第0話 「君は、美少女使い魔」
この僕。ギーシュ・ド・グラモンが、彼女――ルイズの使い魔に最初に出会ったのは、春の使い魔召喚儀式でのことだった。
すぐ傍にいたモンモランシー(皆には内緒にしているけど、実は僕の彼女だ。おまけに幼馴染属性つき)には言えないけど、
第一印象は、中々、可愛い娘じゃないかだった。
すぐ傍にいたモンモランシー(皆には内緒にしているけど、実は僕の彼女だ。おまけに幼馴染属性つき)には言えないけど、
第一印象は、中々、可愛い娘じゃないかだった。
「えっ、なんですか? ここ何所ですか? あ、あなた達は?」
多分年は僕達と同じか少し下くらい。やや長い黒髪で、おしとやかな感じ、胸は今後の成長に期待と言った所かな。
ルイズやタバサ嬢と違って、無いのではなく控えめな感じだ。どこがとは言わないけど。
多分年は僕達と同じか少し下くらい。やや長い黒髪で、おしとやかな感じ、胸は今後の成長に期待と言った所かな。
ルイズやタバサ嬢と違って、無いのではなく控えめな感じだ。どこがとは言わないけど。
「な、なななんなんなんですか!? も、もしかして私今ちょっとピンチですか!?
街を散歩していたら、眠らされて外国に売り飛ばさちゃったんですか!?
あ、あの私なんか売り物にしたって意味ないですよぉ。
私なんて、私なんてほんと、存在価値『ゼロ』のクズなんです。
勉強できないし運動音痴だし手先不器用だし性格暗いし友達いないしお父さんは変な宗教に嵌っちゃうしお母さんは出て行っちゃたし、ほんと生きてる価値『ゼロ』って感じですよねそうですよね生まれてきてすみませんほんとすみません!」
いきなり召喚されて混乱しているのだろう、よくわからないことを口走っている。
街を散歩していたら、眠らされて外国に売り飛ばさちゃったんですか!?
あ、あの私なんか売り物にしたって意味ないですよぉ。
私なんて、私なんてほんと、存在価値『ゼロ』のクズなんです。
勉強できないし運動音痴だし手先不器用だし性格暗いし友達いないしお父さんは変な宗教に嵌っちゃうしお母さんは出て行っちゃたし、ほんと生きてる価値『ゼロ』って感じですよねそうですよね生まれてきてすみませんほんとすみません!」
いきなり召喚されて混乱しているのだろう、よくわからないことを口走っている。
「あんた、ちょっと黙っていなさいよ」
ルイズが、ドスの聞いた声で美少女にすごむ。
ルイズが、ドスの聞いた声で美少女にすごむ。
「あ、は、はいっ、す、すみませんすみません! 私のようなゴミ虫が人間様の言葉喋ること自体、不相応にもほどがありますよね、まったく、身のほどをわきまえろって感じですか?
すみませんほんとにすみません、もう金輪際人間様の言葉なんて喋りません、ゴミ虫はゴミ虫らしく、ゴミ虫の言葉を喋ることにします。ごみーごみーごみごみごみー」
なんというか、変わった娘だね? あまり近くには居て欲しくないタイプのようだ。可愛いけど。
すみませんほんとにすみません、もう金輪際人間様の言葉なんて喋りません、ゴミ虫はゴミ虫らしく、ゴミ虫の言葉を喋ることにします。ごみーごみーごみごみごみー」
なんというか、変わった娘だね? あまり近くには居て欲しくないタイプのようだ。可愛いけど。
「ミスタ・コルベール!」
ルイズが、もう一回やらせてください、とか、お願いです、とか、聞きようによって危険なことを言いながら腕をぶんぶん振りまわして、コルベール先生にせまっている。ああ、うらやましいなあ。
ルイズが、もう一回やらせてください、とか、お願いです、とか、聞きようによって危険なことを言いながら腕をぶんぶん振りまわして、コルベール先生にせまっている。ああ、うらやましいなあ。
「これは伝統なんだ。ミス・ヴァリエール。例外は認められない。
彼女は……ただの平民かもしれないが、呼び出された以上、
君の『使い魔』にならなければならない。 古今東西、人を使い魔にした例はないが、
春の使い魔召喚の儀式のルールはあらゆるルールに優先する。
彼女には君の使い魔になってもらわなくてはな」
「そんな……」
「さあ、早く儀式を続けなさい。次の授業が始ってしまうじゃないかね。
なに、女の子同士だ。気にすることもないだろう。さあ、早くブチュっと一発やっちゃいなさい」
そうだそうだ! 美少女同士の口付けを早く僕に見せたまえ!
彼女は……ただの平民かもしれないが、呼び出された以上、
君の『使い魔』にならなければならない。 古今東西、人を使い魔にした例はないが、
春の使い魔召喚の儀式のルールはあらゆるルールに優先する。
彼女には君の使い魔になってもらわなくてはな」
「そんな……」
「さあ、早く儀式を続けなさい。次の授業が始ってしまうじゃないかね。
なに、女の子同士だ。気にすることもないだろう。さあ、早くブチュっと一発やっちゃいなさい」
そうだそうだ! 美少女同士の口付けを早く僕に見せたまえ!
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
おおっ! なんというかこう、絵にして額縁に飾っておきたい光景だね。思わず身を乗り出してしまうよ。
おおっ! なんというかこう、絵にして額縁に飾っておきたい光景だね。思わず身を乗り出してしまうよ。
「終わりました」
ルイズが顔を真っ赤に染めている。いやあ、いいものを見させてもらったよ。
ルイズが顔を真っ赤に染めている。いやあ、いいものを見させてもらったよ。
「相手がただの平民だから、『契約』できたんだよ」
「そいつが高位の幻獣だったら、『契約』なんかできないって」
むっ、美というものを理解できない輩が、野次を飛ばしている。
ここは格好良く薔薇として一言注意しなければ――い、いたっ、痛い。
「そいつが高位の幻獣だったら、『契約』なんかできないって」
むっ、美というものを理解できない輩が、野次を飛ばしている。
ここは格好良く薔薇として一言注意しなければ――い、いたっ、痛い。
「本当にたまたまよね。ゼロのルイズ」
何故か機嫌が悪そうなモンモランシーが、ルイズに絡む。
自分が召喚したカエルとキスをしなければならなかったのがそんなに嫌だったのだろうか、
でもさっきまでは機嫌良かったのに。
後、踏まれた足が痛いのだけど。えぐりこむように足を動かすのは、やめて、おねがい。
何故か機嫌が悪そうなモンモランシーが、ルイズに絡む。
自分が召喚したカエルとキスをしなければならなかったのがそんなに嫌だったのだろうか、
でもさっきまでは機嫌良かったのに。
後、踏まれた足が痛いのだけど。えぐりこむように足を動かすのは、やめて、おねがい。
「あんた小さい頃、洪水みたいなおねしょしてたって話じゃない。『洪水』の方がお似合いよ」
「よくも言ってくれたわね! ゼロのルイズ! ゼロのくせになによ!」
モンモランシーとルイズが言い争っていると、突然、美少女(もちろんモンモランシーとルイズも美少女だけど、この場合は使い魔の少女のことだ)が、ささやかに膨らんだ胸を押さえて苦しみ出した。
……モンモランシーが見ていなければ、すぐに駆け寄って胸をさすって介抱してあげるのにっ!
いや、ここは人命第一。いまならモンモランシーも怒らないのでは、いや、でも、しかし、断じて絶対に下心がまったく無いとはいえ、モンモンは理屈が通じない所があるし。
オシオキ水コワイヨ、オシオキ水。
僕がモンモランシーのちょっとした誤解にもとずく理不尽な仕打ちを思い出して震えているうちに、ルイズが美少女に声をかける。
「よくも言ってくれたわね! ゼロのルイズ! ゼロのくせになによ!」
モンモランシーとルイズが言い争っていると、突然、美少女(もちろんモンモランシーとルイズも美少女だけど、この場合は使い魔の少女のことだ)が、ささやかに膨らんだ胸を押さえて苦しみ出した。
……モンモランシーが見ていなければ、すぐに駆け寄って胸をさすって介抱してあげるのにっ!
いや、ここは人命第一。いまならモンモランシーも怒らないのでは、いや、でも、しかし、断じて絶対に下心がまったく無いとはいえ、モンモンは理屈が通じない所があるし。
オシオキ水コワイヨ、オシオキ水。
僕がモンモランシーのちょっとした誤解にもとずく理不尽な仕打ちを思い出して震えているうちに、ルイズが美少女に声をかける。
「すぐ終わるわよ。待ってなさいよ。『使い魔のルーン』が刻まれているだけよ」
ルイズが吐き捨てるように言うけど、それを聞いた美少女が痛みに顔をしかめながらたずねる。
ルイズが吐き捨てるように言うけど、それを聞いた美少女が痛みに顔をしかめながらたずねる。
「つ、使い魔って、なんなんですか」
ああ、その不安げな表情も可愛いよ。素晴らしきかな美少女。
ああ、その不安げな表情も可愛いよ。素晴らしきかな美少女。
「使い魔を知らないって、どこの田舎者よ。いい、使い魔ってのはね、メイジが『サモン・サーヴァント』の呪文で呼び出す僕(しもべ)のことよ。本当は動物や幻獣が出てくるのに、なんで人間が召喚されるのよ!」
いや、いいじゃないか。美少女使い魔なんてうらやましい、まあ僕のヴェルダンテには及ばないけどね。
いや、いいじゃないか。美少女使い魔なんてうらやましい、まあ僕のヴェルダンテには及ばないけどね。
「すみませんすみませんすみません、呼ばれもしないの来ちゃってすみません。
ほんとごめんなさいすみません、どうかもう一度そのじゅもんを使って、私みたいなドジでグズなノロマで薄汚いゴミ虫じゃない、ちゃんとした使い魔を呼んで下さい」
額を地面に擦りつけて謝る美少女。家のメイドが高価な壷を割っちゃた時もあんなふうに謝っていたっけ。
ほんとごめんなさいすみません、どうかもう一度そのじゅもんを使って、私みたいなドジでグズなノロマで薄汚いゴミ虫じゃない、ちゃんとした使い魔を呼んで下さい」
額を地面に擦りつけて謝る美少女。家のメイドが高価な壷を割っちゃた時もあんなふうに謝っていたっけ。
「それはできない。『サモン・サーヴァント』を再び使うには、一回呼び出した使い魔が死ななければならないのだ。君も運命だと思って……」
コルベール先生がしゃしゃりでて、なれなれしく美少女の肩を触ろうとしたら、使い魔の――使い魔になった――少女が跳ねあがるように飛び起きた。目がランランと輝いてて怖い。
コルベール先生がしゃしゃりでて、なれなれしく美少女の肩を触ろうとしたら、使い魔の――使い魔になった――少女が跳ねあがるように飛び起きた。目がランランと輝いてて怖い。
「わかりました。死にます。私が死ねば全てうまくいくんですよね! 大丈夫です! ちょうどリストカット用のカッターを携帯してましたからっ!」
そういうと懐から小さな棒のような物を取り出して刃を露出させる。スライド式のナイフのようなものだったらしい。
そういうと懐から小さな棒のような物を取り出して刃を露出させる。スライド式のナイフのようなものだったらしい。
「あああ、あんた、なにする気よ! ややや、やめなさい!」
「そうだ、君。い、命を粗末にするんじゃない!」
慣れた手つきで流れるように、刃を手首に押し当てようとするのを近くに居たルイズとコルベール先生が、必死に押し止める。ちなみにギャラリーは僕も含めてドン引きだ。
「そうだ、君。い、命を粗末にするんじゃない!」
慣れた手つきで流れるように、刃を手首に押し当てようとするのを近くに居たルイズとコルベール先生が、必死に押し止める。ちなみにギャラリーは僕も含めてドン引きだ。
「なんで邪魔するんですか! 私なんかどうせ生きていたって無駄に酸素を消費するだけのゴミ虫なんです! さっさと死んじゃったほうが地球の為なんです!」
地球って何だ? あっ、ルイズが美少女にビンタした。
地球って何だ? あっ、ルイズが美少女にビンタした。
「あっ、あんたは、もう私の使い魔なんだから。勝手に死んじゃったりしたらダメなんだからね!」
興奮のためか、顔を先刻より真っ赤にして、目の端からちょっと涙が出ている。
興奮のためか、顔を先刻より真っ赤にして、目の端からちょっと涙が出ている。
「で、でも、私が死なないと、じゅもんをやり直すことが出来ないんですよね?」
「いいの! あんたが呼び出されたんだから、あんたが使い魔なの!」
「そうです。『サモン・サーヴァント』の呪文は、主と使い魔双方にとって、もっとも相性の良い、お互いに必要としあうものを呼び出す呪文。ミス・ヴァリエールも君も、いつかきっと良かったと思える日が来るはずです。ですから」
「本当に、私なんかでいいんですか? きっと後悔しますよ」
台詞を途中で遮られたコルベール先生、42歳独身がしょんぼりしてるけど、まあ、かなりどうでもいい事だけど。
「いいの! あんたが呼び出されたんだから、あんたが使い魔なの!」
「そうです。『サモン・サーヴァント』の呪文は、主と使い魔双方にとって、もっとも相性の良い、お互いに必要としあうものを呼び出す呪文。ミス・ヴァリエールも君も、いつかきっと良かったと思える日が来るはずです。ですから」
「本当に、私なんかでいいんですか? きっと後悔しますよ」
台詞を途中で遮られたコルベール先生、42歳独身がしょんぼりしてるけど、まあ、かなりどうでもいい事だけど。
「大丈夫よ。あんたは、このルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの呪文によって、この広い世界から選ばれた使い魔なんだから。
もうあんたは、存在価値『ゼロ』でも生きてる価値『ゼロ』でも無い。かけがえの無い、私の使い魔よ。誇りに思いなさい!」
「そそそそそ、そんな私なんかが……、かかかかか、かけがえの無いなんて……」
美少女が、あぶない陶酔した表情で虚空を見上げている。
いや、ルイズは目の前で死のうとする人間を見て、気が動転して、反射的に言ったんだと思うけど。
もうあんたは、存在価値『ゼロ』でも生きてる価値『ゼロ』でも無い。かけがえの無い、私の使い魔よ。誇りに思いなさい!」
「そそそそそ、そんな私なんかが……、かかかかか、かけがえの無いなんて……」
美少女が、あぶない陶酔した表情で虚空を見上げている。
いや、ルイズは目の前で死のうとする人間を見て、気が動転して、反射的に言ったんだと思うけど。
「ふ、ふつつかものですか、精一杯頑張らせて頂きます! よろしくお願いします!」
それは色々と、違う挨拶のような気がするけど、可愛いからいいや。
それは色々と、違う挨拶のような気がするけど、可愛いからいいや。
「あ~、ではルーンの確認を――」
そういえば使い魔のルーンは胸に刻まれたらしい。
コルベール先生が美少女の服をはだけてルーンを確認するのは、犯罪では無いだろうか?
ここは、女の子を守る薔薇として、コルベール先生が暴走しないように、じっくりたっぷりねっとりと見守らないと!
さあ、ミスタ・コルベール。ルーンの確認を! ハリーハリーハリー!
そういえば使い魔のルーンは胸に刻まれたらしい。
コルベール先生が美少女の服をはだけてルーンを確認するのは、犯罪では無いだろうか?
ここは、女の子を守る薔薇として、コルベール先生が暴走しないように、じっくりたっぷりねっとりと見守らないと!
さあ、ミスタ・コルベール。ルーンの確認を! ハリーハリーハリー!
「するのは問題がありますね。後でミセス・シュヴルーズ辺りに頼むとしよう。さてと、じゃあ皆教室に戻るぞ」
……。
…………。
……………………。
……いや、別に僕はそんなに期待はしていなかったよ?
当てが外れた男子生徒が、口々にルイズにヤジを飛ばしながら去っていく。
まったく、なんてみっともない連中だよ。少しは、この紳士的な僕を見習いたまえ。
……。
…………。
……………………。
……いや、別に僕はそんなに期待はしていなかったよ?
当てが外れた男子生徒が、口々にルイズにヤジを飛ばしながら去っていく。
まったく、なんてみっともない連中だよ。少しは、この紳士的な僕を見習いたまえ。
ちなみに、すぐに飛ばずにいたのは、女子のスカートの奥に秘められた色とりどりの花園を覗くためでは無いことは言うまでもない。
次回予告
春。
大勢の桜の花びらたちが風と共に舞う中――
大勢の桜の花びらたちが風と共に舞う中――
「僕は薔薇。女の子を守る薔薇なのさぁ!」
何事もポジティブにしか考えられない少年と
何事もポジティブにしか考えられない少年と
「私が悪いんですね! そうなんですね! 死にます! 死んでお詫びをします!」
何事もネガティブにしか考えられない少女。
何事もネガティブにしか考えられない少女。
出会ってはいけない二人が出会ってしまった。
「死んじゃったらどーするんです!」
僕らは生きて、恋をする 第1話「絶望使い魔」
近日公開!
以上。
なお、次回のタイトル及び内容は、予告無く変更になることもあるので予めご了承ください。
なお、次回のタイトル及び内容は、予告無く変更になることもあるので予めご了承ください。