あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロのロリカード-35


「拘束制御術式零号、開放!!」

 ルイズの命令が木霊する。

「帰還を果たせ!!幾千幾万となって帰還を果たせ」

 高らかに叫ぶ声が、夜明け前の空に残響する。

「謳え!!」


「私は・・・・・・ヘルメスの鳥」

 アーカードの謳う詩に呼応するかのように、棺桶に紋様が浮かぶ。

「私は自らの羽を喰らい・・・・・・飼い、慣らされる」




「なんだ・・・・・・?これは・・・・・・?」
アルビオン軍の銃兵隊士官が、その異変に最初に気づいた。

 使い魔のフクロウから得る視界から見えたのは、二人の少女と棺桶である。
進行方向にただの少女がいるわけがない。もしかしたら敵の虚無かもしれない。
すぐに銃兵に弾込めを命じたものの、兵達の手が震えて思うように上手くいかない。

「何をやっている!」と問い質そうとした瞬間、自分自身も震えていることに気付く。
銃兵達だけではない、前衛の捜索騎兵隊も、他の兵達も、その体を震わせていたのである。
それはどこか生気の感じられない、裏切った元トリステイン・ゲルマニア連合軍の兵達も例外ではなく。


 次いで歌が聞こえてきた。フクロウの目から少女の一人が謳っているのだとわかる。
まだまだ距離があるのに、何故こんなところまで通るのか不思議だった。

 そして・・・・・・ようやく体だけでなく、頭も"それ"を理解した。
今自分達が"震えている理由"を。
 ・ ・             ・・・・・・・・
 ここにいる全てが感じたのだ。「恐ろしい事になる」と。

 そして視界を得ている自分だけがわかった。
 ・ ・            ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
 あの少女を、否・・・・・・あの化け物を倒してしまわないと、恐ろしい事になると!!

 いつの間にか何人かの兵達が、声にならない声をあげているのに気付く。
それは波紋のように広がる恐慌の悲鳴。本能の絶叫。


 風を切り裂く音と共に、"紙のようなもの"がいくつも飛んでくる。
"それ"は前衛の兵達を首を飛ばし、細切れにする。

 何か"とてつもなく速いモノ"が横切ったような気がした。
"それ"は後方で異様な音を立てて、縦横無尽に飛び回り兵達の肉体を砕いていく。


「馬鹿なッ、馬鹿なッ、馬ッ鹿なッ、そんな馬鹿な事があるかッ!!」
既に死んだ使い魔の、フクロウの視界から見えた最後の光景。
棺から出てきた。黒く血に染まる軍団が――――――。

「アイツは何だ!!化け物!!悪魔・・・・・・!!悪魔・・・・・・!!」

 地面に落ちてく視界の中で、嗄れるように喉からそう言葉を吐き出す。
しかし、いつの間にか落ちる己の首から声が発せられる事はなく。
思考が途切れるその時まで、士官は恐怖し続けた。




 ――――――ウエストウッドの村の中央、一人の男が立っている。
ハーフエルフの少女を起こさないように、静かに準備を整えて、家から出てきた男。
  パラディン         バヨネット          エンゼルダスト
 『聖堂騎士』、『殺し屋』、『銃剣』、『首斬判事』、『天使の塵』。

 数々の名で呼ばれる、『神父』アレクサンド・アンデルセンは走り出す。


 すぐ近くに感じた闘争の空気。
そしてたった今感じた、倒すべき"敵"の存在。

 殺しきれる武器はない。
"あいつ"を殺せるほどの、研鑽を積んでもいない。

 だがそれでも、好機は今しかない。
「俺はあいつを倒す。アーカードを倒す!!倒さなければならぬ」

 全ての命を、全て開放して、全てを攻撃に叩き込む術式。
城から全ての兵士を出撃させた総掛り。
城の中に立つは、領主がただ一人。

 拘束制御を全開放した今、奴は一人、ただ一人。
今やただ一人の吸血鬼。ただ一人のドラキュラ。


 千人の武装SSを、三千人の十字軍を、百万人の英国人を、敵も味方も生贄にした。
アーカードただ一人を打倒する為に、あの狂った大隊指揮官が・・・・・・少佐が作り出したただ一つの好機。
アーカードを物理的に打倒する、千載一遇の好機。唯一アーカードを殺すことのできる刹那。

 それが今、ここにある。
奴が拘束制御術式を開放しなくてはならない状況が、ここにあるのだ。
この好機に・・・・・・三度目があるとは限らない。

 だからこそ、征くのだ。
死人が舞い、地獄が歌う、亡者共が蠢く死の河を踏破し――――――。

「あいつに、その心の臓腑に、この銃剣を突き立てる」

 敵が幾千ありとても突き破る、突き砕す。
戦列を散らせて、命を散らせて。その後方へ、その後方へ。
囲みを突き破り、アーカードの眼前に立つ。


 化け物はあそこにいる。
ハインケルはいない。由美江はいない。
イスカリオテはない。『エレナの聖釘』はない。

 勝機はいくらか。あの時よりも薄い。
千に一つか、万に一つか、億か、兆か、それとも京か。
それがたとえ那由他の彼方でも、不可思議でも、無量大数であっても――――――。

「・・・・・・俺には充分過ぎる」
不可説不可説転であろうとも、"ゼロ"ではない。
ならば打ち倒す。化け物を倒すのは、いつだって人間だ。
そうだ、――――――人間でなくてはいけないのだ。

 そして、生きて帰る。
あの子達の笑顔を、失わせない為に。




 天も無く。地も無く。
人々は突っ走り、獣は吠え立てる。
まるで彼らの宇宙が、一切合切咆哮を始めた様だ。

 死ねや。死ねや。
人間は、歩き回る、陽炎に過ぎない。
闘え。死ね。あとは全てくだらないものだ。

 死んでしまえばよい。消えてしまえばよい。
きっと彼らの全てが仇人で。
世界がその絶対応報に頭を上げたのだ。


 棺桶から顕現した、ドス黒い影。
形作るは、今までアーカードが喰ってきた者達。
終わることなく、現れ続ける死者の群れ。
アーカードが従える、アーカードの領民。それが今・・・・・・解き放たれたのだ。

 戦禍鍋を掲げる、イェニ=チェリ軍団が。
かつて狂王として君臨した自国の民、ワラキア公国軍が。
ロンドン市民が、最後の大隊が、第九次空中機動十字軍が、イスカリオテが。
『伊達男』トバルカイン・アルハンブラが。『魔弾の射手』リップヴァーン・ウィンクルが。
オグル鬼が。トロル鬼が。オーク鬼が。吸血鬼エルザが。
無数のメイジ達が。竜騎士達が。アルビオン皇太子ウェールズ・テューダーが。


 アーカードの中の命が、三百万を超える命が。七万のアルビオン軍を飲み込んだ。


 死が、どうしようもない死が、今眼前で起きている。
凄惨を極める光景。敵の戦列はたちまち崩壊し、次々に串刺しにされていく。
目を覆いたくなる光景。だがそれは許されない、これが己の下した命令。
自分の殺意によって行われている光景なのだ。

 あれが吸血鬼。あれがアーカード。
血とは魂の通貨、命の貨幣。命の取り引きの媒介物に過ぎない。
血を吸う事は、命の全存在を自らのものとする事。魂の、命の同化。
他者との命の共合、生命の融合、精神の統合。吸血鬼の本質。

 ルイズは顔を下に向ける。
頭を垂れた男が一人、跪いていた。

「アーカード、ヒゲだったんだ」
顔を上げたアーカードに向かって、ルイズは言う。
アーカードは立ち上がると、温和な笑みを浮かべて、くしゃくしゃとルイズの頭を撫でる。

「ルイズ。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」
「な・・・・・・なによ・・」
なんだか気恥ずかしくて、ルイズは俯く。
しかしすぐ気を取り直して、アーカードに笑みを返した。


「さて・・・・・・」
と、アーカードはいつもの少女へと姿を変える。
「折角だからな、暴れさせてもらおう。この猛りを静めるまで・・・・・・存分にな」

 右手にカスール改造銃を、左手にジャッカルを。
白銀に輝くカスール銃は、白のアルビオン軍を朱に染める。
黒鉄に輝くジャッカルは、裏切りの黒の連合軍を朱に染める。

 久し振りに持った、愛銃の感触を確かめるように。
アーカードは戦場を駆ける。




 シティオブサウスゴータに、クロムウェムらレコン・キスタの主要な人物達が集まっていた。
シェフィールドが言っていた通り、敵軍の半数近くが寝返り、戦局は逆転した。
今現在、敗走する連合軍を追撃している。あとはガリアが参戦して挟撃してくれれば――――――。

「いやはや閣下の虚無は大したものですな」
「これで我らの勝ちは揺るがぬものとなりましたな」

 口々に約束された勝利を語り始め、その余韻に浸る面々。
「閣下、ガリア軍はまだこないのですかな?」

「焦ることはない、ガリアは必ずくる。余の言うことが信じられぬのか?」
そう逆に問われ、クロムウェルに聞いた者は首を振って否定する。
最早ガリアがこなくても勝ったようなものだし、他の者達は特に杞憂もないようだった。


 だがクロムウェルの心中は穏やかではなかった。
すぐにでもガリアがこなければ、連合軍を全滅させることはできない。
何よりも戦争を続けることが怖い。
完膚なきまでに叩き潰さないと、またいずれ攻めてくるのでは?と考えてしまう。

 元々は一介の司教に過ぎなかった。
シェフィールドが来て、瞬く間に神聖アルビオン共和国の皇帝にまでなってしまった。
アルビオン王家に復讐している時は、楽しかった。
だがトリステインとゲルマニアと、戦争などしたくはなかった。
シェフィールドに唆されて、あれよあれよという間にここまできてしまった。

 本当なら今すぐにでもやめたい。シェフィールドはまだ戻ってこない。
早くガリアの動向が知りたい。次は何をすればいいのか教えてほしい。


 その刹那、窓ガラスが叩き割られた。

盛大な音と共に、一人の少年が入ってきたのである。
クロムウェルはその見覚えのある顔に、思わず叫んだ。

「シェフィールド殿・・・・・・!?」
シェフィールドは部屋の中を、何か確認するかのように見回した。

「シェフィールド殿?」
クロムウェルは呼び掛ける。扉ではなく窓から入ってくるなんて、一体何を考えているのか。
いや、それよりも今はガリアの動きが知りたかった。

「・・・・・・シェフィールドか、その名前はもういいや」
シェフィールドは煙草を取り出し、口に銜えて火を点け、一回だけ吸って吐く。
「不ッ味い紙巻。やっぱりこっちのは駄目だね」
そう言うと、口に銜えたまま器用に口を開く。

            バトラー
「ガリア王国、筆頭執事。『死神』ウォルター・C・ドルネーズ。
 主人の気紛れを遂行するは、執事たる者のお仕め故。これよりあんたらを地獄に送る」

 部屋にいる者達は呆気にとられた。
辛うじて状況を理解したクロムウェルが口を開く。
「ど・・・・・・どういうことです!?あの方は我々を見捨てたのですか!!??」

「あぁそうだ。そうだよ。そうだとも。もうおしまいだ。
 くだらないおまえたちも、くだらない王様ごっこも、もうおしまいだよ、レコン・キスタ」

 ウォルターの言葉に、その場の全員が臨戦態勢をとった。
シェフィールドらしいが、そんなことは知ったことではない。
地獄へ送ると、自分達を殺すと、目の前の相手が言っているのだ。

「馬鹿だなあ、気がつかないのか、雑魚共め。勝負は既についている」
そう言うとウォルターは、両手をコンダクターのように一度だけ腕を振った。

 ただそれだけの動作で、ウォルター以外の全員が一瞬で切り裂かれバラバラになる。
ウォルターの手から伸びるのは何本もの糸。
部屋中に広がった、目を凝らさないと見えないほどの鋼線から、血が滴り落ちる。


 次に窓から入ってきたのは四人の人物だった。
「相変わらず、見事な手並みで」

 ウォルターは振り返らず、その者達に命令を出す。
「ここら一帯にいるそれっぽい連中の掃討を。もうすぐ艦隊がくる筈だから、適当に切り上げていいよ」

「了解」
「歯応えのある敵がいたらいいなぁ」
「無駄口叩いてないで行きますわよ」

「よろしく頼むよ、元素の兄弟」

 四人はその場から消え、ウォルターは銜えていた煙草を吹かす。
全く、本ッ当に人使いが荒い。気紛れにも程がある。
飯と寝床の世話をしてくれるってんで、とりあえず仕えたけれど。
インテグラと違い、仕えるべき主に値するとは思えない。

「僕も適当なところで・・・・・・」
また裏切ろうかな、などと思ってると一羽の使い魔が飛び込んできた。

 緊急の伝令のようで、普通の人間じゃ、間違いなくその内容は理解できない事だろう。
抽象的な表現を羅列し、適当に組み合わせただけのような・・・・・・支離滅裂な内容。
唯一わかるとすれば、『アルビオン軍が今現在攻撃を受けていて壊滅しそう』ということくらいだ。
どんな状況で、どのように、何故壊滅しそうなのか。その部分が全く以て意味不明なのだ。


 だが・・・・・・ウォルターには理解できた。
                              ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
 抽象的な表現が、自分にはわかる。――――同じものを見たことがあるから。
その形容が己の記憶と重なるのだ。そしてそこから導き出される帰結。

「まさか・・・・・・これは!?」
目が見開かれると同時に、ウォルターは全速力で走り出す。戦場へと駆ける。

 そうだ、なんで気付かなかった。"アイツ"がこっちに来てる可能性に。
虚無の担い手は四人いる。自分の他にも『虚無の使い魔』がいるのだ。

「まさか・・・・・・これは!?」
目が見開かれると同時に、ウォルターは全速力で走り出す。戦場へと駆ける。

 そうだ、なんで気付かなかった。"アイツ"がこっちに来てる可能性に。
虚無の担い手は四人いる。自分の他にも『虚無の使い魔』がいるのだ。

「クソッ!!」 
ウォルターは毒づく。
もし今がその状況なら、"アイツ"を殺す唯一のチャンスなんだ。

「間に合ってくれ!!」


 あの時は届かなかった。自分の糸は届かなかった。
身も心も死神になった。その為だけに全てを捨てた。

 所詮この世は修羅の巷の一夜の夢。
一睡、一酔、死神の一夢の残骸。

 "アイツ"と闘いたいから、"アイツ"を倒したいから。
その為に反逆の徒に成り果てた。仕えるに値した主人を裏切った。
インテグラの、ヘルシングの、英国の敵となった。

 "アイツ"に、"アーカード"に。
醜い様だと言われても、酷い末路だと言われても。
『それを打ち倒さねば、己になれない』、闘争の本質だ。
でなけりゃ一歩も前に歩めない。進む術も知らない。
無用者になるのが怖い。老いるのが怖い。忘れ去られるのが怖い。

 だから何もかもを引っくり返して叩き売った。
アーカードのように!!アンデルセンのように!!少佐のように!!

 惨めで、みっともなくて、それでも今はこの世界にいる。
そしてアーカードはそこにいるッ!そして僕はここにいるッ!!


 焦燥に駆られながらも、歓喜の笑みがウォルターの面に浮かぶ。
足が千切れる飛ぶのではというほどに、シティオブサウスゴータを駆け抜ける。
この夜明けに、アーカードを、切断する為に。


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