あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

SeeD戦記・ハルケギニア if situation(タルブ上空戦)

 圧されている。
 やはり、初戦で空軍兵力の悉くを失ってしまったのは大きいか。
 タルブ平原に置かれたトリステイン軍大本営にあってマザリーニ枢機卿は、眼前の戦況を見つめつつ心中ため息を着いた。
 それを表に出さないのは指揮官たる立場にあるためだ。故に、彼は仕える少女にも苦言を呈する。
「殿下、そのような顔を為されていては士気に関わります」
「しかし……」
 暗澹たる表情を向ける王女を叱らなければならないと、口を開こうとしたとき、耳をつんざくような音と共に上空に紅い影が見えた。
「!?何だ!?」
 ざわざわと、周辺も闖入者にざわめく。
 あれは一体何なのかと、戦場の一部の者も辺りを警戒しつつそちらに目を向ける。
「……降りてくる……」
 形は、鳥のような、龍のような。
 こちらに近づいて来るに連れて、騒音は尚のことやかましく鳴り続けている。
 そろそろ、地上にいる者達も気づき始めた。今トリステインの大本営に接近してきているのが、かなりでかい代物だということに。
 全長が100メイルはありそうで、あんな竜が居るのだとしたら束で掛かっても勝ち目があるとは思えない。
「姫様をお守りしろ!」
 バッと直援の部隊が大本営前に防御陣形を張る。
 最初に音が聞こえてから30秒ほどたち、ようやくその巨体は地上に降りた。
 紅い鱗はまるで金属のようにも見え、すべらかに体表を覆っている。その目はまるで人間など意にも介さないと言うように遙か彼方を見ていた。
 竜は、そのうなり声を小さくしていき、やがて収束した。
 一体何がこれから起きるのかと、戦々恐々しているトリステイン兵の前で、その竜の体表が一部蠢いた。
 すわ攻撃かと身構える彼らの目の前に現れたのは、階段だった。
「は?」
 あまた居る兵士の誰が呟いたのかは判らないが、それは間違いなく彼らの本音を表していた。
「ちょっとスコール!何でこのフネでレコン・キスタと戦わないのよ!」
 間をおかず、そんな少女の声を背中に浴びながら一人の青年が降りてきた。
「……俺があんたから受けた依頼は、使い魔代理だ。戦争の手伝いじゃない」
 むっつりとした表情を顔に張り付かせて、振り向きもしないで青年は歩みを進める。
「私の使い魔だったら、私の命令に従いなさいよ!?」
 後を追って、小柄な少女が階段を下ってくる。
「あんたが自分で言っただろう。使い魔の仕事は主人を守ることだと。わざわざクライアントを危険に晒すガードマンは居ない」
 苦々しげに口元を歪ませつつ、ようやく振り向く。
「ルイズ?ルイズなのですか!?」
 そんな掛け合いを見ていて、王女はばっと飛び出した。
「姫様!?何を……」
 周りの者が止める暇も有ればこそ、アンリエッタ姫が竜の体内から現れた二人へ駆け寄る。
 近づいてくる王女に気づき、スコールはSeeD式の敬礼をとる。彼女のことを評価しているわけではないが、一応一軍の総司令官である。
『あはは~、容赦ないねー。まぁ、話はキスティから聞いてるけどさ』
 ジャンクションしているアーヴァインがスコールの評価に苦笑混じりに呟く。
 友人と呼ぶ者を危険な戦場に送り出すなど、正気の沙汰とは思えないな。と脳裏で冷ややかに王女を見ながら。
「アンリエッタ姫様、お久しぶりでございます」
 そのスコールのやや後方で優雅に一礼するルイズ。
「ルイズ!これは何なの!?」
「はい、姫様。これは私のフネです」
「……いつからあんたの物になったんだ」
 苛立ちがもはや顔に出つつあるスコールがルイズを睨む。
『うっわ~、こわっ。僕はこんなスコールの前には居たくないね』
「これはエスタの飛空艇、ラグナロクだ」
「誰よ、エスタって」
「人じゃない、国だ。これは俺が借り受けているに過ぎない」
 一応、ジャンクションしている面々を通じてラグナに許可は取り付けてある。
「これがフネ!?まるで竜ではないですか……!」
 紅い巨体を見上げながらアンリエッタは驚きの声を上げる。
「アンタが借りてるんなら、私が借りてるも同じよ。さぁ、レコン・キスタを倒しに行くわよ!」
「断る」
 にべもなくそっぽを向く。
「何でよ!」
「あんたとの契約においての使い魔の定義は、感覚の共有、必要物資の調達、主人の守護の三つだ。内二つが出来ない分は、あんたの雑用を引き受けることで補うと合意が成立している。
 戦争の手伝いは契約外だ」
 こうも頑なにスコールが拒むのは、もちろん理由がある。
 先のワルドとの戦いで判ったのだが、こちら側では自分の力はかなり目に付くらしい。
 小競り合いや、公的機関の目が及ばない範囲で力を振るうのはともかく、こうした大規模な戦争でジャンクションシステム、疑似魔法マニュアルを駆使した戦闘を行えば嫌でも国家権力に知れてしまう。
 知った結果、ワルドのようにスコールを利用しようと思うのはまだ良い。危険視し、排除しようとされれば、ハルケギニアに置いて後ろ盾のないこの身は危険に晒されてしまう。差し向けられる戦力を凌ぎ続けても、食料や寝床の確保は別の問題だ。
 しかもこの状況、ラグナロクの使用要請はさけられまいが、正直使うのは躊躇われる。
 もし使い方を完全に把握すれば、ハルケギニアなどあっという間に征服できてしまう戦闘力があるのがラグナロクだ。
 奪われでもしたら大変だし、こんな異境の地でかつて自分やリノアの命を助けてくれた飛空艇の同型機を、ちっぽけな独裁のために使わせるのは心底嫌だった。
 ラグナロクの方が優先されていることから察知できると思うが、スコールにとってルイズはかなり位置づけが低い。
 当たり前だ。そもそもの発端は、こんなどこに自分の故郷があるのかも判らない場所に強引に連れて来て、使い魔になって従え、と言った彼女である。好意的に思える方がおかしい。
 使い魔はともかくとして、何の偶然か彼女に雇われることを合意したが、それすらも奇跡のような物だ。
 あるいはとっとと彼女に見切りを付けて、こちら側で傭兵としての生活を確立すれば良かったのか、とも思案する。
(……今日で今月の契約も切れる……契約更新をしないべきかもしれないな)
 この分ではトリステインそのものが持ちそうにない。そこの貴族であるルイズに雇われるのも限界だろう。
「そ、それなら契約し直すわよ!それで良いでしょう!?」
 確かに、その理論展開は正しい。だが、こちらとてそんなことは予測済みだ。
「戦争に雇おうと言うんだ。当然、高いぞ」
 この二ヶ月でルイズの経済力は大体把握できている。とうてい彼女に支払えない額を提示すれば――
「2万エキューで雇います」
 提示予定額の倍の値段が横合いから入ってきた。
「あなたと、あなたが借り受けているというフネを。いかがですか、ミスタ・レオンハート」
 予想外の展開に、スコールは目を丸くする。
「姫様!?何を!そのような大金……!」
 マザリーニが慌てて王女に問う。
「ここで負ければ全てが終わるのです!」
 王女が枢機卿を一喝した。
「この状況下にあって空の戦力は文字通り値千金。高すぎると言うことはありません!」
 どうするべきかと、スコールは頭を働かせる。
 こんな金額を提示されれば、もはや断る方があやしくなる。
 だが待てよ、と思考を別の方向に向ける。
(それだけの金が有れば、かなりの食料を買い込むことが出来る。
 そうすれば、後はこの星の極地へラグナロクで移動して、リノアがテレポを使える魔力が溜まるまでの時間を過ごすことで、もう厄介ごとには巻き込まれない……?
 後のことを考えると……これは受けた方がいい、か)
 だがそれでも、一応防御線は張っておく。
「……契約はこの一戦だけです。良いですね」
「ええ。即金、とは行かないでしょうが小切手でのお支払いは保証いたします……勝てればの話ですが」
「判りました。兵員養成機関、バラム・ガーデンのSeeDがその依頼を受けます」
 SeeD式の敬礼を向けると、くるりと踵を返しラグナロクへ走る。
「あっ!?ちょっと待ちなさいよ!」
 ルイズが慌ててその後を追う。
「……SeeD?」
 聞き覚えのない単語にアンリエッタが首をかしげる。その前で、ラグナロクは再びエンジン音を響かせ上昇していった。


 リノアの奪還後、あの時実働部隊だったパーティーの6名は全員がラグナロクの操縦方法を習得していた。
 いつ誰が何かしらの事情で動けなくなるか判らないからで、事実専属パイロットのセルフィ以外にも、ゼルやキスティスがコクピットに座っていたこともある。
 つまり、もちろんスコールもラグナロクを動かすことは出来るのだが、それでも圧倒的な問題点があった。
 手数が足りていない。
 ラグナロクの砲撃手のコントロール席は操舵席とは離れた場所にある。
 よって、タルブ近辺に不時着した際壊れてしまったらしい609mm荷電粒子ビーム砲はもちろんのこと、152mm多銃身レーザー砲も撃てないのだ。
 では、どうやって戦うのか?
 答えは至極単純である。
『行くよぉ!スコール!』
「ちょっと!?ぶつかる!ぶつかるわよ!?」
「ぶつけるんだ」
 コ・パイ席で騒ぐルイズを軽くいなしつつ、スコールは操縦桿を尚深く押し込む。
「きゃああああああああ!?」
 ラグナロクの機首がそのままレキシントン号の横っ腹に突き刺さり、艦体を前後真っ二つに分断した。
 多少ラグナロクの船体に傷は付いたが、元々大気圏突入後整備いらずでそのまま大気圏内運用が出来るトンデモ装甲である。たかが木材ごときでどうにか出来るはずもなかった。
 なお、現在ラグナロクは亜音速程度で飛行している。
 ラグナロクの最大戦速は秒速11.8km。音速を340m/sで換算するとおおよそ音速の34倍にまで到達する極超音速なのだが、それがこんな低速で飛行しているのはもちろん理由がある。
 基本的に物体が音速を超えると、物体より衝撃波が発生するようになる。
 現在のタルブ上空戦で戦域は高度1リーグもとられていない低空だ。
 こんな所でラグナロクほど質量があって、形がいびつな物体が音速の壁を越えれば、衝撃波で敵艦隊を撃滅するのは容易だろうが敵味方の大半に難聴者が出るのは必至である。いわんや最高速度など、周囲一帯が壊滅する。
 よって亜音速帯での飛行を余儀なくされていたのだが、どっちみちハルケギニアにおいては圧倒的すぎる速度だった。
 戦場を東から西に駆け抜けたラグナロクを反転させ、再度戦場に突っ込ませる。
 先程は威嚇の意味も込めて旗艦にのみ狙いを絞ったが。今度は一度に多くの目標を補足できるよう軌道を取る。
 旗艦があまりにも常識外れなやり方で撃沈され、完全にレコン・キスタは浮き足立っていた。
 レコン・キスタ艦体から狂ったように砲撃がラグナロクへ向けられるが、そもそも射程が足りていない。何しろ点のような相対距離から、一気に接近して来るのだ。それらの砲弾は全て無駄撃ちだった。
 再度の突撃を敢行するなか、軌道上に竜騎士の姿を複数捕らえる。
「……っ!」
 戦場の理で、スコールもわざわざ軌道を変えてやろうとまでは思わない。必然的にその竜と騎手達はラグナロク機体表面で殴られることとなる。
 完全に逃げ損ない、機首にぶつかった一騎が、機体表面を跳ね続けキャノピーにも一度当たっていった。
「い、今のって……今のって……!」
 ルイズが顔を引きつらせているが、今は捨て置く。まだ敵はいる。
『あーあ、ダメダメ。スコール、ちゃんと女の子には優しくしなきゃいけないよ?リノア以外でもね』
 そのまま戦場を駆け抜け、また一隻に体当たりをかける。レキシントンよりも小振りであったそれは、分断どころか完全にバラバラになって墜ちていった。
 もう一度突撃を仕掛けようと方向転換すると正面の艦影が丁度二隻重なって見えた。
「そこだ……!」
 追突寸前で減速。着陸・姿勢安定用の前足を出して手前の一隻を捕獲すると、再び推力を上げ奥の一隻にぶつける。
 木材の擦れる音が装甲を伝ってラグナロクにも聞こえてくる。帆が咬み合ってしまったのか外れなくなったそれをそのまま押し込み、低空へ高度を下げ、さらにそのまま進んで海上まで。
 速度は落とさずに水面に擦りつけると、バキバキと轟音を立てて二隻のフネは分解していった。
 腕部を格納して戦場に舞い戻ったときには、残りの艦隊は残らず白旗を揚げていた。地上部隊も、トリステイン側の包囲に抵抗する動きは見えなかった。
「……任務完了だ」
 一つつぶやき、スコールは肩の力を抜いた。
 さて、ラグナロクを奪われないよう気をつけながら、いかに北極辺りへ逃げ出そうか。



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