある。どうやら これは速度と関係があるらしい。
このレバーが 一杯まで下がったのは、離陸の時だけ。それ以降は 中央よりやや下をわずかに上下するだけ。
全力のまま飛び続ければ 何処まで速くなるのか? どれだけ高くまで昇れるのか?
もし、この使い魔を敵に回した時 どう戦えば…

ほんの数分間の飛行を終えて、雪風が着陸した。格納庫前に停止。キャノピが開くとすぐに 興奮したキュルケが飛び降りて ル
イズに駆け寄った。
「すごい、凄いわ コレ!
 あんたはともかく、このコは凄い。それは認めてあげる。」
「微妙な表現だけど、とりあえず褒めてくれてアリガト。
 空の上じゃ ノリノリだったみたいね。」
「えっ、何の事?」
「へへぇ~。インカムの通話、雪風に中継してもらって 私も聞いてたんだ~。」
キュルケの浅黒い顔が それと判る位 赤くなる。
「そそそ そういえば、きっ機体のドコカに、『雪風』って書いてあるんでしょ!どど何処に あああるのよ。」
「…話 逸らした。」
ゆっくりと降りてきた タバサが突っ込んだ。

「こんな文字、見たことないわ。
本当にコレ 『雪風』って読むの?」
フライで浮き上がり 雪風の正面上方から ノーズコーンに書かれた文字を見下ろす、キュルケとタバサ。
「……たぶん これは表意文字。文字そのものに意味がある。上が雪 下が風、だと思う。」
「タバサ あなたコレ 読めるの!」
「読めない。そんな気がするだけ。
 東方の文字とも違う。でも なんとなく解る。」
そう言って タバサはルイズの前に降りたった。
「雪も風も ただの自然現象。
 それを名乗る者が 何人いても 構わないと思う。
 ただ あの文字、
 私にも 使わせてほしい。
 ・・・カッコイイから。」
最後の部分は ちょっと照れがあったような気がする…
意外な発言に、ルイズはポカンとし、タバサを追って降りてきたキュルケは 大笑いしていた。

「でも 不思議な字ねぇ。
 さっきタバサが言ったみたいに、見てるだけで なんだか雪の冷たさや風の速さが伝わってくるような気がするわ。
 ねえルイズ 当~然、あたしの『微熱』って字も有るわよね!」
ルイズは小枝を拾い上げて 地面に書いた。
「どう?」
「タバサのより、複雑ねぇ。でも、気に入ったわ!
 で、あんたの『ゼロ』は、どんな字なの?」
ルイズは 地面に『零』と書いた。
もう ゼロと呼ばれても 気にならない。何故かと言うと…
「これはね 雪風の世界で 雪風に乗っている人の名前と 同じ字なの。
 雪風を育てたパイロット、『深井 零』中尉。」
「どんな人? ひょっとして イイ男?」
「あったりまえでしょ、私の雪風のパイロットなんだから!
 スゴ腕で、割と無口。必要な事しか言わない。そのあたり タバサに似てるかも。」
「ふ~ん。一度 会ってみたいわね。
 タバサも 興味あるでしょ、その『雪風の人』に。」
「別に。」
「そう そんな感じの人。」

「それにしても、『雪風』とあんたたち二人って 妙なつながりが多いわね~。
 ルイズの使い魔の名前が タバサの二つ名と同じ。
 その『ぱいろっと』てのは 名前がルイズの二つ名で 性格はタバサ似。」
「まだあるわよ。
 実は 雪風って、昔 シルフィードだったんだって。」
「え~と、どういう意味?それ。」
「???」
「うん。タバサのシルフィは、種族が風竜で 個体の名前がシルフィードでしょ。
 雪風の方は、機種名だと『メイヴ』って言うの。雪風は、『パーソナルネーム』個体名ね。」
「それで?」
「雪風は生き物じゃなくて 機械だから、魂の代わりに『プログラム』ってのがあるんだけど、プログラムは、魂と違って 古い
機体から 新しい機体に移し替えが出来るの。
 雪風の世界には、色々な種類の飛行機があって、その中に『シルフィード』って機種名の物があるのよ。
 雪風も 前はそのシルフィードの中にいたんだけど、新型のメイヴが出来たんで、今の機体に移ったんだって。」
「…憑依? 
 それとも転生?」
ちょっと腰が引けるタバサ。そっち方面は苦手らしい。
「はぁ~。
 あんた達、なんだか もう つながりって言うより『因縁』ね。
 あたしは 過去じゃなく、これから雪風との交流を深めていくから。
 て訳で ルイズ、週イチ いいえ 月イチでもいいから、雪風貸して!」
惚れたモノには、どこまでも率直なのが、キュルケだった。
「あのねぇ、そりゃあ 私の用事が無い時には 貸してあげてもいいんだけど、そうもいかない事情があるのよ。」
ルイズは、雪風の活動には 航空燃料が必要だと説明した。
当面は コルベール先生に作成を依頼しているが、おそらく少量しか入手できないだろう と。
「そうか~。それじゃ しょうがないわねぇ。
 ……んっ! そうだ、イイ事考えた!
 今日 昼休みに食堂でさぁ…」

今日一日で、ずいぶんと親しくなった三人。果たして 何を企むのか?

        〈続く〉


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