あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

SnakeTales Z 蛇の使い魔-24

「はぁ……。」
「この1時間で26回目の溜息です。何かあったのですか?」

アンリエッタの向かいで紅茶を傾ける女剣士。名はアニエス。
引き締まった戦士の体に、爽やかで整った顔立ち。
身にまとっているのが鎧である点が少々残念である。

「何でもありません。」
「でしたらもう少ししゃっきりなさってください。民が見たら心配します。
 ただでさえ現在、枢機卿がいないというのに、民の不安をあおるのは良くありません。」

剣士というよりこれでは女秘書だ。

「枢機卿はどこに行っていられるの?」
「ロマリアです。」
「最近よくロマリアに行っているようですね。ロマリアに何かあるのでしょうか?」
「枢機卿にお聞きください。」

あらあら。
この女剣士、有能なのだけど愛嬌が無い。
本人に聞けば「必要ない。」とでも言いそうだけど。

「婚期を逃しますよ。」
「ご忠告どうも。姫はご結婚おめでとうございます。」
「んもう。意地悪ですわね。」

もちろん、この剣士は私がこの結婚をあまり快く思っていないことを知って言っている。

「結婚なんてするもんじゃありませんわね。」
「結婚した人はみんなそう言うそうです。」

言葉のいたるところに棘を感じる。
ただ、怒っているのは結婚についてではなさそう。

そんなに仕事を中断して私とおしゃべりするのがイヤかしら?
それともこの前また私が勝手に白から抜け出したのを気にしてるとか。
心当たりはいくつもある。

「……あなた私のこと嫌いでしょう?」
「何をおっしゃいます。愛していますわ、ひ・め・さ・ま。」

無表情で言われてもときめかない。
もっとこう、頬を赤らめて「あ、愛しています。」とか言われればキュンと来るのに。
素材は良いのにもったいないわね。ちょっと着飾ればどこぞの令嬢にも見えることだろう。
私に冷たく当たった罰として、絶対フリフリのドレスを着させてやる。
今からテンションが上がってきたわ。



「で、何かわかった?」
「……。」

スネークにしては珍しく驚いているようだ。
思わぬところでレア顔ゲット。
そんなにこの黒い筒みたいなものが珍しいのだろうか?
こっちの小さい箱に入っていたものはスネークの持ってる、ソーコムとか言うのに似ているけど……。

「……他に何か入っていたものは?」
「真新しい服が入ってたわ。はい、これ。」

オレンジ色に黒い斑点のような模様がついている服を手渡す。
変な感触の帽子も入っていた。とてもおしゃれとはいえない帽子だが、何かわかるかな?

「悪い冗談だ。」

ため息をつくスネーク。何かわかったのだろうか?

「なんなのよ?何かわかったなら教えなさい!」
「そっちの長い物と小さいのは銃。こっちの服は野戦服だ。」

それだけ言って何か思い出すような顔になるスネーク。
少し邪魔をしてしまったかもしれない。
でも、もう少しやさしく言ってくれてもいいのに。



オレンジ色をベースに黒い迷彩。そしてセットとしてスカルキャップとソフトヘルメット。
あのビッグ・シェルでゴルルコビッチ傭兵部隊が制服としていた戦闘服だ。
それだけじゃない。一緒に『AKS-74U』と『PMM』が入っていた。
これらは全てビッグ・シェルのシェル1中央棟を警備している兵士の兵装だ。

ビッグ・シェルの記憶がよみがえる。
俺は架空のSEAL隊員『イロコィ・プリスキン』として海洋除洗施設『ビッグ・シェル』に潜入した。
目的はビッグ・シェルを占拠したテロリスト集団『サンズオブリバティ』をとめるため。
そこでスネークはある青年に出会った。

ダークブルーの新型スニーキングスーツ、銀色の髪、整った顔立ち。
彼も任務でテロリストの武装解除のため潜入していた。
所属はなんと『FOXHOUND』。だが、スネークの後輩というわけではない。
このとき既に『FOXHOUND』は解体されており、存在しない部隊なのだ。

――お前名前は?
――……雷電だ。
――ライデン?変わったコードネームだ。
――本名は平凡だ。
――そうか、いつか聞けるときがくるかもな。

アレから一年。彼は今どこで何をしているのだろうか。



拾った武器を観察する。
AKS-74UはさすがAKシリーズというべきか、目立った損傷はなく、普通に使えそうだ。
どこか室内で一度分解して見る必要はあるが。
だがPMMは違った。どういうわけかスライドがうまく動かないうえ、撃鉄もしっかり降りない。
無理に動かせばバキンと逝きそうだ。
これは使えそうに無い。残念だがこれは置物だな。
幸い、ハンドガンは既に持っているので困りはしない。

ふと周りが妙に静かなのに気がつく。
全員が俺の手元を見ている。ああ、自分の世界に入りすぎていたな。

「すまない。この宝物……長い銃のほうだが、貰ってもいいか?」
「君以外に持っていて意味がある人間なんていないだろう?」

ギーシュが答える。確かに、ここにいるのはシエスタ以外がメイジだ。
銃に頼ることなど無いだろう。それに、シエスタが戦うことなんてまず無い。
ごみにするくらいなら貰ってくれということか。

「こっちの服とかは?」
「ちょっと見てみたが、戦闘服はサイズが小さすぎる。スカルキャップも同じだ。持っていても意味は無い。」
「この帽子は?」
「帽子じゃない。ヘルメット、まあ言ってみれば兜だな。」

しげしげとタバサがヘルメットを観察している。
あ、ヘルメットをかぶった。なにやら満足げだ。一体何が彼女をひきつけるのか。

「ほしいならやるぞ。」

こくんと頷く。本当に貰っていくとは思わなかった。

そんなタバサをボーっと見ていたらいきなりルイズに耳を引っ張られた。

「いきなりなんだ?」

ぷいとそっぽを向かれた。……俺が一体何をしたんだ?



食事――それは生き物にとって無くてはならないもの。
食事――それは戦場で必要な栄養を摂取するための必要な軍事行動。
食事――それは戦場での数少ない快楽の一つ。

かつて、兵士が一週間食べ物を食べなくても戦闘が行えるように強化する研究が行われていた事もある。
ただ、現場の兵士はというと「ふざけるな。俺達から楽しみを取らないでくれ。」と、たいへん不評だったそうだ。

ルイズ一行はそんな重要な軍事行動の真っ最中だ。

「……。」
「……。」

……楽しい楽しいお食事タイム、のはずなのだ。
先ほどまでハイテンションであったが、一段落して、疲れが彼女らの体にのしかかってきたようだ。
もはや喋り声は聞こえない。興奮から醒めればこんなものだ。

「……はぁ。」

こう何日もベッドで眠っていなければ溜息も出るものだ。
そもそも彼女らは戦闘訓練を受けたことはない。
何日も野宿が続くと流石に疲れる。
……タバサはわからないが。相変わらず涼しい表情をしている。
ひょっとして何処かの特殊部隊員だったりしてな、とか考え、自分でありえないと突っ込みを入れていた。

「皆さん、元気が無いですね。」
「疲れたんだろう。そっとしておいてやれ。料理がまずいわけじゃないから安心するんだな。」

シエスタとスネークだけはそんな事も無くいつもどおりだ。
そもそもシエスタは戦闘に参加していないし、メイドの仕事のおかげで体力には自信があった。
スネークは言わずもがな。もはや不死身の男である。
まあ夜通し精神を張り詰めて、潜入任務が出来るのだ。これくらい問題は無い。

「……明日あたりを最後にしましょうか。」

キュルケが提案する。その外の面子は無言で賛成した。
もうこのまま帰っても良いんじゃないか?

「次はどこにするんだ?」
「……ここから近いタルブの村ってとこ。」
「あ、それ私のふるさとです。」
「ほう、どんなところだ?」
「何にも無い村ですよ。……でも、みんな優しくていい村です。」

シエスタとスネークの間でのみ会話が弾む。
にこにこしたシエスタを見ていると疲れが取れるというものだ。

「そうだ、スネークさんに私の家族を紹介しますよ。」
「そうか。楽しみにしておこう。」

えへへ、と無邪気に笑うシエスタ。
少しルイズから殺気のようなものを感じたが、気のせいという事にしておく。
どうせ何かされても死なない自信はある。



ヨシェナヴェというシエスタの郷土料理は思った以上に美味しく、
味はかつてオタコンと一緒にやったニッポンの『ナベ』に良く似ていた。
食後、シエスタとキュルケ、ギーシュはさっさと寝てしまった。
スネークは火の番をしているのだが、隣でルイズとタバサが本を読んでいる。
タバサのほうは……なにやら難しい魔法生物の教科書みたいなものだ。
だがルイズの読んでいる本のタイトルが読めない。擦り切れている。ずいぶん古い本のようだ。

「ルイズ、何を読んでいるんだ?」
「始祖の祈祷書。」

タバサがぴくりと動く。知っているのだろうか。

「なんだそりゃ?」
「始祖ブリミルが残した本。でもなーんにも書いてないわ。」
「本の役割を果たしてないじゃないか。」
「私に言わないでよ。」

あきれた始祖だ。暗号ならともかく、文字すら書かれていないのでは誰も読めないじゃないか。

「で、どうしてそんなものをお前が持っているんだ?」
「あれ、言ってなかったっけ。姫さまの結婚式のとき、私が詔を詠むのよ。」
「そいつはすごい。そんな大役、よく引き受けたな。」
「うん。自分でも後悔してる。」

頭を抱えてる。一体何を後悔してるのやら。

「どんな詔を詠むんだ?」
「……まだ少ししか考えてない。」
「詠み上げてみろ。」

少し間を空けて、咳払いをしてから読み上げた。

「この麗しき日に、始祖の調べの光臨を願いつつ、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
 畏れ多くも祝福の詔を詠みあげ奉る……。」

ふむ、とあごに手を当てて耳を傾ける。ルイズの綺麗な声で詠まれ、大変心地良く聞こえた。
ここからどんな詞が続くのかと期待していたら、それきりルイズは黙ってしまった。

「どうした、続きは?」
「これから、火に対する感謝、水に対する感謝……、順に四大系統に対する感謝の辞を、
 詩的な詞で韻を踏みつつ詠まなきゃならないんだけど……。」
「詠めばいいじゃないか。」
「詩的な表現とか言われてもわからないわよ。スネークは何か思いつかない?」
「俺は詩人じゃない。悪いが力になれないね。」

はぁ、とため息をつくルイズ。頼りにならなくて悪かったな。

「まあ仕方ないわよね。今日はもう寝るわ。」

立ち上がって自分のハンモックへ歩いていってしまった。
隣のタバサは先ほどと変わらない様子で本を読んでいる。
この子は疲れていないのだろうか?

「……。」

風が木々を揺らす。
火の爆ぜる音が時折聞こえる以外は静かなものだ。
そんな時、タバサが声をかけてきた。

「銃。」
「なんだ?」
「見せて。」
「……。」

あまり乗り気になれない。なぜ見る必要があるのか?

「どうして?」
「変にいじられたらかなわん。」

タバサの視線が痛い。

「お願い。」
「……見て何をするつもりだ。」
「何も。見るだけ。」

しぶしぶM9をマガジンを抜き、スライドを引いて薬室内の弾丸を抜いてから手渡す。これなら暴発しない。
いろんな角度から角度から観察している。そんなに興味があるのか。おっと、銃口はのぞきこむんじゃない。

「何がそんなに興味を引くんだ?」
「いろいろある。」

それきりタバサは黙ってしまった。まあいつも黙っているが、それとは違った黙り方だ。

「悪かったな、色々聞いて。」
「別に。」

人に深く干渉するなんて、柄にもないことをしてしまったな。



「どうした相棒。元気が無いじゃねえか。」
「別にどうもしていない。」

剣の癖して鋭い。
いや、剣だから鋭いのか?

「あの娘っ子は気にしちゃいないと思うぜ。」
「誰がタバサのことだと言った?」
「俺も『娘っ子』としか言ってないがね。」

デルフに表情があったなら今頃ニヤニヤしているだろう。
そんな声をしている。

「……。」
「おいおい、怒るなよ。」
「怒ってない。」
「うそつけ。」

くくく、と笑い声が聞こえる。性格の悪い魔剣だ。
やはり伝説というのは会えば伝説じゃなくなる。

「変な遠慮はあの子が嫌がるからやめるんだな。」
「人間関係を剣に教えられるとは思ってもみなかった。」

目の前の焚き火を使って煙草に火をつける。
疲れが煙とともに身体から抜け出すようだ。
ゆっくりと口から煙を吐き出す。

「お前よりも長く人生を歩んでるからな。なんでも聞いてくれ。」

剣なのに『人生』とはこれいかに、など余計なことを考えながらデルフに問う。

「じゃあお前の話をしてくれ。」

とたんにデルフが黙る。
また地雷を踏んだか?

「あー、俺も長い人生でね。あんまり覚えてないな。
 昔お前と同じガンダールヴが振っていたことぐらいしか覚えてないんだな、これが。」
「記憶喪失か?」
「ただの物忘れだな。いやー長く生きてるのも大変だねぇ。」

能天気な奴だ。
それにな、とデルフがつないだ。

「自分の話をするのは苦手なんだ。俺はいつも誰かに使われる人生を送ってきた。
 自分であそこに行った、アレをやったってのが無いのさ。
 ま、それが俺の役割だし仕方ないし、不満も無いがね。」
「……そうか。」
「相棒はどうだ?」

しばらく考える。昔の記憶はあまり良い物ばかりではない。
話し声がうるさかったのだろうか?後ろのハンモックでルイズが寝返りを打った。

「……どんな話をしろと?」
「何でもいいさ。どんな子供時代だったとかそんなんでいいぜ。」

子供時代……どんな子供だったか。
記憶の糸を手繰っている途中、ある男の言葉を思い出した。

――お前の趣味を当ててやろう。いや、過去というべきか。
――うーん。何も無い。お前の記憶はカラッポ。

「ん?」
「どうした、相棒?」
「いや……。」

俺には未来も過去も無い。
俺にあるのは、ほかでもない『今』だけだ。
振り返ることには意味が無い。

「で、どんなんだったんだよ。」
「……あいにく過去は振り返らない性分でね。秘密だ。」
「ちぇ。」
「いい男には秘密はつき物だ。」

野郎にそんなもの必要ねえ、とわめくデルフを鞘に押し戻す。
これ以上は遠慮してもらおう。騒音も、詮索も。

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