あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

世界最強コンビハルケギニアに立つ-04



「おはようルイズ、朝っぱらから騒々しいわね」

ルイズたちが部屋を出ると、隣の部屋から一人の女が現れた。
ルイズにとってもっとも会いたくない女――キュルケである。

「おはようキュルケ」

露骨に顔をしかめながらではあるものの、ルイズはそれでも律儀に挨拶を返す。
無視という手段も存在しはするが、それは負けを認めたような気分になるので彼女の中ではとうの昔に除外している。

「あなたの召喚した使い魔ってそのお二方?」
「そうよ」

ルイズが肯定すると、キュルケは値踏みするように暁とボーを見比べた。
おそらく馬鹿にしようとしているのだろう、目が笑っている。
だが、キュルケの表情が唐突に怪訝なものに変わった。
なにか不思議なもの――例えば死んだはずの人物――を見ているような微妙な表情だった。

「……片方瀕死の重傷って聞いたような気がするんだけど」

ああ、とルイズはキュルケの表情の理由を理解する。
召喚された時のボーの状態は酷いものであった。キュルケもあの場所にいたはずだし、それを見ているはずだ。
あそこまでボロボロになった人間は本来死ぬことくらい、そう言う状況に縁のないルイズでもわかる。
いくら水の魔法で治療したとはいえ、こんな短時間で回復したなどと言って誰が信じると言うのか。

「ふん、不死身の男である私にとってあの程度の傷などどうと言うことはない」

ボーがさも当然のようにそう言い放ち、誇らしげに胸を張る。
お前が異常なだけだ、という念をこめてルイズと暁はほぼ同時に大きなため息を吐いた。
キュルケのほうは若干引きつった笑いを浮かべている。やはり初対面だと反応に困るようである。

「す、すごい使い魔を召喚したのね。おめでとうルイズ」
「ありがとうキュルケ、全然うれしくないわ」

実際少しもうれしくないルイズであった。

「で、あんたはどんな使い魔を召喚したのよ。どうせ自慢するんでしょ、聞いてあげるわ」
「今日のあなた、ずいぶんと可愛くないわね。まぁいいわ、おいでフレイム」

キュルケの呼びかけに応じ、彼女の部屋からのそりと一匹の巨大なトカゲが姿をあらわした。
トラほどの大きさがあり、尻尾が燃え盛る炎で出来た大トカゲ――サラマンダーだ。

「この子は間違いなく火竜山脈のサラマンダー。すごいブランド物よ」

キュルケが誇らしげに胸を張る。
彼女の属性に合った、間違いなく当たりの使い魔である。
ルイズとしては認めたくないが、やはり羨ましいものは羨ましい。

「異世界に来たって実感するな、こういうのを見ると」

どうやらサラマンダーを見るのは初めてらしい、暁が興味深げにサラマンダーを眺めている。
その表情は少しだけ楽しそうに見えた。
ボーの方はなぜかサラマンダーと見つめあっている。通じるものがあるのかもしれない……暑苦しさとか。

「イセカイ?よくわからないけど、サラマンダーを見るのは初めてかしら?」
「ああ、名前は聞いた事があるが見るのは初めてだな」

妙に楽しそうな、子供が新しいおもちゃを見つけた時出すような声だった。
キュルケが「へぇ」と呟き、改めて暁を見つめる。
そして、ニッコリと微笑んだ。

「よろしければお名前教えてくださらない?ワイルドなオジサマ」
「おじ……まぁいいか、暁巌だ。よろしくなお嬢さん」

若干苦笑気味ではあったが、暁も笑顔をキュルケに返す。
なんとなくいいムードに見える、ような気がした。
その辺りがルイズの我慢の限界である。

「キュルケなんかと話してたら色ボケが伝染るわ!行くわよ!」

ルイズは暁の服を引っ張り、歩き出した。
彼女としてはこれ以上キュルケと自分の使い魔の会話を見たくない。
理由は思い当たらないが、相手がキュルケなのがまずいのだろうと適当にルイズは結論付けた。

「わかったから引っ張るなご主人様……おい!ボー行くぞ!」

先程からサラマンダーと熱い視線を絡め合っていたボーが、それでようやく気づきましたと言う感じでルイズと暁の後を追う。
キュルケはその慌しい様子を興味深げに眺めていた。


朝食はルイズと暁は食堂で食べる予定となっており、暁の分もちゃんと用意されていたらしい。
しかし、小奇麗な空間で貴族のご息女たちと一緒に食事するのを嫌がった暁は、ボーとともに厨房へと向かった。
厨房ではシエスタたち使用人が慌しく働いていたのだが、ボーが事情を説明すると彼らはそれに快く応じ、暁とボーの朝食を用意してくれた。
そこで知ったのだが、ボーは使用人連中と仲が良いらしい。
マルトーと言う厨房を取り仕切る太った暑苦しい男とは、義兄弟の契りまで交わしているそうだ。

……ボーは昨晩いつ目覚め、目覚めてから一体何をしていたのだろう。

もっとも、そのおかげで美味な朝食――マルトーが作った賄いである――にありつけたのだから文句を言うつもりは無い。
余談であるが、本来用意された食事の詳細を聞いた際、暁を非常に強い頭痛が襲ったことを付け加えておく。


三人は朝食を終え、教室へと向かっていた。

「なぁ、授業なんて俺たちガラじゃないしその辺ブラついてていいか?」
「ダメよ。授業は使い魔同伴で出なきゃならないの」

暁の要望はあっさり却下される。
その辺で体を動かしていたほうが彼にとってはかなりマシだったのだが――。

「良いではないか。私は授業に臨むルイズの姿に興味があるぞ」
「授業参観かよ」

ボーが乗り気なのが非常に性質が悪い。
おそらく断ってもこの馬鹿に引っ張っていかれるだろう。
暁は大きなため息を吐いて二人の後に続いた。

戦場にいた時間が人生のほとんどを占めている暁にとって、今更授業などという物は縁が無いはずだった。
なのに何故か子供と一緒に授業に参加することになった現実に苦笑する。
異世界に飛ばされたことほどではないが、これも中々奇異な体験であった。

教室に入ると、先に教室にいた生徒たちの視線が暁たちに集中し、くすくすと笑い声が聞こえ始めた。
ルイズは別段気にした様子も無く自分の席に向かい、暁とボーもそれに続く。

歩きながら見回すと、様々な生物がいた。
フクロウ、蛇、カラス、猫……。
そして六本足のトカゲや、ふよふよ浮かぶ目玉のような見た事の無い生物までいる。
さながら珍獣の見本市だった、ボーがいる分には違和感がない。

暁は、椅子の下で眠っている見覚えのある赤い大トカゲと、その主人である少女――キュルケを見つけた。
彼女は周りを男子に取り囲まれている。その様はさながら女王だった。
そんなことを考えながらキュルケを眺めていると目が合い、彼女は暁に軽く会釈した。

「よう、また会ったなキュルケお嬢さん」

手を上げ、軽く挨拶する。教室の空気が凍った。
一部――主にキュルケの取り巻きの男子――からの視線が興味や嘲笑から怒りに似たものに変わる。
あまりの急激な変化に暁は苦笑した。

「……あんたって勇気あるのね」
「暁は普通に挨拶しただけだろう。勇気が必要なことでもあるまい、至極当然のことだ」
「……あんたたちが実はとんでもない使い魔なんじゃないかと思い始めたわ」

ルイズはこめかみを押さえながら席の一つに腰掛ける。
そして暁とボーはには教室の後ろに立っているように言った。
いかんせん二人は体が大きすぎるため、そばにいられると目立って仕方ない。

「授業中は静かにしてなさいね」

ルイズは二人に向けてそう言った。
特にボーは声が大きい、いや声も大きい。
ただでさえ目立つ体躯なのに、どうしてこう目立つ要素ばかり兼ね備えているのだろう。

「当然だ、勉学の邪魔をする気はない」

ボーは主に自分が言われていると自覚しているのかいないのか、腕を組みうんうんと頷いていた。
非常に不安である。
暁の方を見るとルイズと同感だったらしく、肩をすくめ苦笑していた。

二人がちょうど最後尾にたどり着いた時、扉が開き一人の女性が教室に入ってきた。
教師だろうか。紫のローブに身を包み、帽子をかぶったふくよかな女性である。

「皆さん、春の使い魔召喚は大成功のようですわね。
 このシュヴルーズ、こうやって春の新学期に、様々な使い魔を見るのがとても楽しみなのですよ」

言いながらシュヴルーズと名乗った教師は教室を見渡す。
使い魔たちを眺めているのだろう、その表情は満足げであった。
だがその表情が唐突に極めて微妙なものに変化した。ちなみにその視線の先には暁とボーの姿がある。

「ず、ずいぶん変わった使い魔を召喚なさったのですね。ミス・ヴァリエール」

引きつった笑みを浮かべながら必死に言葉を選び、彼女はそう言った。

暁とボーの服装は、召喚時そのままのの極めて地味な服である。
そんな格好をした屈強な男が二人、教室の後ろに立っているのだ。
一般的な感覚の持ち主なら間違いなく『不審者』の三文字が浮かぶだろう。

「ゼロのルイズ!召喚できなかったからってその辺歩いてた平民を連れてくるなよ!」

教室に漂った微妙な空気を打ち破り、小太りの少年がルイズに向かって侮蔑の声を飛ばす。

「違うわ!ちゃんと召喚したもの!あいつらが来ちゃっただけよ!」

ルイズは立ち上がり、小太りの少年に向かって怒鳴った。
暁はその様子を眺めながら苦笑していた。

(そんな安い挑発に乗らなくてもな)

出会ってからあまり時間は経っていないが、彼女がプライドが高いことは知っている。そして怒りの沸点が低いことも。
それにより、ルイズが可愛らしい見た目の約八割をドブに放り投げていると暁は考えている。
とても勿体無いことである。

その後、シュヴルーズは口論となったルイズと少年――マルコリヌと言うらしい――を諌め、口論を見て笑っていた生徒たちの口にどこからか粘土を出現させて貼り付けた。
なかなかに強引な方法だったがそれでようやく教室が静かとなり、授業が始まることになった。


この世界にある魔法は主に『火』『水』『風』『土』の四種類に大別されるらしい。
シュヴルーズの授業の内容はそのうち『土』系統と呼ばれる魔法の説明だった。

授業を聞きながら暁たちが理解したことは、ここは何事も魔法を頼りにしなければならない世界であると言うことだった。
それならば貴族がどうの、平民がどうのとルイズたちが拘るのも理解できる。
そこまで魔法に依存した世界で、貴族しかそれを行使することが出来ないのだ。差別意識は相当なものがあるだろう。

一通り説明を終えたシュヴルーズは『錬金』という魔法を生徒たちに実演して見せた。
ただの石ころを真鍮に変えて見せたのだ。
これには暁もボーも驚いた。

スクウェアクラスという高位のメイジになれば黄金の生成も可能だと言う。
もしかしてこちらの世界では『賢者の石』も錬金で作り出すことが出来るのだろうか。
出来るとしたら無茶苦茶である。
もっとも、ここでは作り出せてもさほど意味はないだろうが。

そしてシュヴルーズは生徒の一人に、同じように錬金をやってみるよう言って教壇に呼び寄せた。
ちなみに呼ばれたのはルイズである。
瞬間、明らかに教室の空気が変わった。
この時教室を支配した感情は『恐怖』もしくは『困惑』であった。
暁もボーも何故そんな雰囲気になったのかまったく理解出来ず、
生徒たちがガタガタと机の下に隠れ始めるのを不思議そうに見ていた。

そして、若干緊張した表情でルイズが教壇に立つ。
呪文を唱え、彼女が杖を振り下ろした時――

机ごと石ころが盛大に爆発した。

その威力は中々のもので、ルイズとその傍らに立っていたシュヴルーズが黒板に叩きつけられる。
生徒たちの悲鳴が上がり、爆発音に驚いた使い魔たちが暴れまわっていた。
その様子はさながらテロの現場である。つい先程まで平和な教室だったようには見えない。

暁とボーは唖然として吹き飛んだ教壇跡地を見ていた。
何が起こったのか本気で理解できない。
錬金とは一歩間違えば爆発する危険な魔法だったのだろうか。
……だとすれば生徒にいきなり実演させることはありえないと思うのだが。

シュヴルーズは倒れたまま動かない。たまにピクリと痙攣しているようなのでおそらく気絶しているだけだろう。
そして煤で真っ黒になったルイズがゆっくりと起き上がった。
無残な姿だった、服が所々ボロボロになっている。

「ちょっと失敗みたいね」

ルイズが淡々とした声で言った。

当然のように他の生徒たちからは怒号が飛ぶ。
だが、それをさほど意に介した風もなく、ルイズはハンカチで体についた煤を拭いている。

それを見た暁とボーは顔を見合わせ、少し笑った。



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