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ハルケギニアの宇宙少年

 ハルケギニアの宇宙少年


「なんなんだい、ありゃあ!?」

 土くれのフーケこと、マチルダオブサウスゴータは素っ頓狂な声を上げた。
 それもその筈、いざ宝物庫から目当ての品を盗み出そうとした途端に、てっきりただのハリボテと思っていた相手が動き出したのだから。
 そう動くはずなのないのだ、何故なら……

「ディティクトマジックで何の反応も無かったってのは、嘘だったってかい!」

 或いはディティクトマジックに反応しない先住の魔法が掛かったマジックアイテムか?
 そうだとしたらもし奪い取ることが出来れば大層な値段になるだろう――そう思って、やめた。“破壊の杖”のようなものならまだしも、マチルダの最大出力を掛けて作り出したゴーレムに迫る大きさの巨大な人形。
 こんな巨大なものを闇で流通させれば一発で足が付くに違いない。

「どっちにしたって……」

 マチルダの言葉に従ってゴーレムは大きく手を振りかぶった。
 それはまるで主の感情が乗せるかのように、その岩のような拳を握り締める。

「邪魔だよ!」

 宝物庫に穴を開けるために溜めに溜めていた力をゴーレムは解き放った、風が唸る音と同時に放たれたのはそれはもう見事な右フック。
 かなり力を入れた攻撃ではあるが、おそらくこの程度では倒せまい。
 そう思ってマチルダがゴーレムを次にどういう動きをさせるか考えている途中、メコッと言う実に小気味良い音が響いた。

「だぁぁぁぁぁあ! 装甲がへこんだぁぁぁ」

 ダイガードのコクピットのなかで、一人の男が涙目で叫び声を上げる。
 男の声には大切な宝物が傷つけられたような、悲しみと嘆きに満ちていた。
 彼の名前は赤木駿介、民間の相好警備保障会社「21世紀警備保障」の社員であり、ダイ・ガードのメインパイロットの一人である。

「ちくしょう! ルーンの効果とかで何とか動かせたけど、こっちはトタン並の装甲しかないんだぞ」
「大丈夫なのかい、アカギ? あのゴーレムはどう見積もってもトライアングル以上……」

 ダイガードは大きく胴体を凹ませながらもゴーレムの腕を振り払うと、そのまま頼りない千鳥足でハルケギニアに記すべき一歩を踏み出した。

「そんなこと、やってみなくちゃ分からないだろ!」

 言葉のままギアを変更する、各部の電磁モータが出力を上げその下半身をその巨体で似つかわしくない動きで前へと進ませる。

「出力、全開!」
「アカギ、ぼっ、ぼくはどうすれば!」
「そのままでいい! ワルキューレにもそのまま手を突き出させとけ!」

 がつんと言う激しい衝撃とともにコクピットのなかが揺れる、各種の計器が軒並みレッドゾーンを示し、警告を告げるブザーがけたたましき響き、電圧が落ちたせいで備え付けられた扇風機がカタカタと不安定に鳴る。

「よし組み付いた、これで……」

 赤木はコンソールを操作し、モードが切り替わったことを把握すると、通信用のスピーカーに向けて思いっきり声を張り上げた。

「ロングビルさん!」

 突然大音声で仮初の名前で呼ばれたことにマチルダは驚き、一瞬ゴーレムを操る動きが止まる。
 だが操縦に必死なのか赤木はそのことに気づかなかった、気づかずしかし――ただ懸命に訴えかける。

「ロングビルさん、俺です、赤木です! 此処は俺たちが抑えますから早く避難してください!」

 何言ってるんだこいつは。
 マチルダはそう思わずには居られなかった、あのお調子者の馬鹿はよりにもよって盗賊本人を逃げ遅れた憐れな被害者として身を挺して救おうと言うのだ。

「――馬鹿だね、大馬鹿だ」

 マチルダは笑わずには居られなかった、しかし此処で笑い出して怪しまれるわけにもいかない。

「すいません、此処はお任せいたします。どうか御無事で」

 そう言うとマチルダは走ってその場を離れた、ゴーレムを操っている途中なのでフライは使えない。
 ゴーレムが打ち砕いた宝物庫の表面の壁の欠片を踏みしめて走りながら、マチルダは笑った。
 腐り堕ちそうな倦怠感と虚脱感に襲われながら、マチルダは笑った。

 ――ロングビルさんて言うんですか。助かりましたよ、ルイズに飯抜きにされちゃって困ってたんです。 
 ――へぇ、故郷に妹さんが。、きっとロングビルさんに似た可愛い子なんでしょうね。
 ――困った時は何でも言ってくださいね、俺はあんまり頭よくないから対して役に立たないと思いますけど、それでも俺にできることならなんだってやりますから!
 ――盗賊なんて心配いりませんよ、俺とダイ・ガードが絶対に守りますから。

「まったく、馬鹿だね……」

 困っていた赤木を気まぐれで助けた時余計なことまで言ってしまったのは、アカギとか言うあの異国の人間があんまりにもまっすぐだったから。
 それは例えるなら「太陽」だ、悩みながらも迷いながらも、それでも自分が信じることを貫いてがむしゃらに生きている人間独特の熱や輝き、ずっと昔に自分が失くしてしまったそんな健全な光。
 まるで妹を思い起こさせるような温もりを、感じてしまったから。

「情が、移っちまったじゃないか……」

 そしてマチルダは操っていたゴーレムを土くれの塊に戻そうとし、途中で杖を止めた。
 何故なら、必死の形相でダイ・ガードへと走り寄る一人の桃色の髪の娘を発見したからだ。
 今、ゴーレムを土くれに戻せば足元にいる彼女まで生き埋めにしてしまうだろう、別にいけ好かない貴族など一人や二人死んでも構わなかったが、もともとマチルダは人殺しを好むようなタチではないし。
 何より自分の妹と同年代の少女が死ぬのは目覚めが悪い、赤木の悲しむ姿まで見る事に鳴ればさらに倍率ドンだろう。

「さて、どうするかね……」

 結果として、マチルダはとりあえずダイ・ガードをゴーレムから引っぺがした後、当たり障り程度に暴れさせつつ様子を見る以外の選択肢が奪われてしまったのであった。

「アカギ! ギーシュ!」

 名前を呼びながらルイズは走る、何をしたいのか分からないまま、杖を振るってぼかんぼかんとあちらこちらを爆発させる。
 その爆発が宝物庫に罅を入れたことを、マチルダだけは見逃さなかった。

「ルイズか、馬鹿っなんで来たんだよ。危ないから下がってろ!」

 ゴーレムを押さえつけながらアカギは叫ぶが、ルイズはそんなこと聞きやしなかった。

「うるさいうるさい!私に黙ってなにやってるのよ!」

 駆け寄るルイズの姿に赤木はコンソールを叩いた、ダイ・ガードの活動限界も近い、こんな状況もみ合う二体の側へで近づいてくるなどどう見ても自殺行為でしかないからだ。
 なんとかしてルイズとギーシュだけでも無事に逃がそうと考えるが、しかし良い手は一つも思い浮かばない。
 焦る気持ち、なんとかして早々にゴーレムを制圧しなければ……と言う気持ちが赤木に致命的なミスを生んだ。
 バキンと言う音、何が起こったのかとモニターを見ると其処にはへし折れて宙を舞う黄色い頭部アンテナの姿。
 それがまっすぐにルイズがいる方向へ向かって飛んでいくのを見て、赤木は体中の血が凍りつくような恐怖を覚えた。

「――あぶないっ、ルイズ!」

 ルイズは何が起こったのか分からずただ呆然とその光景を見ていた、自分に向かってへし曲がった鉄の塊が死神の鎌となって飛んでくるのをじっと見つめていた。
 いや、ルイズが見ているのはその先だ。
 自分の使い魔たる役に立たない鉄の巨人と、その操者たる一人の青年のことを――信じていた。
 信じたい、と思っていた。

「ウインドブレイク」

 だがルイズを救ったのは信じた者達ではなく、蒼い髪の一人の少女とその使い魔たる一匹の風竜だ。
 タバサはウインドブレイクで飛んできた鉄の塊を弾き飛ばし軌道を逸らせると、ルイズを拾い上げようと滑空する。
 けれど地面すれすれを燕のように舞うシルフィードは、ルイズを拾い上げる寸前で慌ててその軌道を変化させた。

「きゅいきゅい、無理なのねお姉さま、あのデカブツが邪魔なの」

 先ほどから奇妙に動きの少ないゴーレム、その腕がまるで壁のようにルイズをシルフィードの間を阻んだのだ。
 実際には手を付いて立ち上がろうとしただけだが、そんなことはゴーレムを操っているマチルダしか分かるわけがない。
 そしてそのマチルダが、細心の注意を払ってルイズを潰さないように気を使ったとは誰にも分かるわけがない。

「しょうがない、ルイズ! ダイ・ガードに乗るんだ!」

 だから赤木がそんな提案をしたとしても、けっしておかしなことではないのだった。
 いまだ地面に膝を付くダイ・ガード、その掌がルイズの目の前に差し出された。

「アカギ……うんっ」

 僅かに躊躇った後、ルイズはその掌に飛び乗った。
 その瞬間、ダイ・ガードの左手に刻まれたルーンがまばゆい光を放った。
 そうルイズが使い魔として契約したのは、パイロットである赤木駿介ではなく、ダイ・ガード自身なのだ。
 一体全体始祖の使い魔たるガンダールヴのルーンがどんな効力を発揮したのか、どうやら色々とプログラムも書き換えられているらしい。
 本来三人分必要な認証が必要なくなったこと、ディスプレイに表示される言語や数字がハルケギニア語になったことなど枚挙に暇がない。
 だが、その最大の違いは……

「いくわよ、アカギ!」

 ルイズがオペレーターのコクピットに入った途端、真っ赤に染まっていた計器の類が一斉に安全域を飛び越えて限界値を超えた数値を示す。
 なんでなんだろうな、これ……と頭を捻りながら赤木はダイガードを立ち上がらせた。

「おうっ、ダイ・ガード」
「「発進!!」」

 戦いは19秒で終わった。
 結果は言うまでもないだろう。
 ルイズたちは戦いに勝って、勝負に負けたのである。
 とにもかくにもこれがハルケギニアを聖地から湧き出す“ヘテロダイン”から守り続けた、鋼の守護神の初陣であった。

「とこんな感じでいいかい? アカギ」

 ギーシュは手に持った羊皮紙に文字を書く手を休め、背後を振り返った。

「おうばっちり、それじゃあ後は頼んだぜ!」

 其処には随分形は変わったし、ぼろぼろになってしまったけれど、紛うことなきダイ・ガードと赤木駿介の姿があった。
 ギーシュが書いていたのはダイ・ガードがハルケギニアを守り続けたすべての戦いの記録だ、勿論ギーシュによる脚色や誇張も含まれているが、そこには紛れも無くこれまでダイ・ガードがその装甲に傷を刻み続けたことを誇りに思えるような偉業の数々があった。

「しっかし、魔法ってすげぇなぁ……」

 ダイ・ガードは今最初にハルケギニアに来たときよりも桁違いに改修が加えられている、魔法を吸収して持ち主の体を動かすと言う能力を持ったインテリジェンス・ソードを利用した「デルフリンガー機構」
 関節部のスムーズな稼働を実現した「ソーサリー・ジョイント」
 何よりこれまでの電気を利用して稼働していた為、一度起動するだけで魔法学院のメイジが総出で錬金で充電しなければならなかったが、コルベールが桜田博士の遺著「ヘテロダイン量子論」から着想を得て開発した「コルベール型変圧器」を搭載したのが一番大きいだろう。
 これは搭載した火石から取り出した魔力を電力へと変換すると言う機能を持ち、その変換効率の異常な高さから元の世界に居た頃よりも遥かに稼働時間が延びると言う結果を齎した。
 これが完成した朝は、ダイ・ガードの充電から開放された魔法学院の生徒・職員一同が「魔法万歳」「コルベール万歳」と共に徹夜で飲み明かし、その後三日は魔法学院が使い物にならなくなると言う「コルベールの三日間」を生み出したほどであった。
 その様々な改修も、元の世界に戻ればほとんど意味がなくなってしまうのが心残りか……

「――それじゃあ行ってくる」

 聖地の門へ向かって、ダイ・ガードは赤木を乗せて歩き出した。
 ルイズは答えず、ただ俯き涙を堪える。
 そんなルイズをバックミラーで見ながら、赤木はダイガードをハッチを開けた。

「ルイズゥー!サラリーマンにだって!平和を守れるんだぁぁぁぁ!」

 ルイズに届くように、赤木はその小さな小さな女の子に聞こえるように赤木は声を張り上げた。

「だったら、魔法の使えない貴族にだって! 平和を守れる筈じゃないか!」


 後は任せた、そう告げる赤木に向かってルイズは……大きく息を吸い込み。
 そして……


 ――夕日と、それに向かって歩くダイ・ガードに向かってルイズは叫んだ。
 ――夕焼けに照らされ、宇宙へ挑むかのごとく立ち尽くす少女。
 ――その輝きと闘志に満ちた姿は、まるで太陽の子供みたいだった。

 その後ルイズがどうなったか、どうやって生きていくのかはまだ分からない。
 だが勝負は終わってみるまで分からないし、やってみなければすべては“ゼロ”のままだ。
 だから“僕”は、ルイズを信じたいと思う。
 彼女の心のなかで燃え上がる太陽のように輝くその魂を、信じてみたいと思うのだ。


 ギーシュ・ド・グラモン著 宇宙から来た少年 より抜粋


  Fin





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