あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロと帽子と本の使い魔02

 ベッドの中の少女。豪奢な天蓋つきの心地良さそうなそれに眠る少女は、前触れもなくぱちり、と目を開いた。
 ―――ルイズは目覚めた。

 毛布を跳ね除け起き上がると、きょろきょろとあたりを見渡すルイズ。自分の部屋の、自分のベッドの中であることを確信すると、ふうと一息をついた。そこでようやくとベッドの中にコゲが居る事に気付く。

「本当に、もどってこれたのね」

 話しかけるが、答えは無い。
 しかしきょろりとコゲの一つ目が見開かれて、ルイズを見つめた。ルイズにはそれが自分に応えているように思えて、少し笑う。

「だから戻れるって言ったろう?なんてね」

 そういって笑うルイズを、コゲの単眼が目を細めて怪訝そうに見た。何を言ってるんだ気持ち悪い、と言う風に。

「……何よその目は」

 そうだ。今は声が聞こえないが、コゲは決して人形のような存在ではない。人形のように擬人化して自分の想像を投影してもしょうがない相手だった。
 コゲをそんな風にあつかえば、きっと呆れられてしまうだろう。というか、自分が恥ずかしい。コゲに対して独り言みたいに色々言っても全部普通に聞かれてるんじゃない。とルイズは思い返し。

「こほん、何でもないわ。それより、本当に戻ってこれたみたいだけど、なんでベッドの中なの?時間を戻せると言ったけど、今はいつなの?」

 そう問うてコゲを見つめてみても、物言わぬ瞳に見つめ返されるだけだった。

「やっぱり話せないのね。なんでなのかしら……」

 あの不思議な図書館の世界では、確かにルイズはコゲと会話することができた。コゲに口はなくとも心に直接語りかけてくる声を聞くことができたのだ。今それができない理由はなんだろう?あの不思議な世界でしか声を聞くことができないのだろうか?考えてみてルイズは一つの事を思いついた。

「……着てみればいいとか?」

 あの世界で、ルイズは手の平に乗るほど小さくなっていた。そしてコゲをローブのようにまとって居たのだ。
 コゲを持ち上げて、じっと見つめる。

「無理があるわね」

 サイズ的に。

 ――寝巻きから着替えて、活動できる準備を整えた。まずは今がいつなのか確認しなければならない。
 コゲを持ち上げて制服の胸元に入れる。

「さ、始めるわよ」

 ルイズは己の使い魔にそう宣言した。


 部屋をでると、丁度キュルケも部屋を出て来て鉢合わせになった。
 彼女はルイズを見ると、にやっと笑った。

「おはよう。ルイズ」

 ルイズは顔をしかめると、嫌そうに挨拶を返した。

「おはよう。キュルケ」
「貴方の使い魔って、それ?」

 キュルケはルイズの胸元を指してそう言う。そのことにルイズは強い既視感を感じる。脳裏に夕焼けの中でされた会話がフラッシュバックする。とても嫌な気分になって、無視して歩き出そうと思ったが、コゲの言葉を思い出す。

(他にも誰かの助けを借りるとかしてみると良いんじゃないか?友達とかさ)
(キュルケだっけ?あの赤髪の子とか、ルイズのことを気にかけてるように見えたけどな)

 その言葉を思い起こして、まぁもう少し話をしてみようかな、とルイズは思った。

「どしたの?ぼーっとしちゃって。まぁ、そんなちっちゃい使い魔じゃあ言いたくないのもわかるけど」

 かちん。と頭に火花が飛んだ気がするけど我慢。言わせておけば良い、キュルケなんかにコゲの凄さはわからないんだから。

「うるさいわね」
「ま、ゼロのルイズにしては上等な結果じゃないかしら?何しろ召喚自体は出来たんだから」

 キュルケの言葉のひとつひとつにルイズのイライラが募る。

「でも、どうせ使い魔にするならこういうのが良いわよね~。フレイムー」

 そう呼ぶと、キュルケの部屋からのっそりと真っ赤な巨大トカゲが現れた。

「それってサラマンダー?」
「そうよー。火トカゲよー。あたしも昨日召喚したのよ。誰かさんとちがって一発成功でね。見て?この尻尾。ここまで鮮やかで大きい炎の尻尾は、間違いなく火竜山脈のサラマンダーよ。ブランドものよー。好事家にみせたら値段なんかつかないわよ?」

 あからさまに自慢するキュルケだったが、別になんとも思わない。死者を復活させ、時間までもどすことのできるコゲに比べたらどんな幻獣でも霞んで見えた。

「そりゃよかったわね。それより今、昨日召喚したって言ったかしら?」
「え?えぇ、言ったけど……それが何?」

 キュルケはルイズの何とも思っていないその態度を訝しんだ。

(あら?いつものこの子なら、顔を赤くして、悔しがってるのがばればれなのに、なんともないって態度を繕って……それがとっても可愛いのに)

 疑問に思うキュルケだったが、ルイズにはそんなことはどうでもよかった。重要なのは使い魔召喚の儀式が行われたのが昨日だというセリフ。
 それが本当なら――キュルケがそんな嘘をつく理由はないだろうから本当だろうが――自分は召喚に成功した嬉しさでコゲを抱きしめて寝た日。その目覚めの時まで戻ったと言うことだった。

「ふーん、なるほどね」

 一人呟くルイズにキュルケは心配そうに声をかける。

「ねぇルイズ。どうしたの?今日の貴方ちょっと変よ?ぼーっとして……昨日の召喚で疲れているんじゃない?」
「え?そんなことないわよ。変なこというわね」

 ルイズは適当にキュルケをあしらうと朝食をとるため食堂へと向かった。


 ―――食事後、授業にて。

 ミセス・シュヴルーズが魔法の基礎について説明しているが、ルイズはまったく耳に入らなかった。ワルドの裏切りに、どう対処したらいいのか、と言うことを食事時から考え込んでいたからだった。

(いきなり彼を告発したって、誰も信じてくれるわけない。彼が裏切ることを知っている私が対処しないと……でも私だけじゃ無理だわ。ワルドは優秀なスクウェアメイジ、それに比べて私は……誰かの協力が必要だわ。でも、あの任務は姫さまが私を信頼して頼んでくださった大事な秘密の任務。誰彼と話すわけはいかないわ。絶対に信頼できる相手じゃないと。)
「ミス・ヴァリエール!」
「え?」
「え、じゃありません!授業中に何をぼぅっとしているのですか。そんなことでは立派なメイジにはなれませんよ!」

 そのシュヴルーズの言葉に周りの生徒たちがわっと笑う。
 ゼロのルイズが立派なメイジになんてなれるわけがない。授業なんかでたってどうせ無駄だ。あぁ、だから授業を聞いてなかったんだな、あっはっは。
 そんな嘲笑がルイズを苛立たせる。
 そんな中、ぼーっとしていて叱られたルイズを、キュルケだけが心配そうに見ていた。

「お黙りなさい!学友をそのように嘲るものではありません!」

 シュヴルーズが杖を振るうと赤粘土が笑っていた生徒達の口を塞いだ。

「貴方達はそのまま授業をうけなさい!……そしてミス・ヴァリエール。丁度いいわ、この錬金は貴方にやってもらいましょう」
「え?わたし?」
「そうです。ここにある石ころを、望む金属に変えてごらんなさい」

 ルイズは立ち上がらない。困ったようにもじもじとするだけだ。その様子をみて声をあげた者がいた。

「先生」
「なんです?」
「彼女にやらせるのはやめたほうが良いと思います」

 声をあげたのはキュルケだった。

「どうしてですか?」
「きけん……いえ、あー、えっと、ミス・ヴァリエールは体調が優れないようなので」
「そうなのですか?」

 問われてルイズは考える。キュルケが何を思って止めに入ったのかは想像ができた。どうせ自分の魔法は爆発すると思っているからだろう。
 それはとってもむかついた。
 しかし、怒りにまかせてそれをやったらどうなるかルイズは既に知っている。また教室の掃除などやりたくはなかった。

「はい。今日は調子がわるくて」
「そうですか。では別の人にやってもらいましょうか」

 シュヴルーズがそう言うと、粘土で口を塞がれなかった者のなかからまた嘲笑をあげるものたちがいた。
 調子がわるいだって?調子がいいときなんてあるのかよ、ゼロのルイズが。
 ルイズは思わず立ち上がって。

「先生、やっぱり私やります!」

 そう言って教卓へと近付いた。

(そうよ、前失敗したからって次も同じとは限らないわ。何しろあんなに凄い使い魔を呼べたんだもの。こんなの簡単な筈よ!)

 意気込むルイズをみて、シュヴルーズがにっこりと笑う。

「ミス・ヴァリエール。錬金したい金属を強く心に思い浮かべるのです」


 ―――夕方。

「やっと終わった……」

 それが当然と言うように大爆発を起こしたルイズは、やっと教室の掃除を終えた。教卓に置いておいたコゲを胸元にもどすと、教室から出る。
 前回ほどに、ルイズの気持ちは荒れていなかったが、やはり魔法が成功しないということはルイズの心に思いしこりを残していた。

 夕日差す廊下を歩いて、自室へと戻る。扉を閉めてからふと思った。

「キュルケ、現れなかったわね」

 前回は、掃除が終わった後キュルケにあってそれで凄く嫌な気分になった筈だ。それが今回はない。偶然だろうか?

「たしか、使い魔の自慢をされたのよね」

 朝、ルイズに使い魔を自慢したからその必要がなくなったということだろうか?
 ではそもそも前回朝に出会わなかった理由はなんだろう。起きた時間だろうか?そういえば、前回は興奮して中々寝付けなかったせいで、朝は少し寝坊をした。
 でもそんなのは偶然だ……そうだろうか?偶然、と思っていたことが、もしかしたら必然なのかもしれない。全ての事に原因があって、結果がある。
 ただ「それをしなかったらどうなるか」というifの世界を見ることができないから、確かめることができないだけだ。そう、時間を戻せでもしないかぎり……。

 思考の渦に飲み込まれそうになったルイズのお腹がくぅと鳴る。
 一人で掃除をしたせいで、とても時間がかかって昼食が食べれなかったのだ。
 顔を赤くすると、ルイズは汚れた服を着替えて食堂へと向かった。

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