あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロの修羅-1

「あんた誰よ?」

 『サモン・サーヴァント』によって現れた一人の青年を前に、不機嫌そうにルイズは尋ねた。何やら呆けた様子を見せている、みすぼらしいナリの男は、不思議そうに辺りを見回し始める。

「……何だここ?」
「先に聞いてるのはこっちなのだけれど?」

 要領を得ないやり取りに、徐々に不機嫌さを増していくルイズの顔に目を向けると、男は盛大にその腹の虫を鳴らせた。

「ああ、俺は……雷(アズマ)って言うんだけど……そんな事より、何か食わせてくれないか? 腹、減っちまった」

 尋ねた答えは得られたが、おまけで付いて来た言葉に、その周りで様子を眺めていた生徒達が爆笑でもってルイズとその使い魔に言葉を投げかけた。

「呼び出した使い魔が平民な上に、いきなり食事を要求されてるぜ?」
「あさましい使い魔もいたものね。ある意味ゼロのルイズには相応しいんじゃない?」

 あからさまな嘲笑を浴びせかけられ、羞恥に身を震わせるルイズは、その怒りを目の前の使い魔にぶつけた。

「あんた! 状況理解してる!? 呼び出された第一声がそれって、何よ、馬鹿にしてるの!?」
「呼び出されたって……わけわかんねぇよ。こっちは船に乗ってた筈なのに、気付いたらこんな所にいたんだから。理解してるのは、今俺の腹が減ってるって事くらいだな」

 そう言って力無く倒れたアズマと名乗った青年は、差し掛かる日の光を浴び、あくびを一つ、そのままくぅくぅと寝息を立て始めた。

「……召喚のやり直しは……」
「無論、不可だ。さぁ、早く『コントラクト・サーヴァント』を執り行いたまえ」

 おずおずと言うルイズに対し、コルベールの対応は迅速な物だった。

「はい……」

 不本意ながらも、こうしてルイズのファーストキスは、空きっ腹を抱えて眠る平民に捧げられる事と相成ったのだった。

目を覚ましたアズマは、そこがまるで見ず知らずの場所である事を知り、あからさまにうろたえを見せた。そして、眠る前のひと時を思い出し、あー、と頭を抱える。どうやら夢の類ではなかったらしい。不可思議な現象にアズマは混乱する。
 少なくとも、日本では見たことの無い意匠の部屋は、アズマの好奇心を刺激した物の、下手に動くのはどうか、と思い至り、自身が横たわっていた藁の床に再び身を預けた。

「腹減ったなぁ……」

 この部屋の窓からは、日の光とは違う控えめなそれが差し込んでいる。
 恐らくは夜なのだろうが、月の光にしては明るすぎる。そう思い、アズマはその身を起こして窓の外に目をやった。

「嘘だろ?」

 その目に映ったのは、夜空に煌々と輝く二つの月。あり得ない光景に息を呑んだアズマの無防備な背に、がちゃりと戸を開けて部屋に入ってきた者の声がかけられた。

「やっとお目覚め? 怠惰にも程があるわ……これ、夜食。お腹空いてるんでしょ?」

 アズマが振り返ると、そこにはパンを手にしたルイズの姿があった。
 何がどうなってるのか分からない状況だが、空きっ腹を抱えたアズマにとっては、目の前にある食べ物が全てだった。慌ててルイズの差し出したパンを掴み取ると、ほぼ一息でそれを嚥下した。

「おかわり」
「はぁ? ちょっと、あんた殆どそれ一気食い……」
「足りない」

 問答無用とばかりに言うアズマに、ルイズは自身のペースが掴めずに戸惑いっぱなしである。少なくとも、ある程度は空腹が満たされたのか、笑顔の彼に目を向けた。

「ちょっとは我慢しようって考えにならないの? せっかくご主人様がご主人様が施しを上げたって言うのに」
「ご主人様? おまえ何言ってるんだ? よく分からないけど、これっぽっちじゃ全然足りないよ」

 あの後眠っていたせいか、契約について理解していないのだろうか? ルイズはそんな不安を抱えながらも、ずい、と手を差し出して食べ物を要求する使い魔の勢いに押され、
「……ちょっと待ってなさいよ。ちゃんと食べ物は用意してあげるから。その後、わたしの話を聞きなさいよ?」
「ああ。何か食わせてくれたら何でも聞くさ」

肩を怒らせ、ルイズは渋々と部屋から出る。使い魔に甘い顔を見せるのはこれっきり、そう心に誓いながら。
 アズマはと言うと、再び窓の外に目をやり、ほう、と溜息を吐いた。

「望んでた通りに、別の国に来れたんだろうけど……これはあり得ないよなぁ……」

 外国の空には月が二つあるものかと一瞬思ったアズマだが、少なくとも自分が生きる世界には月が二つあるという現実は存在しないだろう、そう考えた。
 だが、そんな詮無き考えも、今の彼には無用だった。全てを捨て、ただ流浪の身となったアズマには、意味のある事など殆どありはしないのだから。

「これはこれで、いいのかもな」

 自身に受け継がれなかった『陸奥』の名を思い、彼は目を閉じる。
 それが忘れられるなら、どうなったっていい。少なくとも、今のアズマにとって、流れに身を任せて生きる事が全てだった。
 ふと視線を落とすと、妙な紋が自身の左手の甲にある事にアズマは気付く。

「なんだこりゃ?」

 刺青など彫った覚えはないのだが……アズマは部屋を見回し、布らしき物でそれを拭ったが、消える気配が無い。いつの間にこんな物が、と考えるも、今の不明瞭な状況では答えなど出るはずもなかった。
 とりあえず、必死になって左手の甲を布らしき物で拭っていると、再び開かれた扉の前で、仁王立ちしているルイズがいた。その手には先ほどよりも多いパンが握られている。
「おおっ、食い物!」
「あ、あああああ、あんた……」
「?」

 早速その中から一つを奪い取り、もぐもぐと食べ始めるアズマに、震えた声でルイズは言う。

「ご主人様のパンツを持って、何してんのよーーーーーーー!!」

 いきなり怒声を浴びせかけられ、驚くアズマ。左手を拭っていた布らしき物は、よくよく見ると、女性用の下履きに似た物であることに気付いた。

「へ、へへへへ、変態! あんた変態だわ!」
「…………何だかなぁ」

 部屋に置かれていた鞭を手にしたルイズに追い回されながら、アズマはパンを咥えて呟く。相変わらず状況は分からないが、とりあえず退屈だけはしないで済みそうだ、そう思って彼は飄々と、自身に振るわれる鞭を避け続けるのだった。

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