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毒の爪の使い魔-38


「チッ、またここに来る破目になっちまったゼ…」
苦虫を百匹ぐらい纏めて噛み潰したかのような表情でジャンガは呟いた。
「何言ってるのよ…、お店で待機するようにってアニエスに言われたじゃない」
隣に並んだルイズが言った。
ジャンガはため息を吐いた。
「ったく…長ェ戦争の準備が無駄に終わって、世間は姫嬢ちゃんへの非難やら称賛やらが飛び交ってるってのによ…。
何で俺がその姫嬢ちゃんのお使いのお相手をしなきゃならねェんだよ…。
戻って来たあの気障ガキ辺りにでも頼みゃいいじゃねェかよ…」

アンリエッタがアルビオンとの会戦をしない事を宣言した事は世論に大きな反響を呼んだ。
戦争に怯える臆病者、などと扱き下ろす者も居れば、民を思う良き女王、と褒め称える者も居た。
編制されていた連合軍は自動的に解散の方向に進み、
各地で士官教育を受けていた学生達も、学院へと戻る事となったのだった。

そんな中、二人は夏期休暇の最中、アンリエッタから依頼された諜報任務の際、世話になった『魅惑の妖精』亭の前に来ていた。
今朝方、学院にアニエスがやって来て、ジャンガに用件がある為、ここで待てと言われたのである。
ジャンガは嫌そうにしたがルイズが半ば強引に引っ張ってきたのである。

ジャンガは隣のルイズを横目で睨む。
「俺が必要な事でもあんのか? テメェ一人で来ればいいじゃねェか」
「ダメよ! アニエスはあんたに来るように言っていたじゃないの。
きっと姫様からの大事な任務に違いないんだから…来るのは当然でしょ?」
「つってもな…」
「文句言わずに来る!」
言ってジャンガのマフラーを引っ張る。
ぐぇ!? と唸ったジャンガは引き摺られて行った。
羽扉を開けて中に入ると、そこには異様な光景が広がっていた。
舞台衣装の様なドレスに身を纏った女の子達、それに囲まれるようにして立っている男装した黒髪の女の子がおり、
何か演技の練習でもしているのかポーズを決めている。
そして――
「いいわいいわ♪ 最高よ、妖精さん達~♪」
それを見て身体をくねらせながら気色の悪いダンス(?)をする、
紫の長髪のカツラと女の子達以上に派手なドレスを纏った男が一人居た。
ルイズはそれを見て呆然と立ち尽くす。ジャンガは既に顰めていた表情を更に曇らせる。
「あ、あ、ああ、あの…」
ルイズが意を決したかのような声で”珍妙な一団”に話しかける。
「あれ?」
「へ?」
男装した女の子が真っ先に気付き、次に他の女の子達が、最後に女装した男が振り返る。
「こ、こ、こんにちは…」
ルイズは頬を引き攣らせながらも挨拶をする。
ジャンガは不機嫌な表情のまま何も言わない。
「あら、ルイズちゃんにジャンガくんじゃないの?」
ジャンガはため息を吐く。
「オイ、なれなれしくすんじゃねェよ…おっさん?」
「誰が”おっさん”だって~?」
急に凄みのある声と表情で男がジャンガに詰め寄る。…妙な迫力がそこには在った。
「へいへい、スカロン店長様だろ?」
面倒臭そうにジャンガは言う。
すると、スカロンは身体をくねらせながら再び女口調に戻って話す。
「もう、違うでしょ~? 皆一緒にーーー」
スカロンの声に他の女の子達も近づいてくる。
「3、ハイ!」
呆気に取られるジャンガとルイズの腕を掴み、広げた扇の様なポーズを取る。
そして一斉に叫んだ。
「「「「「ミ・マドモアゼル~~~!」」」」」
決め台詞が響く。
「トレビア~ン♪」
スカロンはその台詞に満足したのか心底嬉しそうな表情で身体をくねらせる。
対して、解放されたルイズとジャンガは消耗していた。
特にジャンガは殺意すら感じられる表情でスカロンを睨んでいた。
「あのオカマ…、微塵にするだけじゃすまさねェ」
爪を構え、今にも突進しようとした時。
「どうしたの、あんた達? 急に来たりして」
男装した黒髪の女の子――スカロンの娘のジェシカが声を掛けてきた。
二人は彼女に振り返る。
ジャンガがジェシカに答える。
「ちょっとした待ち合わせだ…」
「それよりも、そっちこそどうしたのよ…その服?」
ジェシカの着ている服を指し示しながらルイズが尋ねる。
そう、彼女達の今の服装は宿屋と酒場を同時経営している、
この『魅惑の妖精』亭で働く女性従業員のいつもの服装とは違っていた。
言われてジェシカは服を見つめる。
「ああ、これ? 今夜あたし達ね、タニアリージュ・ロワイヤル座の舞台に立つ事になったのよ」
「ええ?」
「はァ?」
ルイズは驚き、ジャンガは呆れたような声を漏らす。
すると、スカロンが手を組み、ウットリした表情を浮かべる。
「遂に、あたしの美しさが世間に認められたのよ!」
そう言って、他の女の子達と天を仰ぐ。その周囲にはキラキラと意味不明な輝きが漂っている。
ルイズとジャンガはそれを呆然と見つめ、徐に横の壁を見た。
そこには一枚のポスターが貼られている。
女装したスカロンが下になり、男装したジェシカが覆い被さっている。
その構図に頬を引き攣らせながらルイズはポスターに書かれていた芝居の題名を読む。
「『トリスタニアの休日』?」
「休日じゃなくて…終末だろ?」
ジャンガの言葉にルイズは頷く。
まぁ、あんな絵を見たら当然の反応かもしれない。
と、二人の肩が唐突に叩かれた。肩を叩いたのはスカロンだ。
「そうだ、あんた達も出なさいよ? 丁度人手が足りないから」
「「…ええ?」」
二人の声がハモル。
そんな二人の態度をスカロンは気にもしない。
他の女の子達の方に手を叩きながら歩いていく。
「さぁさぁ妖精さん達、そろそろ開店よ…準備して!」
「「「「はぁ~い、ミ・マドモアゼル♪」」」」
「あ、あの…」
ルイズが自分達の目的を話そうとするが、スカロンの中では二人の手伝いは決定事項の様だ。
「あら? あんた達何ボケ~ッと突っ立ってんの? お店手伝ってくれるんでしょ?」
「で、でも…」
「ごちゃごちゃ言っていないで、ジャンガは厨房を、ルイズちゃんは皆とお着替えしてらっしゃい」
勝手に決め付けるな、とジャンガは反論しようとしたが、
それよりも早くジェシカが首輪に繋がったリードよろしくマフラーを引っ張った。
「ぐぇっ!?」
呻き声を上げながら厨房へと引っ張られていく。
ルイズはルイズで他の女の子達に屋根裏部屋へと連行され、無理やり着替えさせられたのだった。

やがて、夜の帳が落ち、外は真っ暗になった。
「ざけやがって……こんな下らない事をしに来た訳じゃねェんだよ…」
ぶつくさ文句を言いながらジャンガは裏口へと向かう。
下らない厨房の手伝いなんか御免だ。大体にして、自分はこんな所へ来るつもりは無かったのだ。
これ以上付き合い義理は無い…、手伝いならば一人で十分…、そしてそれはやる気のあるあのクソガキだけでいい。
…と言う事で、ジャンガはルイズを生贄として置き去りにして逃げるつもりだった。
裏口を開ける。外は雨が降っていたが、逃げるには好都合だ。
「フン、あばよクソガキ。せいぜいご奉公しな…キキキ」
笑って裏口を閉める…と、いきなり誰かがぶつかって来た。
「イデッ!?」
突然走った衝撃と痛みにジャンガは顔を顰める。
「痛っ……オラァッッッ!!? どこのどいつだ!?」
既にイライラしていた為に、ジャンガは昔の調子で怒鳴り声を上げる。
「す、すみません…急いでいたもので」
年若い女の声が聞こえる。
見れば、地面にフードを被った女が倒れていた。
自分にぶつかったのがそいつだという事が解るや、ジャンガは怒りに顔を歪ませる。
「急いでいただァ~? ンな言い訳で済むと思ってンのか…あァ!?」
「申し訳ありません…」
女は本当にすまなそうな声で謝罪するが、ジャンガは止まらない。
「ンな謝り方で済むと思ってるのか~? 慰謝料払ってもらうゼ…、全財産で支払えや!
払えなけりゃどうなるかは……解ってるんだろうな~? あン!?」
最早そこらのチンピラと変わらない口調でジャンガは女を脅す。
遂にはその胸倉を掴み上げた。
「…ン?」
しかし、ジャンガの怒りは一気に吹き飛び、思わず爪を離す。
何しろ…フードの中の顔が彼の知っている人物だったのだから。
そして、相手もぶつかったのがジャンガだと解るや、フードを取る。
「ジャンガさん?」
女はアンリエッタだった。何故、女王様がこんな路地裏をほっつき歩いている?
気になり、ジャンガは口を開く。
「何でテメェがこんな所をうろついてんだ?」
「シッ!」
アンリエッタがジャンガの口を塞ぐ。そしてフードを再び深く被り、ジャンガの後ろに隠れた。
何だ? とジャンガが思うと、表通りから声が聞こえてきた。
「あっちを捜せ!」
「ブルドンネ街に向かったかも知れぬ!」
大勢の兵士達が目の前を通り過ぎて行く。
その兵士達と、それから身を隠すようなアンリエッタを交互に見比べ、なるほど、とジャンガは納得する。
兵士達が見えなくなり、アンリエッタは安堵の息を漏らす。
今度こそジャンガは尋ねた。
「…オイ? 今の奴等に追われてるのか?」
「追われている…と言うよりは、捜されていると言った方がただしいですわね」
「そりゃ、一国の女王様がこんな所をほっつき歩いていたら騒ぎにもなるゼ…」
「…とりあえず、身を隠せる所はありませんか?」
「フンッ」
身を隠せる所……とりあえず思いつくのは――
「あそこだな」
『魅惑の妖精』亭の屋根裏部屋を見上げてジャンガは呟く。
手早くアンリエッタを抱えるや、壁を蹴って上り、屋根裏部屋の窓に取り付く。
幸い鍵は掛かってなかったので楽に入る事が出来た。
中に入り、鍵を閉める。
アンリエッタはベッドに腰掛けて安堵の息を漏らしている。
ジャンガはアンリエッタを見据えながら口を開いた。
「オイ、そろそろ話したらどうだ? 何があったってんだ? あの女剣士様はどうしたんだよ?」
「アニエスには別の仕事があります」
「…ここで待てって言った事か?」
アンリエッタは首を振った。
ジャンガは眉を顰める。
「ンじゃ…何だよ?」
「それは後々説明します。今はわたくしを護衛してください、ジャンガさん」
「はァ!? 何で俺が尻拭いも禄に出来てなかったケツの蒼いガキのお守りしなきゃならねェんだよ?」
これ以上無いくらい無礼な台詞を並べ立てるジャンガに、しかしアンリエッタは動じない。
最早、ジャンガの乱暴な口調には慣れきっているのだった。
「大体だ、護衛も何も外走ってた連中の所に顔を出せば済む事じゃねェかよ?」
「それはだめです…、わたくしは今暫くの間平民に交じらなければなりません。
秘密裏に事を進めて…、更に宮廷の誰にも知られないようにしなければならないのです」
ジャンガの鋭い勘は何かデカイ事を企んでいるのを看破した。
「ほゥ? 一体何するつもりなんだ?」
「…キツネ狩りです」
「キツネ?」
「ええ、賢いキツネは犬をけしかけても勢子が追い立てても尻尾を掴ませません。
ですから、わたくし自身を餌にした罠を仕掛けたのです」
「鯛で海老を釣るつもりかよ?」
皮肉な口調でそう言ったジャンガにアンリエッタは頷く。
ジャンガはニヤリと笑った。
「いいぜ、面白そうだ…。お前の”遊び”に付き合ってやるゼ、キキキ」
「そう言うと思ってましたわ」
アンリエッタは、してやったり、と嬉しそうな表情で言った。
「キキキ、中々良く解ってるじゃねェか? 気に入ったゼ…」
ジャンガは更に笑った。
それを見てアンリエッタは再度頷き、羽織っていたフード付きのローブを脱いだ。
「では、ジャンガさん。平民に見える服はありませんか?」
「服?」
「この格好では…何かと目立ちますので」
確かに、アンリエッタが今着ている純白のドレスはとても高価な物だ。
とてもじゃないが、平民が着るような物には見えない。
ジャンガは部屋の中を漁る。すると、ルイズの学生服が出てきた。
アンリエッタのドレスに比べれば平民っぽい。それをアンリエッタに差し出す。
すると、アンリエッタはいきなり後ろを向くとドレスをバサッと脱ぎ捨てた。
なんとも豪快だ。ジャンガも一応男であるのだが、全然気にするそぶりが無い。
もっとも、ジャンガもアンリエッタにはあまり女としての興味が無いらしく、無表情であったが…。
ジャンガが手渡した服をアンリエッタは手際良く身に着けていく。
貴族と言えど、自分で服を身につける者もいるようだ。そこにジャンガは感心した。
…だが、ちょっとした問題が発生した。
「シャツが…少し小さいですわね」
アンリエッタとルイズの胸は、例えるならばムゥとジャアントムゥ位の差が在る。
シャツはぴちぴちに張り詰め、今にもボタンが飛びそうだ。
「…やっぱ無理か。まァ…まな板でスイカを押さえつける様なものだからな」
「ま、いいですわ」
「いいのか?」
ジャンガの言葉に答えずに、アンリエッタはシャツの上のボタンを二つほど外す。
そうすると胸の谷間が強調されるような感じになった。
こんな感じのを何処かでジャンガは見た気がした。
「…雌牛か」
先日、散々迷惑を掛けられた女の顔が思い浮かぶ。舌打をし、首を振って浮かんだ顔を脳裏から消し去る。
服装を変えたアンリエッタは、さて…後はどうしよう? と首を捻っている。
それを見ていたジャンガは、髪形を変えれば良いだろう、とアンリエッタの髪を弄り出す。
とりあえず…、昔”あいつ”がたまにしていたように左右で髪を纏めた。ツインテールだ。
そうすると更に雰囲気が変わった。そこらの悪戯好きな女の子…と言った風に見えなくもない。
「ふふ、これなら街女に見えますわね」
悪戯っぽく笑うアンリエッタをジャンガは鼻で笑った。

屋根裏部屋を出ると、二人は路地裏を表通りへと向かう。
チクトンネ街の出口には、案の定厳戒態勢がひかれている。
「フン、優秀なやつらだゼ」
「貴族の娘が攫われたと言う名目で兵士達に捜索命令が出ているのです」
「実際にはお前を捜していると?」
「そうなりますわね」
ジャンガはザッと通りを見渡す。
兵士は十数人ほど…、見つからずに普通に歩き去るのは難しい。
「だが…」
上を見上げる。
「上までは注意はいってねェだろ…」
笑いながらアンリエッタを両腕で抱き抱える。
いきなりの事に動揺するアンリエッタ。
「な、何を?」
「面倒だからな、上を行く」
「え?」
ジャンガは建物の壁を蹴って瞬く間に屋根の上へと上る。
そして、そのまま屋根から屋根へと飛び移っていく。
ジャンガの行動に驚きつつもアンリエッタは周囲に眼を向ける。
眼下では大勢の兵士達が道行く人々を止めて色々と尋ねていた。
だが、屋根の上を駆け、飛び移っていく自分達には気付きもしない。
こんな体験はアンリエッタは初めてだった。
魔法でも実現出来ないほどの、おそらくは風竜でも出せるかどうかと言う速度で街を駆け抜ける。
実に不思議な気分だった。
徐にジャンガの顔を盗み見る。…実に楽しそうな表情だ、雨に降られている事もまるで気にしていないかのように。
一瞬、ジャンガが自分の方を見た。「楽しいか?」とその目が言っている様に感じた。
…アンリエッタは自分が抱き抱えられている事が妙に気恥ずかしくなってきた。
何でだろう? どうして急に恥ずかしくなったのだろう?
曲がり間違っても男に、ウェールズ皇太子にもされた事の無い抱かれ方をしているからか?
それとも、他に理由が在るのだろうか?
…解らない。アンリエッタは悩んだ。
と、一瞬浮遊感に包まれ、その後衝撃が体を襲う。
ジャンガが屋根から飛び降りたと言う事に気付くのに数秒掛かった。
アンリエッタを下ろしてジャンガはチクトンネ街の方を振り返る。
「もうお探しの相手はそこにはいないってのによ…、キキキ」
嫌みったらしく笑うジャンガ。
そして、アンリエッタを振り返る。
「さてと…、一応奴等は振り切ったが……この後どうするんだ?」
アンリエッタは頭を切り替える事にした。
「町を出る必要はありません。それにあまり遠くへ行くのもさけたいですね」
「んじゃ、ここいらを歩くか…姫嬢ちゃんよ?」
「しっ…、人目の在る所で姫などと呼んではいけません。…そうですわね、短く『アン』と呼んではくれませんか?」
「あン?」
「そう、そんな感じで」
呼んだつもりは無いのだが、アンリエッタは納得したようだった。
そして、一瞬で身に付けたであろう街女の仕草で、ジャンガの腕に自分の腕を絡ませた。

雨は段々激しくなり、夜も遅くなったのでとりあえず宿を取る事となった。
粗末な木賃宿だった。案内された部屋は『魅惑の妖精』亭の屋根裏部屋が天国に見えるくらいに酷い物だった。
ベッドの布団は湿っており、椅子もテーブルもガタガタ、おまけに部屋の隅にはキノコまでが生えている始末だ。
当然ジャンガは憤慨し、宿の主を脅して代金を無理やり返却させた。
だが、他に行く当ても無いので部屋はそのまま使う事にした。
真っ黒なランプの煤を払い、明かりを灯そうとマッチを探そうとし…止めた。
マッチなんて物はこのハルケギニアには存在しない事を思い出したのだ。
仕方なく火種になりそうな物を取りに行こうと部屋を出ようとし、アンリエッタが止めた。
鞄から水晶の付いた杖を取り出し、軽く振る。ぽっ、とランプの芯に火種が点く。
そのランプの明かりを静かに見つめながら、アンリエッタは頬杖を突く。
そんな彼女を黙って見つめるジャンガ。今の彼女は一人の少女と被って見えた。
”向こう”でジョーカーとガーレンと企てた悪巧み。
それの実行の為には神聖なる”巫女”が必要だった。
その為にジョーカーは巫女を攫ったが、その巫女はまだ年端も行かない少女であり、しかも見習い。
しかし巫女である事が条件である為にそのまま事を運ぶ事となった。
月へと連れて行く際に自分が役目を担い、ジョーカーは追い縋るガキ共の足止めに残った。
お陰で巫女となる少女は無事に月のルナベースへと運べたが、ジョーカーは敗れてしまい、ガキ共は月まで追ってきた。
(もっとも…既に手遅れ同然だったんだがな)
彼等が来た時には少女は巫女として役目に付かされたのだ。
だが、自分は最後まで見ていない。もしかしたら…その役目から救ったかもしれない。
あいつを庇ったあの小僧なら、少女を心の底から案じていたあのガキなら…あるいは。
(だが…こっちはどうだろうな?)
アンリエッタを見る。
考えてみればあの少女と似たような境遇かもしれない。
周りの意見で自分の意思とは無関係に大きな役割に付かされてしまったのだ。
あの少女よりは多少年上かもしれないが、それでも年若いのは変わり無い。
今見ていても儚く、脆い感じがする。
だが、彼女には助けは来ない…。
色々と手助けをしてくれる者はいるだろうが、決定的な助けにはならない。
そう……役割という鎖から解放してくれる者はいない、…彼女には。
何しろあまりに遠い場所に…、地球と月など比べ物にならない遠い場所に、
彼女を救えた唯一の人物は逝ってしまったのだから…。

ふと、見ればアンリエッタは両腕で身体を抱えて震えている。
「どうしたんだ?」
「いえ…、雨に濡れて…少し冷えたみたいで」
それだけだろうか? 多分違うとジャンガは思った。
普段気が張り詰めている分、解放されたこの時に不安が一斉に襲い掛かってきたのだろう。
その様子を暫し黙ってみていたジャンガだが、ハァ、とため息を吐くとアンリエッタの隣に座った。
そのまま黙って肩を抱いた。突然の事にアンリエッタは目を見開く。
恐る恐るジャンガの顔を見る。ジャンガは無表情のまま、前方に視線を泳がせている。
「ジャンガさん…?」
「玩具はメンテが必要で、ペットも世話が必要だ。…深い意味は無ェ」
「…ありがとう」
アンリエッタは両目を閉じてジャンガに寄り添う。
その両目には薄っすらと涙が滲む。

――ドンドンッ、と激しく扉が叩かれた。

二人は反射的に扉を見る。
ガチャガチャ、とドアノブが乱暴に回されている。
「開けろ! ドアを開けるんだ! 王室の巡邏の者だ! ここを開けろ!」
ジャンガは顔を顰める。
「…随分と仕事熱心だな? その熱心さが自分の命を縮める事になりかねないがよ…」
不機嫌なままジャンガは立ち上がろうとする。それをアンリエッタが止めた。
「なにするんだよ?」
「黙ってやり過ごしましょう…」
「そんな甘い連中か?」
事はジャンガの予想通りに進んだ。
いくら叫ぼうと、ドアを叩こうともいっこうにドアが開かれない事に業を煮やしたか、
扉の外の兵士達はドアノブを壊し始めたようだ。
「いけませんわね…」
「逃げるか?」
「今外に飛び出せば、目立ってしまいます。あなたの姿は特徴的ですから、直ぐに見つかってしまうでしょう」
「…なら、どうする気だ?」
「わたくしに考えがあります」
そう言って、アンリエッタはいきなりシャツのボタンを外す。
「ンな?」
驚く暇も無い。シャツを脱いだアンリエッタはそのままジャンガの首に腕を回し、激しく口づけをしたのだ。
突然の事に流石のジャンガも対応が出来ない。そのまま為す術無くベッドに押し倒された。
丁度その時、兵士が二人扉を蹴破って入ってきた。
そんな二人が目にしたのは、シャツを脱ぎ捨てて半裸になった女が、
顔の見えない男を押し倒して唇を吸っている場面だった。
熱い吐息が二人の口の間から漏れており、如何に激しいキスかを物語っている。
暫し兵士二人は呆然とそれを眺めていたが、やがて一人が舌打をし、もう一人を促して出ていった。
兵士達が行ってしまったのを確認し、アンリエッタはジャンガから唇を離した。
ジャンガはアンリエッタを睨み付ける。軽い女は嫌いなジャンガは今の行為に心底イライラした。
「オイ、今のは何だ?」
「…もうしわけありません。でも、他に手が無かったもので」
「俺は軽い女は嫌いだ。…いや、憎いな」
「好きな人が…、恋人がいますの?」
「……さてな」
「そうですか…、すみません」
ジャンガの返答に決して良くは無い思い出が在ると解ったアンリエッタは即座に謝罪した。
それを見て、ジャンガは腹立たしげに鼻を鳴らす。
「まァ…、今回は他に手が無かったって事で勘弁してやる。…だが、次は無ェぞ?」
言いながら爪を見せ付ける。
その彼の様子にアンリエッタは仕方が無かったとは言え、とてもすまない事をしたと反省した。
「…解りました。本当にすみません…」
ジャンガは大きくため息を吐いた。
そしてベッドに寝転がる。アンリエッタもそれに習ってジャンガの隣に寝転がった。

そのまま、二人は暫くの間、黙って天井を見上げていた。

「オイ、そろそろ教えろ。キツネってのは裏切り者の事だな?」
ジャンガが徐に口を開く。
それにアンリエッタは頷いた。
「ええ、おそらくはアルビオンと通じている者です」
「そいつを燻り出す為にこんな芝居を打ったのか」
「はい」
「…テメェ自身の身に何かがあったらどうするつもりだったんだ?」
「ですから…、ジャンガさんに……あなたに守ってもらいたかったのです。
解らないと思いますが…わたくしは宮廷内では殆ど一人でして」
「あの枢機卿だとか言うジジイはどうなんだよ?」
「マザリーニ枢機卿はわたくしの補佐をする方です。…一人と言うのは親しく出来る者がいないという事です」
「そうかい」
「ルイズに頼むと余計な心配をかける事になってしまいます。そうなると…あなたしか思いつかなくて」
「さっきの質問だが…、テメェにもしもの時があったらどうするつもりなんだ?
国やら何やらを放り出してでもやる価値があったのかよ?」
アンリエッタは暫し沈黙し、口を開いた。
「わたくしはアルビオンとの会戦はしない事を宣言しました」
「ああ…そうだったな。意外だったゼ…、愛する者を惨たらしく殺されたんだってのによ。
復讐とかは考えなかったのか?」
「…考えた事は在ります。正直に言えば、アルビオン…いえ、レコン・キスタは赦せません。
ですが、復讐の愚かさ…無意味さは、あなたから聞いたあのガリアの姫のお話で知っていますから…」
ジャンガは黙って耳を傾けている。
「故に、わたくしは会戦はしないと宣言したのです。ですが…それで国民の間には不満が高まるかもしれません」
実際には既にいくらか不満の声が上がっているのをジャンガは耳にしていたが、あえて言わない事にした。
アンリエッタは話を続ける。
「それを抑える事に集中する為にも、この件は早めに片付けて起きたかったのです。
確かに少し急ぎすぎたかもしれません…、ですが……」
ハァ、とジャンガはため息を吐く。そしてアンリエッタの髪をぐしゃぐしゃと爪で弄った。
「あ?」
「あー、あー、解った、解った…。ったく…ガキが、一丁前に大人ぶりやがって…」
暫くアンリエッタの髪を弄っていたが、やがて手を離した。
「ま、お前は手放すには惜しい…。精々今夜は持ち運ばせてもらう」
「ありがとう…」
アンリエッタは再度礼を述べ、ベッドから立ち上がる。
「そろそろ時間ですわね…。行きましょう」
「行くって…どこへだ?」
「劇場です」



アンリエッタの言った劇場の名前を知るや、ジャンガは顔を顰めた。
「タニアリージュ・ロワイヤル座…ね」
それはスカロン達が芝居をする予定の劇場だった。
見た目は円柱が立ち並ぶ神殿を思わせる様な外見の、豪華な石造りの立派な劇場だ。
様々な紳士淑女が入り口へと吸い込まれるようにして入っていく。
「ンで…どうするんだ、これから?」
「待ってください…。もうすぐ来るでしょうから」
誰が…とは聞くまでも無いだろう。
すると、馬に跨ったフード付きのローブを纏った女が一人、此方へと走って来た。
それが誰かは確認するまでも無い…、アニエスだ。
アニエスは馬を降り、アンリエッタに近づくと一礼をする。
「遅くなり、申し訳ありませんでした」
「いえ、わたくし達の方が早くついてしまっただけです。…それで、首尾の方は?」
「は、間違いなく…奴とアルビオンの手の者はこの劇場にて接触するようです」
「そうですか」
「全ての準備は整っています、陛下」
「では、キツネ狩りの仕上げと参りましょう」
そしてアンリエッタはジャンガを振り返る。
「ありがとうございました、ジャンガさん。ここまでで結構です」
「いいのか? キツネにトドメを刺してやってもいいんだゼ?」
その言葉にアニエスの表情が一瞬険しくなる。
アンリエッタは静かに首を振った。
「いえ…、これはわたくしが決着をつけねばならない事ですので…」
「そうかい? ま、精々頑張りな…キキキ」
ジャンガは笑った。アンリエッタも笑った。
そして、アンリエッタは一度お辞儀をすると劇場の中へと姿を消した。
アニエスは密命があるのか、馬に再び跨ると何処かへと駆けて行った。
「フン」
アニエスの後姿を見送りながらジャンガは頭を掻いた。
「さてと…、一っ走りするか」
そう言った直後、ジャンガはその場から消えた。



劇場では幕が上がり、芝居が始まっていた。
スカロン一座が演じる『トリスタニアの休日』は本来は悲しい恋の物語である。
だが、演じられているのは悲しさなど微塵も感じられない。
舞台のセットや演じている人が人だけに、コメディ路線をまっしぐらに走っている。
そんな名ばかりの『トリスタニアの休日』だったが、観客には相当受けていた。
その役者の中にはルイズも混じっていた。
彼女はジャンガがアンリエッタと行動をしている最中、消えたジャンガを捜して外に出たのだ。
だが、ジャンガは見つからず、代わりにアニエスを発見。
ジャンガを捜す際に気付いた街中の騒ぎを問い詰めるが、時間が無い、と言うアニエスに連れられて行動を共にする事に。
その最中…あえて伏せるが色々とあり、ルイズはアニエスにアンリエッタの真意を説明された。
そしてアニエスが去った直後、スカロン達と図らずも合流してしまい、そのまま劇に参加するは目になったのだった。
「はぁ…姫さま、大丈夫かしら?」
ジャンガに変な事をされていないか? とか、あのネコは真面目に仕事をしているのか? とか、
色々と心配で気が気でなかった。
幸いにも劇での役割は殆ど台詞も動きも無い物だったので、考え事をしていても特に支障は無かった。
その時、客席の方から悲鳴が上がった。
ハッとなり、ルイズは顔を上げる。
見れば、背後に銃士隊を控えたアンリエッタが初老の貴族と商人風の男の二人と対峙していた。
「姫さま!?」
ルイズは叫んだが聞こえなかったようだ。
距離の関係で声は聞こえないが、アンリエッタは初老の貴族と言い合っている様だった。
すると、唐突に貴族の背後の観客が立ち上がり、ローブを脱ぎ捨てる。
その全てが兵士だった。しかもあろう事か、王宮に仕える者達ではないか?
そして、銃士隊と貴族側の兵士の戦いが始まった。逃げ惑う観客達。
ルイズはアンリエッタの危機を知り、杖を手に取り舞台から飛び降りた。

辺りを飛び交う悲鳴、怒号、罵声に剣と剣が切り結ぶ音。
アンリエッタは杖を握り締めながら周囲を警戒する。
だが、一人の兵士がアンリエッタの死角から襲い掛かった。
大きく上段に構えた剣を今にも振り下ろさんとしている。
「陛下! お覚悟を!!!」
兵士が叫び、剣を振り下ろす。
アンリエッタは恐怖に駆られて目を閉じた。
ガキンッ!
硬い物がぶつかり合う音が響く。
アンリエッタは恐る恐る目を開くと、小柄な人物がその身に不釣合いな大きな杖で剣を受け止めていた。
その人物は剣を弾くや、素早い動きで杖で当身を食らわせた。
兵士は悶絶して倒れた。
「大丈夫?」
自分の身を案ずる言葉にアンリエッタは笑みを浮かべて頷いた。
「ええ、大丈夫です。ありがとう、シャルロット姫殿下」
「その名前はまだ名乗らない。”タバサ”でいい」
そう言ってタバサは新たに切り掛かって来た兵士を相手にする。
ルイズがそこへやって来た。
「姫さま、大丈夫ですか!?」
「ルイズ!」
ルイズを見てアンリエッタの表情が明るくなった。
アンリエッタの無事を確認したルイズはタバサに向き直る。
「タバサ、どうしてあなたは此処に?」
「ジャンガに頼まれた。アンリエッタ女王を守って欲しいと」
「ジャンガさんが…」
アンリエッタは暖かい物を胸の内に感じた。
エア・ハンマーを唱えて数人を纏めて吹き飛ばしながら、タバサは言葉を続ける。
「それに、わたし自身母さまの事で世話になっている。…あと、ここへ来たのはわたしだけじゃない」
「え?」
アンリエッタが呟くと同時に渦巻く炎が兵士を焼き、水の塊が兵士を吹き飛ばし、
複数の女性の姿をしたゴーレムが兵士を殴り飛ばした。
ルイズが思わず振り返る。
劇場の出入り口の方に見慣れた人影があった。
「何よ、ルイズ? 随分と楽しい事してるじゃないの。あたしもまぜなさいよ」
「はぁ…、ケンカは嫌いなんだけどな…。女王陛下をお守りするなら、話は別よね」
「女王陛下に牙を剥くとは不届き者共め! このギーシュ・ド・グラモンが成敗してくれる!」
キュルケとモンモランシーとギーシュは各自杖を振り、得意の魔法で兵士達を攻撃する。
結局いつものメンバーだが、ルイズももう慣れっこだ。
「あんた達もジャンガに頼まれたのーーーーー!!?」
大声で怒鳴るルイズに気付き、キュルケが返す。
「ええ、そうよーーーーー!!! あいつには大きすぎる貸しがあるし、断る理由は無いわーーー!!!」
「その本人は何処よーーーーー!!!?」
「別にやる事がある…、そう言っていた」
答えたのはタバサだ。
「何よ…あのバカ猫…。姫さまはあんたに護衛頼んだんじゃない…、最後まで責任持ちなさいよね?」
ぶつぶつ文句を言いながらも、エクスプロージョンで兵士を吹き飛ばしていく。
そうして暫く戦いが続いた。
すると、形勢不利と見た初老の貴族が舞台へと走って行く。
舞台の上に上り、中央へと進んで立ち止まった。
「待ちなさい! リッシュモン!!」
アンリエッタの叫びにリッシュモンは不適な笑みを浮かべながら振り返る。
「さらばだ、アンリエッタ!」
ドン、と杖で舞台の床を叩く。
すると、パカッと落とし穴の要領で床が開いた。
その中にリッシュモンは落ち、一瞬で見えなくなった。
慌ててタバサが駆け寄るが床は硬く閉ざされて開きそうに無い。魔法が掛かった仕掛けらしい。
「だめ、開かない」
無念そうにタバサは言った。
アンリエッタも悔しそうな表情で爪を噛む。そして銃士隊を振り返り、命令を下す。
「出口と思しき場所を探して! 直ぐに!! 絶対に逃がしてはなりません!!」

「その前に我輩と来てもらおうか?」

唐突に聞こえてきた声。
「誰!?」
アンリエッタが声を荒げるが、声の主と思しき者の姿は見えない。
と、アンリエッタの頭上から何かが覆い被さってきた。
ガシャンッ、と音がしてアンリエッタは檻の様な物に閉じ込められてしまった。
そのまま檻が空中に持ち上がる。
「姫さま!!?」
叫びながらルイズは気が付いた。その檻が以前、自分を捕まえたのと同じ幻獣である事に。
確かケイジィとか言ったか?
「まさか…ジョーカー!!?」
ルイズは力の限り怒鳴った。しかし、返ってきた言葉はあのピエロの物ではなかった。
「残念だが、奴は療養中でな…。お陰で我輩が来る羽目になった」
その声が聞こえてきたのは頭上だった。その場に居た全員が声の方へと一斉に視線を向ける。
宙には一人の男が浮いていた。おそらく年は四十代ほどで、左目には眼帯。
左腕が丸みを帯びたハサミのような義手をしており、右手には杖か槍のような物を握っている。
服と帽子は見た事もないデザインで、全体的に緑が強調されている。
ルイズは杖を向けると男に向かって怒鳴った。
「あなた何者!? 姫さまを放しなさい!!!」
「残念だが、それ出来ないのだよ…ルイズ君」
「わたしの名前を知ってるって事は……あんたやっぱりあのピエロの仲間ね!?」
「ククク…、そうだと言っておこう。だが、別に仲間でなくとも君の事は手に取る様に解るがね…」
「どういう意味よ!?」
「別に君が知る必要は無い。そう、君達はただ踊っていればいいのだ、何も考えずにな」
ルイズは一瞬呆気に取られたが、直ぐに杖を構え直す。
「別にあんたの事なんかはどうでもいいわ! 今直ぐ姫さまを放しなさい! さもないと」
「さもないと…どうするのかね?」
男は全く臆する事無くルイズを見つめている。
ルイズは男に向かって杖を振り翳し、呪文を唱えた。
エクスプロージョンが発動し、男の居た空間が爆発する。
ルイズは爆発した場所を睨みつける。と、どうした事か……男は全くの無傷でそこに浮いていた。
「…何で?」
「愚かなり…、無知とは愚かなり…、無知とは罪なり。所詮、貴様のような小童には解らぬのだな…己の身分が」
男は手にした杖を華麗な手捌きで回す。そして、先端をルイズに向けた。
「返礼だ」
男が呟くと同時だった…、ルイズの居た空間が爆発したのは。
吹き飛ばされたルイズの身体は舞台の上を跳ねる。
「ルイズ!!?」
アンリエッタが叫んだ。
タバサやキュルケが駆け寄り、ルイズを開放する。
ルイズは服が所々焼け焦げ、自身も軽い火傷を負っていたが命に別状は無さそうだ。
モンモランシーが治癒を唱えるが、ルイズは怪我の痛みも無視するかのように立ち上がろうとする。
「ひ、姫さまを……放しなさい!!」
「ルイズ…」
怪我を負いながらも自分の身を案じる友達にアンリエッタは涙を浮かべる。
男は嫌みったらしい笑みを顔に浮かべる。
「美しき友情と言うべきか? だが、そんな茶番を我輩は見に来た訳ではない。
そろそろここらで失礼させてもらうとしよう」
「ま、待ちなさい!!?」
「銃士隊、撃て!!!」
銃士隊の隊員達が一斉にマスケット銃を撃つ。
だが、数十発の銃弾は男が杖を一振りするや、巻き起こる風に絡め取られて地面に落ちた。
そして、再び杖を振るや起きた突風に全員が吹き飛ばされた。
吹き飛ぶ銃士隊の面々を見ながら男は嘲笑う。
「愚かな。力の端にも触れていない愚民が我輩に逆らうなど、六千年以上早いわ!」
そして、再びルイズ達に向き直る。
「では、貴様の大切な女王と待っている…アルビオンでな、グハハハハハハ!!!」
「あんた…」
男は笑いながら杖を振る。
暗い闇色の輝きに包まれて男もアンリエッタもその場から消え去った。
消え去る直前、男はこう言った。



「再び会う時まで覚えておくがいい! 我が名はガーレン! 悪夢を求め、闇を得た、この世の支配者たる存在なり!!!」


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