あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

世界最強コンビハルケギニアに立つ-03



暁は早朝の学園をさまよっていた。
懐に女性物の下着を入れて――である。
洗濯場を探しているのだが、一歩間違えば変質者であった。
無論彼にそんなつもりがあるはずがない。そもそも子供に欲情できるほど彼は節操無しではないのだから。

(しかし広すぎだろこの学校。まるでと言うかまさしく城だな)

豪華な石造りの廊下を歩きながら物珍しげに辺りを見回す。
やはり貴族の子供を預かる学校ともなるとこれくらいの建物でなければならないのだろうか。

考察しながら歩いていると、近くの部屋からメイド服を着た少女が出てきたのが目に止まった。
非常に都合がいい、あわよくば洗濯を頼める。
そう思った暁は歩みを早め、少女に近づいていく。

が、少女のあとに続き洗濯籠を抱えて部屋から出てきた包帯だらけの男を見て、暁は見事に固まった。

男の方も暁に気づいたのか、目が合う。

「おお、暁ではないか。こんな朝っぱらから何をしている」
「お前色々とおかしいだろ、復活早すぎだ」

昨日死にかけていたはずの相棒――ボー・ブランシェがそこにいた。


「えっと……ボーさんのお知り合いですか?」

少女が不思議そうな表情でボーに問い掛ける。

「うむ、こいつが私の相棒の暁巌だ。悪そうな顔だがいい奴だぞ」
「悪そうな顔とかお前に言われたくねーよ珍獣」
「こら!誰が珍獣だ!」

ボーがこちらに向かって吼える。
ああ、こいつほんとに復活しやがったと思いながら暁は脱力した。
昨日は何故こんな鬱陶しい男のことを心配していたのだろうか。暁にとって忘れたい記憶が一つ増えた瞬間であった。

ボーの横では少女が笑いをこらえている。
素朴な感じの可愛らしい少女であった。ボーと並んで絵になるというのは奇跡だろう。
暁の視線に気づいた彼女が、深々と頭を下げた。

「初めまして、こちらでご奉公させていただいてますシエスタです。よろしくお願いします」
「こちらこそ初めまして、ミス・ヴァリエールの使い魔の暁巌だ。よろしくお嬢ちゃん」

で、とボーの方を見る。

「お前はなんでこの子と一緒にいるんだ?」
「昨日の夜目覚めた時にシエスタが看病していてくれてな。食事までご馳走になったのでお礼にと思って仕事を手伝っているまでの話だ」

さも当然のことのように言うボーを見て、暁は頭痛がした。
何だこいつの生命力は。実は放っておいても死ななかったんじゃないだろうか。
ボーの命を救ってもらったから、とか言う理由で使い魔になった自分を暁は恨んだ。



水汲み場では屈強な男が二人と可愛らしいメイドが一人、洗濯板を使って洗濯をしていた。
とてつもなく妙な光景である。

「ボーさんってこういう作業できないと思ってました……」
「俺もだ」

ボーはその無駄に巨大な体躯に似合わず、普通に洗濯をこなしている。
暁とシエスタはそのことに少なからず驚いた。二人ともまず間違いなく細かい作業は出来ないと思っていたのだから当然である。
ボーに言わせると、細かい作業はテレビゲームで慣れているらしい。
……やはりこの男を理解することはかなり難しいようだ。

「そういえばアカツキさんとボーさんはどこからいらしたんですか?」
「そうだな……とんでもなく遠い所から来た」

ボーは興味深そうな顔で暁を見ていた。やはりこの男はここがどこだかわかっていないらしい。
苦笑し、今のうちに話しておこうと結論付ける。

「俺たちはこことは違う世界から来たのさ」

暁はここが自分たちのいた世界とは違うことを説明した。
シエスタは不思議そうな顔で、ボーは難しい顔で暁を見ていた。
当然の反応だな、と暁は苦笑した。

「帰る方法はないのか」
「今のところないらしい。調べてもらってはいるが望み薄だろうな」

そうか、と相槌を打ちボーが黙る。珍しく何か考え込んでいるようだった。

ボーには元の世界でやり残したことがある。
トライデントと対立していた組織、『アーカム』に所属するエージェント――御神苗優(オミナエ ユウ)と言う青年との決着である。
ボーと暁は幾度となく彼と遭遇し、戦った際は二人とも敗北を喫している。
ちなみにボーにとって優は永遠のライバルらしいが、一回戦ったきり相手にされていない。
暁としては「相手にされてないんだからいい加減諦めろ」と言いたかった。
もっとも、暁もまた優と戦いたいと言う気持ちは存在したのでそんなことは言えるはずもないのだが。

「暁、お前はいつまでここにいるつもりだ?」

ここ、とはおそらくトリスティン魔法学院のことだろう。
暁は考える。契約時は助けてもらったボーの命の分働くかルイズが自分を必要としなくなるまで使い魔をやる、と言った。
自分がルイズの使い魔でいる必要がなくなったときまではいる事になるだろう。

「俺のご主人――ルイズって言うガキなんだが、その子が俺を必要としなくなるまでか俺が嫌になるまでだな」
「主人?そのルイズとか言う娘に雇われたのか?」
「違う。何か使い魔を召喚する儀式だかで俺たちが呼び出されたらしくてな。どうしてもそれで呼び出された奴と契約しなきゃならんとかで、使い魔になってやった」

お前の命を救ってもらったってことだしな、と暁は苦笑した。
正直なところ助けてもらったボーの命の分働くとは言ったが、ここまであっさり復活されるとどれくらい働けばいいのか良くわからない。
ボーが死にかけていたのは暁とてわかってはいるが、いくらなんでも復活が早すぎる。
これなら放っておいても問題なかったのではないだろうか。

「シエスタお嬢ちゃんも誰かの使い魔ってことはない?」
「いえ、違います。私はメイジではないので詳しいことはわかりませんが、人間が使い魔として召喚されたことは今までなかったらしいですよ」

やはりそうなのか、と暁は頷いた。
コルベール、ルイズも同じことを言っていた。
何が原因かはわからないが、自分たちは相当異質な状況下にいるらしい。

「お力になれなくてごめんなさい」
「いや、お嬢ちゃんが気に病むことじゃないさ」

申し訳なさそうにシエスタが頭を下げる。

「その……イセカイって場所かどうかはわかりませんが、私のおじいちゃんもすごく遠くから来たって言ってました。
  私の故郷、タルブって言う田舎の村なんですけど、宜しければ今度いらしてください。おじいちゃんに聞けば帰る方法がわかるかもしれませんし」

シエスタが気遣うように言った。

「わかった、いつか行かせてもらうよ」
「はい、是非!」

正直なところあまり期待は出来ないが、それは今言う事ではないし万が一もあり得る。
いつかは行くことになるだろうと暁はタルブという地名を心に刻み込んだ。

「うむ、決めたぞ」

そこでボーが大きく頷いた。
ずっと何かを考えていて今やっと結論が出たらしい。

「私もそのルイズとか言う娘の使い魔になろうではないか」

暁とシエスタは大仰に頷くボーを唖然と見ていた。



『我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。我の運命に従いし使い魔を召喚せよ!』

周囲が強い光に包まれる。あまりの眩しさにルイズはあわてて目を瞑った。
そして目を開けると、そこには一匹のミノタウロスがいた。

ドラゴンやグリフォンなどの美しい幻獣を期待していただけに、とても美しいとは言えない牛頭で筋骨隆々の魔物が召喚されたことにルイズは落胆した。
だが、そのミノタウロスはあまりにも強かった。
目にも止まらぬ速さで動き、素手でゴーレムを吹き飛ばす。
ルイズは自分の使い魔の強さに歓喜した。見た目は悪いがもうそんなことはどうでも良くなっていた。

『あなた凄いのね!』

だがミノタウロスは「まだまだこんな物ではない」と言いたそうに首を振る。
そして何事か吼えると――彼の姿が4体に増えた。

『嘘っ!』

それは紛れもないスクウェアスペル『偏在』であった。
ルイズにもはや迷いはなかった、こんな強い使い魔を従えることができれば今まで散々自分を馬鹿にしてきた皆を見返すことができる。

それでもやはりミノタウロスとのキスは抵抗があったものの、それくらいは我慢しなくてはならないだろう。
コントラクト・サーヴァントの呪文を唱え、彼と口付けを交わすため顔を近づけていく。
そして後少しのところで彼は口を開き、言った。

『おい、起きろ。朝だ』

彼のその言葉に、ゆっくりとルイズの意識は覚醒していった。


夢の国から現実世界に戻ったルイズが最初に見たのは、見知らぬ金髪の男のゴツい顔だった。

瞬間的に意識が覚醒し、思いっきり後ずさる。
そして「ふぁっ」という情けない声が喉から出――ルイズの体はベッドから転げ落ちた。


「一応紹介しておくとこいつはボー・ブランシェ。昨日ご主人様が召喚した死にぞこないだ」

暁が苦笑しながら金髪の男――ボーと言うらしい――の紹介をするのを、ルイズは床に座り込み呆然と聞いていた。
とりあえず立てそうにない、おそらく腰が抜けている。

「よろしく頼む。世界最強の男、ボー・ブランシェだ」

ボーはルイズの前に立つと、右手を差し出した。
どうやら助け起こしてくれるつもりらしい。

「よ、よろしく……私はルイズよ」

ルイズはおずおずとその手を取る、大きくてごつごつした手だった。
ボーの体躯は夢に出てきたミノタウロスに似ている。
まさかこの男の夢だったのだろうか、と思ったがそんなはずはないと否定する。

あのミノタウロスは夢の中だからこそ存在できた魔物なのだろう。
あそこまで強い魔物なんてこの世界にいないだろうし、人間の身であんなことが出来るのは御伽噺の登場人物くらいだろう。
そもそも幻獣に勝てる平民などいるはずがない、自分はやはりはずれを引いたのだ。

「早速だがルイズ、私とも使い魔の契約を結んで欲しい」
「ほへ?」

ボーが真顔で言った。
ルイズは彼が何を言っているのかしばらく理解できなかった。

「私の治療費を出してくれたのはルイズ、お前だそうではないか。そして暁はその借りを返すために使い魔をやっている。
 相棒にだけ私の命の対価を払わせるのは非常に心苦しいので、私もお前の使い魔になって借りを返したいと思うのだ」

何か目の前でボーが力説している。よくわからないがこれだけは言える、暑苦しい。
助けを求め暁の方を見たが、彼は肩をすくめただけだった。
諦めろと言われたような気がした。

「残念だけど使い魔の契約は一人一体なの。だからもう暁と契約してしまったからあんたとは契約できないわ」
「む、そうなのか」
「気持ちだけ受け取っておくわ……」

ルイズはため息を吐いた。
なんだろう、この男の鬱陶しさは。

「ならば私に出来ることがあれば言ってほしい。それくらいならば構わんだろう?」
「あーはいはい。じゃあまずそこのクローゼットから下着を取って頂戴」

ボーが難しい顔をするが、それでも不承不承ながらクローゼットに向かう。

「引き出しに入ってるから」

そう言いながらネグリジェを脱ぎ始める。
そしてそれを見たボーが目を見開き、慌てて目をそらした。

「お、夫でもない男の前で寝間着を脱ぐとは破廉恥な!」
「あんたたちは男じゃなくて使い魔と奉公人、だから見られても気にしないわよ」
「そう言う問題か!ええい早く着ろ、目のやり場に困る!!」

ボーが慌ててクローゼットから下着を取り出し、放り投げる。
だがルイズの方を向いていないため、下着は明後日の方向に飛んでいった。
それをため息を吐きながら暁が拾い上げ、ルイズに手渡した。

「鬱陶しいだろ?」
「鬱陶しいわ」

ルイズはゆっくりと着替え始めた。
本当は暁かボーに着替えさせるつもりだったが、とうの昔にそんな気は失せていた。



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