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ルイズと無重力巫女さん-19



―――幻想郷、霧の湖の真ん中に建てられている紅魔館。
妖怪の山の麓にあるこの湖は深い霧に包まれ、その霧に紛れて妖精なんかが飛び回っている。
そして、その湖の真ん中にはとてつもなく大きな洋館があった。
まるで人を寄せ付けぬかのような場所に立てられたその館は紅く染まっている。
ようやく顔を出した太陽の明かりがが、逆にその洋館を不気味にさせていた。


そして、その紅魔館のとある一室では…。
四人の少女達が椅子に座り、何やら話をしていた。
一見すれば、何のたわいもない談笑かと思うが、部屋の雰囲気はとても重苦しいものであった。
「――――で、霊夢が何処に行ったのか特定出来たという事?」
少し青みがかかった銀髪の吸血鬼――― レミリア・スカーレット ―が向かい側に座っている金髪の女性が話した内容に興味を示していた。
背中には蝙蝠のような大きな翼が生えており、カーテン越しの太陽の光がその翼を照らしている。
「そうよ。まぁその時は思わぬ妨害が入って逃げる羽目になってしまったけど。」
金髪の女性 ――― 八雲 紫 ― の方も、一見すれば白い導師服を着た普通の『人間』に見える。
だが、その体からにじみ出る言いようのない不快感と恐怖が彼女が人外だと証拠づけていた。

「意外ねぇー、まさか貴方の口から逃げるっていう言葉が出るなんて。」
部屋の重苦しい雰囲気に柔らかそうに言ったのは金髪の女性の隣にいた『亡霊』 ――― 西行寺 幽々子 ― であった。
青い着物を纏い、被っている青い帽子の上に重ねるかのように『@』という印が描かれた白い三角頭巾をつけている。
「余程手痛い目に合わせられたか…それとも油断して一太刀浴びせられたとか?」
幽々子は桜色の髪を死人のように白い手で撫でつけながら、笑顔で紫にそう言った。
その言葉に紫は顔を僅かに曇らせると、右の人差し指で頬をカリカリと掻きながらポツリ呟いた。
「まぁ、ね。確かに一太刀浴びせられたわ…というよりも刺されたっていう表現が正しいけど。」
「とりあえずそんなお喋りは後にして、次の話題を進めて頂戴。」
そんな二人の会話を見ていた幽々子の横に座っていた女性が口を開いた。
腰まで伸びた銀髪は月明かりでキラキラと輝いている。
服は青と赤という変わった色の基調をしたナース服を着ていた。
彼女は先の幻想郷で起こった『永夜異変』の主犯である ――― 八意 永琳 ― である。
永琳の言葉に紫はつまらなそうに肩をすくめると再び話し始めた。
「それから私は何度か様々な方法を使ってその世界へ侵入しようと試みたけどどれもコレも駄目だったわ。
   後一歩と言うところでいつも誰かが私に襲いかかってくるのよ。本当、困るわ。」

あっけらかんにそう言った紫に永琳はため息をつくと紫に話しかけた。
「良くそんなに暢気にしていられるわね?幻想郷の創造主である貴方がそんなんだと心配になってくるわ…。」
「あら?これでも私には色々と苦手なモノは結構あるのよ。私はそんなものとは極力付き合わないようにしているだけ。」
紫は呆れている永琳に笑顔で軽く言うと再び話を戻した。
「まぁとりあえず今のところ、攫われてしまった博麗の巫女は未だ取り戻せていないという事よ。」


時を遡り数週間前、ここ幻想郷で博麗の巫女である霊夢が神隠しに遭うという、未曾有の異変が発生した。
それを妖怪の山に住む天狗達はあっという間に嗅ぎつけ、幻想郷中に話は広まった。
霊夢が神隠しに遇ったという話を聞いた彼女と親しい間柄の者達はすぐに異変解決の為に行動し始めた。
ただ…特にアテがないので各々が好きなところへ赴いては何の成果も無しに帰ってくる。

見つからないのは仕方がないといえるだろう。
何せ霊夢は本当にこの幻想郷から消えてしまっていたのだから。
突如神社の境内に現れた光り輝く鏡の様なモノに取り込まれて…。
その真実を知っているのは目撃者である八雲紫と、今日になって彼女から教えて貰ったレミリア、永琳、幽々子の3人だけである。


紫の言葉にレミリアはまるで相手を睨み殺すかのような目で紫を睨み付けながらこう言った。
「………まぁそこまで期待はしていなかったけど。まさかこれ程とはね?」
レミリアの冷たい言葉と視線に対し、紫は顔色一つ変えない。
幽々子はそんな光景を見て口元を扇子で隠しこそこそと笑っていた。
一方の永琳はというと…目を瞑り何が考えた振りをした後、紫に話しかけた。
「じゃあ、このままあの巫女が帰ってこなかったら結界が破れるのは時間の問題という事じゃない…?」
その一言に、紫は永琳の方へ顔を向けると顔色を変えた。
「結界ねぇ…確かに、『普通なら』後数日もすれば結界は跡形もなく崩壊するでしょうね。」
永琳はその言葉に残念そうな顔になったがそれは一瞬のことで、すぐにある事に気がつき真剣な顔になる。
「普通なら…?それは一体どういう意味なの。」
彼女の質問に、紫は被っていた帽子を脱ぐと気まずそうに頭を掻いた。

「う~ん、ぶっちゃけて言うとね…結界の様子がおかしいのよ。」
その言葉を皮切りに、今現在の結界の状況についての説明が始まった。
霊夢が消えてしまった後、紫はマヨヒガへ戻り博麗の巫女無しに結界がどれくらい持つか分析したらしい。
最初こそ予定では僅か二週間ぐらいで結界は崩壊してしまうという結果が出たが。それは大きく外れた。
二週間経っても結界にはひびひとつ入っておらず、何一つ問題なく結界は正常に働いていたのである。

「それじゃあ、今は霊夢がいなくても結界は大丈夫なわけ?」
話を聞いていたレミリアが横槍を入れるかのようにそう呟いた。
確かに、別に霊夢がいなくても結界が正常に動いていれば焦ることはない。
そう考えたレミリアは話の途中なのにも拘わらず安心したかのように大きなため息をついた。
「はぁ~、心配して損した………ってイタッ!?」
言い終わる前に、突如レミリアの頭上にスキマが現れ、そこから出てきた扇子に頭を叩かれた。
「何勝手に安心してるのよ吸血鬼、話の本題はここからよ。」
勝手に安心しているレミリアにスキマを通じて扇子で叩いた紫は話を再開した。

博麗の巫女無しに正常に動いている結界を訝しんだ紫はすぐに自分の式である九尾狐の藍に調査するように言った。
その間に紫は霊夢が何処へ行ったのか探るために、スキマを通ってあらゆる世界を行き来していた。
数日後…今日も何の成果も無しにマヨヒガへ帰ってきた紫に藍がある報告を入れてきた。
「紫様、少し結界の異常についてご報告を…。」
「どうしたの藍?ここ数週間前からずっと異常なんだけど。」
「いえ、今日はそれとはまた違い、見たことのない異常事態でして…。」
次に己の式の口から出た言葉に、紫は手に持っていた傘をうっかり取り落としてしまった。
それは、境界を操りありとあらゆる知識を持つ八雲紫ですら予想だにしていなかった事…。

―――結界が、どんどん変異していってる。

紫の口からでたその言葉に、レミリアが目を丸くした。
「日を追うごとにどんどんと、まるで蝕むかのように結界は変異しているのよ。なんとかしようとしたけど既に手遅れだわ。」
「変異って…一体どういう風に?」
レミリアは威厳を保とうとしながらも、恐る恐る紫に質問した。
「そうねぇ、白紙に描かれた絵の上に更に絵を描いた、と例えればいいかしら。」
そういう風に例えた紫は一息ついてから喋り始めた。
「更に私がその事で心配しているのはその結界が完璧に元あった結界を取り込んだ際にどんな事が起こるか予想がつかないという事よ。
 良くて何も起こらない、悪ければ…恐らく今まで起きた異変よりも相当悪い事になるわ。」

彼女の口から出たその結論に、レミリアは息を呑んだ。
結界が崩壊するならまだしもまさか突然変異するとは夢にも思わなかっただろう。
だが、驚かせる暇を与えないかのように紫は更に喋り続けた。
「ただ、その結界を調べていく内にある事がわかったのよ。
 今の結界を構成している術式が…霊夢を攫っていったあの鏡を構成していた術式と似ているのよ。」

「「……!!」」
それを聞き、永琳を覗く二人が驚愕した。
永琳はと言うとそれを聞き、少し考えるような素振りを見せた後口を開いた。
「ということは、その術式をうまく利用すれば…」
「さすが月の頭脳ね?私の台詞を盗もうとするなんて。」
言い終わる前に紫はそう言うとその跡を継ぐかのように言った。

「近い内に、あの月面戦争と同じ方法を使って霊夢を攫った世界へ乗り込むわよ。」



アルビオン王国はラ・ロシェールの町から丁度西の方角に存在している。
まず唯一の特徴は大陸そのものが『浮遊』している事だ。
その為、定期的にハルケギニア大陸の上空に進出することがある。
他にも「白の国」と呼ばれ、それは大陸の下部はいつも白い霧に覆われている事から由来が来ている。
アルビオン大陸の内側からこぼれ落ちてきた水が白い霧はいずれ雲となり、いずれはハルケギニア大陸へと運ばれ雨となるのだ。

他にもハルケギニア各国の中でもでエール を特に大量生産している国だったり、
 「アルビオンで良い料理が食いたいならトリステイン産の食材を持ってこい」、等と呼ばれている国である。

また大昔にかの始祖ブリミルの3人の子供達に作らせた王国の1つであり、その歴史も古い。
サウスゴータの街は人口4万を数えるアルビオン有数の大都市で、円形状の城壁と内面に作られた五芒星形の大通りはユニークである。
他にも王都ロンディニウムや軍港ロサイス、ハヴィランド宮殿など、観光地としてもベスト10に入っている場所も随分多い。
ただ…この時期は観光客はおろか大陸に住む人々さえ外にも出ず、家の片隅でガタガタと震えている。
それは『レコン・キスタ』という組織のクーデターが原因であった。
彼らは今のアルビオン政府の現状を憂い、「共和制」という言葉の元に集まった。
最初の戦いこそ、王族派の勝利が連続で続きレコン・キスタはあっという間に鎮圧するかと思った。

だがしかし、レコン・キスタの軍団に突如としてかの「亜人」たちも参戦してからというものの、形勢は逆転してしまった。

名高いアルビオン空軍の象徴でもあった『ロイヤル・ソヴリン号』と王都ロンディニウムも奪われてしまい。
遂にはニューカッスルの城に立て篭もるほか無くなってしまったのである。
逃げ延びた王族派の者達は覚悟を決めたと同時に、1つの疑問が頭の中に浮かび上がった。

『どうして人を襲う亜人達がレコン・キスタの仲間として戦っているのか。』

基本亜人というのは人間を襲う者であると子供の頃から教え込まれていた。
事実上間違っている事ではなく、前例をあげていけばそれこそ辞典が数冊出来るほど沢山ある。
それ程亜人達は恐ろしい存在であり、同時に人間に協力する様な存在ではないはずだ。
では何故彼らは人間―それも貴族の集まりであるレコン・キスタと協力関係にあるのか。
ニューカッスルの城に立て篭もった彼らは頭を捻りながらこれまで何週間も考えてきたがもうあまりその時間はなかった――――



一方、此所がどこかも分からない空の上…
まるで密林の様に密集した雲の中を霊夢が一人、フラフラと飛んでいた。
「周囲には雲ばかり…遙か下には海があって、上には颯爽とした青空…ハァ。」
霊夢は右も左もわからない雲だらけの空を飛びながら少し疲れたようにそう呟く。
ラ・ロシェールの町にあった大樹から飛び立って既に四時間ほど経過していた。
ベンチの上で目を覚ましたときには、丁度火が顔を出し始めたところである。
とりあえず近くには水飲み場があったため、そこで水を飲んだ後に顔も洗った。
その後は何も食べずに西の方を目指して飛びたった事に、霊夢は今になって後悔してた。

(どうせ一時間も飛んでればつくと思っていたけど…ふぅ、何か食べとけば良かったわ。)
だが実際は一時間どころか…四時間も飛んでいて尚雲以外のモノは一切目にしていない。
更にこの雲はまるで霊夢を取り囲むように空に浮いており、下手に移動すれば空の上で迷子になってしまう。
常人ならその状態から一刻も逃げだそうと西だけではなく東や北へと足を伸ばすところだが霊夢は違った。
彼女は四時間もずっと、西の方角だけを飛んでいるのだ。己の勘だけを信じて。

以前にも永夜事変の際に「迷いの竹林」と呼ばれる場所に訪れたことがあるため、既にこういう事には慣れているのだ。
その時にも、しっかりと己の勘を信じ、途中弾幕ごっこを挑んできた魔法使いをコテンパンにして無事に永遠亭へとたどり着けたのだ。
故に霊夢は今回も、昨日の夜に感じ取った嫌な気配を元に、こうして西の方角だけを飛んでいる。

「とりあえず…後一時間も飛んでいれば辿り着くかしらねぇ?」
霊夢は何も入っていない腹をさすりながら暢気に呟き、速度を少しだけ上げた。




「なんだか、さっきから嫌な臭いがするけど。そろそろって所かしら。」
それから約一時間半が経過しただろうか…霊夢は今雲の中を突っ切っていた。
あの気配も段々と近づいてきており、それに伴い彼女の鼻を異様につく異臭が雲に紛れて漂ってくる。
恐らく、それは戦争や戦、そして科学とはほぼ無縁になってしまった幻想郷では嗅ぐことは殆ど無い火薬の臭いである。
そして数十分が経った頃、霊夢はブレーキを掛けるかのようにその場で動きを止めると上を向いた。
(あの気配が、私の頭上から感じるわ。)
霊夢は心の中でそう呟くと頭上目がけて高度を上げ、雲の中から飛び出した。
雲から出てみると――――頭上は真っ暗『闇』であった。それも一寸先すら見る事もかなわない程の…
周りには白い雲が辺りにフヨフヨと浮かんでおり、そしてすぐ上には黒い『闇』。
まるでこのこの世のものとは思えない奇妙な風景であった。

「一体此所はどこなのかしら?もう夜…ってわけじゃなさそうだし。」
気配だけはすぐ頭上から漂ってくるが、どうみても上へと続く入り口らしいものは見つからない。
首を傾げて不思議そうに呟いた直後、ふと右の方で何かが光り輝いているのを霊夢は見逃さなかった。
何かと思い、光の方へ近づいてみるとそれの正体があっという間に分かった。
その正体は発光する真っ白い特殊なコケであり、それが群生して発光していたのである。
「ふ~ん、光るコケねぇ。聞いたことはあったけど……ん?」
そして…そのコケの光のお陰で丁度頭上に大きな穴がある事に霊夢は気がついた。
自然に出来たモノかどうかは分からないが、どうやら船が丸々一隻はいるほどの大きさである。
「こんな所に穴…?っていうか、コレは岩だったのね。」
同時に、頭上にあるのが、『闇』ではなく岩だという事が判明した。
つまり今霊夢の目の前にあるのは『空に浮かんでいる大きな岩の塊』、だと言うことだ。
「全く…ここは幻想郷と同じで色んなモノが飛んでるわね…。」
そんな事をぼやき、これ以上此所にいても仕方ないと判断した霊夢は穴の中へと入っていった。

発光性のコケが生えていたのは出入り口部分だけで穴の中はとても暗く、霊夢は手探りで障害物を確認しつつ飛ばざるを得なかった。
もしも船なんかがこの穴に入るのならば…余程の腕利きの者達でなければすぐさま船は座礁してしまうだろう。
「このまま上へ行けば何かあるのかしら……ってまた光ってるところがあるわ。」
穴に入って数分も経った頃だろうか、霊夢は再びコケが光っている場所を見つけた。
光を頼りに近づいていくと、そこには人一人が通れるサイズの横穴があった。
この横穴にはあの光る苔が多数生えており、穴が小さいためかだいぶ明るい。
「このまま手探りで上へ上へ行くのも面倒だし…横穴の方へ行ってみようかしら。」
霊夢は暢気に言うとその横穴へと入り、奥へ奥へと進んでいった。

―――アルビオン大陸 ウエストウッド周辺。

その森の中にある泉から流れる水は大きな水道を通史でアルビオン各地へと届いている。
泉のほとりには木の蓋で塞がられている古い井戸があった。
井戸と言っても既に水がくみ取れなくなっているが、それでもその井戸を封じている蓋の上は小動物達の休憩場となっている。
今日もまた、数匹のリスたちが仲良く体を寄せ合って眠っていた。
だがその時…。


ガタガタッ…

突如、蓋が音を立てながら大きく揺れ始めた。
たまらずリスたちは跳ね起きるとすばやく蓋の上から飛び降り、森の中へ逃げ去っていった。
リスだけではなく、突然の物音に小鳥は歌を止め、兎はいつでも逃げられるよう身構えている。
数秒してから、ふと物音と揺れが止まり―――次の瞬間、

バァンッ!!

と、大きな音を立てて蓋が遙か空の彼方へと勢いよく吹っ飛んでいった。
周囲にいた森の小さな住民達はたちはそれに驚きササッと森の奥へと引っ込んでいった。
そして辺りには誰もいなくなった直後、長い黒髪の少女が井戸の中からフワフワと浮かびながら外へ飛び出てきた。
「ふう、ようやく薄暗くてじめじめした場所から出られたわ。」
黒髪の少女――霊夢は地面に降り立つと上空にある太陽を見て嬉しそうに呟いた。

横穴へと入った霊夢はあの後ジメジメとした穴の中を通り、苦労の甲斐あってようやく地上へと出てこれたのである。
そして道なりに進んでいくとこの井戸の底へと通じていたということである。
「それにしても、どうして空の上にあった岩穴からこんな森の中へたどり着くのかしら…。」
霊夢は不思議そうにそう呟いた後、直ぐ側から水の流れる音が聞こえてくることに気がついた。
そちらへ振り向くと、そこには太陽の光でキラキラと綺麗に輝く泉があった。
ちなみに、水の流れる音というのは人工的に造られた溝へと流れていく音である。
濁り一つ見あたらないその綺麗な泉の水を見て、霊夢は先程からずっと喉が渇いていたのを思い出した。
霊夢は素早く泉の側へ近づくと、両手で水を掬い一気にそれを口の中へ入れ、飲み込んだ。
「あーおいしい!なんだか生き返った感じだわ。」
喉が乾きに乾いていた霊夢は満足そうに言うと、もう一度水を手で掬い口の中に入れる。
そして最後に顔に水を軽く洗った後、ふと空を見上げた。
木々の間から漏れだし太陽の光は、体を温めるのに丁度良かった。

喉を渇きを潤し。ついでに体も暖まった霊夢は未だここが何処なのかわからなかった。
だが、昨日から感じていたイヤな気配が今までとは比べものにならないほど近くから漂ってくる。
「もしかしたら、ここがそのアルビオンって所かしら…。」
霊夢がそう呟いた瞬間、

ガサッ…

後ろから何か物音が聞こえてきた。
何だと思い振り返ると…すぐ後ろにあった木の後ろに誰かが隠れていた。
多分相手は隠れているつもりなのだろうが、腰まで伸びた金色の髪が風に煽られ揺れている所為でバレバレである。
だが、その髪の細さが普通の人間の半分ほどしかない事に気づき霊夢は少しだけ目を丸くした。
シャララ…シャララ、と風に揺られる度に髪が空気をかき乱す音を奏でている。

とりあえずこのままでは何の進展もないので、仕方なしに霊夢は木の後ろに隠れているであろう者に声を掛けた。
「……そこの木に隠れている奴、出てきなさいよ。」
霊夢の言葉に相手は驚いたのだろうか?バッと木の後ろから飛び出したかと思うと森の奥へと逃げようとした。
しかしそれを見逃す博麗の巫女ではなかった、霊夢は咄嗟に相手の肩を掴んだ。
その時になって初めて、こちらをこそこそ見ていた相手が自分とはそれほど年が離れていない少女だと判明した。
粗末で丈の短い草色のワンピースに身を包み、頭には耳元まで隠している白い帽子を被っていた。
手には木の実をいっぱい入れた篭を持っている。
目は怯えているせいか少し潤んでおり、顔も若干ふにゃっと崩れていて、今にも泣きそうな表情をしている。
普通の男がその目と顔を見れば、間違いなくその少女に一目惚れしてしまうだろう。

だが霊夢は生憎女である為、そのような誘惑(?)は効かず職務質問のように少女に話しかけた。
「ちょっと、何も逃げることはないじゃないの?」
空腹だったためか、霊夢の言葉は少し苛ついたものとなっていた。
「ご、ごめんなさい…、木の実を摘んでいる最中に大きな音がしたから…。」
霊夢に疑いの目で見られ少女は更に表情を崩し、今にも泣きそうな声で弱々しく言った。
その様子を見た霊夢は相手が何の害もないと確認し、パッと肩を離した。
やっと解放された少女は緊張の糸が切れたのか、その場にヘニャヘニャと座り込み、ついで頭に被っていた帽子が落ちてしまった。

―――――――帽子に隠れていて見えなかった耳は、普通の人間のソレと違い尖っていた。



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