あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

滅殺の使い魔-09


朝、小鳥がさえずりだす頃。
休日である虚無の曜日であるが、豪鬼には、いや、格闘家には休日は存在しない。 日々これ鍛錬である。
そんな訳で、豪鬼は既に日が昇りきる前に修練を終え、一人瞑想に入っていた。 ルイズの部屋の扉の横で、ではあるが。
豪鬼が方目を開け、横に視線を向ける。
部屋の中から、ドタドタと言う音が近づいてくる。
勢いよく開かれた扉から現れたのは、既に着替えを終えたルイズであった。

「ゴウキ! 出掛けるわよ!」
「ぬぅ……、しばし待てぃ」

仮にも自分は『使い魔』であるから、付いて来いと言われれば付いて行く。
豪鬼は修羅と言えるほどの者だが、常識が無い訳ではなかった。 無視していただけなのだ。

豪鬼は瞑想を終わらせ立ち上がると、イライラと自分を見つめているルイズを見た。

「どこへ行くつもりだ」
「剣よ」
「……うぬは剣技をするのか」
「わたしじゃないわよ。 あんたに買ってあげるって言ってんの」
「……何?」

豪鬼は拳での闘いにおいては正に無敵に近いものがあったが、武器を使っての闘いの経験はほとんど無い。
槍や刀を持った相手と死合いをした事はあるが。

「拳こそ我が武。 故に得物はいらぬ」

ルイズはそんな豪鬼の声に一切耳を貸さず、豪鬼の手を取り、引っ張り始めた。

「いいから! わたしが持たせてあげるってんだから、ありがたく買ってもらいなさい!」

豪鬼はとりあえず諦め、抵抗せずにルイズに引っ張られることにした。

「ルイズ。 何処へ行く」
「剣っていったら町でしょ。 町へ行くの」

豪鬼は、ルイズに引かれながら考えていた。

剣技。
自分に立ちはだかった者達の中にもそれは存在した。
短刀、長刀、槍、銃。
これらの得物を持った者達を、豪鬼は拳一つで粉砕してきたのだ。
しかし、得物によって様々な恩恵が得られることもまた事実であり、その様な敵との戦いでは間合いで不利になる事も多々あった。
幸い、飛び道具には対抗する術を持ち合わせていたが、槍や刀などには一方的に不利な状況を作られる。
これを機に新たな闘い方を習得するのも悪くないか。

一人でそう考えていると、何時の間にか学院の門へとたどり着いていた。



◆◇◆◇



タバサは、ルイズの部屋の前で息を呑んだ。

先日召喚されたあの男。
初めからただならぬ気配を感じていたもので、それはギーシュとの決闘騒ぎで確信へと変わった。
あの身のこなし、あれはこれ異常ないほどに洗練された『暗殺術』ではないか。 タバサはそう仮定していた。
時に流麗、時に豪胆、そして放たれる殺気。 もしも自分があの技術を会得できるのならば、自分は目的へと大きく近づく。

それが一つ。
そして、それよりも大きな理由が一つあった。

それらを胸に、一度深呼吸をしてから、部屋の扉をノックした。

あの使い魔が出てきたらどうする?
いきなり「弟子にして下さい」か?
駄目だ、平常心を保っていられるか不安が残る。
それでは駄目だ。
では、「私と決闘して欲しい」か?
それも駄目だ。 技術を盗む云々の前に倒されるだろう。 殺されるかもしれない。
事実、ギーシュとの決闘では、あの使い魔の動きが見えなかった。
ギーシュがドットだったから勝てた、だとか、本気でやってなかったからだ、とか言う者がいるが、そんなことはない。 本当に強いのだ、あの使い魔が。
トライアングルの自分とキュルケが同時にかかっても恐らく歯が立たないレベルであり、なおかつスクウェアでも勝てない筈だ。

そう悩んでいると、タバサはその隣の部屋の扉が開くのに気付いた。
中から現れたのはタバサの親友、キュルケであった。

「あらタバサ、どうしたの? あなた、ヴァリエールと仲良かった?」

タバサは小さく首を横に振る。
すると、何を思ったかキュルケがニヤニヤとタバサを見つめ、からかうように言った。

「なあに? あなたもゴウキ目当て? 渡さないわよ~?」

明らかにキュルケの考えていることと自分の考えている事は違うのだが、一応ゴウキ目当てなのは事実なので、否定も肯定もしなかった。
キュルケはタバサに近づき、扉の前へ来ると、躊躇無く鍵に『アン・ロック』の魔法をかけた。

「禁止事項」
「いいのよ。 恋の情熱は全てのルールに優越するの。 だから校則とかは無視よ無視」

扉が開くと、キュルケは悠然と中に入っていく。
しかし、その中にキュルケの望んだ結果は待っていなかった。
もぬけの殻だ。 目当ての豪鬼も、ルイズも居ない。
キュルケに続いて部屋に入っていたタバサが呟く。

「鞄が無い。 外出の可能性が高い」

鞄が無いということは、どこかに出掛けたのだろうか。 
キュルケは窓から外を見回した。
見つけたものに、思わず驚きの声を上げる。

「え、ちょ、えぇ!?」

キュルケが目にしたものは、馬に乗るルイズ。
……と、それと全く同じスピードで走る豪鬼の姿だった。
キュルケがそれを呆けたように見つめていると、タバサが窓を開け、口笛を吹いた。
それから、窓枠によじ登り、外に向かって飛び降りる。
タバサの突然の奇行に、しかしキュルケは動じず、あろう事か同じように外に身を投げのだった。



タバサは命じた。

「例の『あの方』」



◆◇◆◇




「あ、あんた、どんな体力してんのよ……」

ルイズがもう何度目かの驚きの声を上げる。
無理も無い、普通なら馬で移動する距離を、豪鬼は馬と同じ速度、いや、馬に『合わせて』走り切ったのだから。
むしろ、豪鬼にとって、馬で程度の距離は物足りないレベルだった程だ。

ルイズは、隣を歩く、息切れ所か汗一つとして掻いていない豪鬼を見た。
こいつは一体全体何なのか? もはやそんなことはどうでも良くなってきていた。

「はぁ……。 まぁいいわ、ここがブルドンネ街よ。 ここであんたの剣を買うわ」
「……うむ」

豪鬼は街を見まわす。
元居た世界の都会と比べて、随分と狭いものである。
しかし、道を歩く者達の目は、あの世界よりもいきいきとしている。

ただ、この広さでは、格闘大会は開かれないだろう。
そう思いながら、豪鬼はルイズについて行く。

しばらく歩くと、ルイズは更に路地裏へと入っていった。
大通りがあの狭さなのだから、路地裏は当然もっと狭く、汚く、暗い。

「もうっ! だから来たくないのよ!」

ルイズが忌々しそうに呟く。 豪鬼は別段それに構うこともせず、ただルイズについて行った。
少し歩くと、四辻に出た。

「えーっと、この辺の筈……」

辺りを見回すと、一枚の同の看板が目に入った。
豪鬼は気付かなかったが、確かにそれは武器屋の看板だったらしい。

ルイズと豪鬼は、それに向かって行った。



扉を開け、店に入る。
扉に付いた鈴が、カランカランと音をたて、来客を知らせる。

すると、中から長髪オールバックの男が出てきた。
男はルイズのマントに気付き、一瞬驚くと、今度は気障な笑みをこぼした。

「イヤー困った! 遂にこの世界でもワイの美形は知られてしもたようやな! せやけどお嬢ちゃん、ワイはもう心に決めた人がおるんや。 心が痛むけど、ここは一つ引き下がってもらえへんかなぁ?」
「……は?」

ルイズは呆気にとられる。
その間にも、男はふぅ、とか、はぁ、とか言っている。

なるほど、ギーシュと同じ系統の人間か。

そう思ったルイズは、男の言うことを聞き流し、用件だけ言うことにした。

「客よ」
「ん? なんや客かいな。 悪いけど、いくら積んでもワイの愛は買えへんで~?」
「使い魔が使うの。 あいつ」

ルイズは豪鬼を指差す。
豪鬼は店内を物色していた。

豪鬼を見た瞬間、男の目付きが変わる。
鋭い眼光が、豪鬼の体を観察する。

「チョイ待っとれや~」

男が店の奥へと消える。
少しすると、男が大きな両手剣を持って戻ってきた。
巨大な刀身に、派手な宝石等が散りばめられている。

「どないや! 店一番の業物やで! 嬢ちゃん貴族やろ、ほんならこのくらいはせめて欲しいやろなぁ」

豪鬼はいつの間にかルイズの隣に戻り、その大剣を見つめていた。

「ゴウキ、振ってみなさい」

ゴウキが無言でそれを手に取る。

「……!」

すると、突然豪鬼の左手のルーンが輝き始めたのだ。
豪鬼はそれを見つめる。
力が湧き上がる、この感触。
これは、今まで何度も経験した『殺意の波動』のそれとは僅かに違う。
体が軽い。 それは正に羽のようであった。
そして、何よりも違うのは――

「ルイズ。 この剣は要らぬ」

そう、手に持った得物の事が、自然と頭の中に流れてくるのである。
豪鬼の頭は、瞬時にこの大剣の本質を見切った。
故に、この剣は要らない、と言ったのだ。

「ちょ、なんでよ! これが一番……」
「はは! やっぱりな! あんたには剣なんぞ似合わんわ!」

ルイズが豪鬼に不満をぶつけようとするが、それは男の大笑いによって掻き消された。

「嬢ちゃん、ワイが断言したる。 その剣はボッタや。 非美形や」
「あ、あんた、わたしからふんだくろうとしてたの!?」
食って掛かるルイズに、男は特に気にした様子も無く答える。

「ふんだくれるもんはふんだくるのが商人ちゅー奴やろ。 ……まぁええわ。 嬢ちゃん、謝罪としてあの山の中から好きなの持ってってええで。 ワイは心も美形やからな」

男が店内の一角を指差す。
そこには、乱雑に積まれた様々な武器の山があった。
ルイズが男の態度に怒りを通り越して呆れて山を見ていると、その中から突然声が聞こえた。
低い男声。 店長の物では無いようだ。

「ロバート! 俺はタダかよ!?」
「ん? なんや、デル公かいな」
「デル公?」

ロバートはその武器の山に近づくと、その中から一本剣を取り出した。

「こいつや。 知っとるやろ? 意思を持った魔剣、インテリジェンスソードや。 どこの馬鹿が始めたんやろなぁこんなの。 ワイへの嫌がらせちゃうか?」
「おうおうおう! そこのお前! ちょっとばかしいい体してるからよ、ちょっと俺を持ってみな」
「……ふむ」

豪鬼がロバートから剣を受け取ると、またルーンが輝き始めた。
豪鬼のルーンが、剣の判定を行う。
……良い剣だ。 そう判断したところで、剣が小さく呟いた。

「おでれーた。 てめ『使い手』か」
「『使い手』……?」
「ふん、自分の実力も知らんのか。 まあいい。 てめ、俺を買え」
「……」

しばらくの沈黙。
豪鬼は、ルイズに向き直り、一言、こう言った。

「ルイズ。 これを買う」

当然ルイズは不満の声をあげる。
しかし、それを男が遮った。

「いや~! その剣、五月蝿くてかなわんかったんや。 せやから、タダで譲ったるわ」「豪鬼、それにしましょ」

ルイズは即答した。 小遣いだって無限ではないのだ。
もらえるなら貰おう。
大丈夫、豪鬼なら大丈夫。
ルイズはそう言い訳を念じた。

豪鬼達は剣を受け取り、武器屋を後にした。


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