あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロのロリカード-36


 さくり、さくりと死んでいく。
銃兵やメイジ達は、敵味方関係なく弾や魔法を撃ち放つ。
槍を振り回し、剣を振り回し、生き延びるために、死なない為に、目の前の畏怖から逃れたいが為に。
周囲を顧みずもがく。無我夢中でもがく。祈る暇もなく。覚悟する暇もなく。

 フライで逃れようとする者も、有象無象の区別無く撃ち落される。
暴風雨の如きトランプが、一瞬にして空気を、肉を裂く。
槍衾が狼狽する者達を突き貫き、次々と天高く掲げられる。

 死を恐れぬ軍団が、死して尚、歩みを止めぬ軍団が、死にながら戦う軍団が。
天を血で染め上げ、地を黒く平らげ、人を造作もなく蹂躙する。

 ひたすら一方的な・・・・・・、ただのワンサイドゲーム。
否、これはもう戦いとすら呼べない。


 なんというずるだ。生も死も全てがペテン。
何とも不死身で、無敵で、不敗で、最強で、馬鹿馬鹿しい。

 アーカードは城、アーカードは運動する領地。
暴君の意志が率いる、死の河の領民達。
体を変化させ、使い魔を使役させ、力をふるい、心を操り。
体を再生させ、他者の血をすすり、己の命の糧とする吸血鬼。


「うはぁーーーっ!!やっぱり何度見ても凄いねぇ~」
最初にルイズとアーカードがいた小高い丘の上に、シュレディンガーと大尉が立っている。

 シュレディンガーは眼下に見える景色を純粋に楽しんでいる。
大尉はいつも通り、感情の窺えない表情で眺めていた。
微塵の躊躇も無く、一片の後悔も無く、一切の容赦無く、鏖殺するその様。

「七万の軍勢だもんねー、さすがにこれは開放しないとアレか~」

 ロンドンを飲み込む死の河は、それはもう壮観だった。
が、だだっ広い平原で敵軍を飲み込む死の河も、また乙なものである。
遠目から眺めると、子供が黒い絵の具でひたすら塗り潰していくような感じ。
えも言われぬ爽快感である。

「ほんっとに呆気ないな~、もう戦争も終わりだね」


 こうなってしまった以上、有象無象では決して抗えない。
死の河を踏破する純然たる力量と、胆力を備えた者はそうはいない。
その上で、あの狂王を殺すなど。暴君を打ち倒すなど、不可能だ。

 尤もアンデルセンがこの状況で、黙って見ているとも思えないが。
そうは言っても、前の戦では負けている。神の化け物となっても、敗北したのだ。
今回勝てる道理があろうか?いや、無いだろう。

(僕も・・・・・・また心中するつもり、ないしね)

 そう、自分は楽しむだけだ。傍観者を気取って、世界を引っ掻き回す。
好奇心を優先し、気まぐれで行動する猫。
退屈を凌げれば――――――それでいいんだ。




「なるほど、こいつァ凄ェや。今まで色々モン見てきたが、こりゃおでれーた」
戦争の愉悦を楽しむアーカードに向かって、デルフリンガーが言った。

「フッ、始祖ブリミルよりもか?」
「あ~~~あんま覚えてねぇけど、ブリミルもブリミルで凄かったからなァ。甲乙つけ難いね」

 その時だった。

「疾ィィィィィィッ!!」
銃剣がアーカードを目掛けて、その体を貫こうと突如襲う。

 しかしアーカードは半ばそれを予想していたように、銃底を刀身に滑り込ませるように弾いて軌道をズラす。
そのままバックステップで距離を取った。

「ククッ、ははッハッハハハハッ!!やはり来たかッ!」
アンデルセンを見て、アーカードはこれ以上なく嬉しそうに叫ぶ。
衣服は汚れ、各所から血を流し、大きく呼吸を繰り返し、見るからに疲労の色が濃い。
既に満身創痍とも言うべき状態。死の河を踏破してきた証。

「見事だ、我が宿敵!!」


 アンデルセンは右順手で持った銃剣を横に、左逆手で持った銃剣を縦に十字を描いた。

「我は神の代理人。神罰の地上代行者。
 我が使命は、我が神に逆らう愚者を。
 その肉の最後の一片までも絶滅する事」

「ああ・・・・・・待っていたぞ、愛しき怨敵よ!!今度こそ、この私の夢のはざまを終わらせてみせろ!!」

 アーカードはカスールとジャッカルを放り投げると、それぞれ逆に持ち替える。
右手に持ったジャッカルを水平に、左手に持ったカスールを垂直に、同じく十字を描いた。

 一触即発の緊張感の中で、二人は睨み合う。


 「 A M E N !!!」

 先に攻撃を仕掛けたはアンデルセン。どこからか取り出された無数の銃剣が投擲される。
神速を超えるそれを、アーカードは両手に持った銃で全て撃ち落とす。
その撃ち落とす間に、アンデルセンはさらなる武器を取り出した。

「爆導鎖ッッ!!!」
何十本もの銃剣が取り付けられた鎖を、アーカードはリロードをしながら、跳躍して回避する。
アンデルセンが腕を振るう度に、それは獲物を狙う蛇の如くアーカードを追尾する。

 耐え切れず、アーカードは鎖を撃った。
その瞬間鎖に取り付けられた銃剣が次々と連鎖爆発する。

 爆発の粉塵に紛れたアンデルセンは、瞬時にアーカードとの距離を詰める。
クロスレンジに持ち込み、両手に持った銃剣を次々に繰り出す。

 接近距離に於いて、銃剣相手に二挺拳銃では分が悪い。
銃剣のやや短めの刀身は、近い間合いでは扱い易い。
逆に狙い撃つしかなく、カスール銃とジャッカルの長い銃身は非常に邪魔になる。


 たった一人で死の河を越えて、既に肉体は限界である筈なのに・・・・・・。
銃剣を振るう度に、鋭さが増している。一撃ごとにその重さが、その速度が上がっていく。

(ああ・・・・・・素敵だ、やはり人間は素晴らしい)

 そうだ、これが人間の底力なのだ。これこそが化け物を打ち倒す、人間の強さなのだ。
100年前のあの日、ロンドン。私は全身全霊を以って闘い、そして敗れた。完全に。

 アーサー・ホルムウッド、キンシー・モリス、ジャック・セワード。
そしてエイブラハム・ヴァン・ヘルシング。
あの年老いたただけの、人間のあの男は、私の心の臓腑にその杭を突き立てた。


 "彼女"を――――――"ミナ"を救う為に、そして私を滅ぼす為に、彼らはやってきた。
そうなのだ・・・・・・人間は、"なにか"の為にその力を限界以上に引き出す。
それは人であったり、物であったり、志であったりと様々だ。しかしその想いが力となる。
人間には底知れぬ可能性が、計り知れない圧倒的なポテンシャルがあるのだ。

 だからこそ、今のアンデルセンはあの時よりも強い。
身体を茨と化し、神を肯定した化け物と成り果てた、あの時よりも確実に強い。
己が信ずる神の為だけに、闘っているのではない。
  ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
 何か他に守るべきものがある。それが闘争を通して感じられた。
自分を・・・・・・化物を、打ち倒すべき人間。
かくも強き人間。我が宿敵、アレクサンド・アンデルセン。


 徐々にアーカードを追い詰めていく、アンデルセンの連撃。
(相棒とガチで闘り合うなんて、タダモノじゃあないね・・・・・・)
デルフリンガーはアーカードに背負われながら、そう心に思った。

        ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
 だがもし、今のアーカードに『ガンダールヴ』のルーンが刻み込まれてあったのなら、とっくに勝負は着いていただろう。
今のアーカードは、これ以上ないくらいに嬉しそうに闘っている。
これだけの感情の昂ぶりなら、『ガンダールヴ』はとてつもない効果を発揮していたに違いない。

 しかしアーカードの左手の手袋の下に、ルーンの輝きはない。その紋様、文字すらも。
いつだったか、ラグドリアンの湖畔でタバサとキュルケとの闘った時。
あの時に、アーカードは二人に負けた。『ジャベリン』にその心臓を貫かれ、一度死んだのだ。

 その時に『ガンダールヴ』のルーンとその能力は消えてしまった。
当然その事をアーカードに言った。


 二回目の契約が、その身にどのような効果を及ぼすのか不明。
元々ガンダールヴがあっても、感情の起伏が少ない所為か、あまり役に立った覚えはない。
無いなら無いで、別段不便なこともない。
死ぬ度に、二度三度四度と契約し直すのも面倒。

 結果・・・・・・必要に迫られない限り、再契約はしないという事に落ち着いた。

 ルイズとアーカードを繋ぐのは、ルーンの有無じゃない。
最初は単なる気まぐれもあって交わした主従の関係であったが、今は違う。
ルイズはアーカードを認め、アーカードはルイズを認めている。

 デルフリンガー自身、再契約して胸にでもルーンが刻まれたら嫌だった。
恐らくは、ガリアの虚無の使い魔に刻まれている・・・・・・か。
或いは、今アーカードと闘っているアンデルセン神父が、契約した場合に刻まれる可能性が高い。
でも、万が一も考えられる。自分は『ガンダールヴ』の盾であり、それ以外は御免だ。


(・・・・・・このままではジリ貧か)
アンデルセンの猛攻は止まらない。
相手が一方的に攻撃し、こちらはすんでのところでいなし、かわすだけ。
身長差がなければ、とうに押し切られていたかもしれない。
少女姿の小柄さを利用して、なんとか食い下がってるようなものであった。

(仕方ない・・・・・・)
本意ではないが、策を用いるとする。本来なら真っ向から戦いたいところではある。
しかし己の持ち得る全てを出し切るのもまた、闘争である。

 アーカードはやや強引に、しかして悟られないようにトリガーを引く。
そしてカスールを撃ち尽くし、ジャッカルには弾一発だけが残った。

 次に全神経を集中させ、アンデルセンの斬撃を見極める。
ジャッカルを弾こうとする横薙ぎ選んで、敢えて避けず銃身で受けた。
重量16kgにも及び、専用弾を撃つジャッカルは非常に頑丈である。
さらには固定化をかけられている為、銃剣の一撃でも易々と壊れたりはしない。


 アーカードはその一撃に逆らわず体勢を崩す。
右後方に倒れながら、カスールを構え撃つ。
しかし撃ち尽くした後なので、弾丸が飛び出すことはない。

 トリガーを引く空しい音だけが響き、カスール銃が弾き飛ばされる。
隙を見逃す筈もないアンデルセンの右の一振りが、アーカードの左手を切り裂いたのだ。
アンデルセンは返す刀で、より強力な一撃を叩き込む為に振りかぶった。

(来たッ!大振り!)
アーカードは倒れ込む全身を、逆方向に捻り上げる。
肉体の動きだけで、無理やり慣性を無視する。
人間には不可能な動作も、吸血鬼の強靭な体であるならば可能であった。


 振り下ろされるアンデルセンの右手首に、アーカードの右ハイキックが炸裂した。
肉を砕く鈍い音から間髪入れず、アーカードは空中で体を半回転させ、左で蹴り上げる。
そのバネから生み出される全エネルギーを集約させ、アンデルセンの顎を真下から蹴り抜いた。

「がっ・・・・・・」
アンデルセンの口から呻きが漏れる。

 動きが止まったその瞬間、ジャッカルの弾丸をアンデルセンに叩き込む。
しかしアンデルセンは、腹を貫くその衝撃を耐え、その場に踏みとどまった。
アンデルセンは顔を空に向けたまま、アーカードの姿が見えないまま、左手に持った銃剣を放った。

 心臓目掛けて正確に投擲された銃剣に、アーカードは咄嗟に身をかわす。
しかし空中では避けきれず、銃剣はアーカードの喉を貫き、勢いでそのまま首が刎ねられた。

 少女姿のアーカードの長髪が振り乱され、その頭が地面に転がる。
体も地に倒れるが、ゆっくりと立ち上がりアンデルセンと向き合う。


「ぐっ・・・・・・ぬぅ・・・」
アンデルセンは開いた穴に手をやる。心臓をはずしたとはいえ、ジャッカルの一撃。
さすがにアンデルセンの再生能力でも、すぐに間に合うものではない。
その上、顎に強力な一撃を喰らったので、まだ意識も朦朧としている。

 するとアーカードの頭が無数の蝙蝠に変わり、元あった位置へと戻っていく。
その再生とジャッカルのリロードを終える頃には、アンデルセンも既に体勢を整えていた。

「さすがだ、我が宿敵。やはり貴様こそが私を倒すのに相応しい」

 アーカードは再生を終えた左手で、デルフリンガーを抜く。
左肩に刀身を置き、ジャッカルの銃口をアンデルセンへと向ける。
「仕切り直しだ」
「DUST TO DUST――――――チリはチリに・・・・・・」

 アーカードとアンデルセンは、同時に地を蹴った。


 亡者達が弾け飛ぶ。大尉の蹴りの一撃が、押し寄せる敵という敵を吹き飛ばす。
両手に持ったメーターマウザーから、弾丸が放たれ敵を穿つ。
ルイズと棺桶がある位置を中心とし、放射状に拡がっていく死の河。
死者達は進み行く道程にあるもの全てを、無差別に、等しく、飲み込もうと襲い掛かる。

 当然丘に立っていた大尉とシュレディンガーも例外ではなく。
振りかかる火の粉を払うように、近づく亡者を片端から撃破していく。
シュレディンガーは大尉からつかず離れず、しかして邪魔にもならないよう、軽業師のように動き回る。

「キリがないよー」
シュレディンガーが愚痴を言う。
早々お目にかかれるモノじゃないので、野次馬気分で見に来ていた。
が、さすがに疲れてきた。

 亡者達に取り込まれ、アーカードに吸収されて、また消えるのは御免被る。
しかし、大尉のどことなく愉しそうな姿が新鮮なので、それを眺めながら我慢していた。

 まるで降り積もる雪の中で、駆け回り遊ぶ犬のよう。
雪とは似ても似つかぬ死者達の群れであるが、大尉にとっては丁度良い遊び相手。
手加減せずに暴れられる機会、体のいいストレス解消の場になっている。
万が一にも遅れを取ることはあるまい。


 と、思った矢先に大尉の体が吹き飛び、さらに切断される。
シュレディンガーの耳がピクッと動く。
異音が周囲を飛び交い、風を切り裂く音が聞こえた。
シュレディンガーはキョロキョロと辺りを見渡し、そして二人の人物を見つける。
「わ~お、これはこれは・・・・・・トランプ遊戯のトバルカインと、泣き虫リップヴァーン」

 霧散した体を再構成した大尉の前に、トバルカインとリップヴァーンが立っていた。
トバルカインは何百何千というトランプを周囲に展開し、リップヴァーンはマスケット銃に弾を込める。

「僕らの匂いにでもつられたのかな?なんて――――――」
シュレディンガーが軽口を叩いた瞬間、魔弾がシュレディンガーを吹き飛ばす。


「いったいな~もォ・・・・・・」
どてっ腹に大きく開けられた穴と溢れ出る血を見つめながら、シュレディンガーは唇を尖らせる。
するとトバルカインが、大尉とシュレディンガーに向かってトランプを放った。

 大尉は地面を擦り砕きながら蹴り上げ、迫り来るトランプを吹き飛ばす。
次に虚空に腕を伸ばすと、バチィッという音と共に、魔弾が止められた。

 トバルカインとリップヴァーンは、正気か虚ろか、薄ら笑いだけを浮かべている。
大尉はただ静かに、淡々と、二人を睨み付けた。

「それじゃ大尉ー。僕は邪魔になりそうだし帰るから~」
そう言うと、シュレディンガーの体が掻き消える。
と同時に、大尉の体が巨大な狼へと、その姿を変えた。


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