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ルイズと無重力巫女さん-20



―その時の事は今も尚覚えていて、時には眠っているときにさえあの光景が夢としてよみがえる。

銀の降臨祭の前日、その日私と母はとある事情で父の友人宅で過ごしていた。
薪をくべられた暖炉の中で炎がまるで生きているかのように動き、部屋の中を暖めてくれる。
窓から外を見れば空から降ってくる白い雪が地面や木の上に積もり、辺り一面は銀世界であった。
まだ小さかった私はイスに座ってくつろいでいた母の横に座り、古ぼけた壊れたオルゴールで遊んでいた。

最初このオルゴールを見つけ、試しに開けてみたがウンともスンともいわなかった。
その後、秘宝と呼ばれていた指輪を嵌めて遊んでいたある日のこと…
ちょっとした弾みで間違ってオルゴールの蓋を開いたところ、鮮やかな音楽がオルゴールから聞こえてきた。
少しギョッとしたものの、その音色を聞くと何故か懐かしい感じがして安心するのである。

そして今日もオルゴールが奏でてくれる音楽は私の耳を癒し、心地よい気分にさせてくれる。
母はそんな私を突然抱き上げると膝の上に自分を乗せ、頭を優しく撫でてくれた。
私のよりも少し大きく、細くて…そしてとても暖かい母の手の感触は今も忘れていない。
自分が顔を向けると、母が優しく微笑んでくれた。


―――――それが、最後に見た母の笑顔であった。
          今思えば…きっと母は自分の末路を予想していたのだろう。

   「―――!――――――?」

 「――――――!?―――――――!!!」

「―――――!!」

突然、ホールの方から何やら騒ぎ声が聞こえてきた。
何事かと思い、私がホールへと続くドアの方へ顔を向けた直後―――――
今まで背中を丸めて昼寝をしている猫の様に静かだった母が自分を乱暴に抱き上げたのだ。
突然のことに私はビクッと体を震わせ涙目になってしまう。
「い…イタイ!お母さん何するのっ!?」
私の悲痛な声に母は何も言わず、部屋に隅に設置されていたクローゼットを開け、その中に私を押し込んだ。
いきなりの豹変ぶりに私は思わず泣きそうになったがその前に母が私の口を手で押さえつけ、言った。

「いい『   』?貴方はまだ小さい、だからまだもっとこの世界の素晴らしさを知らなければ行けない…。
 私はその全てを貴方に教えてあげることはもう出来ないけど――――」
その時、部屋の外から何やら叫び声に混じって魔法が飛び交う音まで聞こえてきた。

魔法の音に交じり、何かが倒れる音も聞こえてきた。
母はハッとした顔になると私の額にキスをし、クローゼットを閉めてしまった。
そしてその瞬間、ドアが開く音と共に足音が私の耳に入ってくる。
この時は何か急ぎの伝言でもあったのだろうかと訝しんだけど、それは違った。
私はクローゼットの外から聞こえてきた男の声を聞いて震え上がった。

「間違いない―――エルフだ。」

それは私が生まれてこの方初めて聞いた、憎しみが篭もった声であった。
まるで憎しみの念を凝縮し、それを体に無理矢理押し込まれたような者が発しているような声…。
男の声に恐怖した私は、肌身離さず持ち歩いていた父の杖を両手で持つとギュッと握りしめた。
それから数秒してから、華麗で清楚な母の声が直ぐ傍から聞こえてきた。
聖職者のように杖を握りしめて震えている私を励ますかのように…
「なんの抵抗も致しませぬ、私たちエルフは争いは望ま…」
だが、母の言葉を遮るかのように男の怒声が私の耳を突いた。
「ほざくな化け物め!やってしまえ!」
次いで聞こえてきたのは母を襲う激しい魔法の音。
薄いクローゼットのドア越しに聞こえてくるのは詠唱する男達の声と何かを切り裂く音。
死ぬまで私を気遣ってくれたのか、母は泣き叫ぶようなことはしなかった。

それから数十分…もしかするとたったの数十秒かも知れない。
魔法の音がふと途切れ、誰かがクローゼットの方へと近づいてきた。
足音に混じって鎧が擦れる音も聞こえるから、きっと母を殺した連中の者だろう。

やがて足音はすぐ私の目の前まで来ると聞こえなくなり、――――――――そこで目の前が真っ暗になった。




「ん…、うぅん…。」
夢から覚めた私は目を開き、二、三回瞬きをするとゆっくりと上半身を起こし、ため息をついた。
(あの時の事を夢見るなんて…。)
私はうんざりしたように心の中で呟くと、ふと辺りを見回す。
どうやら、うっそうと生い茂る森の中で寝ていたようだ。
足元を見てみると篭が転がっており、その周りには色鮮やかな木の実が転がっている。
ソレを見た私はある事をすぐに思い出すことが出来た。

自分が木の実拾いの帰りにもの凄い音を聞いてそちらの方に近づいていった事。
そこで見知らぬ人間に見つかってしまい、その際に帽子が頭から取れて…それで耳を見られて―――――



「どうやら起きたようね。」

ふと声を掛けられた私は後ろを振り向き、そこにいた人物を見て目を丸くした。
後ろにいたのは黒い髪に見たことのない紅白服を着た少女であった。
その年相応な少女の顔と、それに対立するかのような年齢的に不相応な白けた瞳を見た途端、私は思い出した。


帽子を落ちた事に気がついた私はとりあえず帽子を手に取り立ち上がろうとした。
だけど、石か何かに躓いてしまい体勢を崩して後ろに倒れて目の前が真っ暗になって―――

全てを思い出した私は『耳を見られてしまった』という事に焦りを感じた。
母から受け継がれたこの耳はこのアルビオン大陸だけではなく、その下にある世界で暮らす人々に畏怖の対象として見られている。
力なき者なら恐れおののいて逃げてしまうが、力を持つ者なら間近いなくその耳の持ち主を『殺す』であろう。

よく見ると杖を右手に持っているメイジには違いない。
私の母もこの耳の所為でメイジ、というより貴族達に殺されてしまい、私はそうなるのを怖れてこの森の中で暮らしている。
これから起こるであろう結末に私は恐怖の余り動くことも出来ず、少女の方へと顔を向けた。
彼女は先程と同じように白けた目で此方をジッと見つめており、私はその目を見て少しだけ驚いた。
その瞳には私の『耳』に対する怒りや殺意、そして怖れの色は一切見えない。

(まさか…この人は私の耳を見て何も感じていないの…?)
「ねぇ、少し聞きたいことがあるんだけど。」
少女が口を開き、鈴のように綺麗で、だけど何処か冷たい響きを持った声で私に話しかけてきた。
「あ、はっ…はい!?…こ、ここはアルビオンのウエストウッドっていうところだけど…?」
突然話しかけられた私はビクッと体を震わせ、過剰に反応してしまった。
一方の少女も、『アルビオン』という言葉を聞いて納得したように頷いている。
「成る程、ここがアルビオンってわけだったのね…。」
彼女は一人そう呟くと、すぐに私の方に顔を向け、話しかけてきた。

「でも――――なんでそんなにビックリしてるのよ?」

私はその言葉を聞いて、今確信した。

―――――ああ、この人は私を全然怖れてはいないのだと。

「……だ、だって貴方みたいに私を怖れない人は初めて見るから…。」
それでも、まだ油断は出来ないと思った私は恐る恐るそう言った。すると彼女は…

「なんで何もしてこないアンタを怖がらなきゃいけないのよ。」

と、めんどくさそうに言った。直後―――

ぐぅ~…

彼女の腹部から何処か悲しげな音が聞こえてきた。
それを聞いた私は少しだけ唖然し、数秒おいてから口を開いた。
「あの…お腹が空いてるなら、何か食べるものをあげるけど…?」



幻想郷
     迷いの竹林―――――

そこは人里から見て、妖怪の山から反対側に位置に広がっている。
一度入れば地面の僅かな傾斜の所為で斜めに生長している竹の所為で常人ならすぐに平衡感覚を狂わせる。
妖獣なども好んで住み着いている危険な竹林の中に、『永遠亭』という大きな屋敷が存在している。
見た目は伝統的な日本家屋ではあるが、築数ヶ月くらいしか経過していないかと錯覚するほど古びた様子を見せない。
そんな奇妙な屋敷に住んでいるのが、人里との交流を殆ど持たない者達と多数の兎達である。
永遠亭は外見と同じく、屋敷の内装も正に歴史ある日本家屋の造りである。
しかし、とある一室だけは雰囲気がまるで違っていた。
床、天井、壁は全て白色に統一されており、置かれているデスクには多数のビーカーやフラスコが置かれている。
他にも外の世界で言う顕微鏡みたいな物もあり、部屋を見ればそこの主がどんな人物なのか大体見当は付きそうだ。
その部屋の主人である八意永琳は椅子に腰掛け、背もたれに身を任せ何やら考え事をしていた。

だいぶ前に、文々。新聞で『博麗の巫女が幻想郷から失踪!』という記事がデカデカと載ってあった。
その記事を見たときはまさか捏造か?とは思ったがすぐにその考えは人里での薬売りから帰ってきた優曇華の報告で否定されてしまった。
どうやら白黒やあの紅魔館の瀟洒なメイドといったあの巫女と関わりがある者達がせわしなくあちこちを飛び回っているらしい。
話を聞いた永琳は輝夜にこの事を報告したところ――――

「その事なら今知ったばかりよ。」

――――文々。新聞に目を通しながらそんな返事を返してきた。
適当な返事ではあるが、輝夜が今回の異変に心の中で冷や汗を流している事を知っている永琳は何も言わなかった。
博麗の巫女が幻想郷から失踪、つまりは『博麗大結界』の崩壊を意味している。
もし幻想郷が消えれば、幻想にしか住めない者達には破滅の一択しかあるまい。
それに永琳や輝夜にとって此所は、『月』の追っ手から隠れるのに最適な場所でもある。
その後、優曇華や竹林に古くから住んでいるてゐに情報を収集するよう命令を下した。

だが、先に行動している者達同様、有力な情報は何一つ掴めなかった。

それから何日か後、今日の朝早くに八雲紫の式から紅魔館で話があるから来いと言われた。
本来なら永遠亭の主である輝夜が行くべきなのだがその事を輝夜に伝えたところ――

「面倒くさいから代わりに行ってこい。」

――とあっけなくそう言い返してきたので、とりあえずは代わりに行くことにした。
しかし、外では未曾有の異変が現在進行形で進んでいるというのに輝夜はと言うと外のことなど知らんぷりである。
だけど――恐らくはもう理解しているのだろう。

「このまま無駄なことをやっても幻想郷崩壊は時間の問題」だと言うことに。

…と、まぁそんなこんなで永琳が代わりに行ったものの、その時に八雲紫の言った言葉は強烈であった。

博麗の巫女が何処へ行ってしまったのか特定できたこと――
幻想郷を覆う結界が全く別のモノになってきているということ―――
そして、時が来れば巫女がいるその世界へ乗り込むということ―――

流石幻想郷の創造主であり、境界を操る妖怪だとこの時ばかりは思った。
他の者達より遙かに格上の情報を持っていて、更にはもう解決の目処も立っている。
正に賢者というのはああいう者の事を言うのである。いささか胡散臭いのは唯一のキズであるが。
それからすぐに永遠亭へと戻り、この事を輝夜に報告したところ――――

「あの巫女を救うのはいいけど、アイツの事だからその世界をついでに滅茶苦茶にするかもね。」

という、何やら物騒な事を言ってきた。
まぁ確かに、八雲紫は幻想郷を愛しているというし腹いせぐらいにそんな事はするかもしれない。
巫女を攫ったという『ソコ』がどんな場所かは知らないが、間違いなくある程度は地獄絵図となるだろう。


と、そんな事を思いながら自分の研究室へと戻ってきた永琳はふとある考えが頭の中をよぎった。
(それにしても、幻想郷の住人を連れ去るなんてねぇ…。)
以前永夜異変の後に八雲紫からここにいれば月の追っ手から隠れる必要は無いと言われていた。
それ以降は永遠亭の住人達もやけに外へ飛び出していくことが多くなっている。
最近は輝夜が何やら博覧会を行う気でいるらしい。とか等々…
まぁその話は置いておくとして。問題は「幻想郷の一角を担う博麗の巫女を連れ去った者の力」である。
連れ去られた博麗の巫女とは一戦交えたこともあり。弾幕ごっこではあったが、ある程度しか歯がたたなかった。
まぁ一応とある事情で自分の力はある程度セーブはしていたが、もし全力で言ったとしても後一歩と言うところで負けてしまうかも知れない。
それ程にも彼女は強力無比、どんな存在にも縛られず、必要とならば今日の味方を撃つ無慈悲さ。
故に最強であり、故にどんなものも彼女に干渉できない。

(そんな博麗の巫女を攫う程の力を持つ者なんているのかしら…。)
何に考えなければ答えは自ずと出てくる、無論―――それは否だ。
だがしかし、普通に考えるのではなく【逆】に考えるともうひとつの答えが浮かび上がってくる。
「博麗の能力すら凌駕する力を持った者がいるとでも…。」
その答えを否定することは簡単なようでそうもいかないのである。

(その答えだと結界の事もある程度納得が付きそうね。)
今回八雲紫が話した結界の変異も恐らくは博麗の巫女を攫った者の仕業なのだろう。
紫がこう言っていた「霊夢を攫っていった鏡と同じ術式を感じる」と。
一体何処の誰かは知らないが優しいことをしてくれる―と思った。
その優しさが仇となったとは思ってもいないのだろう。

ただ、永琳には一つだけ気になることがあった。
博麗の巫女を連れ戻すためにそこへ乗り込むのは良い、しかしもしそこでもめ事があった時――
(巫女をいとも簡単に連れ去るような強力な力の持ち主相手に勝てるのかしらねぇ?)
少なくともあのスキマ妖怪がそう簡単にやられるという事はなさそうだが…

そこまで考えた永琳は一息つくと目を瞑り、数分してから彼女の口から寝息が聞こえ始めてきた。



アルビオン大陸にあるレコン・キスタの本陣―――
丁度陣の真ん中に設置されている大きなテントの中で、二人の男女が話をしていた。
「では、奴はもう既にこの大陸に侵入していると言うことですか?」
男の方は年齢三十代半ば。丸い球帽をかぶり、緑色のローブとマントを身につけている。
一見すると聖職者の身なりではあるが、坊さんにしては妙に物腰が軽い。
高い鷲鼻に、理知的な色をたたえた碧眼の男の名前は、オリヴァー・クロムウェル。
このレコン・キスタの指揮官ではあるが、元は一介の司教にすぎなかった。
その彼が敬語で話しかけている女性は軽そうなクロムウェルとは反対に、どこか重々しい雰囲気を纏っていた。

腰まで伸びた髪の色は黒く、肌の色は妙に白すぎるという感じがする。
黒いローブを身に纏っているこの女性の名はシェフィールド。クロムウェルの秘書である。
しかし、腕を組んで偉そうに指揮官から話を聞く秘書など恐らくはいないだろう。
指揮官であるクロムウェルはそれを咎めようとはしなかった。
「ええ、大陸の真下にある王族派が使っている隠し穴を通ってね。」
「あ、あの抜け穴を…ではやはりその者は王族派の味方…?」
シェフィールドの言葉にクロムウェルは恐る恐る質問した。
「いいえ、穴の中に待機させておいたコイツが追跡したけどそんな感じじゃあなかったわ。もっとも、追跡の途中で見失ってしまったけど。」
彼女は歯痒そうにそう言うと懐から一体の小さな人形を取り出し、テーブルに置いた。

この人形は「アルヴィー」という種類のモノで、自立して動くことが出来る魔法人形である。
大抵は人形劇やオモチャ、家の飾り付けに使うモノではあるが。彼女はどうやら変わった使い方をしているようだ。
「恐らくは個人の目的でこの大陸へやってきたと思うけど…そうとも言い切れない。」
テーブルに置かれたアルヴィーはカタカタとひとりでに動き出すと、ヒョコッと立ち上がり、そのまま何処かへと走り去って行った。
しかしシェフィールドはそれを気にすることなく再びクロムウェルとの会話を再開した。
「このアルビオン大陸にいるのは間違いないことだからとりあえずは私がアルヴィーと亜人を使って虱潰しに捜していくほかあるまいわ。」
シェフィールドはそう言うとドカッと指揮官用の椅子に腰を下ろし、大きな欠伸をした。
「ではでは、私は何をすればよいのでしょうか?」
一方のクロムウェルはと言うと無礼な態度をとっている秘書に怒ることなく、むしろもみ手をせんばかりの勢いで寄ってきた。
「お前は今まで通り指揮官をしていなさい。用があるなら此方から話しかけるわ。」
シェフィールドはそんな彼を鬱陶しそうな目で睨み付けながらクロムウェルに言った。
それを聞いたクロムウェルは何度も彼女に頭を下げそさくさとテントから出て行ってしまった。

クロムウェルがいなくなった後、一人っきりになれたシェフィールドは椅子の背もたれに身を任せた。
トリステインにあるブランド会社に特注で造らせたこの椅子の座り心地を試そうとしたその時、
今まで疲れていた感じがあったシェフイールドの顔が突然喜びに満ちあふれた。
「おぉジョゼフ様!」
シェフィールドはそう言うと椅子から勢いよく腰を上げ、その場で直立をした。
まるで目の前に、彼女にしか見えない『誰かが』と話しているような感じがし、妙な不気味さを醸し出している。
恋する乙女のような顔をしていたシェフィールドであったが、途端に泣きそうな表情になった。
「申し訳ございません、件の『巫女』は見失ってしまいました。ですが、このアルビオンに来ていることは間違いありません。」
独り言にしては、やけに現実味のある感じでそう言ったシェフィールドは、しばらくしてからまた嬉しそうな表情に戻った。

「わかっております!必ずやこのシェフィールド、【出来損ないのガンダールヴ】を捕らえて見せましょう!」

シェフィールドは右腕を空高く上げ力強くそう叫ぶと、ササッとテントから出て行ってしまった。
外へ出る瞬間、彼女の額に刻まれた『ルーン』が力強く輝いていた事に気づいた者はいなかった。



誰かの噂話の対象になっている時にくしゃみがでるという言い伝えがある。
一回の時は良い噂、二回の時は悪い噂、そして三回だと惚れられているという。

「くしゅっ、くしゅっ!」
金髪長耳の少女の横を浮遊していた霊夢はふと、クシャミをした。
突然のことに霊夢は少し目を丸くし、咄嗟に手で口を押さえてしまう。
「…?どうしたの。」
そのくしゃみを横から聞いた金髪の長耳少女は怪訝な顔になった。
「何でもないわ、ただのクシャミよ。」
霊夢は少女の方へ顔を向けると大丈夫と言いたげに手を横に振ってそう言った。
少女は肩をすくめると再び歩き始め、霊夢もそれに続く。


事は数分前――――霊夢が腹の虫を鳴かせた直後へと遡る。
自分の腹が鳴る音を聞いた霊夢はふと昨日から食事にありついていない事を思い出した。
しかし時既に遅く、言いようのない空腹感が彼女の体を襲い始めていた。そんな時…
「あの…お腹が空いてるなら、村で何か食べるものをあげるけど…?」
狭い穴の中をくぐり抜け、こんな森の中へと出てきて初めて出会った人間(?)である長耳の少女がポツリとそう言ったのを霊夢は見逃さなかった。
「本当?」
霊夢の言葉に少女は小さく頷いてもう一度口を開いた。
「うん。けど、一つだけ約束して欲しいことがあるの。」
少女はそう言うと自分の長い耳を指さすと恐る恐るこう言った。
「…?、その耳がどうしたのよ。」
「この耳の事だけど、他の人に言わないでくれないかしら?」
少女はそこまで言うと口を閉じ、霊夢の返事を待ったがそれは直ぐに帰ってきた。

「大丈夫よ、どうせ私の言う事なんて誰も信じないから。」

―――――その言葉を聞いて安心した少女は霊夢を連れて行くことにし、今に至る。
かれこれ歩き始めてから十分、目の前に森を切り開いて造られた小さな村が見えてきた。
藁葺きで造られた小さな家が数十件ばかり建っており、いかにも世間から忘れ去られたといった感じが伺える。
「ここはウエストウッド村っていうの。最も、村というよりは孤児院に近いけど…」
少女が苦笑しつつそう言った直後、村の入り口から大勢の子供達がこちらに向かってきた。
大小取り混ぜて、色んな顔があった。金色の髪、赤毛の子など髪の色もさまざまである。
「おかえりおねぇちゃん!」
「怪我はなかった?」
「おいしそうな木の実は採れた?」
子供達は小走りで霊夢――の横にいる少女の方へ一斉に寄ってきた。
皆元気旺盛で、隣にいる霊夢のことなどお構いなしでった。
(成る程、孤児院って言っても案外間違いでもなさそうね。)
霊夢は先程の言葉を思い返し、一人納得すると少女が群がる子供達を制止した。
「あ、あなた達…食事の準備をしてくれない?今日はお客さんが来ているから。」
『お客さん』という言葉を聞いた子供達は今になって霊夢の存在に気づき、一斉に彼女の方へ顔を向ける。

「ロシュツキョウだぁー!」

「はぁ?」
突然十歳ぐらいの男の子が霊夢を指さして叫んだ。
流石に霊夢も突然の事に素っ頓狂な声を上げてしまった。
「…こ、こ、こらジムッ!何失礼な事を言っているの!?」
「だってティファ姉ちゃん…あんなに堂々とワキをさらけ出してる服を着てるなんて可笑しいだろう!」
少女は顔を赤くし、ジムと呼ばれた男の子の頭を軽く叩いた。
一方のジムも叩かれた頭をさすりながら少女に言い返す。
「全くもうこの子は……あ、そういえば自己紹介がまだだったわ。ご免なさい。」
少女は思い出しかのようにそう言うと霊夢の方へ体を向きなおった。

「私の名前はティファニア。皆からはテファお姉ちゃんって呼ばれてるのよ。」
少女――――――ティファニアは絹のように繊細な金髪を揺らしながらそう名乗った。



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