あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

世界最強コンビハルケギニアに立つ-06




「君が軽率に香水の壜なんかを拾い上げたおかげで二人のレディの名誉が傷ついた。どうしてくれるんだね?」
「知るか馬鹿者、二股なんぞかけた貴様が全面的に悪い。さっさと謝って来い」

ギーシュの八つ当たりがばっさりと斬り捨てられたことで、ギャラリーから笑いが起こる。
彼を揶揄する言葉も投げかけられ始め、ギーシュの顔は徐々に赤くなっていった。

「……何やってんだお前」
「おお、暁にルイズ。お前たちもこの小僧に何か言ってやれ」

暁もルイズも、どうせボーが変なことをやったのだろうと考えていた。
そしてどうにかこの場をおさめようと考えていたのだが、

「そりゃお前が悪いぜ、お坊ちゃん」
「それはあんたが悪いわ、ギーシュ」

二人はがっくりと肩を落とした。
話を聞くとボーは被害者だった上、原因が予想以上に馬鹿馬鹿しかった。

まず先ほどの修羅場の原因はギーシュの二股である。
なんでもポケットから恋人その一であるモンモランシー謹製の香水が落ち、それをボーが拾って渡したところ恋人その二に見咎められたらしい。
恋人その二――ケティという名の下級生である――からは頬を思いっきり引っ叩かれ、
さらにその光景を見たモンモランシーからは散々罵られた挙句ワインを一本分頭からかけられた。
馬鹿である。だがこのギーシュと言う少年、さらに輪をかけて馬鹿な行動に出る。
何を思ったかその原因は全てボーが香水を拾ったことにあるとか言い出したのだ。
君のせいで二人のレディの名誉が傷ついた、と。
……ワインを掛けられたせいで酔ったのだろうか、そう思えるくらいには酷い八つ当たりである。

「僕は彼から香水の壜を渡されたとき、知らないフリをしたのだよ?話をあわせるくらいの機転があったっていいじゃないか」
「何故貴様の不実に手を貸さねばならん?」

ボーの表情は不機嫌そのものである。
まぁこの場合当然だろう。落し物を拾ったらそれが原因で持ち主の二股がばれるなど、誰が予想できるというのか。
ギーシュは忌々しげにボーを眺めていたが、何かに気付いたのかその表情が嘲るものに変化した。

「ああ、そういえば彼はゼロのルイズが呼び出した平民だったね。なるほど、頭の悪そうな顔をしている」
「……どういう意味かしら?ギーシュ」

そのままの意味さ、とギーシュが続ける。

「知性のカケラも感じない野蛮人を二人も召喚するなんて君らしいと思ってね。
 野蛮人に貴族並みの機転を期待した僕が間違っていたよ。もう良いから行きたまえ」

反論しようとしたルイズを暁が制する。
何故?といった表情で見つめられたので、静かにしているよう促す。
どうやらこのギーシュとか言う少年はどうしても地雷原を歩きたいらしい。
そういう性格なのか、馬鹿なのか、あるいはその両方か。
いずれにせよどうやって煽ろうか、そればかりを考えていた暁にとっては理想的な流れであった。

「貴様には品性というものがないな、小僧」

低く、静かな声だった。

「貴様程度でも貴族を名乗れるのであれば、この世界の貴族の質が知れるというものだ」

既に食堂からはあらゆる音が消えている。
食堂にいる人間が皆、様々な感情を抱えながらボーとギーシュの方を見ていた。

「どういう意味かな……?」

先程のルイズと同じ質問をギーシュが投げかける。

「そのままの意味だ」

ボーの返答もまた、同じものである。

「二股などと言う不貞を働き、あまつさえ自らの過失を他人のせいにするような無様な男でも人の上に立てるのだな」

ボーの表情に変化はない、相変わらずの難しい顔である。
対するギーシュの顔色はみるみる赤く染まっていく。
羞恥、憎悪、そんなネガティブな感情が彼の顔には見て取ることができた。

「どうやら、君は貴族に対する礼を知らないようだな」
「貴族が社会の範となる様に振る舞うべきは義務であろう、特権ばかり振りかざすなど猿にも劣る」

その言葉に嘲りの色はなく、むしろどこか哀れみや失望を含んだような声であった。
おそらくはそれがギーシュにとっては我慢ならなかったのだろう。
ゆっくりと椅子から立ち上がると、彼はボーを睨みつけた。

「よかろう、君に礼儀を教えてやろう。ちょうどいい腹ごなしだ」

誰かが息を呑んだ音が聞こえた。

「女子供と喧嘩をする趣味はない」
「怖気づいたのかい?まぁ別に構わないけどね、それが平民として当然の――」
「だが、間違った方向に歩みを進めようとする子供を躾けてやるのは大人の務めだ」

余裕の笑みを浮かべようとしていたギーシュの顔が見事に凍る。
ボーはただ静かに彼を眺めていた。

「ヴェストリの広場で待っている、せいぜい逃げないことだ」

ギーシュは身を翻し、食堂を出て行った。

誰かが安堵のため息を吐いた音が聞こえ、食堂にようやく音が帰ってきた


「ア、アカツキさん!ボーさんを止めてください!」

真っ青な顔でシエスタが駆け寄ってくる。
その顔に浮かんでいるのは明らかな恐怖であった。
苦笑しつつルイズを見ると、彼女もまた不安そうな表情を浮かべていた。
暁としてはボーが負けるとは思っていない。
ボーを知っている人間で、人間相手に一対一で彼が負ける姿を想像することができる者がいたなら、暁はその人物を全力で尊敬しただろう。
無論ボーに勝ちうる人間も存在するが、そんなものは例外中の例外である。
負けてくれた方がこの先楽しみが増える、そんな邪な希望もあるにはあるが期待薄だろう。
それくらいボーという男は規格外なのである。

「お前たち、まさか私が負けるとでも思っているのか」

若干ふてくされた表情でボーがこちらを見ている。
やはりというかなんというか、この男も負けるということは考えていない顔であった。
大人気ないといえば大人気ない。

「いいかルイズ、シエスタ。私はボー・ブランシェ、世界最強の男だ」
「……さっきは世界最強コンビって言ってなかった?」
「細かいことは気にするな」

細かいのか?その場にいた全員がそう思った。

「私があんな小僧に負けると思われるのは心外だぞ」
「メイジに平民は絶対に勝てないのよ、それがこっちの世界の常識なの」

シエスタがコクコクと頷き、同意する。
この世界の常識とやらはボーのように明らかに普通ではない人間にも適応されるらしい。
例え平民でも戦い慣れていれば学生程度には勝てそうなものだが、
そういう発想が無いのは戦いを知らない貴族のご息女やメイドだからか。

「お前じゃ勝てないってよ。なんだったら代わってやろうか?」
「暁!貴様までそういうことを言うか!」

ボーという男がこれで怖気づいて謝りに行ったらそれはそれで面白い。
ただ彼はそんなことはしないだろう。
戦う前から戦うことを放棄するなど彼の美学、いや生き様に反することだ。
そもそもこのボー・ブランシェという男が怖気づくところなど想像できないのだが。

「んじゃー、せいぜいあのお坊ちゃんに世の中の厳しさを教えてやれよ」

ルイズとシエスタの視線が暁に刺さる。
何を煽っているんだ、そんなことを言いたそうな目だった。

「ふん、言われるまでもない!」

いかにも憤慨した様子でボーがずかずかと食堂を出て行く。
あとには暁とカタカタ震えるシエスタ、そして額に青筋の浮いたルイズが残される。

「あんた何煽ってるのよ!ボーが大怪我してもいいの!?」

ルイズが顔を真っ赤にして吼える。

「お嬢さん、ボーが心配なのか?」

問い掛けた暁の表情は、あからさまにルイズを気遣っていた。何か悪いものでも食ったのかと。
正直言ってこの少女がボーを心配して怒っているという現状が意外だった。
そういう性格ではないと思い込んでいたのだが、どういう心境の変化だろうか。

「んなッ!?ちちち違うわよ!そんなわけないじゃない!」
「そんなに心配しなくてもあいつなら大丈夫だ」

図星を突かれたのが恥ずかしいのか、ルイズが慌てふためく。
見ていて飽きない子供だ、と暁は思った。

「面白いものが見れると思うぜ」

不敵な笑みをルイズとシエスタに向ける。
ボーが相対するのはギーシュという少年ではなくこの世界の常識。なんと楽しそうな対戦相手か。
そしてボー・ブランシェという男なら難なくそれを超えてしまうだろう。
そんな予感が暁にはある、それは確信に近いものだ。
ルイズとシエスタは彼の真意を掴みかねているのか、怪訝な表情を浮かべていた。

「んじゃ、俺たちも行こうか」

ぽんと少女たちの肩を叩き、暁も食堂の出口へと向かう。
ルイズたちはしばらくその背中を微妙な表情で眺めていたが、意を決したように暁を追った。


「暁、なんちゃら広場と言うのはどこにある」

食堂を出るとそこには息巻いて出て行ったはずのボーが立っていた。

「聞いてから行け。そもそも名前を覚えろ」

台無しである。
尚、当然ながら面白いこととはこれではない。



「諸君!決闘だ!」

魔法学院敷地内の『風』と『火』の塔に挟まれた中庭、ヴェストリ広場と呼ばれる場所にギーシュの声が響く。
その声に応じるように周囲のギャラリーからもまた歓声が上がる。

普段あまり日の差さない薄暗い場所なのだが、広場は生徒たちで溢れ返っていた。
目的はもちろんギーシュとボーの決闘である。

「とりあえず、逃げずに来たことは褒めてやろうじゃないか」

ギーシュが歌うように言い放つ。
その表情からは既に先程までの強い感情は消え、余裕が覗いていた。

「何故逃げねばならん」

対するボーは相変わらず憮然とした表情を浮かべている。
ちなみに若干不貞腐れているように見えるのは気のせいではない。

そんなボーを鼻で笑い、ギーシュが手に持った薔薇を振るった。

「僕はメイジだ、だから魔法で戦う。よもや文句はあるまいね?」

花びらが一枚、宙を舞う。
そしてそれは大地に落ちる前に、一体の人形に変化した。

甲冑を身にまとった女戦士の形をした人形――ゴーレムである。
その体は、何かしらの金属でできているようだった。

「私は一向に構わん」

ボーの態度は変わらない。
腕を組み、仁王立ちしたままゴーレムとその隣にいるギーシュを静かに見つめていた。
その態度を虚勢と取ったか、ギーシュの顔に浮かんだ余裕が濃さを増す。

「僕の二つ名は『青銅』、青銅のギーシュだ。従って青銅のゴーレム、『ワルキューレ』が君の相手をしよう!」

その言葉と同時、ワルキューレと呼ばれたゴーレムがボーに向かって突進を開始する。
それを確認すると、ボーはゆっくりと構えを取った。

「世界最強の男、ボー・ブランシェだ!」

そう叫び、ボーもまたワルキューレに突進した。


ゴーレムに向かって何の得物も持たない人間が突貫する。
それはハルケギニアに生きる人間ならば誰しもが失笑する光景である。
実際、この場にいたほとんどの人間が落胆し、失笑した。
『馬鹿が一人大怪我するだけか、つまらない』と。

暁巌もまた、その顔に笑みを浮かべていた。
だがそれは楽しげな笑みであった、失笑の類では断じてない。
そして彼は横で目を逸らそうとするルイズの頭の上にポンと手を置き、言った。

「目を逸らすな、お嬢さんには見届ける義務がある」

何か言いたそうな表情でルイズが暁を見たが、彼は無視して視線をボーの方へと戻した。


ワルキューレが拳を振り上げる。
それでもなお、ボーは突進を止めない。
愚直に、ただ一直線にワルキューレへと向かっていく。
そしてワルキューレの拳がボーを捉えようとした刹那――彼の姿がワルキューレの眼前から『消えた』。

プンッ、という虫の羽音によく似た音がした。
それはごくごく小さな音であり、大多数の野次馬はワルキューレが拳を振り抜いた音に邪魔され、その音を聞き逃す。
その音を耳にした人間はわずかに二人のみ。
暁が喉の奥で笑い、それまで本に目を落としていた青髪の少女が顔をあげた時、
ボー・ブランシェはワルキューレの『背後』で右足を振り上げていた。

何かがひしゃげる音が広場に響く。
金属でできた壁に大砲の弾が直撃したらこんな音が出るかもしれない、そんな歪な音だった。
ボーの足裏がワルキューレの腰にめり込み、ワルキューレが派手にのけぞる。
そして、蹴り足が半ばまで伸ばされた瞬間、

「爆裂粉砕拳ッッッッ!!」

怒号とともにボーが両腕を振るった。
繰り出された拳は一撃一撃があまりにも重く、疾い。
そんな鉄拳が、右足が伸びきるまでのほんの数瞬の間に何発も繰り出され、その全てが的確にワルキューレを捉えていた。
刹那の後、ようやく連打という名の暴風が止み、砲弾の如き右足が振り抜かれる。

重力の鎖を無理矢理引き千切られたワルキューレが、景気よく吹き飛んだ 




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