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ゼロHiME~嬌嫣の使い魔~ 幕間その2


 ニューカッスルの南西、港町ロサイスとシティオブサウスゴータを結ぶ街道から外れた森の中にウエストウッドという村がある。
 そこは親を亡くした子供たちが身を寄せ合って暮らす、孤児院の役割を果たしている小さな集落だ。

 その集落の裏手にある小川で歌を口ずさみながら洗濯をする少女が一人。
 年のころは15~16、整った顔立ちに青く澄んだ瞳、長い金髪に雪花石膏のような白肌、豊満な胸、まるで絵画から抜け出たような美しさを少女は持っていた。
 ただ一点、金髪から覗く耳が、人々が忌み嫌う忌わしきエルフと同じく尖っていることを除けば――。

 「……?」

 少女は誰かが自分を呼ぶ声に尖った耳をぴくりと動かす。洗濯する手を止めて後ろを振り返ると、集落の方からテファと同い年ぐらいの少女が走ってくるのが見えた。

 「どうしたの、ハルカ?」
 「どうしたって……あんたねえ、いいかげんもう昼食の時間よ。テファが来ないと食事始まらないから、子供たちがお腹すいたって大合唱してるわよ」

 のんびりとした少女――テファの問いにハルカと呼ばれた少女がげんなりした様子で答える。

 「あら、もうそんな時間? でも、これから洗濯し終わった洋服やシーツを干さなきゃいけないのだけど」
 「そんなの後で皆と一緒にやればいいでしょ! 大体テファはなんでも自分でやろうとしすぎなのよ」
 「別にそんなつもりはないのだけど……」
 「実際そうなんだから言い訳しないの。ほら、さっさと行くわよ!」

 そう言って二つある洗物が詰まった籠の一つを持ち上げ、集落へと向かって歩き出したハルカをもう一つの籠を抱えたテファが慌てて追いかける。。
テファがこの少女――珠洲城遙と出会ったのは二週間ほど前の虚無の日のことだ。

 その日、テファは集落のそばにある森の中で使い魔召喚の儀式を行っていた。
 さる貴族とエルフの間に生まれた彼女は魔法を使う才能があったが、今まで特に使い魔を召喚しようと思ったことはなかった。
 そんな彼女が何故いまさら召喚の儀式をしているのかといえば、数ヶ月前に出稼ぎに出た同居人の女性メイジが『使い魔がいた方がいい』と言っていたことを思い出したからで、要するに単なる思いつきである。
 テファは準備を整えると、期待と不安を胸にサモン・サーヴァントの呪文を唱え始めた。

 「……我が名はティファニア、五つの力を司るペンタゴン。我の運命に従いし、使い魔を召喚せよ!」

 呪文の完成と同時に爆音と黒煙が巻き起こり、それが晴れた後に現れたのは、気絶している黄色身がかった茶髪と豊かな胸、そして広いオデコが印象的な自分の同じ年ぐらいの異国風の服を着た少女だった。

 「……えっ?」

 てっきり小動物かなにかを召喚したと思っていたテファは、それが人だったことに驚き、慌てて少女へと駆け寄った。

 「ええっと、私の声が聞こえますか? お願い起きて、起きてください!」

 テファは少女の目を覚まさせようと声をかけながらぺしぺしと頬を軽く叩く。

 「ううぅん……うるさいわねえ、雪乃――って、誰よ、貴方? というかここどこ?」

 少女はむずがるように目を覚ますと、自分を抱きかかえているテファを不審そうに見つめた。

 「私はティファニア、ここはアルビオンのはずれにあるウエストウッド村よ。それであなたは?」
 「私は風華学園生徒会執行部部長、珠洲城遥よ。それよりアルビオン? ウエストウッド村? なにそれ、どこの外国よ? 大体、私は学園で化け物をつれた結城奈緒に襲われて……そうよ、雪之! 雪之はどこ?」

 そう叫んで遙は立ち上がろうとするが、酷い眩暈を感じてそのまま地面にへたり込み、テファが慌てて支える。

 「だめですよ、急に立ち上がったりしたらさっきまで意識がなかったんですから」
 「くっ……こうしてる間にも雪之が危険な目に遭ってるかもしれないのに……なんで私はこんな見知らぬ場所にいるのよ! ねえ、どうして? どうしてなのよ?」
 「それは――」

 今にも掴みかかりそうな勢いで問い詰めてくる遙の様子にテファは一瞬、言葉に詰まるが、こんな状況を作った原因は自分にあるのだと思い直し、彼女の身に何が起きたのかを説明し始めた。
 自分が魔法使い(メイジ)ではないが魔法を使えること、魔法使いは動物を使い魔として召喚して使役すること、自分が試しに召喚の儀式を行なったら動物でなく彼女が現れたことを話した。

 説明を聞いている間、遥は何も言わずに彼女の言葉に耳を傾けていたが、終わると同時にうさんくさそうな表情で聞きかえした。

 「正直、魔法使いや使い魔とか非科学的すぎるんだけど……つまり、私は貴女の使い魔としてこの世界に召喚されたってこと?」
 「あの、ごめんなさい……正式な魔法使いじゃない私が思いつきでやった召喚の儀式のせいで貴女を遠い異国に呼び出してしまって……。でも、大丈夫。ちゃんと私、貴女を元の場所に戻す方法を探してあげるから」
 「探してあげる……ってことは、元の場所の戻れる方法は今のところないわけね」
 「あう……」

 遙は自分の指摘にしゅんとなるテファをしばらく呆れたように見ていたが、やがてあきらめたような表情でため息をついた。

 「仕方ないわね。そのかわり帰る方法が見つかるまで生活の面倒をみてもらうわよ。当然だけど使い魔の契約とかはなしね」
 「あの……怒らないんですか?」
 「だって、貴女の話だと私が召喚されたのは事故みたいなものでしょう? なら責めてもしょうがないじゃない」

 それ以来、遙はこの村の住人となった。
 最初のうちは持ち前の厳しさからビシビシと叱り飛す遙と子供たちの間でギクシャクしたりもしたが、何事にも一生懸命な彼女と接するうちに子供たちも次第に打ち解け、遙はあっという間に村での生活に馴染んでいった。


 「うふふ……」
 「……なによ、思い出し笑いなんかして」

 遙が呼び出されてからのことを思い返して笑みをこぼすテファに、遙がむっとした表情を浮かべる。

 「別に深い意味はないの……ただ、ハルカがここに来てから毎日が楽しいことばかりだなって……私、今まで同い年ぐらいの友達なんていなかったから」

 テファはそう言いながらうれしそうに微笑むが、すぐに遥の境遇を思い出して表情を曇らせる。

 「ごめんなさい、友達だなんて私の勝手な言い分よね……あの日、私が召喚の儀式なんかしなければハルカは―――痛っ!」

 なおも言い募ろうとするテファの額を遙がコツンと軽く小突く。

 「こらこら、その話はもうしないって約束でしょ! 前も言った通り、事故ってことで私が納得してるんだからテファが気に病む必要ないの。大体、あんたみたいな世間知らず、危なっかしくって置けないでしょうが」

 遥は顔を紅潮させてぶっきらぼうにそう言うと、照れ隠しなのかテファの持っていた籠も奪い取ってずんずんと歩いていく。
 とっさのことにテファがあっけに取られていると、先に家の前についた遥が振り返って声をかける。

 「テファ、ぼーっとしてないでさっさと来なさいよ。私だってお腹すいてんだから」
 「……ええ、そうしましょう」

 テファは遥に満面の笑顔で答えると、二人一緒に子供たちのざわめきが響く家の中へと入っていった。



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