あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

蒼い使い魔-42a


依頼人――タバサは静かに部屋の中に入ると、ドアを閉める。
バージルはそんなタバサから視線を外し、再び窓の外を見ると、静かに口を開いた。
「依頼は何だ」
「任務」
「そんな事は分かっている、お前がここに来る理由と言えばその辺だ」
バージルはそう言うと再び振り向き応接用のソファに腰を掛けた。
「今回は何だと聞いているんだ」
タバサは向かいのソファに腰かけると、淡々と説明を始めた。
「本来の任務は、わたしに与えられたものではなかった、任務の依頼を出したのは
ガリアとゲルマニアとの国境にある"黒き森"、その一角にあるエギンハイム村周辺を治める領主。
出された依頼は、森に住む、翼人達の討伐"だった"」
「だったとは?」
バージルが聞き返すとタバサは小さく頷く
「わたしに任務が下される三日前に、一人の花壇騎士が派遣された、
でも彼が行った時にはすでに状況が変わっていた、村人と翼人はすでに和解していた」
「それで? それに何の問題があるというんだ」
「問題はその和解した理由」
「彼の報告によると、翼人達は、化物に森を追われてしまった、と言っている。
その後、追加任務として彼はその報告の後、森へ調査に入り、命を落とした」
「そこでお前の出番、というわけか」
タバサが頷き、本題を切り出した。
「悪魔が出た、"黒い森"は今、悪魔の巣窟と化している、彼らを狩ってほしい」
「それが依頼か」
「受けてくれる?」
バージルは何も答えず、ソファから立ち上がり、コートを羽織る
壁に立てかけてあったデルフを背中に背負い、閻魔刀を握り締めた。
「退屈凌ぎにはなるだろう、その依頼、受けてやる、案内しろ」

バージルがタバサを連れ階段を下る、一階の酒場へと降りると、やはり今日も繁盛しているらしい
夜も遅くだと言うのに、給士の女の子達が忙しそうに駆けまわっていた、その中で当然ルイズも……
客の一人にとび蹴りを喰らわせていた……。
「スカロン」
それを横目で見ながらバージルが店長のスカロンへ声をかけた
「あら、バージルくん、お出かけ?」
「仕事だ、戻るまでの事務所の管理は任せる」
そう伝え、外に出ようとした、その時。
「た、タバサ!? あんたまた来てたの!? バージッ……ぐっ、お、お兄様? た、タバサとどこに行こうって言うのかしら?」
二人に気が付いたルイズが怒りにわなわなと肩を震わせながら尋ねてきた。
面倒なのに見つかった、と言わんばかりの視線をタバサが送ってくる。
「仕事だ」
「仕事ですって? だったらなんでタバサがいるのよ!」
にべもなく答えるバージルにルイズが突っかかる
「コイツが依頼人だからだ」
「それはどういう依頼? 正直に答えなさい」
ルイズがそこまで言うと、何やらコートの裾が引っ張られるのを感じる。
振り返ると、タバサが「これ以上は言うな」と視線を送っていた。
「"秘密"の依頼、だそうだ」
「ひっ、ひっ、秘密ですってぇ?」
適当なことを言って話を切り上げようとしたが、その言葉は怒りに震えるルイズに油を注ぐ結果となってしまった。
「あんた達! ひょっとして変なことするんじゃないでしょうね! ぜ、ぜ、ぜ、絶対許さないわよそんなこと! わたしも行くわ!」
金切り声をあげ、持っていたトレーを床にたたきつける、すると店の奥からスカロンがすっ飛んできた。
「はいはーい、ルイズちゃ~ん、お兄さんの仕事の邪魔しちゃダメよ~、あなたは接客接客、さ~戻って戻って~」
「むがっ! は、離しなさい! バージル! 夜が明けるまでに戻ってきなさいよ! 絶対だかんね! 戻ってこなかったらお仕置きだから!! っていうか殺ス!!」
「無茶を言うな……」
ギャーギャー喚きながらスカロンにずるずると引きずられてゆくルイズを見送り、バージルは小さくため息を吐く。
「次からは窓から出るか……」
「そうしたほうがいい」
二人は店から出て、街の外で待機させているシルフィードの所へ向かう、街中を歩きながらタバサが不意に尋ねた。
「お兄様って?」
「そういう設定だそうだ」
「……そう」
タバサは小さく呟くと、足元へ視線を落とした。


ガリアの首都、リュティスから馬で二日、徒歩で五日、タバサのシルフィードなら二時間の距離にあるアルデラ地方。
ここは深い森に覆われた土地であった。
ゲルマニアとの国境沿いを埋め尽くす森は、"黒い森"と二国で呼び習わされている。
そんな森の一角に、エギンハイム村はあった。
戦争のたびにガリアとゲルマニアの間を行ったり来たりしている、人口二百人ほどの小さな村であった。
「そろそろ着く」
タバサのその声にシルフィードの背で眠っていたバージルが目を覚ます。
二人が現場であるアルデラ地方に到着するころには既に日は昇り、あたりは朝靄に包まれている。
「森の名称を変えることを勧めるな」
バージルは眼下に広がる"黒き森"を眺めながら呟いた。
「……」
それにつられ森へと視線を落としたタバサが言葉を失う。
本来"黒き森"と呼ばれる場所は、ライカ欅と呼ばれる落葉樹を中心に様々な植物が多く群生している。
上空から見渡せば色濃い緑の森はその名前の通り深く落ち着いた黒に覆われて見える、はずだった。
だが眼下に広がる"黒き森"は、まるで亜熱帯を思わせるドギツい色で彩られた奇怪な森の姿へ変貌を遂げていた。
「……仕事の時間だ」
しばらく見下ろしていたバージルは短く呟くと、突然シルフィードから飛び降り、そのまま森へと落下していく、
タバサは少しだけ焦ったような表情になると、シルフィードに指示を出し、森へと降りて行った。

エギンハイム村から歩いて三十分ほど離れた森の中を、村人達が息を潜めながら進む。
各々の手には斧や弓を握りしめ、険しい表情で森の中を分け入り歩いていた。
その森も、かつては多くのライカ欅が群生し、高く幹を空へと伸ばしていたのだが、
今は見る影もなく、樹々は見たこともないグロテスクな形状に姿を変えていた。
その樹々から咲き乱れる巨大な極彩色の花から溢れる香りが方向感覚を狂わせる、
そのため、普段村人達にとって歩きなれた筈のその森は、一度踏み入れば二度と戻れない魔境と化していた。
「いたぞ……奴だ……!」
先頭を歩いていた、斧を担いでいるがっちりした体つきの男が手を挙げると、後ろを歩く小さく指示を出した。
「トカゲ野郎……俺達の森をさんざ好き勝手荒らしやがって……」
男が低く恨めしそうに呟く、その男の視線の先には、二本足で立ち、兜を被り、腕には円形の盾を携えた
トカゲのような姿をした亜人……否、化物が一体、木陰で丸くなっていた。
「サム、これからどうする?」
トカゲを睨みつけながら、後ろにいた男が、先頭を歩いていた男に尋ねる。
サムと呼ばれた男はそして弓をもった猟師達を集めると、入念に指示を出した
「今いるのはあの一体だけだな? 斥候……ってとこか」
周囲を警戒していた猟師達が頷く。
「俺が合図を出したら一斉に矢を射かけてくれ、奴がひるんだところを俺達がこいつでトドメを刺してやる」
サムは大きな斧を、まるでナイフのように軽々と扱いながら言った。
「だが……あいつら、こないだ派遣されてきた騎士だって殺しちまったんだろ? 大丈夫かい?」
一人の猟師が心配そうに言った。
「あの騎士様は一人で行っちまったんだ、無理もねぇさ。だが、これだけいりゃあ、トカゲの一匹や二匹、なんてこたぁない」
サムの周りには斧を担いだ屈強な男達が三十人近くいた。
弓を構えた猟師は二十人ほど、いずれも飛ぶ鳥を落とすほどの、弓の名手である。
ちょっとした傭兵隊だって相手に出来る集団であった。
「そして俺達にゃあ、心強い味方もついてる」
サムはニヤリと笑うと上空を指差す。
「力を合わせて、トカゲ共を皆殺しにしてやろうぜ」
村人たちは、ほっとしたような顔になった。笑いがあちこちから漏れる。
猟師達が弦を弓に張り終え、矢をつがえたことを確認すると、サムは傍らに転がった牛の頭ほどもある岩を持ち上げた。
「ふんぬっ!!」
気張った声をあげ、額に血管を浮かべながら、持ちあげた岩を、蹲るトカゲに向かいぶん投げた。
勢いよく投げ飛ばされた岩はトカゲに直撃……すると思われていたが。
蹲っていたはずのトカゲは驚くべき跳躍力で飛び上がると、飛んできた岩を軽々と回避する。
そして唖然とする村人達へと睨みつけると、耳を覆いたくなるようなおぞましい咆哮を上げた。
サムは思わず立ちすくむ猟師達に怒鳴った。
「何してる! 矢を放て!」
その一言に我に返った猟師達が、急ぎ矢を放つ、
ひゅんひゅんひゅん、と狙いたがわずトカゲの化け物へと向け、何本もの矢が飛んだ。
串刺しになるかと思われた瞬間、驚くべきことが起こった。
全ての矢がそれて、木々の幹に突き刺さり、茂みの中に消えたのだ。
「くっ!」
猟師達の口から悔しそうな声が漏れた。狙いが外れたのか?
否、いずれも劣らぬ弓の名手である、一本二本ならともかく、全ての矢が外れるわけはない
つまり、矢は外れたのではなく、外されたのだ。
「次だ! 休まず射かけろ!」
サムの声に、猟師達は次々に矢を放った。
再びトカゲが吼える、耳を劈かんばかりの咆哮とともに、トカゲを中心に暴風が吹き荒れる。
目に見える程の凶暴な風がすっぽりとトカゲの身体を包み込む、
当然、トカゲに向かって行った矢は風に軌道をそらされ、はじき飛ばされる。
「バカなっ! 先住魔法!?」
目の前で起こった信じがたい現象に村人達は我が目を疑う。
だが先住魔法にしては何かがおかしい、言葉を発していないのだ。
ただ吼えた、それだけで暴風が吹き荒れる。知能のないトカゲ、そう見くびっていた。
「ひ、ひるむな! 相手はたかが一匹だ! 囲んでやっちまえ!」
サムが村人達を叱咤したその瞬間――。
地面の数か所が奇妙に盛り上がる、そして一斉に地面から"何か"が飛び出した。
「嘘だろ……囮だったってのかよ……」
猟師の一人が絶望が混じった声で呟く、
森の中に恐ろしい咆哮がいくつもいくつも響きわたる。
地中から姿を現したのは、目の前にいるトカゲと同じタイプの化け物だった、それも……五体。
気がつけば村人たちは分散させられ、場は混乱と恐慌に包まれていた。
立ちすくむ村人に向け、トカゲは容赦なく襲い掛かる。
怯える村人に巨大な爪を残酷に突き立てんと飛びかかったその刹那――。
「我らが契約したる枝はしなりて伸びて我に仇なす輩の自由を奪わん」
詠唱とともに――ごぉうっ! と音がして、僅かに残ったライカ欅の枝がしなり、めきめきと勢いよく伸びる。
そして伸びた枝は飛びかかったトカゲに絡まり、その体を拘束する。
「!!」
トカゲは何が起こったのか理解していないのか、じたばたと動き、拘束から逃れようともがいた。
「た、助かった……!」
村人は安堵のため息を吐くと、空を見上げる。
その視線の先から、人が落ちてきた。地面に激突する! ように見えた瞬間、すれすれでその人間達は落ちるのをやめた。
ふわふわと浮いているのである。
よく見るとただの人間ではない、一枚布を体に巻きつけただけの単純な衣装をまとった彼らの背中には、なんと一対の羽根が生えていた。
その姿は、まるで物語の中に出てくるような、天使のようである。
翼人、とハルケギニアの人間達が呼びならわしている種族であった。
「救援だ!」
駆け付けた翼人達を見上げ、村人たちの顔が希望に湧く、
宙に浮かんだ翼人達……、その数は男女合わせ四人ほど、上空から索敵と村人たちのナビゲートを行っていたのであった。
彼等はまるで歌劇役者のようにすっと手を突き出し、ひらひらと動かしながら言葉を発した。
「枯れし葉は契約に基づき水に代わる"力"を得て刃と化す」
「刃と化す」
落ち葉が舞い上がり、針金でも仕込まれたかのように、ピンッ! と硬く張った。
鉄片のように硬くなったそれが、未だ拘束から逃れられないトカゲ目がけて大量に降り注いだ。
体中を刃のように研ぎ澄まされた葉に切り刻まれたトカゲが、血を噴き出しながら地面へと落下する。
悶絶しのたうちまわるトカゲに近くにいた村人達が殺到し、手にした斧を一斉に振り下ろした。
だが他のトカゲ達は、傷つき倒れた仲間を気にかける様子もなく、他の村人へと襲いかかる。
村人の一人が斧を振りかぶり、トカゲを頭から両断しようと、力一杯振り下ろした。
だがその渾身の一撃はいともたやすくトカゲの持つ楯に阻まれる。
体勢を崩した村人の首筋をトカゲの鋭い爪が切り裂く、村人の苦悶の声とともに、首から夥しい程の血飛沫があがった。
返り血を浴び、トカゲが満足そうに首を振る、そして新たに近くにいた猟師に飛びかかった。

「ひっ……! ぎゃあああああ!!!」
悲鳴が森の中に響く、ナイフのように研ぎ澄まされた爪が腹を引き裂き、これまた鋸の様に短く鋭く並んだ歯が、首筋を食いちぎった。
一体のトカゲがしなやかに木々の上へと駆け昇ると、そのまま空中に身を投げる。
自身に暴風を的わせ、錐の様に自身の身体を回転させる、そして空を舞う翼人目がけまるで弾丸のように突進した。
「何っ!?」
不意を突かれた翼人が驚愕の声をあげる。回避が間に合わず、暴風とともに突っ込んでいたトカゲに翼を抉られた。
「がはっ!!」
血を吐き、地面へと叩きつけられる。
翼人を地面へと撃墜したトカゲが倒れた翼人に飛びかかる、その爪が一匹の生き物のようにうごめいた。
「――ッ!!」
翼人が恐怖に目をつむる、先ほどの猟師のように無残に引き裂かれようとしたその時……。
風を切り裂きながら凄まじい勢いで空から降ってきた一本の剣が、狙い澄ましたかのように飛びかかろうとしていたトカゲに突き刺さる。
地面に剣で縫いつけられたトカゲは耳をふさぎたくなるような悲鳴をあげた。
何事かと村人と翼人、果てはトカゲ達まで顔を上げ、空を見上げる。
その目に飛び込んできたのは腰に長い剣を差し、蒼いコートをはためかせながら空から落ちてくる男……、バージルの姿であった。
常人ならば重傷必至の高さだというのに、重い着地音とともに地面に着地する。
唖然とする村人や翼人達を尻目にゆっくり立ち上がり、コートについた木の枝の切れ端や葉をはたき落とすと、
デルフリンガーが突き刺さり苦悶の鳴き声を上げているトカゲへと歩み寄り、顔を踏みつけ、デルフリンガーを引き抜いた。
自分を縫いつけていた剣が引き抜かれると同時に、トカゲは尚も立ち上がろうとするが、
恐ろしい力で顔を踏みつけられているため起き上がることができない、それどころか、踏む力は徐々に強くなってゆく。
――ベキャッ。という果実がつぶれるような音とともにトカゲの顔が踏み潰される、
しばらくびくびくと痙攣していたが……やがてその力も失い、トカゲは完全に動かなくなった。
我に返ったトカゲ達が、狙いをバージルへと変え、ぐるりと周囲を取り囲んだ、背後に立っていた一体が咆哮をあげる、バージルがそちらへ視線をよこした瞬間。
反対方向に立っていたトカゲがその隙を逃さんと飛びかかる、そして鋭い爪を突き立てようとしたその時。
まるで後ろにも目がついているのか、バージルは吼えた一体に視線を向けたままにも関わらず
背後からの一撃を僅かに身をそらした程度で回避する、切り裂くべき相手を失ったトカゲに、いつの間にか抜き放たれていた閻魔刀が襲いかかる。
成すすべなく胴を両断され、二つに分かれた死体が地面に転がった。
バージルは閻魔刀を振り抜くと、そのまま咆哮を上げたトカゲへと向かい歩を進めてゆく、
その内の一体が、空中へ飛び上がり暴風を纏いながら、自身の身体を回転させバージルへ突撃する。
それを横目でチラと確認すると、おもむろにデルフリンガーを引き抜き飛んでくるトカゲに向け切っ先を突きつける。
寸分たがわず回転するトカゲの中心点をとらえたデルフリンガーの切っ先は、回転力を殺し、トカゲを文字通り頭から串刺しにした。
摩擦熱で煙をぶすぶすと上げる惨たらしい死体になったトカゲを見ながらバージルが何やら呟く。
「強襲型(――アサルト)、と言ったところか」
そう言うと、デルフリンガーを勢いよく振り抜き、死体となったアサルトを投げ捨てる、夥しい量の血が地面にぶちまけられた。
「遅い、何をしている」
バージルが呆れたように呟く、すると、空からもう一人……今度は蒼い髪を持った少女、タバサが落ちてきた。
タバサは落下の途中で、手に握った大きな杖を振りながら、ルーンを口ずさむ。
「イル・フル・デラ・ソル・ウィンデ」
ふわん! とタバサは落下の速度を緩めるとバージルの近くに降り立った。
「いきなり飛び降りるとは思わなかった」
バージルは小さく抗議するタバサにちらと視線を送ると、生き残ったアサルトに向かい歩を進める。
タバサも、もう一体に向け杖を構えた、二体のアサルトが二人に飛びかかるのは、ほぼ同時だった。

バージルは飛びかかってきたアサルトの一撃をステップバックで回避する、そしてギルガメスを装着すると
重心を低くし、拳を握りしめる、噴気孔から大量の蒸気が噴出し、凄まじいエネルギーを蓄積したストレイトが放たれた。
アサルトはとっさに楯を構え、その一撃を受けとめる。
だが、斧の一撃にも耐えた頑丈な楯は惨たらしくへこみ、受け止めたときに生じた凄まじい衝撃で、腕が惨たらしく粉砕された。
ガラ空きになったアサルトの胴目がけ、バージルの百烈脚が叩き込まれる、放たれる蹴りと共に足元のエッジが激しく回転し肉をえぐり取る。
フィニッシュのカカト落としを豪快に喰らい、被っていた兜ごと頭を叩き割られたアサルトはなすすべもなく地面に叩きつけられ絶命した。
一方のタバサは、魔法を駆使し最後の一体となったアサルトと渡り合っていた、
ルーンを紡ぎ、ウィンディ・アイシクルを唱える、だが彼女のウィンディ・アイシクルは少々形を変えていた。
本来は多数の氷の矢を作り出すものだが……、バージルの幻影剣を参考にし、殺傷力を上げるために矢の形を大きくする。
幻影剣を真似たせいか、形も氷の矢、というよりは剣のそれに近い。
そのため一度に生成できる量が減ってしまったが、その分威力と強度が向上した。
氷の剣を生成したタバサは急襲幻影剣のように自身の周りに展開し時間差でアサルトに向かい放つ、
アサルトは楯を構え、飛んでくる氷剣を防ぎつつじりじりと距離を詰める、
だが時間差で飛んでくる氷剣を防ぐのに気を取られ攻撃を仕掛けることが出来ない、
最後の氷剣が楯に阻まれ砕け散る、それと同時にアサルトがタバサに飛びかかった。
タバサはすぐさまフライを唱え、さながら月面宙返りのような動きでアサルトの頭上を飛び越える。
すぐさまフライを解除し、魔法の詠唱に入る、空中で杖を振り、すれ違いざまにエアカッターを放つ。
見えない風の刃を身に受けアサルトが一瞬だけひるんだ、
その隙を逃さずに地上に降り立つと、きりりと杖をとりまわし脇に引きつける。
ブレイドを唱え、よろめいたアサルトの背中にスティンガーを放つ。ブレイドの威力も合わさり、その一撃はアサルトの鱗を抉り肉を裂いた。
だが……。
「浅い……!」
タバサが苦々しい表情で呟く。今の一撃では致命傷足りえなかった。アサルトが体勢を立て直し、楯でタバサを殴りつける。
「ぐっ……!」
かろうじて杖で受け止めるも、衝撃でたまらず吹き飛ばされる。すぐさま立ち上がり、再びアサルトを睨みつけ、次の魔法の詠唱に入る。
その時だった、唸り声をあげていたアサルトが大きく仰け反ったのだ。
何かが来る、そう思った時には既に遅く、アサルトの叫びとともにタバサにかざされていた巨大な爪が弾丸のように射出された。
「ッ!?」
完全に不意を突かれたタバサは思わず詠唱を止めてしまった。
その時、今しがた殺したばかりのアサルトの死骸をバージルが空中へ蹴りあげる。
そして勢いよく回転蹴りをその死体に叩き込み、アサルトの飛ばした爪の射線上にかっ飛ばした。
結果、アサルトの放った爪は仲間の死体にすべて阻まれる格好となる。
タバサはすぐさま詠唱を終わらせ、特大のジャベリンをアサルトにお見舞いする。
突然起きた出来事に、アサルトは楯を構え防ぐこともできずに、巨大な氷の槍が直撃する。
腹に巨大な氷の槍をブチ込まれ、最後の一体はようやく動きを止めた。
呆然と事の成り行きを見守っていた村人達や翼人達がバージル達に駆け寄ってきた。
「あ、あんた達はいったい?」
先住の魔法を行使する凶暴なトカゲの群れを一瞬で殲滅した剣士にサムが恐る恐る尋ねる。
「もしかして新しくお城から騎士様がきてくださったんで?」
その言葉に、バージルではなく、タバサが一歩前に出て頷き、短く自分の名前と地位を述べる。
「ガリア花壇騎士、タバサ、彼はバージル、便利屋」
タバサは自分の名前の後にバージルに手を伸べそう言うと一歩下がった。
「みんな! 新しく騎士様が来て下さったぞ! それに見たか? 
あの見事な戦いっぷり! 剣士様はあのトカゲ野郎共を瞬殺しちまった!」
村人達の間から歓声が沸いた。
「じゃあ御二方、ちゃっちゃと連中をやっつけてくださいな」
もみ手をせんばかりの勢いで、サムがタバサににじり寄る。
タバサがバージルに視線をよこすと、彼はすでに森の奥へ向け歩を進めていた。
あわててタバサが村人や翼人達に村に戻るように指示を出す、
翼人が空からナビゲートするため、村に戻る分には問題ないだろう。
村人達がケガ人や犠牲者を背負い村へと戻るのを確認すると、急ぎ彼の後を追って行った。

鬱葱とした森の中を二人は歩く、
奥へ足を進めれば進める程、木々の形はグロテスクなものへと変わっていく、
案の定、森には悪魔があふれており、木々の影からアサルトが襲いかかってくる。
その上、森の各所に種子、或いは昆虫の卵のような巨大な物体が落ちている。
そこから生まれ出てくる苔の塊のような悪魔、これがまた厄介だった。
その悪魔は、厄介なことに仲間であるアサルトに寄生、宿主の体から触手のような芽を出し暴れ出すのだ。
身体は自由に動き回り、一方で触手のような芽が大きくうねりまわる。
さながら二つの生物が組み合わさった合成獣(キメラ)――さしずめあの苔の塊はキメラシード、と言ったところだろうか。
それらを撃退しつつ二人は進むのだが、土地勘のない森の中にくわえ、
咲き乱れる花から放たれる不思議な香りに、二人の方向感覚は完全にマヒさせられてしまっていた。
気がつけば、二人は同じ場所を何度も歩かされていた。
「……」
「迷った」
タバサがバージルを見つめ呟く、この男、意外と無計画だ。
そんなタバサの視線を知ってか知らずかバージルが無言で森の中を進んでゆく。
タバサが小さくため息を吐き、ふと視線を横に向けると、奇妙なものを見つけた。
「ッ! ……あれは?」
「……?」
"それ"を見つけたタバサがとっさに杖を構え臨戦態勢に入る、が、すぐさま杖を下ろした。
それは道中嫌になるほど目にしたキメラアサルト……、だったのだが何か様子が違う、
体中から植物の芽を出し、頭から大輪の花を咲かせているのは相変わらずだが……。近づいても全く動かずにじっとしていた。
体表はかつてのような面影はなく、まるで樹木が枯れたような色合いになっている。
触れてみても、その質感はまるで樹の肌のようだった。
バージルが、閻魔刀でそのアサルトを両断する、すると、血も流さずにゴトリとその身を横たえる、
両断面を見ても、やはりそれはアサルトの形をした植物……、としか言えなかった。
「これは?」
「……おそらくはこれが、この森の変貌のタネだ」
タバサが尋ねると、バージルがアサルトだった死体をつま先で蹴りながら答えた。
「あの種が取りつくのは悪魔だけではない、おそらくはこの森に棲む動植物に取り付いたのだろう。
そして宿主の養分を吸い取りあのような樹に変える、そんなところだ」
それを聞いたタバサがあたりを見回す、そう言えば樹にしては不自然な形をしたものが多すぎる。
よく見ればあの樹は、動物の形をしているようにも見える、そしてあの樹は苦悶の表情を浮かべた翼人……。
「……」
タバサがバージルのコートの裾を握る、先ほどキメラシードの体当たりをもらいかけていた。
あの時は間一髪でバージルの投げたデルフリンガーが
飛びかかるキメラシードを空中で叩き落としてくれたおかげで寄生はされなかったが……。
もう少しで自分も木々の仲間入りだったと思うとゾッとしない話だった。
「この状況、ラグドリアン湖と同じだ、あれらが種ならば
それを生み出す悪魔、そいつを叩けばこの異変も収まるかもしれん、保証はできんがな」
バージルはそう言うと、何やら眉間にしわを寄せながら辺りを見回す。
「見つかる?」
タバサが尋ねるとバージルは首を傾げた。
「聞こえんか? この耳障りな声が」
そう言うと頭上を指差す、タバサがつられてそちらへ視線を向ける
種子をばらまく悪魔、それは存外早く見つかった、何のことはない、頭上にいたのだ、正確にいえば遥か上空に。
それはまるで、無数の蔦が絡み合い、形をなした巨大な龍のようだった。
龍は巨大な体を空中でくねらせながら盛大に種子を森にバラ撒いている。
「タバサ、シルフィードを呼べ、ここからではどうしようもない」
バージルのその言葉にタバサは短く頷くと、ピィッっと口笛を吹く。
一歩足を踏み入れれば抜け出せぬ魔性の森なれど、空から侵入し、空へと抜け出せば何の問題もない、
幸運にもシルフィードは龍に見とがめられることもなく、すぐさま駆けつけると、二人を背に乗せ飛び上がった。

目の前では龍のような悪魔が、高らかに笑い声をあげながら、種子をどんどん産み落としてゆく。
節操がないことこの上ない光景だ。
龍は、上空へと飛びあがったシルフィードに気が付いたのか。
狙いを森からシルフィードへと変え、大量の種子を放ってきた。
「きゅいきゅい! な、なんなのね! お、おねえさま! おにいさま! たーすーけーてー!」
シルフィードが飛んでくる種子を必死で避ける、タバサがウィンディ・アイシクルを放ち、その種子を迎撃し撃ち落としていく。
種子の状態ならば存外脆い、動きだす前ならば小さな氷の矢でも十分破壊できた。
その光景を見咎めたのか、龍が上空から一気に下降しシルフィードに向かって飛んできた。凄まじいスピードだ。
タバサとバージルが迎え撃とうとした時、龍は空中で停止し、大きく口をバックリと開いた。
タバサが杖を身構える、すると、龍の口の中から女の姿をした悪魔が姿を現した。
どうやら龍の頭部は花弁らしい、それに覆われた花芯が本体のようだった。
キメラの母、エキドナとでも言うべきなのだろうか?
「貴様! よくもわらわの子を! 小娘め! 今八つ裂きに……!」
エキドナがそこまで言った瞬間……
バージルが突如エキドナの眼前に躍り出る、一瞬で移動したバージルは
突然の出来事に目を白黒させているエキドナの頭を左手でガシリと掴むと、閻魔刀を胸に勢いよく突き立てた。
問答無用の一撃にエキドナは甲高い悲鳴をあげ……苦痛にのたうち回りながら、上空を高速で旋回し、森の中へと突っ込んでいった。
いきなりの出来事に唖然としていたタバサだったが……すぐに我に返ると、エキドナを追うよう、シルフィードに命じた。
密生した木立を割りながら、バージルを振り落とさんと森の中をエキドナが飛びまわる。
だが彼はそんな中でも表情一つ変えず、恐ろしい力でエキドナの胸を貫いた閻魔刀を握り、傷口を押し広げていた。
エキドナが不意に森の中の開けた場所へと飛び出す、その時、バージルが閻魔刀に込めていた力をさらに強め、
胸から肩口まで一気に切り上げた。
「ぎゃあああああああ!!」
エキドナの悲鳴が森に響く、そして地面に降り立ったバージルを睨みつけるとひときわ甲高い声で喚いた。
「ぐぅっ……! 無礼者め!!」
「……金切り声から解放されたと思ったんだがな」
バージルはうんざりしたように片耳を押える。
「品がない、聞くに堪えんな」
「貴様の侮辱など取るに足らぬわ! わらわの子を受け入れ、貴様も森の一部となり永久に平穏な時を過ごすのじゃ……ッ!」
エキドナは再び龍の形を取り、バージルを飲み込むべくばっくりと口をあけ、彼に襲い掛かった。
ばくん! と大きな音を立て、エキドナが勢いよく口を閉じる、が、バージルが立っていたはずの空間には既に彼の姿はなかった。
「……願い下げだ」
その言葉とともにトリックアップでエキドナの頭上に躍り出ていたバージルが、ギルガメスを発現し、龍の頭に流星脚を叩きこんだ。
強烈な一撃にたまらず本体を出したエキドナに、デルフリンガーを抜き放ち突きつける。
「永遠聞くくらいなら、貴様より"誰か"の金切り声の方が数倍マシだ」
「Though I will tear your body to shreds!(――その身体、切り刻んでくれる!)」
その言葉に、エキドナは当然の如く更に怒り狂いながら再びバージルへと飛びかかった。

エキドナの突進を上空へと飛びあがり回避する、するとエキドナも上空へと舞い上がり、バージルへ向け一斉に種子を射出した。
閻魔刀を振い、飛んでくる種子を切り落としていると、その隙を突く様に今度はエキドナ自身がバージルに向かい凄まじい速度で突進してくる。
エキドナ自身の質量も相まってまともに食らえば、バージルと言えどただでは済まないだろう。
「チッ!」
舌うちしながらトリックダウンを使い回避、すぐさま地上に降り立つと再び空へと舞い上がったエキドナを睨みつけた。
元々遠距離攻撃に乏しい彼にとって、遥か上空に飛ばれては手が出せない、
足場があればまた話は別だが、見渡す限り木しか見えない上、必要な高さが足りていない。
唯一の手段としては幻影剣だが、高速で飛びまわるエキドナには効果が薄く、
また、エキドナの身体を覆う花弁は想像以上に堅く、幻影剣ではさしたるダメージを与えられないだろう。
どうやって上空のエキドナを地上に引きずり下ろすか、それが問題だ、
「クソッ……!」
忌々しげに吐き捨てると、ようやく交戦中のバージルを見つけたのか、シルフィードに乗ったタバサが駆け付けた。
タバサがなにやらシルフィードの耳元で囁くと、ひらりとシルフィードから飛び降り、すぐに杖を構えた。
「少々厄介な相手だ、下がっていろ」
バージルは横目でタバサをみると短く命じる、するとタバサが首を小さく横に振った。
眉間にしわを寄せバージルが再びタバサに振り向いたとき、エキドナから放たれた種子が二人に襲い掛かる。
二人は地面を転がってかわし、すぐさま体勢を整え旋回するエキドナへと視線をもどした。
「わたしに考えがある、あの悪魔を地上へとおびき寄せる」
「どうするつもりだ」
首を傾げるバージルを見てタバサは上空を指差した。
「囮」

「(うまくいけばお肉……! うまくいけばお肉……!)」
一方そのころ、タバサが指さした上空では、シルフィードが何やら呟きながら旋回するエキドナに向かい飛んで行く。
そしてエキドナの視界に飛び込むと、なけなしの勇気を振り絞り、必死に挑発をする。
「き、きゅいきゅい! か、かかってくるのね! シルフィ悪魔なんて怖くないんだから! きゅい!」
きゅいきゅいと鳴きながらブレスを吐き、エキドナの注意を引く。
「わらわの子を受け入れに来たか、殊勝な心がけじゃ竜よ! 望みどおり森の一部にしてくれようぞッ!」
一応の効果はあったのか、エキドナは狙いをシルフィードに変えると、種子をシルフィードに向け射出し始める。
「あわわわわわ! こっ、このおばさん怖いのねーーー!! きゅいきゅい!」
「おばっ……!! ゆ、許さぬ……! 許さぬぞッ! わらわを侮辱した罪、万死に値する! 捕まえて引き裂いてくれるわッ!!」
その言葉を聞いたエキドナが怒りに身をわなわなと震わせ、耳を劈かんばかりの絶叫を上げる。
禍々しいオーラに包まれ、エキドナの身体が金色に輝く。
「わぁ! や、ヤバいのね! 助けてぇーー!!」
シルフィードが悲鳴を上げながら、空中でとんぼ返りすると、すぐさまバージル達がいる地上目がけ一目散に逃げだした。
怒りで完全に頭に血が上ったエキドナは、逃げるシルフィードを全速力で追いかけた。

「来た」
地上でそれを見守っていたタバサが呟く。
「種の相手は任せる、殺しきるまで気を抜くな、自分の身は自分で守れ」
タバサが小さく頷き杖を構えるのを見て、バージルが背中のデルフリンガーを抜き放った。
「Come on...(――来い)」
バージルは低く呟くとデルフリンガーを逆手に持ちかえ、腰を捻りながら体勢を低く落とし、魔力を集中させる。
デルフリンガーの刀身が彼の持つ魔力に満たされ蒼く輝き紫電が走る。
シルフィードが悲鳴を上げながらこちらへ飛んでくる。それを追い龍のような形態になったエキドナもこちらへと向かってきていた。
そしてシルフィードがバージル達の頭上を通過した瞬間……、バージルはデルフリンガーを逆袈裟に勢いよく振り抜いた。
剣圧で生じた衝撃波が、蒼き魔力を纏い地面を抉りながら突進してくるエキドナに向かい飛んで行く。
龍のその鼻っ面に命中すると、衝撃波は轟音とともに爆ぜた、自身のスピードも加わったその衝撃にさしものエキドナも動きを止める。
バージルは続けざまにデルフリンガーを振るい衝撃波を次々エキドナに叩き込む。
耐えかねたように、エキドナが花弁を開き、本体である花芯をあらわにした。
またとないチャンスを逃さず、バージルはすぐさまエアトリックで一気に距離を詰める。

エキドナの前に躍り出たバージルは、デルフリンガーを振るい舞うように連撃を見舞った。
華麗な空中乱舞の後、デルフリンガーを真上に高く放り投げる。
そして鞘に収まったままの閻魔刀を構え、即座に抜き放つ。
抜刀の一閃、返す刀でさらに切り返す。もう一度鞘に納めた閻魔刀を再び一閃させる。
一瞬にて繰り出された閻魔刀の三連撃を喰らい、エキドナが苦痛に満ちた悲鳴をあげる。
しかしそれでもエキドナは倒れず、バージルへ向け大量の種子を放つ、
だがそれは、バージルに到達する前にタバサが放った氷の矢が次々と打ち砕いてゆく。
「わらわの子がッ!?」
「まだ動くか」
バージルは感心したように呟くと、閻魔刀を納刀し、花弁を足場にトリックアップでエキドナの頭上に再び躍り出る。
そして、くるくると回りながら落ちてきたデルフリンガーの柄頭に流星脚を叩きこんだ。
「いっでぇえ!!」
デルフリンガーが悲鳴とともに勢いよくエキドナの胸部に深く突き刺さる。
「ギィヤァアアアアアアアアアア!!!!」
森全体に響き渡るんじゃないかと思うくらいの絶叫が響きわたる。
バージルは不愉快そうに顔をしかめると、今度はデルフの柄の部分に踵落としを叩きこむ。
先ほどの一撃の時点で、デルフリンガーは鍔の部分までエキドナに突き刺さっていた、
そのため傷口から肩口まで再び抉り抜く形でデルフリンガーがエキドナの体から一気に飛び出し宙へと再び跳ね上がった。
血とも樹液ともつかない奇妙な液体が絶叫と共に地面にぶちまけられる。
エキドナは地面へと墜落するとしばらくの間苦痛にのたうち回っていたが、やがて力尽きたのか巨大な体を地面に横たえた。

「人間ごときにッ……! なんたる恥辱――ギャッ!?」
息も絶え絶えになり、地面へと横たわるエキドナの顔をバージルが踏みつける。
そして丁度良くきゅるきゅると落ちてきたデルフリンガーを宙で拾いエキドナの首元に突きつけ静かに尋ねた。
「死ぬ前に答えろ、貴様が通った魔界のゲートはどこだ」
「おのれ……人間風情がッ……! このままでは終わらぬぞッ……!」
エキドナは力を振り絞り、尾を大きくうねらせ、大量の種子をタバサに向け射出した。
完全に虚を突かれたタバサはその種子に反応できずに立ち尽くしたままだ。
魔法で迎撃しようにも今から詠唱しても遅い、回避しようにも弾幕のように射出された種子は回避する余裕すら与えなかった。
なすすべもなく、見開かれるままの瞳に巨大な種子が迫ってくる……瞬間、タバサは思わず目を閉じた。
しかし、いつまでたっても種子は襲って来なかった。

「ぐぅっ……!」

自分のものではない、奇妙なうめき声にタバサはゆっくりと目を開ける。
そして、入りこんできた光景にタバサの目が驚愕で見開かれる。

「最後まで気を抜くなと言ったはずだ……ッ……!」
バージルが険しい表情でタバサを叱りつける。
エアトリックを使い瞬時にタバサの前に移動し身を挺して庇ったのだろう。
バージルの背中にはエキドナの放った種子が深々と突き刺さっていた。
種が割れ中からキメラシードが現れる、取りついたキメラシードは彼の体に次々触手のような芽を打ち込んでゆく。


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