あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

蒼い使い魔-42b


「兄さまっ!」
タバサが首を振りながらバージルに縋りつく。
「誰が兄さまだ……っ……!」
普段無表情な彼女からは想像できないほど取り乱すタバサを突き飛ばすと、バージルは自身に突き刺さった芽を引き抜きにかかる。
「でもっ!!」
「この程度で喚くなッ……!」
とは言うものの、背中のキメラシードは次々バージルに芽を打ち込んでいく。
このまま引きちぎっていても埒が明かない。
「っ……! 舐めるなッ!」
バージルが自身の魔力を開放し、魔人となる、その際に生じた凄まじい魔力の奔流。
それに耐えきれずにキメラシードがはじけ飛び消滅した。
キメラシードが完全に消えたことを確認したバージルは再び人間の姿に戻ると、すぐさまエキドナを睨みつけた。
見るとエキドナは残っていた力を振り絞り、上空へと舞い上がっていた。

「口惜しや……仕留め損ねたかっ! この屈辱! 決して忘れぬぞ! いずれ貴様の身体をズタズタに引き裂いてくれる!」
エキドナは一頻り喚いた後上空で大きくターンすると、森の奥へと猛スピードで消えて行った。

「逃げられた……か」

成すすべなく見送っていたバージルが忌々しそうに呟く
「失敗だ、まさか依頼人に足を引っ張られるとはな、笑い話にもならん」
そう言いながら冷たい目でタバサを睨みつけると、憮然とした表情で舌打ちをする。
「ごめんなさい」
タバサはしゅんと肩を落とし小さく呟く、そして顔を上げると少し言いにくそうに言葉を切りだした。
「その……」
バージルが視線を再びタバサにあわせる。
「なぜ庇ってくれたの?」
「お前に死なれたら困るからだ」
バージルがあっさりと答えた、普段の彼からはおそらく出てこないであろう一言にタバサは思わず聞き返す。
「わたしが死んだら困る?」
「そうだ、他に何がある、……無駄話は終わりだ、行くぞ」
相も変わらず自分以上に温度の感じられない目だったが……バージルはにべもなくそう言うと踵を返し歩きだした。
タバサはその言葉にまるで上気せた様に呆然としていたが、やがて我に返ると、森の中へと分け入って行くバージルを追いかけた。

「おいおい相棒!」
森の中に分け入って行くバージルに背中のデルフが嬉しそうに声をかける
「なんだ」
「お前さんたまには優しいこと言うじゃねぇか! まさかあそこまで言ってくれるとは思わなかったぜ!」
「何の話だ」
「さっきタバサ庇ったろ? あんときお前に死なれたら困る~とかいったじゃねぇか!」
「何を言っている、奴が死んだら誰が報酬を払う」
陽気に話しかけてくるデルフにバージルがさらりと言い放つ、その口調からは嘘偽りが一切感じられない。
「相棒……それ、絶対タバサの前で言うんじゃねぇぞ? 言ったら呪うからな?」
急にトーンを低くし何故か怒気を含んだ声で呟くデルフを無視しつつ、バージルはエキドナが消えて行った森の奥へと足を踏み入れた。

やがて、先へと進んだバージルを追ってきたタバサと合流し、二人は再び森の中を歩く、
エキドナが姿を消してから森の雰囲気が変わった、あれだけいた悪魔達が姿を消し、狂っていた方向感覚も元に戻っていたのだ。
「何を探しているの?」
ふとタバサが顔をあげ、前を歩くバージルに尋ねる
「魔界へのゲートだ、奴ほどの悪魔だ、必ずある、使えるならそのまま魔界に行きたいところだが……周りを見ろ」
バージルのその言葉にタバサが周囲を見渡す。
「この森に満ちていた瘴気が薄れ始めている、期待はできんな……」
見ると、さっきまで生い茂っていた森の樹が急激に枯れ始めている。
エキドナによって生み出されたグロテスクな森の樹は彼女の威光があって始めて隆盛を保てるようだ。
エキドナを逃がしてしまったとはいえ、悪魔達の気配も消え、森の異常も治まったのだった。その点では依頼は成功といえるだろう。
しばらく歩いていると、不意にバージルが立ち止まる、そして目の前に現れた巨大な古木に目をやった、タバサもそれにつられ巨木を見上げる。
おそらくはこの黒き森で最も樹齢の高い古木だろう、だがその古木は見るも無残に朽ち果てており、樹の幹には巨大な裂け目が出来上がっていた。
僅かに感じる精霊の力と裂け目に残る魔界の瘴気、どうやらここを通りエキドナは魔界へと逃げ帰ったようだった。
バージルは無言のまま裂け目の中へと足を踏み入れる、だが裂け目の中にはいくら探せど何もなく、魔界へとつながってはいなかった。
「クソッ!」
低く呟きながら木の壁に拳を叩きつける、どうやらこの巨木に宿る強い精霊の力を使い、無理やり魔界への境界を捻じ曲げた即席の魔界のゲートと言ったところだった。
それもエキドナが無理やり中に逃げ込んだせいでその装置も故障し使用不可になってしまったようだ。
なおの事エキドナを仕留められなかったことが悔やまれる、もしあの時エキドナを殺していれば魔界へ直接行くことができたのだが……。
過ぎたことを悔やんでも仕方がない、バージルが踵を返し外へと出ようとした時、不意に強い魔力を感じ足を止めた。

「どう?」
樹の外で待っていたタバサが裂け目から再び姿を現したバージルに尋ねる。
「もうここには用はない、このゲート自体偶発的に出来たもののようだ、もう使い物にはならん」
バージルはそれだけ言うと、タバサの横をさっさと通り過ぎ、森の外へ出るべく歩いて行った。
「それは?」
後を追うようについてきたタバサがバージルの持つ鞄のような物を見て首を傾げる、
確かこの森に来たときからそんなものは持っていなかったはずだ。
「戦利品だ、機嫌取りくらいには使えるだろう」
バージルがしれと答えると、スーツケースに施されたレリーフの三つの目が妖しく輝いた。


一度悪魔達を駆逐したことを村人たちに伝えるために、二人はエギンハイム村へと戻る。
村人と翼人は自分達を脅かす悪魔が消え、森が元に戻ったことを大いに喜び、村は陽気な騒ぎに包まれた。
村人と翼人達が肩を組み酒を飲み歌を歌う、そんなお祭り騒ぎの中、
タバサとバージルは村はずれでシルフィードに跨ると、一気に空へと舞い上がった。

「おねえさま? シルフィは囮のお仕事を立派にこなしたのね、だからお肉を食べることを許してほしいのね! きゅいきゅい」
トリスタニアへ戻る途中、シルフィードが背中で本を読んでいるタバサにきゅいきゅいとわめきたてる。
しばらくの間タバサは黙ったままだったが、やがて本から視線を外さずに静かに口を開く。
「一ヶ月短縮」
それを聞いたシルフィードの顔が青くなる、いや、もともと青いのだが真っ青になった。
あれだけ怖い悪魔相手に命張ったのに、たったの一ヶ月短縮だなんて!
「きゅい! ひどい! おにいさま~~!! なんか言ってやってなのね!」
シルフィードは怒りながら憮然とした表情で座っているバージルに声をかける。
バージルはそれには答えずにタバサを横目で見た。
「少し気になってはいたが……」
バージルが口を開くと、タバサは再び本を読み始める
「コイツが俺の事をこう呼ぶようになったのはお前の影響か?」
その言葉にタバサはぴくりと反応すると、彼の視線を遮るように本を立てると、顔を埋めるように中身に視線を落とす。
そんな主人に代わるようにシルフィードが口を開いた。
「きゅい? 知らなかったのね? おねえさまはおにいさまのことをいつも『兄さま』呼んでるのね、だからシルフィも呼ぶの、おにいさまって」
タバサは杖を伸ばすと、シルフィードの頭をぽかぽかと叩いた。
「いたい。いたいよう」
なぜ叩かれるのか分からない、と切なげな声でシルフィードが主人に抗議する。
「……」
バージルの呆れたような視線に気が付いたのか、タバサがおずおずと視線を向ける。
「……だめ?」
小さく首を傾げタバサが小さな声で尋ねる。
「お前の勝手だ、好きに呼べばいい」
そう言うとバージルは目を瞑ってしまった。
「ありがとう……兄さま」
タバサは僅かに頬を赤く染め、小さく呟いた。
その時、バージルが何か思い出したかのように再び目を見開くと相も変わらず無表情のまま口を開く。
「そんなことより報酬の話だが」
その言葉にタバサは突然現実に引き戻された気がして、がっくりと肩を落とした。

トリスタニアに戻ったバージルは、報酬を用意するため一度学院に戻るというタバサと一度別れ、
事務所のある魅惑の妖精亭へと戻るべくチクトンネ街へと歩を進めていた。
時刻はすでに朝方、ルイズの言いつけを余裕で一日過ぎている。
「いやぁ相棒、初仕事は成功だな、あのバケモンを魔界に逃がしちまったのがちと残念だったがな」
背中のデルフがカチカチと音をたて話しかける、だがバージルの表情はどこか険しい。
「おーい相棒、まだ気にしてんのか? 魔界へ行けなかったことがよ」
「違う……そうではない」
バージルはきっぱりと言うと、ギリと奥歯を鳴らす。
許せないのは、己自身……。ゲートが閉じてしまっていた時に心のどこかで感じた安堵。
まだこの世界にいられる、本の少しでもそう感じてしまった自分が許せない。
「(何を迷う、この世界に未練などあるわけがない……あるはずがない!)」
必死に自分に言い聞かせ、左手のルーンを見る、だがどこかで分かっていた。
この感情はルーンによるものではない、自分の本心からのものであると。
捨てた筈の人間の心、死んだはずの人間の部分……それが腹立たしい。
バージルは考えを振り払うように頭を軽く振ると、歩調を速めた。

魅惑の妖精亭へと足を踏み入れると、既に閉店したのか、店内はひっそりとしていた。
階段を昇り、事務所のドアを開ける。見ると、応接用のソファに誰かがうずくまっている。
バージルは掛っている毛布を無遠慮にはぎとる、するとそこにはやはりというべきか、ルイズが小さくうずくまり小さく寝息を立てていた。
目元が赤く腫れ、頬に涙の痕が見て取れる。……どうやらここで泣いていたらしい。
だが、バージルはルイズの首根っこを掴むと無遠慮に持ち上げる。
「きゃっ! なっ、なにっ! なにごと!?」
急に持ち上げられたルイズは目を覚まし目を白黒させながら手脚をばたつかせた。
「ここは事務所だ、寝るなら自分の部屋で寝ろ」
バージルは冷たく言うとパっと手を離しルイズをソファの上へと落とした。
寝ボケていたルイズは一瞬呆けていたが……、バージルの姿をみるや見る見る顔を歪ませ……ぼろぼろと泣き始めた。
「……うっ……ふぇ……バージル……帰ってぎだぁ……バージル……えぐっ……うえ~~~ん!!」
朝っぱらから大音量で泣き始めたルイズにバージルは眉を顰める。
「泣く程の事か?」
ルイズは呆れたように呟くバージルをキッと見上げその胸に取りすがった。
「バカ! バカバカ!」
ぽかぽかとルイズはバージルを殴りつける。
「どこ行ってたのよ! 朝までには帰ってこいっていったでしょ! タバサなんかとどこに行ってたのよ!
どうして帰ってこないの! なんで! なんで!」
「場所が場所だ、現地に着くころには既に朝だった」
うんざりしたようにバージルが呟く、だがルイズはまるで火がついたように泣くばかりである
「どこで! なにしてたの! 正直にいいなさいよっ……! ぐずっ……」
どうやら説明しないとルイズは治まらない、バージルは観念したように話し始めた。
「黒き森とやらで悪魔が発生した、俺はそれを狩りに行った、それがタバサからの依頼だ」
「それだけ……?」
「当然だ、仕事だと言っているだろう」
ルイズは疑うようにバージルを見る、だがすぐにコートが血で汚れていることに気が付いた。人間のものではない、悪魔の血……。
「わかった……今回は信じてあげる、でも……一日帰って来なかったこと……許したわけじゃないからね……」
ルイズは少し拗ねたように呟くとソファに腰を落とした。
「ルイズ」
「なに? きゃっ!」
バージルの呼ぶ声にルイズが顔を上げると、何やら大きめの鞄を投げ渡された。
何やら不気味なレリーフが刻まれた巨大なスーツケースだ。触ると見たこともない奇妙な物質でできていた。
「なにこれ?」
「土産だ」
ルイズははっとしたように顔を上げる。
「えっと……くれるの?」
「くれてやる、俺は使わん」
バージルはそう言うと背負っていたデルフリンガーを壁に立て掛ける。
「こ、こんなものでわたしの機嫌を取ったつもりなの! で、でもせっかくくれたんだから、もらってあげるわ!」
そんな風に言っていながらルイズの口元は緩みっぱなしである、愛おしそうにスーツケースを撫でていた。
「ねぇ、開けてもいい?」
「かまわんが、どうなっても知らん」
その言葉にいざ開けようとしていたルイズの手がピタリと止まる。
もしやこれは、バージルが持つようなとんでもない魔具と呼ばれるものじゃないのだろうか、不安がよぎる。
そう言えばこいつは「使わん」と言っていた気がする……。
「……一応聞くけど……開けたらどうなるの?」
「さぁな、開けたことがないから分からんが……、ここら一帯が焦土と化すだろうな」

「いいいいいいいらないわよそんなもの! っていうかなんでそんな物騒なもの持ってくるのよあんたは!」
一瞬の沈黙ののち、ルイズが怒鳴りながらパンドラを床にたたきつける――その瞬間。

――PANDORA Standby――

ルイズの頭の中に聞きなれない奇妙な音声が流れ込む。
「えっ? なっ? なに? パンドラってなによ!」
パニックに陥るルイズの前でパンドラが光を放ち形を変え、再び脳内に音声が流れ込む。

――PF262 【Jealousy】――

スーツケースが割れ、中から幾つもの細い鉄の管が伸び、円形に並んだ奇妙なものが飛び出す。
それはハルケギニアには存在しない、大量の弾丸を高範囲にバラまく、バージルの世界ではガトリングガンと呼ばれるものであった。
そして奇妙な音を立てながら……砲塔が火を噴いた。
ドガガガガガガガガガガガ!!!!  と凄まじい量の弾丸が事もあろうにバージルに襲い掛かった。
だがバージルは涼しい顔で閻魔刀を抜き放つと体の前で大きく回転させる。
高速度の刃が銃弾を弾き落としていく。
「ええええ? ちょちょちょちょ、ちょっと待って! こここ、これどうすれば元に戻るのよ!」
パニックに陥ったルイズがパンドラを拾い上げる。すると再び、変形を告げる音声が流れこむ。
――PF422 【Grief】――
「うそぉっ!? やだやだ! バージル! 見てないで助けなさいよぉ!」
ルイズはたまらずバージルに向け放り投げる。
ところが、ルイズが手を話した瞬間、カバンのような形をしていたはずのパンドラが空中で形を変え、
巨大な三枚の刃が姿を現す、そして狙いを定めたかのようにバージルへと襲いかかった。
バージルはこれまた閻魔刀を振い襲い来るパンドラの刃を受け流す、
パンドラはしばらくの間、まるで意思を持つかのように執拗にバージルに襲い掛かった後、
まるでブーメランのようにルイズの手元に戻り、綺麗に収まった。
「ひっ!」
ルイズが思わず取っ手の部分を両手で持つ、するとまたまたパンドラが変形を遂げる……。

――PF398 【Revenge】――
音声とともに、今度は巨大な砲台のような形になる。
もうどこに入っているのか? という疑問が無粋に思えるほどの変形っぷりだ。
「もおおおおお! 今度はなによぉおおおお!!」
砲口から赤い光が漏れ、凄まじいエネルギーが充填されてゆく。
それを見たバージルが即座にエアトリックを使い、砲台を蹴りあげる、
バッシュゥン! という音ととも恐るべき熱量を持った巨大レーザー砲が火を噴いた。
その砲撃は天井を突き破るだけにとどまらず、はるか上空を覆っていた雲が消滅させた。
トリスタニアの天気は一瞬で曇りから雲ひとつない快晴と化した。
「…………」
もはやツッコむ気さえ起きない。
ルイズが口を大きくあけ唖然としていると、ようやくパンドラが元のスーツケース型へと戻った。

「ばばばばば、ばかーーーーー!!!!」
正気にもどったルイズが大声をあげ、怒りにまかせパンドラを床にたたきつける。
なんてとんでもないものを簡単に渡すんだこの馬鹿悪魔! もう少しで店どころかチクトンネ街がトリスタニアから消し飛ぶところだった!
怒りに満ちた表情でルイズが涼しい顔をしているバージルを睨みつけた、その瞬間……。

――PF666 【Omen】―― 
「ちょっ! えっ!? うそっ! 待って待って待って! やめてお願い!」
ルイズが慌てふためくも時既に遅し、スーツケースの留め具の部分が自動的に外れ、災厄の箱、最後の一つが閃光と共に解き放たれる……。



間一髪、バタン! という音とともに、ルイズが身を挺しパンドラを抱きしめる形で閉じた。
「ハァ……ハァ……ハァ……」
あのままあけっぱなしにしていたらチクトンネ街どころかトリスタニアが地図から消える、箱が開いた瞬間そう理解できた。
荒い息を吐きながら、精も根も付き果てたと言った表情でぐったりとパンドラに倒れこむ。
「気に入ってもらえたようでなによりだ」
「うううううううれしかないわ――」
バージルのその言葉にルイズはがばっと顔を上げ、渾身のツッコミを入れようとした、その時
べぎゃっ! という音とともにルイズの座りこんでいた床が抜け……
ルイズはパンドラとともに階下の部屋へと消えていった。


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