あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ウボァーな使い魔-06

ルイズの錬金によって、3メイル程度吹き飛ばされて目を回していたシュヴルーズであったが、
気がついた途端、ルイズに片づけを命じ、教室の被害確認もそこそこにしてヨロヨロとした足取りで教室を出ていった。
結果、誰もいなくなった教室で机の破片を掃除するルイズの姿があった。
いや、正確にはもう一人…マティウスが教室の後方の椅子に座ったままだ。

「いつもこうなのよ」
「…」
「魔法を使おうとすると爆発するの」
「…」
「ゼロって呼ばれてる意味、わかったでしょ」
「…」
「…ちょっと!なんとか言いなさいよ!」

掃除をしながらマティウスに話しかけるルイズ。
使い魔に掃除を命じないのは、マティウスが掃除を手伝うような使い魔ではないと学んだせいだろうか、
それとも己のふがいなさに落胆しているせいだろうか。

(サモン・サーヴァントは成功したのに…なんで…どうして…)

そんなルイズを眺めていたマティウスが突然立ち上がる。

「空腹だ。食堂はどこだ?」

ルイズは半ば呆れた顔でマティウスを見る。主人をおいて食堂に行くつもりだろうか。
いや、こいつならやりかねないだろう。主人を床に寝せ、自分がベッドで寝るようなヤツである。

「食堂があると聞いていたが?」
「…あ、アンタねぇ…
 ご主人様が掃除してるのがわからないのッ!!!」

小動物が敵を威嚇するかのように、腕を振り上げながらぴょこぴょこ飛び跳ねて怒るルイズ。
これはこれで、なかなか珍妙な姿だ。
マティウスとしてはそんなルイズをしばらく眺めるのも悪くなかったが、今朝から何も食べていないのでかなり空腹だ。
学院に食堂があることを聞いていたので、そこで食事をとりたいわけだが、ルイズは先に食堂の場所を教える気はなさそうだ。

「やれやれ…ご苦労なことだ。原因は貴様にあれど、責任は教師にあるというのに…」

結局、マティウスの不満を余所に掃除は完遂された。
…とはいえ残り僅かだったので、さほど時間はかからなかったが。
トリステイン魔法学院の食堂は、貴族の子弟が集う学院の食堂だけのことはあり、
豪華な内装が施され、食卓には垂涎必至の贅沢な料理が並ぶ。

入口近くの席に座る生徒が口に運ぶのは、海老のソテーと澄んだコンソメスープ。
はじけそうなぷりぷりの海老の身に濃厚なソースがかかっている。
一方のスープも、淡い黄金色を湛え、食欲をそそる芳香を放つ。
皇帝であったマティウスでも充分に満足できそうな料理水準だ。

「じゃあ、マティは先に席へ行ってなさい。私は料理の手配してくるから」

ルイズは奥まった位置の席を指し示しながらそう言うと、カウンターのほうへ歩いていく。
このとき、ルイズには一つの企みがあった。
使い魔の立場をわきまえないマティウスに、その立場を思い知らせるのだ。

(料理で明確に差をつけたら、マティも自分の立場がわかるわよね。
 でも、さすがに食事抜きは可哀そうだから、パンとスープくらいは…)

貧相な食事を与えられれば、当然ながらマティウスは怒るだろう。
だが、使い魔としての躾は初めが肝心だとルイズは喜々として、厨房近くのカウンターへ向かった。
いくらルイズでも、相手が地獄を支配していた身と知っていたら、そんな危ない真似はしなかっただろうが――。

一方のマティウス、素直にルイズの指示した席に向かっていたが、途中に数人の男子生徒がたむろしている。
半ば通路をふさぐように談笑しており、通行の邪魔だ。その話題も色恋沙汰というたわいもない内容ときている。

「おい、ギーシュ 今、誰と付き合ってるんだよ!?」
「僕は薔薇さ。薔薇は見る者全てを楽しませるものさ。」
「また、そんなこと言って…」

その時、ギーシュと呼ばれた青年が気取ったポーズをつけた拍子に薄紫色の液体が入った小瓶を落とした。
小瓶は小さな音を立てて、彼の足もとに転がる。彼は気づいていないようだ。
だが、近くでテーブルの片づけをしていた黒髪の少女がそれに気がついた。
彼女の名前はシエスタ。トリステイン学院で働くメイドである。
シエスタは小瓶を拾い上げると彼に声をかける。

「あの貴族様、これを落とされましたが…」

ギーシュは、彼女の手にある小瓶を認めると一瞬だけぎょっとした表情を見せたが、
そのまま無視して、友人らの方に向き直る。どうやら、知らぬ存ぜぬで通す気らしい。
ギーシュの友人たちが、その小瓶に目をとめ、おや?という顔をする。

まさにその時、ギーシュの背後まで歩を進めたマティウスが目の前の障害物に声をかけた。

「邪魔だ。退け。」

背後から急に命令口調で声をかけられ、慌ててギーシュは脇に身を寄せつつ、振りかえる。
そして発言者を確認すると、苦虫を噛み潰したような顔になった。

(こいつは確か、マティウスとかいうルイズの呼んだ平民…)

高圧的な声をかけられて思わず道を譲ってしまったが、相手はただの平民のはずだ。
慌てたがゆえに「すべきではなかったこと」をしてしまい、無性に腹が立つ。
文句を言おうにも、いったん道を譲ってしまった後だ。

マティウスはそんなギーシュを一瞥することもなく、ギーシュの横を悠々と通り抜ける。
その時、マティウスの左右に伸びた肩当てがシエスタにあたり、その拍子に小瓶が再び転がり落ちた。
皇帝陛下の衣装は周囲の邪魔になること甚だしい。

「あっ…」

シエスタの狼狽を余所に、紫色の小瓶はマティウスの1メイルほど先に転がった。
マティウスはまったく気にすることなく歩みを進めると…

バリッ!!

見事に小瓶を踏み砕く。気付かなかったわけではない。そんなものに配慮する必要がなかっただけだ。
あたりに香水のきつい匂いが充満する。

「おい、今の瓶…」
「それにこの匂い…」
「これはモンモランシーが自分のために調合している香水じゃないか?」
「ということは…ギーシュが付き合っているのモンモランシーか!」

男子生徒が騒いでいるのを余所に、ギーシュはマティウスを呼びとめる。
さきほど言い逃した文句を言うチャンスだ。
「待ちたまえ! ヴァリエールの使い魔君。」
「…私のことか?」

面倒そうに振り返るマティウス…が、その視線はすぐにギーシュの背後に向けられた。
一人の女生徒がギーシュをにらみつけながら、向かってきている。あまり友好的な雰囲気ではない。

「ギーシュ様!」
「!?」

ギョッとしてギーシュが振り返る。
そのまま女生徒はギーシュに詰め寄った。

「やはり…やはり、モンモランシー様と…」
「ケ、ケティ…これは誤解なんだ…」

パァン! ケティの平手打ちが見事に決まる。

なかなか面白い見世物だとマティウスは観賞を決め込むことにした。
なにしろ、この騒ぎを聞きつけて、もう1人 別の女生徒がこっちへ向かってきているのだ。
こちらがモンモランシーだろうか?

ケティにひっぱたかれて星を見たギーシュが次に目にした光景は、
去りゆくケティの後姿と怒りのオーラを身にまとったモンモランシーが近づいてくる姿であった。

「モ、モンモランシー、これは誤解なんだ…」
「…ギーシュ…貴方って人は…」

パァン! こちらも見事な平手打ちだ。
バシャ… しかも、手近にあったコップの水をギーシュの頭からかけてしまった。ケティと同じ行動では気が済まない女心だろうか。
身から出たサビとはいえ、かなりの修羅場だ。去っていくモンモランシー。
両頬を腫らし、ポタポタと水を滴らせるギーシュ。なるほど、水も滴るいい男というわけだ。

マティウスはそんなギーシュに感想を述べる。
「いい 見世物だったぞ ギーシュ」

皇帝陛下のお誉めに与ったギーシュだったが、その怒りは頂点に達していた。
そのまま立ち去ろうとするマティウスを呼びとめる。

「待ちたまえ…このままで済むと思っているのか…」
「また見世物の続きでも始まるのか?」
「ふざけるな…君のせいで2人のレディが傷ついたんだぞ…」

その言葉を聞き、マティウスは急に興を殺がれた表情となる。

「つまらんな。自身の怒りを他者への義憤に置き換えようというのか?
 自分自身のために怒れぬのは弱き証左だぞ。」
「…弱いだって?僕のことかい?   
 もう許さない…決闘だ   …君に決闘を申し込む!!!」

ギーシュに落ち度があったとしたら、二股をかけていたことでもなければ、小瓶を落としたことでもない。
知らなかったことだ。相手が万単位の人間の命を奪った存在であることを。


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