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絶望の街の魔王、降臨 - 13


 ルイズとロングビルはラ・ロシェールから馬を飛ばし、城へ向かっていた。Y2Kの速度に慣れた躯には、馬が酷く遅く感じられた。
「あーもう! ジルの有り難みがよく判るわ! 馬がこんなに遅いものだったなんて!」
「文句言う暇があったら急ぎな! 裏切者にバレる前に姫に伝えなければならないんだろ!」
「判ってるわよ!」
 ビシバシと馬に鞭を打ち急かす。常に全力疾走状態だ。城まで持てばいいのだ。



 その頃────



「魔法も無しに空を飛べるたあね。おでれーた」
「正しくは飛行じゃないんだけどね。これが科学の恩恵よ。魔法に頼りすぎた文明は、こんな簡単な事にすら気付けなかったの」
 即席パラシュートに吊られ、ジルは雲の上で暇潰しにデルフを抜いていた。
「風の魔法はあるくせに、空気抵抗の概念すら無いなんて。帰ったら学校でも開こうかしら。まずは教科書ね、活版印刷機をコルベールに作らせて……」
 この空いた時間を利用して、ジルはこれからの事を考えていた。この世界がどうなろうと自分に害が無ければ知ったことではない、初めはそう思っていた。しかし、未だに帰る手立てが見つからない。ひょんな事から見つかる可能性
も捨てきれないが、まだ暫くは──ジルの勘では、年単位で──この世界にいる羽目になるだろう。故のギーシュの訓練、政治・戦争への干渉だった。それに、レコン・キスタの言うエルフ討伐は世界大戦に等しいと予想していた。な
るべく小さいうちに鎮圧しないと、帰る方法どころではなくなるだろう。
「……学校ね。魔法学院とどう違うんだ?」
「平民でも学べて、魔法の無い生活に役に立つ事を教えるの。メイジなんていなくても、平民だけで社会は成り立つのよ」
「まるで革命だぁね。で、それからどうする?」
「そうね、国でも興そうかしら」
 ふと、思い付いた、半分冗談半分本気の発想。しかし、考えているうちにだんだんと本気の割合が増えていった。
 貴族という階級の存在しない、魔法が唯一の技術ではない、平民とメイジが平等で共存できる国。自由の国を、この地に造り上げる。ここが中世ヨーロッパなら、何れ起こる解放への動きだ。ならば、その動きを早めてやろう。破壊
という名の新たなる創造、ではないが、貴族・平民・人種・宗教・思想────この国では全ての枠組みが消え去る。ジル・ヴァレンタインが新たな国家の形を書き連ねる。世界は変わる。
「百人の平民で一万のメイジを殲滅できる、と言ったら判りやすいわね。力を見せつければ、貴族なんてどうにでもなるわ」
「だったらよ、魔法無しじゃ帰れねーだろ」
「誰が科学だけと言ったかしら? 確かに科学には不可能はあまりないけど、例えば、科学で物質の原子を別の原子にするには巨大な設備がいるの。魔法なら簡単に錬金できるけど。それだけじゃないわ、魔法と科学を融合させれば
、今まで不可能だった事が可能になるかもしれない。科学で魔法を解析すれば精神力の消費効率が上がるかもしれない。アルビオンまでの風石が劇的に減るかも知れない。可能性は加速度的に増えていくのよ。その過程で、元の
世界に戻る方法が見つかる可能性だってある」
 ジルは饒舌だった。今までにないほどに、デルフにとっては夢物語でしかない話を語り続ける。元の世界に帰るための手段に過ぎない夢物語を。
「信じてないみたいね。六千年も歴史が停滞してるみたいだから無理もないけれど」
 傍らの剣が黙るのを見て、ジルは微笑む。それはこの世界への嘲笑か。これからの世界への希望か。
「雲に入るわね……濡れるのは嫌だわ」
「全くだ。錆びるのは勘弁だぜ」
「これ以上ないってくらい錆びてるじゃない、変わらないわ。ま、勝負は雲の下に出てからね」
 デルフを鞘に戻して背に負い、ガトリングガンを用意する。
「作用・反作用の法則、実践するわよ」



 シルフィードはその音に気付く。アルビオン、ニューカッスル城上空で、轟音と共に城が崩れ落ちるのを見ていた矢先の事だった。
「きゅい!」
 キュルケがいる手前、声が出せない。喋れないストレスはじわじわと蓄積されているが、この際それはどうでもいい。主人にジルの痕跡を伝えられればいいのだ。
「見つけた?」
「きゅい」
 フルフルと首を振る。見つけてはいない。しかしあの音は────
「ちょっと! わたしのジルはいたの!?」
 キュルケの一言で、シルフィードの何かが綺麗に斬れた。
「私のジルなんて、傲慢にも程があるのね!」
 同時に降り注ぐ杖の一撃。
「喋らない」
「もう我慢の限界なのね! お姉様は相手にしてくれないし!」
「へぇ、韻竜だったのね、あなた」
 突然の真実に、しかしキュルケはあまり動じない。
「それより、ジルはいたの?」
 優先順位の問題だった。
「見えないのね。だけど音は聞こえるのね。城じゃないのね」
「じゃあ、音の場所に!」
「行って」
「きゅい!」
 主の命令に従い、城から離れ、大陸の端を超え、
「?」
「ちょっと!」
 雲の上まで高度を下げる。
「この中なのね。ゆっくり下がりながら進んでるのね」
「この……中?」
「聞こえる。あの銃」
 破裂音が途切れない、彼女達の常識に無い音。火を噴く銃、ガトリングガン以外に出せる物はないはずだ。
「まさか、雲の中で?」
「下で待つ」
 タバサの言葉にシルフィード呼応し、雲を突き抜けた。
「うわ……びしょびしょ」
 未だ雲の中から聞こえる銃声。しかし、その音は近い。大体の位置が掴めるくらいに。
「……いた」
 雲を纏い、撒き散らし、ゆっくりと降りゆく影。その緩慢な動きを裏切るように、銃声が騒がしい。
「な、何あれ?」
 巨大な傘が。ジルの上にある。いや、ジルが吊られている。
「マジックアイテムかしら?」
「…………」
「魔法じゃないのね。風を受けてゆっくり降りてるのね。ジルったら、頭いい!」
 シルフィードはそれを理解していた。空気抵抗を風と、解釈を少し間違ってはいたが。
「ジル────っ!」
 そんなことはどうでもいいのか、キュルケは最愛の人の名を呼ぶ。ジルはガトリングガンを止め、銃身冷却すらせずに仕舞った。
「遅かったじゃない。パーティーに遅れるかと思ったわ」
「パーティー?」
 ジルはシルフィードの背に舞い降り、パラシュートを畳む。
「ええ。ラ・ロシェールに行くわよ。シルフィ!」
「はいなのね!」



 ラ・ロシェールに降下、既に辿り着いていたウェールズに合流し、Y2Kに乗せる。ギーシュは船酔いで、面倒ゆえにラ・ロシェールに放置した。流石に安全運転だが、肝心の本人の一言で安全神話は崩壊する。
「馬よりは速いが、流石に風竜には負けるのだな」
 遥か前を飛ぶシルフィードを見ての事なのだろうが、迂濶すぎる。キュルケは青ざめ、タバサは台車にしがみつく。
「しっかり掴まることをお勧めするわ。振り落とされたら死ぬわよ」
 ジルは容赦なくアクセルを回す。少しのラグの後、ガスタービンエンジンは甲高い返事を寄越す。
「まさか────」
 ウェールズの言葉は最後まで言えなかった。その加速は矢の如し、いや、比類するものは無い。キュルケたちに倣ってしがみついていたからいいものの、下手をすれば……
 そこまでで考えるのをやめた。王族としてのプライドが悲鳴を抑え込み、震えるのを制する。頭の中は既に走馬灯が流れゆく。カーブの度に冷や汗が背中を伝う。
 しかしジルは見えないことをいいことに、到着までアクセルを緩めなかった。



 少し時は戻って────



 ワルドは焦っていた。今から逃げるにしても、時間が少なすぎる。レコン・キスタ本拠地であるハヴィランド宮殿に行こうにも、スヴェルの夜は数日前に過ぎたばかりだ。ラ・ロシェールで足止めを食っている間に捕まるだろう。手配書
は国中にばら蒔かれ、潜伏にもくろうするだろう。いや、それよりも、だ。
 やたらと殺気だっている城で怪しい動きを見せれば……
 と、ノックの音で思考が中断される。
「何だ!」
「ケイシーです。アンリエッタ姫殿下からの書状をお持ちしました」
 最近城に増えた平民の使用人の一人だった。料理から書類整理、雑用まで幅広くこなす便利な使用人として覚えていた。
「……入れ」
「失礼します」
 独特の雰囲気の黒髪の男が入ってくる。まるで歴戦の兵士だが、本人に問うと参戦経験はないという。傭兵にしては礼儀正しい。ただ、タルブの出身の者はこういった人間が多いと聞く。
「書状です。ご確認を」
「ああ……────!」
 渡された書状を見て、ワルドは言葉を失う。
『ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド
以上の者を間諜容疑及び国家反逆容疑により無期限の拘留に処す。
アンリエッタ・ド・トリステイン』
「既に親衛隊が部屋を囲んでいます。抵抗は諦めるのがいいかと」
 いつも通りの口調で、ケイシーは親切に教えてくれた。
「では、失礼します」
 一人残されたワルドは、屈辱に震えていた。ルイズはまだ城に戻って来てはいない。まさか、あの姫にここまでしてやられるとは────
「完敗、だ」



 ルイズとロングビルが城に到着したのは、ワルドが拘束された後だった。
 城門でひと悶着あり、ルイズのイライラが頂点に達する前に姫が現れたのは僥倖と言えよう。
「姫様、ワルドが……」
「ええ、判っています。既に拘束していますから」
 まさかの返答だった。予想外の答えに、ルイズは混乱する。
「わたくしだって、城で遊んでいた訳ではありませんよ。使用人に平民の監視員を紛れさせていたの」
「もしかして、それは……」
「ジルの案ですわ」
 やっぱり。溜め息をつかずにはいられなかった。抜け目が無いというか、なんというか。
「姫様、報告を。誰にも聞かれない場所で」
「一緒ではなかったのですか?」
 その場にジルとギーシュがいないことが疑問らしい。
「それも報告の件に」
「わかりました。では、私の部屋に」
 アンリエッタの私室で、やっとルイズは報告を始める。
「ジルとギーシュはワルドを騙すためと、ウェールズ殿下の亡命工作でアルビオンに残っています。或いは、もう脱出しているかも知れません」
「……ええ!?」
 王党派のトリステイン亡命は、彼女達の予定には無い。もしアルビオン王党派を匿ったとレコン・キスタに知れたら、攻め込まれる絶好の口実になりかねない。ゲルマニアとの同盟も、どうなるか判らない。
「ご安心を、姫様。ニューカッスル城はあの大陸から姿を消します」
「え? それはどういうことかしら」
「ジルが吹き飛ばします。レコン・キスタの戦力は削れる、死体はバラバラの粉々で身元なんか判りません。そしてトリステインには三百の精鋭が秘密裏に手に入ります」
 ジルが吹き飛ばす。その言葉の意味がよく理解できなかった。いや、意味はわかる。しかし、どうやったら固定化のかかっている城を破壊できるのだろうか?
「あと、これを」
 アンリエッタの思考と想像を中断させ、ルイズが言葉と手紙を差し出す。何度も何度も読み返されてボロボロになった、ウェールズへの手紙。
「う……ああ……」
 それを震える手で受け取ると、手紙を胸に抱き、アンリエッタは泣き出した。声を圧し殺して、震えながら、静かに。
 生存が絶望的な状況にあった愛しい人が生きている。手紙が銃爪となり、しかし無力な泣き声を他の誰かに見られてはならないという王女の義務感が、泣き叫ぶことを許さない。
 いつまで泣いていたのだろうか。ルイズはただ立ち尽くしていたが、アンリエッタが少し落ち着くと、ハンカチを手にアンリエッタの涙を拭ってやる。
「姫様、大丈夫です。ジルがすぐに、ウェールズ殿下を連れてきます。折角の再会なんですから、泣き顔より笑顔で迎えてあげないと」
「そう……ね。ああ、酷い顔。お化粧で誤魔化せるかしら」
 と、ルイズの耳に、あの騒がしい高音が聞こえた気がした。



 ウェールズに城で拾ったNBCマスクを被せ、門の前に立つジル一行。怪しい風体の男女に、学院のメイジ二人。門番が立ちはだかるには充分だった。
「ジル・ヴァレンタインが来た、とアンリエッタに伝えなさい。さもなくば、強行突破するわ」
「なっ……無礼者! 貴様みたいな平民が、姫殿下の名を軽々しく呼び捨てるとは何事か! それに強行突破だと? 貴族を舐めるにも程がある!」
 取り付く島もない。
「ヴァリエール家の三女でもいいわ。ルイズっていう桃色頭の、色々と小さな娘よ」
 しかしジルは無視して続ける。完璧に舐めていた。
「貴様……己の立場が理解できてないと見える」
「首が飛ぶ前に行った方がいいわよ」
 四人の門番が全員、杖を構えた。
 同時に、ジルが握っていた缶を落とす。地面に到達する少し前に蹴られ、門番の足下へ転がり────
 閃光・轟音。
 視界が白に焼けつき、耳には高音が今も鳴り響いている。
 一人目、顎を蹴り上げられ気絶。
 二人目、ハッシュパピーで撃たれ夢の世界へ。
 三人目、足を払われ倒れたところに鳩尾に膝。
 四人目、見当たらない、と思ったら気絶していた。
「Ok.Go」
 耳栓をしている三人には聞こえないが、進む意志は伝わった。最初の打ち合わせ通りに、堂々と歩いていると、誰にも気付かれなかった。大丈夫か、ここの警備体制は、などと思いつつ、ルイズを探す。
「あ、そこの方。少し訪ねたいのだけど、いいかしら?」
 黒髪を頭の後ろで束ねたオールバックの使用人らしき中年男性に声をかけたジル。見ていた同行者達は一瞬肝を冷やしたが、止めることは躊躇われた。ここで怪しい動きをすれば、感付かれる可能性があった。
「なんでしょう」
「ヴァリエール家の三女を探しているの。ルイズっていう、桃色頭の我儘娘よ」
 ジルに悪意は無い。判りやすい例えであることに間違いはないのだから。
「ああ、その方ならアンリエッタ様の私室におられます」
「らしいわよ。場所はわかる?」
『ああ、この城には何度か訪れた事があるからね』
 ガスマスクのウェールズはくぐもった声で応える。
「ありがとう」
 ジルは使用人に礼を言い、ウェールズに案内を任せる。使用人は、その背中をずっと見つめていた。



「ジル!」
 廊下で立ち尽くしていたルイズは、ジルの姿を見た途端に駆け寄ってきた。
「ただいま」
「よかった……怪我はない?」
「ハーブもスプレーも使わなかったわ。傭兵もメイジも敵じゃないわ」
 言葉の通り、傷らしい傷は無い。
「それより、お届け物よ」
「へ? って、キュルケにタバサ! あんた達……」
「ついてきちゃった」
「…………」
「学院からつけてきてたわよ。気付かなかった?」
 さも当然と言わんばかりのジルに、少しだけイラっとするが、最後の一人に気付いて追及はやめる。
「……その、変な仮面の人は、もしかして……」
「だから、お届け物よ」
 ジルはルイズの横をすり抜け、『仮面の男』に手招きをする。男が反応して歩きだすのを確認して、アンリエッタの部屋の扉を叩く。
「アンリエッタ様宛にお届け物よ」
『え? あ、はい。どうぞ……』
 聞き慣れぬ声、使用人にしては尊大な口調にアンリエッタは戸惑うが、その有無を言わせない力強さに思わず了承をしてしまった。ジルは扉を開き、男を伴って部屋に入る。
「おまたせ」
「ジル? どうやってここに……それにその方は?」
 アンリエッタは奇妙な風体の男に警戒の色を見せたが、しかしそれもほんの一瞬だけ。
「あ……ああ……」
 ジルがガスマスクを外す。窮屈なガスマスクの空気を振り払う様に首を振ると、そこには金髪の美丈夫がいた。
「アンリエッタ……会いたかった……」
「ウェールズ様……」
 涙を浮かべる二人を見て、ジルはさっさと部屋を出る。ずっとこの部屋にいるという無粋な真似はできなかった。



 感動の再会も終わり、今後について話すこととなった。議題は、城と運命を共にしたことになっているウェールズをどこにどう隠すか。
 アンリエッタ、マザリーニ、ウェールズ、ジル、ルイズと城にいた事件の関係者全員が集まって悩んでいた。キュルケとタバサは国政に関わる事なので、席を外してもらった。
「トリステインの軍備が整うまで、絶対に見つかる訳にはいかないわ。レコン・キスタのトリステイン侵攻は確定しているけど、アルビオン内戦の混乱から立ち直るのにそれなりに時間が要るわ。ニューカッスル爆破で余計にね」
「爆破だって!?」
 ウェールズが悲鳴に似た声を上げる。
「ええ。300の精鋭と城一つ、或いはトリステイン侵攻の時間稼ぎ、比べるまでもないわ」
 当然とばかりに言い放つジルに、ウェールズは絶句。確かにあのままでは無駄死にもいいところだったし、300の忠臣も助かった。しかしその為に歴史ある城を潰すなど……
「城なら代わりもあるし建て直せるけど、人は死んだら代わりが無いの。責任のある者程、死ぬことは許されないのよ。死んで責任を取るんじゃなくて、責任を取ってから死になさい」
 最早ウェールズはぐうの音も出ない。
「と、レコン・キスタに対しては少しばかり時間が稼げたわ。で、何かいい案は無いかしら」
「ヴァリエール公爵領に匿ってもらう、というのはどうですかな?彼ならば信頼できます故……」
 マザリーニが提案する。が、
「絶対に見つからずに、そこまでの移動ができる? ワルドの件もあるし、ラ・ヴァリエール領に鼠がいないとは限らないわ」
「むう……」
「同様の理由で城や他の貴族の領地も駄目。他国に亡命も無理ね。どこかの森の中とかに拠点を作って……も駄目ね。猟師にでも見つかったらアウト」
「そうそう簡単に思い付きませんわね……」
 アンリエッタも眉間に皺を寄せて悩む。これ程に難解な問題は、今まで直面したことが無かった。
「ねぇ、学院はどうかしら」
 ルイズが提案する。ジルは疑問符を浮かべて、その根拠を問おうとするが、
「空賊の時みたいに変装して……そう、戦時訓練の講師とすれば怪しまれないわ。レコン・キスタとの戦争は避けられない以上、学院からも出征する生徒もいるだろうし、敵もまさか学院にいるとは思わないでしょう? いずれはアル
ビオンを取り返す為の戦力の養成になるから、アルビオンの貴族の方も文句はあるでしょうが、一応納得できる理由にはなるわ。トリスタニアにも近いから、有事の際も早く動けるわ」
 ジルが眼を丸くする。そう、この少女は決して馬鹿や無能の類ではない。謀らずもそれをわずかなりともルイズに自覚させたのはジルなのだが。
「その発想は無かったわ! 素晴らしいわ、ルイズ!」
「確かに、オスマンなら信頼できるわね」
「成程! オールド・オスマンなら!」
 アンリエッタに褒められ、照れてはにかむルイズを尻目に、ジルはウェールズに問う。
「これでいいかしら? あなたの部下達は理解してくれる?」
 その言葉の意味を理解したウェールズは微笑み、しかしその眼には決意の光を見せ、
「責任を果たす機会、だろう?」
と応えた。


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