あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロの社長-24


「うぅ……頭痛い…気持ち悪い…」
料理長との揉め事のあと、そのまま部屋に運ばれたシエスタは、暫くは眠っていたものの、
ふとした拍子に目が覚めてしまった。
だがなぜか、室内だというのに涼しげな風が、頭を心地よく撫でていった。
「…あれ?ここは…」
目を開けてみれば、見慣れない天井。
いや、よく思い出せば昨日見た気がする。
「あ、そっか、姫様の部屋だ。やっぱり慣れないなぁ…、この部屋。」
「なら、そんなところにいないですぐにでもタルブに帰ろう。この僕と一緒にね。」
いきなりかけられた声に寝ぼけと酔いの回った脳が覚醒する。
風が吹いてくる窓のほうに目をやると、そこには割れた窓ガラスと人影があった。
いや、『人』影というには少し違っている。
人間の背には、あんなに大きな翼は存在しない。
だが、シエスタにはその姿に見覚えがあった。
「……ユベル…さん?」
「久しぶりだね、シエスタ。さ、今すぐ帰ろう…ん?」
「生憎だが、今彼女を連れて行かれては困る。ここはお引取り願えるだろうか、亜人殿。」
ユベルが言い切る前に、いつのまにかユベルの首元に刃が向けられていた。
そう言ったのはアニエスだった。
今にもユベルの首を刎ねんと、強烈な殺意の篭った瞳で見つめていた。
「ア、アニエスさん。この人は決して怪しいものじゃ…」
「やれやれ…。せっかく僕と愛するシエスタの再会の場面だというのに無粋な奴だな。」
ユベルが首下に当てられている剣に指を触れたかと思うと、剣はパキンと音をたてて折れてしまった。
驚きつつもそれを表情に出さず、一旦距離をとるアニエス。
アニエスの拳に力が入る。
(…先住魔法?いや、呪文もなにもなしに剣を折った。アレが剣に限らず、人体そのものに行えるとしたら…。
アレはどうやら彼女の知り合いのようだ。が、敵に回すのは厄介だな…。)
「…一体何者だ。何をしにここに現れた。」
刀身が半分ほど折れた剣を構えながら、アニエスはユベルに問う。
「どうしてお前なんかに話さなきゃならないんだ。
僕はシエスタに用があるだけで…あいた、何をするんだいシエスタ。」
アニエスを無視してシエスタのほうに向き直ろうとしたユベルに、シエスタが枕をぶつけていた。
「ユベルさんは普段からそう言う態度だから、いっつも話がややこしくなるんです!
まずちゃんとワケを話してください!」
「…ワケを話したら、タルブに戻ると約束してくれるかい?」
ユベルは、さっきまでの余裕を含んだ笑みを顔から消し、真剣な表情でシエスタに向く。
その表情にただならぬものを感じたのか、シエスタも、アニエスも口を噤む。
「…何があったんですか?」
ユベルは、壁に体重を預けながら言った。
「三幻魔の話は知っているね。シエスタ。」
三幻魔。
神炎皇ウリア、降雷皇ハモン、幻魔皇ラビエル

過去にタルブの村に降り立ち世界を破滅させかけたといわれる3種の悪魔。
それらは過去に英雄によって倒されたという昔話をシエスタは知っていた。
「正確には、ボクと十代によって三幻魔のカードはある場所に封じていたんだ。
あれは野に放しておいていい代物ではないし、かといって僕らには必要のないものだったからね。けど…」

「どうやら三幻魔の封印を解いた者がいるようでね。それも、アルビオンに…」



海馬とウェールズの一騎打ちのあと、イーグル号に合流したルイズ達一行は、目的の手紙が置いてあるというニューカッスル城へと向かった。
アンリエッタはウェールズと形式的なあいさつを交わし、今回の旅の目的、手紙の回収の件をウェールズに伝えるとそのあと船の一室に籠ってしまった。
そのため他の面々は各々でアルビオンまでの時間を過ごすことになった。
「姫様…」
アンリエッタの籠ってしまった部屋の前で、ルイズは迷っていた。
なぜ籠ってしまわれたかはわからないけれど、とりあえず食事だけでもと思い、シエスタから渡されたパンをトレイに乗せて、
扉の前までは来たものの、何となく入りづらい。
ルイズは意を決して扉を叩く。
「しっ、失礼します。姫様。あの、お、お食事を…」
トレイを片手に部屋に入ると、アンリエッタは顔を伏せていた。
「あの…姫様。」
「………」
答えようとしないアンリエッタに、トレイを机の上に置きルイズは戻ろうと扉に手をかけた。
「……私は、何をしに来たのでしょう。」
そのとき、ぽつりとアンリエッタがつぶやいた。
「え?」
「ウェールズ様自ら率いているという部隊が、この船一隻。それだけでもアルビオンの劣勢を痛く感じてしまう。」
国を継ぐはずの第一皇太子が戦場に出ているだけでも本来はあまり良い兆候とは言えない。
アンリエッタは報告にあったアルビオンの現状を再確認させられた。
「私はね…手紙もだけれど…ウェールズ様をトリステインに連れて戻る気でいたの。」
「……」
ルイズは…いや、旅に同行した全員がうすうす感じてはいた。
ただ手紙を回収するだけならば、危険な任務とは言え誰かに行かせればよい。
一国の姫がしなければならないことではない。
だが、アンリエッタには手紙のほかにもうひとつ、アルビオンには大切なものがあった。
そしてアンリエッタは、それを取り戻すことができるのではないかと思っていた。
デュエルモンスターズ…始祖から伝えられた力。
平民…いや、そこそこのメイジを相手にしたって負けない力を持っている。
「物語の勇者にでもなった気持ちだった。魔物に連れ去られた姫を救い出す勇者の物語。
勇者と姫が逆だけれどね。」

皮肉めいた苦笑が痛々しい。
そんな風にルイズは感じた。
「でも…そんなことウェールズ様は望んでいないのかもしれない。
ウェールズ様は、他の民を残して一人だけ逃げ出すようなことは、きっとしたくはないでしょう。
そんなことにも気付かずに、のこのことこんなところまで来て…私は…」
「それでも…姫様はそれを伝えていません。」
えっ?と、アンリエッタは顔をあげる。
「姫様は、ウェールズ殿下に気持ちを伝えておられないです。こんな部屋にこもったままじゃ、何も!」
「ルイズ…」
ぽろっと口にしてしまった言葉にハッとして、ルイズは頭を下げた。
「す、すみません姫様。私…偉そうなことを。申し訳ありません。」
バッと逃げるようにその部屋からルイズは飛び出してしまった。
「あっルイズ!……気持ちを、伝える……か」
パタパタと遠ざかっていくルイズの足音を聞きながら、アンリエッタはつぶやいた。


ニューカッスル城についた後、すぐに戻ると言ってウェールズは王城の一室に全員を案内し、席を立った。
自室にある件の手紙を取りに行ったのであろう。
しばしの沈黙が部屋を支配する。
次にウェールズが部屋の扉を開くまで、だれも一言も口を利かなかった。
「お待たせした。」
そう言ってウェールズが扉を開くのと同時に、アンリエッタは立ち上がった。
ウェールズは、宝石の散りばめられた小箱を抱えていた。
胸元から小さな鍵を取り出し小箱に差し込むと、カチリという音がした。
中から取り出したのは、何度も読み返されたのか、少しボロボロになった古びた手紙。
ウェールズは、それをそのままアンリエッタへと手渡した。
「この通り、確かに返却いたしました。アンリエッタ姫」
「……確かに、お預かりいたします。」
アンリエッタは受け取った手紙をしまう。
「今夜は既に遅い。日が昇るころ、非戦闘員を乗せた『イーグル号』が出発する。
それに乗って、トリステインに戻るといい。」
それまで黙っていたルイズが、意を決したように口を開いた。
「あの殿下…。船上で栄光ある敗北という言葉をおっしゃっていたのを耳にしました。
アルビオン…王軍に、勝利の目はないのですか?
「ルイズ、やめなさい。」
そう言ったアンリエッタの言葉を遮り、ウェールズは答えた。
「ないよ。わが軍は300。対する敵軍は5万。万に一つの可能性すらない。
我々にできるのは、勇敢な死に様を、敵に見せつけてやることだけだ。」
「ですが、ウェールズ殿下には先ほどのような…スターダストドラゴンのような力が…」
「モンスターがいかに強大であろうと、あのスターダストドラゴンの戦力は個の力。
49700の人数差を埋められる力ではない。それを埋めたければ、神の力でも持ってこなければ不可能だ。」
「セトっ!!」

海馬が言った言葉は事実であろう。
オベリスクの巨神兵やラーの翼神竜のような強大な力があれば、この戦況を覆すこともできるかもしれない。
だが、そんなものはない。
「彼の言う通りだ。スターダストや、私の相棒を駆使してもそれを乗り越えることは不可能だろう。」
「それでは…殿下は討ち死になされるおつもりですか。」
「ルイズ!「当然だ。私は、真っ先に死ぬつもりだよ」」
アンリエッタの声にかぶせて、ウェールズははっきりと言いきった。
その言葉に潜む決意に、全員は息をのんだ。
これから死を迎えようとするのに、ウェールズの言葉にはまるでブレがない。
「殿下…」
「私は、この国とともに生きこの国とともに死ぬ。それが皇子として生まれた私の運命だ。
そして今この国は死ぬ。
私は、それでも最後まで戦うと決めた兵とともに、戦い死んでいくのだ。」
『ならば今、死んでいただこう!!』
突然の声とともに、爆音が響く。
たくさんの爆発とともに、城外にあったイーグル号が爆散し、城のいたるところから火が出た。
「なっ!?奇襲だと!!」
「みんな!部屋から出るんだ。広い所へ逃げるんだ!」
コルベールは声をかけながら椅子を使って窓をたたき割った。
全員が火を逃れ正門の前に着いたとき、そこには数百人の反乱軍の兵士と一人、ルイズやアンリエッタには見憶えのあった男が立っていた。
「ワルド…様…?」



多くの手勢を従えるワルドの前へと、アンリエッタが一歩踏み出した。
「どうして…と、聞くまでもありませんね。やはりあなたは、レコン・キスタに寝返っていたのですね。」
「寝返る。私は仕えるべき相手を自分で選んだにすぎませんよ、アンリエッタ王女。
しかしまさか、ここにあなたまでもいらっしゃるとは…ウェールズ殿下のついでに、ここであなたも亡きものとすれば
トリステインへの侵攻も楽なものとなる。」
カチャ、とワルドの周りの剣士たちが剣を構える。
アンリエッタとの問答の裏で、タバサが上空に待機させていたシルフィードの視線からみたニューカッスル城の状況を小声で伝えていた。
「……城は既に兵士とメイジの混成部隊によって包囲されている。上空にも飛竜隊がマークしている。
イーグル号は大破。乗員の生存は…」
「…そうか。」
その報告を聞き、ウェールズはぐっと歯ぎしりをする。
「シルフィードのスピードなら、振り切って逃げられる。けれど…」
「シルフィード。ブルーアイズ、スターダスト、グングニールに乗って空からの脱出を図るのが最良案だろう。」
「そうだね。この人数差、戦いを挑んでも無駄な抵抗にしかならない。」
「ルイズ…貴族は逃げないものとか空気を読まないこと言わないわよね。」

「……そのくらいわかってる。ウェールズ様とアンリエッタ様にもしものことがあった時点で、私たちの負け。」
本心では逃げたくない、そう心の片隅でささやく自分をルイズは殺す。
そんな自分のエゴで姫様と殿下を殺させるわけにはいかない。
そう考えているうちにも、ニューカッスル城はどんどん崩れていく。
中に残っていたであろう人たちは…現アルビオン王は…。
多くの命が消えていくのに、助けることができないなんて。
ルイズの胸の中に悔しさがあふれ出てくる。
「ウェールズ殿下、お気持ちはわかりますがここは我々とともにトリステインにお引きください。
ここであなたまで倒れられては、本当にアルビオンは…」
「コルベール教諭…わかっている。だがっ…!」
「最期の別れ話は終わったかな。それじゃあ…」
ワルドは腕をあげ、大したことでもないように兵士たちに告げた。
「殺せ」とだけ。
「シルフィード!」
「ブルーアイズ!」
「スターダスト!」
「ブリューナク!」
号令とともに襲い来る兵士たちの目の前に閃光が走る。
と同時に現れた4匹のドラゴンは海馬たちを乗せ空へと舞い上がる。
「滅びのバーストストリーーーーム!!」
上空にいた飛竜隊をブルーアイズの白銀のブレスが薙ぎ払っていく。
「全速力でここから退避します!」
アンリエッタの号令とともに、4匹の竜は勢い良く飛び去った。
そのあとを眺めながら、ワルドは一人つぶやく。
「…ここまでは予定通りか。さて…それではこちらも追いかけるとするか。」


ニューカッスルを南下し海岸線沿いに4匹の竜は飛んでいく。
「ニューカッスルからそのままアルビオンを離れられれば良かったのに…」
シルフィードの上でキュルケが愚痴る。
「仕方がないよ。現在のアルビオンの位置はトリステインより若干北側に浮いている。
最短距離でトリステインに向かうにはこの海岸際にまっすぐ南下するルートが一番だ。」
コルベールがたまたまイーグル号内でアルビオンとトリステインの位置を把握していたため、海馬たちはこのルートを選択することができた。
しかし一行の先行きの不安がぬぐわれたわけではない。
アンリエッタがブリューナクをブルーアイズへと寄せる。
「…ニューカッスル城からはある程度距離が取れましたね。ここまでくれば…」
下に広がる森の先に、アルビオンの端にあたる部分が見えてきた。
ここから下に下ってしまえば、トリステインは目前だ。
シルフィードの上にいる3人も、ブルーアイズの上にいるルイズも安堵の表情を浮かべた。
「静かすぎる…。」
「え?」
海馬は違和感を覚えた。
敵はニューカッスルにウェールズたちが到着したことを見計らったかのように襲撃をしてきた。
そのうえであの数の兵を用意し、ウェールズの殺害を狙ってきた。
ウェールズの殺害。
殺す必要があるのだろうか?
もはや圧倒的な武力差で持って形勢はすでに反乱軍の勝利が確定している。
放っておけば勝手に戦場で死ぬ相手をわざわざ殺しにくる必要があるのだろうか。
あると仮定して、そこまで計画性を持って行ったこの襲撃にしてはあっさりと逃げられた上に追手もまだ追いついてこない。
(単にこちらの速度が速すぎて追い付けないのか…いや、国一つを追い落とす反乱軍が人数差だけで攻め込むような
安易な策だけでここまで成功するとは考えられん。
さっきの襲撃にしてもそうだ。
ならばこちらが逃げることも想定済みと考えるべきだろう。
そしてわかりやすい最短ルートを選ぶことも想定しているとすれば…)

その考えが
危険を告げる勘が
海馬の頭の中で警告を告げた時と

森の中から、巨大な赤い竜の姿をした悪魔が炎とともに現れたのはほぼ同時だった。


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