あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

使い魔の夢-9

 アルヴィーズの食堂に戻ってきた巧を待っていたのは
「見ていたぞ~、カッコ良かったぞ~、我等の剣! 」
 やたらムサい見知らぬ親父からの接吻と抱擁だった。

 何すんだ、誰がいつからお前の剣になったんだ、と引っぺがして反論しようとするが、
「照れなくていい! この俺にはわかる!
 あの素早い銃さばき! あの流れるような剣さばき! そして、最後の目にも止まらぬ早業!
 お前さんは若くして数多もの修羅場を潜り抜けてきた歴戦の兵に間違いねぇ! 」
 とまぁ興奮気味の親父は、こちらが言う前にまくしたてるまくしたてる。

 喋り疲れて息をついている間に用件を伝えると、
「何、決闘前に飲み損ねたスープをな!? へぇ、あの床に置いてあった奴か!
 偉大なる我等の剣にそんなみみっちいもん飲ませる訳にはいかねぇ! 
 ちぃと待っててくれ、すぐにいいもん用意してやっから! 」
 と言って、親父は厨房に駆け出していった。

 その辺にいた給仕から聞いた話だと、
 あの親父、学院のコック長を勤めるマルトーは貴族やら魔法やらが大嫌いらしく、
 イバり腐ったメイジのガキをやっつけた巧が救国の勇者にも見えたそうだ。
 何言ってんだ、いちいち大げさなんだよ。んな大したモンでもねぇだろ。

「いいや、大したもんだぜ。お前さんはな」  
 戻ってきたマルトーが持ってきたのは
 今日のディナーで出す予定という熱々のビーフシチューだった。

 使い魔の夢

 食堂を出て、ファイズギアの入ったケースを引っさげ本塔を背にどことなく歩く。
(まだ舌がヒリヒリしやがる……)
 厨房にいたコック、給仕の連中にも見守られる形で
 逃げ出すこともフーフーすることもできずに食べきったビーフシチューは
 鍋焼きうどんよりも熱いと感じられた。美味いかどうかもわからなかった。 
 見ていた面子の中にシエスタがいないことが気になったのだが、 
 聞くと洗濯物の取り込みに行っているらしい。
 あんなことがあった後なのにいつも通り仕事をしてて、立派なもんだと思う。
 俺なら絶対バックレてる。
 そうだ、唯一マシって言えるのはシエスタぐらいなものだ。
 ルイズだの、コッパゲだの、ギーシュだの、マルトーだの
 この世界の奴等は勢い任せで自分の都合ばっかり押し通そうとする。
 この世界……!?

 ハッとしてポケットから携帯を取り出す。
 もしかしたら。 はなかった。電波の受信レベルは圏外のままだった。
 それでもと、アドレス帳から片っ端番号を引っ張って、かけてみた。
 今はただ、真理や啓太郎達の声が無性に聞きたかった。
 しかし、どれも反応は例外なく、
『ただ今、電波の届かない―――――』
 どういうことだ?
 あの時、ファイズに変身できたのは
 ここからスマートブレインの人工衛星に電波が届いたからじゃないのか。 
 ここと地球と何処かで繋がっているからじゃないのか。
 なら、他にどんな理屈で俺は変身できたんだ?
 やっぱり、この何でもありの異世界だからできたってことなのか。
 巧は膝を抱え、しゃがみ込んだ。
「ワケわかんねーよ……」

「そうね、私もわからないわ。あんたが」 
 後ろから声がした。
 ルイズだった。

 ルイズは物凄い勢いで巧を自分の部屋に引っ張り込んだ。
「昨日は、状況を説明することで忙しかったから
 落ち着いて聞くことができなかったけれど」
「何をだよ」
「あんたのことよ、ほとんど聞くことができなかったじゃない。
 知ってることを洗いざらいしゃべってもらうわ」
「嫌だね」
 今はペラペラ話せる気分じゃない。一人きりになりたかった。 
「ふぅん、そういう態度を取るの……」
 ルイズの顔がにやりとした。また飯抜きか。
 バーカ、コッパゲの野郎がいる限り、その手はもう通用しねぇんだよ。 
「話さないのなら、アカデミーにでも送ってやろうかしら」
「アカデミー? 」
 なんか嫌な響きだ。
「王室直属の魔法の研究所のことよ。
 あの「ばいく」やその道具もろともあんたの事も調べさせてもらうわ。
 体をバラバラにしたりとかしてね」
 人体実験でもするのか、そいつはシャレにならない。
「ここで知ってることを話すか、アカデミーで調べられるか。
 今のあんたにある選択肢はこの二つよ」
「……何が知りたいんだ? 」
 後ろの選択はもっての他だ、もう一方を選ぶしかない。
「そうね、色々とあるけれど、まずは嘘をついたことを謝ってもらおうかしら」
「嘘なんてついた覚えはない」
 ルイズは鬱憤を晴らすかの如く、怒鳴り散らした。
「ついてたじゃない! 只の洗濯屋の奉公人がどうしてあんな道具とか武器とか持ってるのよ! 」
 対して、巧は淡々と答えた。
「戦うためだ」
「誰とよ? 」
「オルフェノクとだ」
「オルフェノク? 」

 オルフェノク。
 一度、死を経験した人間が生前以上の能力を身につけて甦った姿。
 人類の進化形を自称する異形の存在。
 他の人間達を使徒再生という手段を使い自らと同じオルフェノクに変える事で
 数を増やし、世界の支配者に君臨しようとする人類の天敵。

「つまり、あんたはこの道具を使って「ふぁいず」とかいうのに変身して
 その吸血鬼みたいな化け物と戦っていたってこと? 」 
「ああ」
 大方は話した。ベルトのこと、ファイズのこと、オルフェノクのこと。
「……おかしいじゃない? 」
 ルイズの顔は眉間に皺を寄せたままだ。
「何がだ? 」
「そんな化け物がいたら、普通はその地方を治める領主が騎士を率いて何とかするのが筋でしょ?
 何で、一介の洗濯屋で奉公してるだけのアンタがわざわざ戦う必要があるのよ? 」
 少し思案した。
 こいつの中では俺はまだこの異世界のどこかに住んでいた平民という認識なんだろう。
 地方の領主……、この場合は何故、強大な組織を当てにしなかったのかという事を聞いているのか。
 世界を牛耳る大企業スマートブレインはオルフェノクの巣窟だった。
 民衆を守るべき警察とも手を結び、何度もベルトや巧達の命を狙った。
 自分達の力だけで戦ってきたのは、組織もまた敵の一部であったからだ。
 巧は形だけそのままのことを言った。
「そいつらもグルだったんだよ」

 一応本当のことだ。 
 信じる信じないはこいつの自由だが。伝える事は全部伝えた。さっさと解放してくれ。

 そのままルイズは少し考え込んだ後、唐突に言った。
「ちょっとそのベルト貸しなさい」
 巧の傍らに置いてあるファイズギアのケースを指差す。
「何でだよ」
「使い魔のあんたに変身できて、ご主人様である私にできないなんてことはない筈よ」
 おい待て、それはどんな理屈だ。

「何かワクワクするわね」
 ベルトを腰に巻き、携帯を握り締めたルイズは弾むような笑顔だった。
「そんなもんか」
 自分がこのベルトを巻いている時は、いつも心臓バクバクいわせていたものだが。
「それで、ここからどうするの?
 確かあんたがやってた時はこれのフタを開けて……わっ、何コレ!? 」
 携帯の表示画面を初めて見て仰天するルイズを尻目に巧は冷めた目で言った。
「下に数字を押す所があるだろ? 5の数字を三回押してみろ」 
「5の数字ってどれよ?」
 そうか、異世界だから使ってる文字も異なれば数字の表記も違うのか。
「ド真ん中の奴を三回だ」
 両手で携帯を持って、たどたどしくボタンをプッシュするルイズ。
「押したわよ」
「次にエンターキー……その上にある細長い奴を押すんだ」
「これね……っと」
『Standing By』
「しゃべったわ、このマジックアイテム!?
 インテリジェンスソードとかと一緒の類なのかしら? 」
「さぁな」
 何だ、そのインテリ何とかってのは。
「フタを閉じて、そいつをベルトの窪みに差し込むんだ」 
「……変身とかって言わなくてもいいの? 」
「別にいいんじゃねぇか」
「そう? で、でも、こういうのはちゃんとしないと」 
 妙に真面目だな、お前。

 両手で携帯を天にかざして、ルイズは叫んだ。
「へ、変身! 」
 ファイズフォンをベルトに差込むと――――、

『Error』

 ベルトは吹っ飛び、その衝撃でルイズの体はベッドに倒れ込んだ。
 やっぱりな。

「……」
 巧は密かに安堵していた。
 ファイズのベルトに適合しないという事はこいつはオルフェノクじゃない。
 魔法が使えるだけのただの人間だ。
 まぁこれで、こいつもあきらめて、俺を解放す……
「…………じゃない」
 は?
「マジックアイテムの癖に、この私に抵抗するなんていい度胸してるじゃないっ! 」
 ルイズはベッドから跳ね上がると、再びベルトと携帯を手に取った。
「おい、まだやるのかよ!? 」
「ええ、何度だってやってやるわよ! 
 この生意気な道具に私を認めさせるまで絶対あきらめないんだからっ! 」
 鬼気迫る目つきだ。さっきの決闘の時、泣き腫らしてたのと同じ奴とは思えない。

「へ、へんしーん! 」
『Error』

「ヘンシ――ん! 」
『Error』

 あーあ。

 その日、ルイズの部屋から「へんしん」という謎の奇声が絶える事はなかった。

 決闘の一部始終を『遠見の鏡』から覗いたオスマンは
 報告書と睨めっこをしていた昼間の時と同様に溜息をついていた。
 ミス・ヴァリエールの使い魔の青年に対しての疑念が尽きないからだ。
 あの決闘の顛末を見ることでそれはさらに深まってしまった。

 果たして彼は銃や剣を手にした時に、
 己の左手のルーンが光っていた事に気付いていただろうか。
 その時浮かんだ文字はコルベールが言っていたとおり、
 間違いなく伝説の使い魔『ガンダールヴ』の物だった。
 その時の彼は確かに伝説の名に恥じない動き、反応をしていた。
 これだけなら暇を持て余した王宮の連中に知らせず自分の胸一つに留めて置けばよかった。

 そう、真に頭を抱えるべきなのはここから。
 謎のベルトを使って赤い光と共に現われた鎧を纏った瞬間から、
 それまで苦戦していたギーシュのワルキューレを一気に打ち破った。
 その鎧が数年前、自分を危機から救ったあの『狂乱の環』の鎧と似すぎているのだ。
 異質の力を秘め、『あの時の男』と同じような道具を使う。
 彼は一体全体何者なんだろうか? 

 考え込むのも限界に来たので、オスマンは学院長室を出た。
 向かう先は、一階下にある宝物庫のとある一室。
 最高権力者である自分しか持つ事の許されない鍵で錠を開け、
 入ってすぐに『ロック』の呪文で施錠した。

 部屋の中にあったのは額縁に収められたたった一枚の絵。
 どうにも気分が優れない時は、いつもこの絵を眺める事で癒されてきた。
「彼はこれについても何か知っておるのかのぅ……」
 雄大な星空をバックにしたその絵の中央には、変わった形の『蝶』が描かれていた。

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