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ジ・エルダースクロール外伝 ハルケギニア-50


50.火の本質

「はぁ、結婚式の感謝の詩ですか……」

コルベールはマーティンと一緒にやって来たルイズから、どの様にしてこの研究室に来たかを説明し、
詩についてとても困っていることを聞いた。コルベールは腕を組み、そういえばとルイズに話しかける。

「ミス・ヴァリエール。私の記憶が確かならば、君の友人にこういうのが得意そうな」

ルイズはきっぱりと否定した。

「いません。いたとしても却下します、絶対にやです」

即答するルイズを見てコルベールは苦笑する。やはり、彼女には頼めないか。
ツェルプストーとヴァリエールの関係を見れば明らかな話だ。
そしてコルベールはゆっくりと首を縦に振った。

「大船に乗ったつもりで、という訳にはまいりませんが、これでもたしなむ程度には学んでいます。
 しばらく、時間をくれますかな?」

ルイズは満面の笑顔でコルベールに礼をする。

「ありがとうございます!ミスタ・コルベール」
「ええ、今度からはこんな事が無いように詩の勉強をするべきですな」

にこやかに釘を刺されたルイズは、引きつった笑顔で掘っ立て小屋のドアを開く。
しかし、一緒に来たマーティンはルイズと共に帰るそぶりを見せなかった。

「マーティンはここに残るの?」
「ああ。ミスタ・コルベールと話したい事が色々とあるしね」

先に休んでいてくれとマーティンは手を振り、ルイズはドアを閉めた。

「さて、マーティンさん」

コルベールは目を輝かせてマーティンを見ている。
マーティンはそんな目を見た事が何度もあった。知的好奇心が揺さぶられている目。
シロディールでメイジだった頃、自分もそんな輝いた目で対象を見たものだ。
そして、こうなったメイジはしばらく自分の世界にのめり込む。

学院長からコルベールに対してそっちの事を色々教えてやって欲しいと言われてから、
既に一ヶ月は過ぎていた。マーティンは彼の居所を知っていたし、
時折すれ違うコルベールと軽く話したりすることもあったが、時間をかけてゆっくりと話しあったことは無い。
というのも彼の人柄を知れば知るほど、その性質がタムリエルにおけるメイジ、
こちらで言うところの研究家メイジであることが分かったからだ。

「ええ。お手柔らかに」

そういった類の人間はどこか変なところがあると、マーティンはとてもよく理解している。
メイジ特有のいやみったらしさは持っていないが、知的興奮で暴走を起こすだろう。
そう考えたマーティンは、コルベールがそうなっても構わないように、
この世界についてある程度学んでから話をしようと思ったのだ。

「まず、タムリエルの魔法についてですが」

マーティンはコルベールが用意したイスに座り、彼も年季の入った木のイスに座る。

「杖が無くても使えると聞きましたが、一体どの様な原理で?」
「ああ、それは」

ハルケギニアとタムリエルにおける魔法の最大の違いは、その力はどこからやって来ているかだ。
ハルケギニアにおいて、メイジは自身が生み出す精神力を用いて魔法を使う。
その為一日で使える魔法はタムリエルのそれと比べてとても少なく、
睡眠しなければ回復も出来ず、使い勝手は良くない。
更にいえば杖を媒介にして自身が内包している力を放出しなければならないので、
魔法を使うには杖が必要不可欠になる。

タムリエルはというと、エセリウスと呼ばれる神の国から魔法の力であるマジカが降りてくる。
正確に言えばエセリウスから生まれる目に見えないマジカの光は、常にタムリエルに降り注いでいる。
その為生きとし生ける知あるものなら誰でも魔法が使える上に、
常時魔法の力が回復していくのである。

「種類そのものが違うのでしょう。おそらく、ここでは先住魔法と呼ばれる種類だと思われます。
他にも、魔法力を回復させるポーションなどもありますね。この地には、そういった物がないのですか?」

「残念ながら。以前アカデミーがそういった事を研究していた時期もありましたが、
人体への影響から……しかし、神の国ですか」

コルベールは、何とも言えない顔をした。どちらかといえば、あまり好ましくない表情だ。
ハルケギニアの考えとして突拍子の無い言葉だとは、色々と学んだ知識からマーティンも理解している。
この世界における神の概念とはすなわち偶像であり、実際のところいるかどうかはまた別の話なのだと、
先日読んだ神学書がきっかけでようやく分かった。

マーティンは初め、始祖ブリミルが神だと思っていた。
しかしそれは誤りで、彼は神の代弁者であると分かった。
ここまでは良い。聖アレッシアやタイバー・セプティムの様に、
神に選ばれし人間はタムリエルにも存在する。
問題は、その神についての描写が不明瞭で断片的すぎる事だ。

タムリエルの神々が人間に力を貸す理由の一つは、信仰を得る為である。
自分の身代わりに誰かを使って活躍させて、勢力を拡大させるのが目的だ。
信仰心はそのまま神の力になる。

名前が分からず神をかたどる像も無いのであれば、
一体どんな神に祈っているのか分からないではないか。
そんな話をマーティンがルイズした時、彼女からこう答えた。

「ノクターナルやヴァーミルナを見るまで、神様がいるとはそんなに思ってなかった」

どういう事かとたずねると、彼女は難しそうに額にしわを作り腕を組む。

「あんまりそういうのに詳しくは無いけど……ええと、
精霊ならラグドリアン湖に行ったら会えるのよ。たまにだけど。
でも、神様って何処に行っても見つからないの。
小さな頃に神様はどこにいるのってお母さまに聞いたとき、
『あなたの心の中』にいるって聞かされたわ。だから、なんていうか、そういうものだと思うの」

6000年の間に神がいなくなったのか。それともブリミルはいもしない神を人々に信仰させたのか。
もしくはその神が人前に姿を現すのが嫌いなだけか。この内のどれにせよ、
やはりここはタムリエルとは違うのだとマーティンは理解した。


マーティンは、うさんくさそうなコルベールに話を続ける。

「ええ。私が信仰している九大神と帝国の英霊、そして精霊達が住むと言われています」
「精霊も……そうですか」

精霊はこの世界でも視認できる。コルベールはマーティンの言う神を、
精霊に近い何かだと思ったのだろう。首を縦に動かす様は納得した様子で、
マーティンに別の質問をする。

「ところで、そちらでは杖は使わないのでしょうか?」

「ええ、まぁ。こちらで言うところのアカデミーの様な機関では象徴という形で携えています。
ですがあまり使う機会はありません」

タムリエルのメイジは、タバサが持つような大きな杖を背中に背負っている時がある。
主にメイジであることを誇示したり、メイジギルドに入会している事を示したりする際に使われている。
杖には何かの呪文が込められ、持っていればいつでも使えるがそれほど実用的ではない。

「世界が変われば杖の役割も全く違うのですな。おもしろい、年甲斐もなく興奮してきましたぞ」

それからもコルベールはタムリエルの魔法について質問を続け、マーティンはそれに答えていくと、
コルベールの知的好奇心が段々と刺激されていく。

「ところで、系統の違いですが」

コルベールはそう切り出す。ああ、とマーティンはそれについて簡単な説明を行う。

「私がメイジ……失礼、こちらでいうところの魔法学院の様な機関で学んだ魔法の系統は6つあります」
「6つ?やはり全く原理が違うのですなぁ」

マーティンはキラキラと瞳を輝かせて話を促すコルベールに応える。

「異世界から武具やモンスターを呼び出す『召喚』、生物の知覚と精神に作用する『幻惑』。
傷や病を癒し、自身の様々な能力を向上させる『回復』。ええと、『変性』は何と言いましょうか、
この世にある自然的特性を操作する……例えば水の上を歩いたり、水の中で呼吸をしたり。
『破壊』の系統は文字通り。それ以外の魔法は『神秘』の系統にまとめられています。
それから魔法ではありませんが、様々な材料を用いてポーションを作る『錬金術』もあります」

「ふむ、ふむふむ……何かしら似ている部分、というより区切り方が違うというか……」

コルベールは頭の中で聞いた言葉を繰り返す。何かを思いつくと、そのままマーティンに話す。

「マーティンさん。それらの系統について、詳しく教えていただけますかな?」
「もちろん。私の知る限りで、ですが。それとできればこの地の魔法についても詳しく教えてもらえますか?」

コルベールはとても朗らかに笑い、承諾した。

「まず私の得意な分野から……『召喚』の系統についてはこちらの使い魔のそれとは全く異なります」

異世界から武具や生命体、もしくはアンデッドを呼び出す呪文がタムリエルにおける『召喚』魔法である。
それらは全て一時的なもので、術者の力と呼び出す存在の力によって呼び出す時間が変わっていく。

「アンデッド……つまり、おばけなども?」
「ええ、普通に呼ぶ事が出来ます」

それを聞いたコルベールは何も言っていないが、目が雄弁に物語っている。「やってくれ」と。
こちらでは伝承の中だけの存在らしい。どうして墓守をする幽霊がいないのだろうか?
クヴァッチにいた頃は毎日地下の墓所でそういうモノを見てきたマーティンとしては、
疑問以外の何物でも無かった。

「昔こそ私もそういったものを使役していましたが、今の私は司祭です。
ですからみだりやたらと祖先の霊を呼び出すことについては……」

別にそれほど思っているわけではないが、言っておかなければならない建前だった。

「ええもちろんです、もちろんですともミスタ。
良い行いとはいえませんな。ですが一度だけ、一度だけで構いません!」

興奮するコルベールを諭すように、苦笑いを浮かべながら一度だけですよとマーティンは言った。
こうすることで先に「二度目」を無しにできる。目論見通りに事は運んだ。

「では……」

マーティンは意識を集中させ、右手をにぎりその腕を掲げる。
にぎった拳に紫色の禍々しい光が集まっていく。

「そして、こう」

にぎるのをやめて手を開くと、光が拡散すると共に冷たい空気が辺りを包み込む。
コルベールから見てマーティンの右側の上に歪みが生まれたかと思うと、それが「穴」となった。
その紫色の穴から音もなく紫紺のもやに包まれた「何か」が落ちてくる。
小さなもやが無くなると、そこには骨があった。少し風化して黄色がかった人骨が、
何の支えも無く立っている。体をきしませながら、骨は小さく叫び声をあげた。

「なななな、なんと!」

コルベールは心底驚き叫んだが、斧を持った人骨は何も反応せず、ただ立っている。

「スケルトンです。ご心配なく、危害は加えません」

マーティンはそんなコルベールに落ち着かせる様に優しく言った。
アンデッドの類の召喚は、どちらかといえば初歩に属する魔法である。
素人には難しいが、召喚に精通しているメイジならば誰でも簡単に呼び出せるのだ。

「し、しかし……ふぅむ」

いかに好奇心旺盛なコルベールといえど、初めて見るおばけはなかなか恐ろしく見える。
しかし恐怖より好奇心が勝ったらしい彼は、イスから立ち上がるとおそるおそるスケルトンに歩み寄り、
杖をにぎって魔法を唱えた。

「……魔法の反応はありませんな」

「骨自体に魂が定着しています。彼らはいわゆるあの世から、
 こうして呼びかけに応じてこの世に戻って来るのです」

「それが神の国ですかな?……なるほど、ヴァルハラは本当にあったのか」

コルベールがははぁと納得した風にマーティンを見ていると、急に背後のスケルトンが悲鳴をあげた。

「むっ!?」

コルベールは即座に後に振り向くと同時にルーンを唱える。
素早い詠唱で即座に魔法を放とうとしたが、肝心の対象は消え去っていた。
それを見てあ、とマーティンは口を開く。

「あの世に帰りました。契約が途切れるとああして叫ぶことがあるのです」

ふぅと手を胸に当ててコルベールは大きく息を吐いた。

「そういうことは先に言ってくださらんか」

イスに座ったコルベールは苦笑している。
よほど先ほどの行いが恥ずかしかったのか、顔が赤い。

「失礼しました。しかし、見事な早業でしたね」

コルベールはキョトンとしたが、ああ、と合点がいったらしい。

「ああ、その、昔軍にいたことがありましてね」

その低い声のトーンから何かを感じたマーティンは、それ以上何も聞かず話を続けることにした。

「では次は『破壊』について……この系統はこちらの『火』の系統、
 それから『水』と『風』の系統の要素が少し……どうかしましたか?」

コルベールの様子がおかしい。その目には輝かしい知的好奇心の光は無く、
悲しげに下を向いてため息をついている。

「いえ……破壊の『火』はどの様に使われるのですかな?」
「え、ええ。何かを燃やしたり、爆発させたり」

急にコルベールが立ち上がった。何も言わず奥の机に置かれている機械を持ってくると、
それをマーティンが見せられる位置に置く。

「これは……?」

何か言ってはならない事を言ってしまったらしい。そう肌で感じたマーティンは、
この目の前の機械が何であるのか見当がつかなかった。

「『火』の本質が破壊であるのは、私も良く知っております。
 ですが、それだけでは寂しいと常日頃から思っていましてね」

コルベールは修理した愉快なヘビくんを作動させる。
それほどかわいいわけでもないヘビが円筒の筒から顔を出す。
マーティンはその原理が分からないほど愚かでは無かった。

「今はただこの愉快なヘビくんが顔を出すだけですが、
 たとえばこの装置を荷車に乗せて車輪を回転させる。
 すると馬がいなくても荷車は動くのですぞ!
 たとえば海に浮かんだ船のわきに大きな水車をつけて、
 この装置を使って回す!すると帆がいりませんぞ!」

マーティンは目を大きく開けて、愉快なヘビくんを見ている。
個人的に魔法に固執しているのがここのメイジの特徴だと思っていただけに、
この様な技術を考える人がいるとは思ってもいなかったのだ。

「なんと……」

この技術はタムリエルにも存在する。しかしマーティンはそれを知らない。
魔法の世界で科学を発展させたドワーフはもう滅んでいる。それにマーティンはモロウウインドに一度も行っていないし、
ドワーフの失われた技術を学習するよりも簡単に結果を残せる魔法を学んだからだ。

「どうですかな?」
「火にこんな使い方があるとは……目から鱗ですよ!」
「そうでしょう!そうでしょうとも!やはり気づく人は気づいておる!」

コルベールは再び興奮して、マーティンとの話に戻る。
結局話し合いは夜通し行われ、翌日のコルベールは笑顔でありながらとても疲れた顔をしていたとか。


それからしばらく経った真夜中のトリスタニアに足音が響く。アンリエッタ姫の結婚式が近づき、
慌ただしさが日ごとに増してはいるが、夜になればそんな雰囲気も消え去って辺りは静寂に包まれる。
足音は二つ、その内の一つが止まった。

「ねぇ、リッシュモンの旦那……」

野太く、低い。中年の男の声がした。もう一つの足音が止まる。

「なんだ?」
「お屋敷に戻った方がよろしいんじゃぁ、ないですかねぇ?」

リッシュモンは無言で先に進む。

「ああ!ちょっと旦那」
「喚くな。私の時間を邪魔するでない」

オセルの曜日の夜、健康の為に散歩をするのがリッシュモンの習慣だった。
静かな夜、星明かりだけを頼りに街を出歩き無心に歩く内にその静寂さに取り込まれ、
日頃溜まっている物、特に仕事もしない愚かな軍人や警察への怒りが和らいでいくのだ。

「いや、おっしゃることはよくわかりやすけどね。最近物騒じゃぁないですか……それに例の」

品の無い口調の男はしまった、と顔を青くする。
リッシュモンは杖を持って後の男に向けた。

「それ以上何か言えば、どうなるか分かっているであろうな?」

「もち、もちろんですぜリッシュモンの旦那。それじゃぁさっさと行きやしょう。日が出ちまう」

ふん、とリッシュモンは護衛の男をギラリとにらんでから前に進む。
また静寂が訪れ、リッシュモンは満足して進む。
そうしている内に、先の方にたいまつの明かりが見えた。
どうせ平民だろう。夜中を歩くのは私だけではない。
リッシュモンは何も思わずその横を通り過ぎようとした。

「高等法院のリッシュモン様ですね?」

たいまつを持っていたのは女だった。短く切った髪の下、澄み切った青い目が泳いでいる。
鎧に身を固めているその姿は、さながら剣士のようであった。
リッシュモンはその女から距離を取る。

「ああそうだ。だから何だね?私は自分の時間を楽しんでいるのだ。直訴なら受け付けぬぞ」
「……さようで」

女の目は冷ややかで、何の感情も示していない。だがその視線はリッシュモンから離れない。
リッシュモンが何か言う前に、護衛の男がリッシュモンの前に出る。

「おいお前、旦那様がこう言ってんだ。とっとと失せな。さもなきゃ『風賊』モゲンス様が、
 お前を吹っ飛ばすぞ?」

女は男の言葉に耳を貸そうともせず、ただリッシュモンだけを見ている。

「おい、お前!」

アニエスは剣を抜き、その切っ先を男に向ける。

「モゲンスと言ったか?どけ。用があるのはそいつだけだ」

ああ、だから嫌なんだよ夜のお供は。男は心の中で毒づいて、
懐から杖を取り出した。


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