あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロの騎士団外伝-03a


ゼロの騎士団-外伝 「使い魔 感謝の日」

トリステイン魔法学院 昼
季節も初夏を迎え、生徒達には春に比べ薄着した者もあらわれる。
その中の一席ルイズ達は昼食をとっていた。
その中で、弾む会話に一区切りがついた所で、少女が新しい話題を提供する。
「そういえば、もうそろそろ、感謝の日ですね」
黒髪のメイド服を着た少女――シエスタがその言葉を口にする。
彼女はメイド故に、一緒に食事する訳ではなく、デザートを運び終えた帰りであった。
「感謝の日、何だ、それは?」
ルイズの隣に座っているニューが、デザートに手をつけながら聞く。
彼にしてみれば、まだ、この学院――世界には解らないことだらけであり、
当たり前の様に話す事が理解できない事もある。
しかし、ニューと違い、1年間をここで生きてきたルイズはその言葉に思い当たるのか。
思い出したように会話に交る。
「ああ、そう言えばそろそろだったわね」
心なしか、嬉しそうでは無い声が、ニューにとってある事を思い出させる。
「まさか、また鉄鍋を持って走るような行事か?それとも、スイカ割りか?」
「なんで、感謝の日と言う単語から鉄鍋が出るのよ?そもそも、スイカ割りって何なのよ?」
ルイズが呆れながら、ニューを見る。
「夏と言ったらスイカ割りだろう、目隠しをして、スイカを割るんだよ」
「スイカなんて割ってどうするのよ」
キュルケが疑問を口にする。
スイカは知っているが、なぜ、いちいち目隠ししてスイカを割るのかは彼女には理解できなかった。
それを聞いた、ゼータが補足の意味で説明する。
「我々、モビルスーツ族は戦勝祈願の意味を込めて、戦の前にスイカを割ってその割れ方で吉兆を占うと言う習慣から来ているんだ。
今では祝い事にやる習慣が一般化している」
「そんな風習があるなんて……改めて、アンタ達って変わってるわよね」
ルイズからは理解できないと言った感情が浮かぶ。やはりどこか違うところがある物だ。
ここ数カ月は一緒に居るが、たまに、こう言った違いを聞くと改めて彼らが人とは違う事を認識する。
もっとも、そうでもしないと、既に人間とほぼ同じ様に認識する様な近い存在と言えた。
「……で、感謝の日とは?」
「感謝の日は、日頃使役している使い魔に感謝の意味を込めて、何かしらの奉仕をする行事」
本を読んでいたタバサが、ゼータの質問に答える。
「使い魔を召喚したメイジは、最初は喜ぶけどこの時期になると徐々に使い魔に飽きてくるのよ。
世話をしないならともかく、主の役割を放棄したり最悪なのは理由をつけて殺したりするのもいるのよ」
足を組みなおしたキュルケが由来を語る。
使い魔と言うのはある種のペットに近い、初めて召喚した喜びと一緒に居るから愛着を感じるが、
ある期間一定に居ると、段々とそれを疎ましく感じ始める者もいる。
特に、それまでそう言った、育てる、世話をする。
といった感覚がないメイジの子息たちにはより強く感じるだろう。
実際に数年前、そう言った理由で自身の使い魔を殺したメイジもいる。
オールド…オスマンはそれに激怒し、本来、社交辞令程度の意味合いの感謝の日を生徒の義務と課した。
「皆さんは何かして貰うのですか?」
シエスタの言葉に、ニュー達三人はそれぞれの主を見る。
真っ先に反応したのはルイズであった。
「な、何よ、何かしてほしい訳?言っとくけど、あんまり無茶な事は言わないでよ」
自身の行いに思い当たる節があるのだろうか、何か報復を恐れるような、そんな感じでルイズが睨みつける。
「自分のやっている事に自覚があるのだな……そうだな、ルイズの子守りから解放されたい」
目を細くしながら、ルイズを見る。
最近では余り煩くなくなったが、それでも小間使いの様な仕事に従事する事が多い。
また、日頃のルイズの制裁は既に二桁の大台すらも終えようとしている。
実際、コルベールが余りの状態にルイズを注意した事もある。
世界で一番苦労している使い魔――キュルケの冗談とも言える評価は否定したくはなかった。


「あははっ!確かにルイズの子守りは大変よね、私ならとっくに逃げ出すわ」
その言葉を聞いて、真っ先にキュルケが笑いだす。
傍から見ても、ルイズの相手は大変な事は彼女も知っていた。
「う、うるさいわよ、そう言うアンタの使い魔はどうなのよ」
話題の矛先を対して関心なさそうに食事の次の行動――睡眠の準備に入っていたダブルゼータは、話題を振られて気だるげに体を動かす。
「特に無いな……そう言えば、この間の賭け事で稼いだ金で飯食わせてくれるって言ってたな。
忘れてないだろうな?」
眠そうであったが、何かを思い出して徐々に意識を覚醒させる。
ダブルゼータを利用してキュルケが賭けで稼いだ対価は、ダブルゼータに豪華な食事を与える事であった。
「そう言えば言ったわね、けど、ここ以上の味となるとなかなか無いわよ」
「じゃあ、どうするんだよ?」
ダブルゼータが半眼で呻く。反応は解っていたのか、キュルケは慌てずに対処する。
「睨まないでよ、今度、王都の一番のレストランに連れていくわ。
けど、予約待ちで感謝の日よりだいぶ先の事になるの……ゼータは?タバサに何かして欲しい事ってある?」
キュルケの視線の先には、どこか気にした様子でタバサを見ているゼータが居る。
彼は要望を聞かれても、さほど嬉しそうとは言えない顔であった。
「武器……と言いたいところだが、剣や盾はもう有るからな。
特にないのだが……むしろ、タバサ私がする事はないのか?
自由にさせてもらえるのは有難いが」
要望を聞かれても青い紙の少女は本から目線を外す事は無かった。
「特にない」
短い拒絶の言葉だけで、彼女と会話は終わる。
いつもこれだ――ゼータは不満げな顔をする。
ゼータは二人に比べるとかなり自由である。
食事や寝るとき一緒に居る以外はやる事がなく。
タバサの横で一緒に本を読み、剣の訓練をしている事が多い。
そして、それはゼータにとって少し不満でもあった。
無口な所もあるが、基本的に人格的に問題があるとは思っていない。
少なくともタバサを嫌っておらず、むしろ、この世界では自分の主と言う事も認めている。
彼女の望みなら、可能な限りは叶えたい思う
しかし、タバサはルイズの様に使役し、キュルケの様に金儲けや問題に首を入れるような事はしない。
以前の様な吸血鬼退治の様な仕事も、あれ以来ほとんどない。
初めてタバサと出会った時の言葉通り、ただ居るだけでいいらしい。
だが、それはお互いコミュニケーションが取れているとは言い難く、
ニューやダブルゼータの様に、主の事をうまく把握しているという感覚がない。
実際、何だかんだで、お互い上手くやっているニュー達に比べて、距離感がさほど縮まって無い
タバサもルイズの様にむしろ我儘の一つも言ってもらいたい。
しかし、ゼータのその考えは少女に届いたと言う様子は見られなかった。
それぞれの思惑が飛び交った後、ルイズが会話を終わらせるべく動き出す。
「休みくらいあげるわよ、で、結局何がしてほしい訳?」
ルイズの言葉とは反対に苦々しげな表情に対して、ニューは不満な顔をする事は無かった。
むしろ、何か言いたい事を考えてその言葉に満足したかのような、少し嬉しそうな表情であった。
「何かして貰えるようだが、ルイズ、君は何が出来るのだ?」
鬼の首でも取ったような、表情がルイズを見据える。
最近ではお前呼ばわりのニューが、珍しく君と呼んだ事の意味が、ルイズにはすぐに理解できた。
「掃除や洗濯でもして貰おうかと考えたが、君はお嬢様だろう」
彼のうすら笑いが、ルイズの感情を逆撫でする。
“何も出来ない世間知らずな貴族のお嬢ちゃんが何言っているんだ。”
ルイズの脳内ではそう言う様に翻訳された。
「ご、ご主人様に向かって、何て事を言うのよ馬鹿ゴーレム、私にできない事なんてないわよ!」
睨みつけながら、低い声で呻く。
後悔は後からやって来る。
「……それでは、フライの魔法で空を飛んでみたいですな、できますか?ご主人様」
詰み――ニューの顔はその一言で表される。
不味いと言う表情がルイズの顔に書かれる。
ニューは端からルイズに何も期待していなかった、ただ、罠にはまったのだ。
(コイツは私に恥をかかせる為――ゼロと言う為だったのね)
恐らく、このまま魔法で失敗して爆発しても、出来ないと言ってもニューの答えは決まっている。


――ゼロのルイズ

自身にとって最もダメージを与える言葉を充分な根拠と共に自分に突き付けるのだろう。
ルイズは考え、そして、ある結論を出す。
「……わかったわ、そんな簡単な事でいいのね」
(なら、お望みどおりにしてあげるわ)
危険、動物がそう感じるであろうルイズの表情――その場の全員に警戒の鐘が響く。
「ちょっと、ルイズ!」
自身の身で体験しているキュルケが、真っ先に止めに入る。

「いいわよ、お望み通り飛ばしてあげるわ!」
(爆発でね)
ルイズはスイッチを押す……筈だった。

「もしや、フライを唱えて爆発などと言う事はありませんな、“メイジのルイズ様”」
英雄現る――その一言がその場の全員の中で一致した。
「くっ!」
ルイズは動きを止める。
(やっ、やられた!)
自身の目論見をつぶされ、焦り出す。
この状況で爆発させれば、自分は“ゼロのルイズ”である事を認めるようなものである。
自身が気づかずに恥をかくのと、相手に踊らされそれを知った上で恥をかくのは訳が違う。
それは不味い、ルイズはかぶりを振る。
思考の時間は敵に攻撃の機会を与える。
「まさか、ルイズ様がそんな簡単な失敗するわけはありませんよね?何て言ったって立派な“メイジ”なのですから」
盤上の神は誰か?それは言わずとも分かる。
そう確信したかの様に、ニューはルイズを見る。
(どうしたらいいの?さすがに、この状況で魔法を使う訳にはいかない)
そう心の中で考える。
相打ち覚悟で爆発させるか?
それとも素直に出来ないと言うか?
はたまた主人の権限を行使するか?
様々な考えが浮かぶが、どの道、ルイズの心にはダメージを提供されるであろう。
そして、最もダメージが少ない方法を考える。
しかし、ルイズにとって予想外の事態が起こる。
「おや、ルイズ様はもしかして体調が悪いのですか?」
ニューが途端にそんな事を言い出す。しかし、その言葉とは裏腹に全然心配した様子はない。
まさか!――ニューの事を睨みつける、その顔は予想していた通りであった。
その顔には表れていた“見逃してやる”。
確かに、ニューの言葉通りになれば、体面は恥をかく事は無い。
しかし、乗せられ、踊らされ、しかも、憐れみすらかけられる。
直接的ではないが、ルイズにとっては最も手痛い負けと言える。
「……そうね、今日は体調が悪いから、また今度飛ばしてあげるわ」
事実上の敗北宣言
「いえいえ、残念ですが仕方ありませんね」
(小娘、敗れたり!)
脳内でその言葉とこぶしを握る様子が、ニューの表情にはあった。
(悔しいぃぃ、あの馬鹿ゴーレム!)
表面には出さず、憎悪で心の中を燃やす。
一つの戦いは終わる。しかし、勝利の余韻に浸る事は許されない。
ニューは勝利に満足したのか、偉そうに咳を一つして、場の流れを仕切り出す。


「さて、冗談はこれ位にして……三人とも、特にないのなら、君達が我々三人にケーキを作ってくれないか」
その提案は何をもたらすのか?
少なくともこの時点で、気付いたのは一人であった。
(ニューさん、何言っているんですか!)
それまで会話に入らなかった、シエスタが目をニューに向ける。
止めなくてはと思うが、彼女より早く反応する者が居た。
キュルケの瞳に、何かが宿る様にシエスタには見えた。
そして、それはいい予感がしなかった。
「ふーん、面白そうじゃない、特にやる事無いし、三人まとめてやった方が楽だしね、タバサもいいでしょ?」
キュルケがその案に賛成する。
なんとなくニューから挑戦を贈られたと受け取ったらしい。
特にやる事も思いつかなかっただけに、それでいいと言った適当な感覚が見受けられる。
そして、彼女に参加を求められたタバサも無言で首を縦に振る。
残りはルイズのみ、しかし、彼女はニューの提案を受け入れられる事は出来なかった。
(何考えているの?私を罠にかけようとしていない?)
ルイズには、ニューの意図が読めないでいた。
また自分を謀るのか?――それを察したのか、ニューはやれやれと言った顔をする。
「別に、罠にかけようと言うのでは無い。
私の為に何かしてくれると言うのだ。たまには、そういった女の子みたいなところがあってもいいだろう?」
「女の子みたいの辺りが引っ掛かるんだけど?」
ルイズは、まだ何か納得行かないと言った眼でニューを見ている。
「気にするな、特に他意は無い。敢えて言えば、私達は女性に料理を作ってもらった事がないからね、
そう言った物に憧れの一つも持っているのだ」
何となく、ニューがそう言った事に縁がないのは理解できる。
そう思うと、ニューに何かしてやろうと言う気も起きなくはない。
少し寂しそうな顔で笑う顔を見てルイズは決めた。
「わかったわよ、アンタがそこまで言うのなら作ってやろうじゃないの、ご主人様の有難さが分かるような、とっても美味しいのを作ってやるんだから、待ってなさいよ!」
その言葉と共に、昼食の時間が終わりを告げる。
何となく、その場に居づらいのか、授業を理由にルイズは去っていく。
三人が席を立ち、シエスタとニュー達が残される。
彼女は遅いと思いながらも、動く事にした。
「ニューさん!何を言ってるんですか!?」
鏡は無いが自分の顔は蒼白かもしれない
しかし、その顔を見ても、鏡の変わりのニューは何の変化も見せなかった。
「シエスタ、君の言いたい事は解っている……そして、大変な任務を、君にお願いしたい」
彼女の意図が解っているのか、ニューはシエスタを落ち着かせ席に着かせる。
「分かっているのならいいんですけど……何ですか、大変な任務って?」
自分の意図が解っているみたいだ、そう思い、シエスタは少し気持ちが落ち着いたのか、ニューの言葉を待つ。
大変な任務――おそらくそれは比喩では無いのだろう。
「実は……」
三人を見渡しながら、ニューは自分の考えを話し始めた。


数日後、感謝の日
生徒達がお茶の時間を迎え始めた頃、彼女達は表れた。
その様子は別段変る事は無かった。一つの皿を除いて。
「……待っていたわね」
少し疲労の色が見える表情でルイズがニューを指差す。
眼はいつもより大きく見開いており、いつ掴み掛かっても驚かない。
「……まるで決闘だな、で、どうなんだ、出来の方は?」
「最高よ!その一言で充分よ」
自分の目を貫くような鋭い目とは正反対に、ニューは落ち着きを払っていた。
(大変だったのだな……)
良く見ると彼女の指は包丁でつけたであろう傷と火傷をしており、他の二人も同様であった。
後で治そう。そう考えながら、その作品に目を移す。
「おっ、美味そうじゃん」
ニュー達が言おうと思った事をダブルゼータが代弁する。
作品自体はシンプルなフルーツのタルトであった。
カスタードクリームの上に、キウイとオレンジを乗っけた物であり、所々にミントが乗っている。
「……暑いから冷たいのにした」
タバサの言葉の通り、テーブルの上に置かれると、オレンジとミントの爽やかな匂いとひんやりとした冷気を顔に感じる。
「すごいな、初めてとは思えない」
「シエスタに手伝ってもらったのよ」
ゼータの呟きに、キュルケが答える。
三人の後ろに居るシエスタは何か気が重いのかうわの空で笑いを浮かべている。
八等分に切り分けられ、ニュー達の小皿に乗せられる。
「さぁ、食べて涙を流しなさい」
「ケーキ一つを食べる言葉とは思えんな」
かつて童話にあった貧乏な子供が、泣きながらケーキを食べるシーンを思い出しながら、
ルイズの言葉を受け、フォークをタルトに向ける。
ニュー達が口に運んだケーキを三人が我が子の様に見守っている。
(大丈夫よ、絶対美味しいんだから)
無言の時間が無限の様に感じられる。
一口目を終え、何かを言う前にニュー達はそれぞれの顔を見合わせる。
審判が下される。

「美味い!」

口調が違う三人の感想が同じなのも珍しい。
だが、それ程の大当たりであった。
「すごいな、ルイズ、本当に美味しい」
今まで見た中で、最も自分に敬意を持った視線を感じる。
「王都の一番のレストランとやらから取り寄せたんじゃないのか!?」
ともすれば失礼な発言だが、真っ先に食べ終えたダブルゼータらしい賛辞とも言える。
隣ではゼータが、二人と同様のリアクションを取っていた。
「美味い、タバサは料理の才能があるんじゃないか?」
初めて娘の手料理を食べた父親が言いそうな事をゼータが口にする。
タバサは何も言わないが、心なしか嬉しそうな顔をしている。
「ふん、私達が本気になればこんなものよ」
自身が大上段にでもいるかの振る舞いでルイズが自画自賛する。
それを見ながら、ニューは苦笑いを浮かべてそれを容認する。
その後、最後に余った一切れをルイズとダブルゼータとキュルケのジャンケン争いの途中に、
シルフィードが乱入して食べてしまい乱闘が起こる。
つまりはそれくらい好評であった。


ルイズは夜ふと目を覚ます。
本人は解らないが、時間はまだ夜の11時頃であった。
(そうか、疲れてすぐに寝ちゃったんだ)
初めての体験と言う事もあり、あの後、疲労から夕食も軽めに済ませ自身が寝てしまったのを思い出した。
暗い部屋をぼんやり見回すと、居る筈のニューが居ない事に気づく。
「あいつ、もしかして、まだ飲んでるの?」
今日の出来事が嬉しかったのか知らないが、ニュー達三人は厨房でシエスタと飲み会をやるらしい。
疲労もあり、それを認めてルイズはニューと食堂で別れた。
「さすがに遅いわよね、よっぽど嬉しかったのかしら」
困り顔と笑顔が混じったような顔のルイズが鏡に映る。
――そろそろ迎えに行こう
そう思い部屋を出た所で、タバサとキュルケが居る事に気づく。
「ニューも帰って来ないの」
その格好から、恐らく、迎えに行くであろうキュルケが声を掛ける
ネグリジェの上に一枚だけの格好は室内をうろつくには少し問題に思える。
だが、そう言うのも億劫なのかルイズも無言で頷く。
「困った使い魔を持ったわね」
キュルケが苦笑いの表情をする。
言い返す必要はない、お互いの顔は多分同じだろう。
キュルケが起きたばかりの眠そうなタバサの手をつなぎ三人は厨房に向かった。


厨房はほのかな明かりと少数の気配に反して、声と笑い声が途絶える事は無かった。
入口の近くに来るとアルコールの匂いがはっきりと分かる。
「まったく、いつまで飲んでるのかしら」
そう呟き、厨房に入ろうとする。
だが、あと一歩で厨房に入る前に彼らの会話に自分やキュルケ達の名前が挙げられて足を止める。
「どうしたの?」
「私達の事を話しているみたいなの」
後ろに居たキュルケを、手で制止させ耳を澄ます。
声は、普段では聞かない位上機嫌なゼータの物であった。
「いや、さすがはアルガス一の策士だな」
ぶどう酒の入ったグラスを左手に持ち、ゼータが上機嫌ニューを讃える。
そのニューはシエスタに酌をして貰っている。
見ようによっては侍らせているという表現でも間違いはなかった。
「本当にそうですね、最初にケーキを作ってくれ何て言った時は、ニューさん達の国で使うとてつもなく口汚いスラングかと思いましたよ」
ニューに酌をしながら、酒で頬を赤くしたシエスタが上機嫌で言う。
「しかし、これもシエスタ先生が居たからこそできた作戦だよ」
酌をされた酒を飲みほし、ニューは愉悦に浸っている。
「まぁ、あの三人に作らせたら、食べるどころか近づく事も出来ない様な代物になるだろうな」
酒が完全に入った状態で笑いながらダブルゼータが同調する。
「けど、酷かったですよ、味も確かめずに塩と砂糖を間違えるわ、クリームを飛び散らして壁を汚すわ、
火の魔法で焼こうとして竈を壊そうとするし、後片付けの事を考えると憂鬱の一言を超越しちゃいますよ」
シエスタはその時の様子を思い出しながら、溜息をつく。
良く見ると、部屋の中にはつい先程掃除したような清潔感があるが、所々に焦げた跡と何かが張り付いたような染みが少し残っていた。
実際、お菓子作りの後シエスタは後片付けで仲間に大きな貸しを作っていた。
「すまないな、けど、こうやっておだててやらないとルイズがへそを曲げるからな」
酒をあおり、シエスタに感謝の気持ちを述べる。
「だから、今日は『アルガス騎士団とシエスタ 日頃ルイズ達のお世話お疲れ様飲み会』を開いたんじゃないか」
壁の上にはニュー達の言葉で先の言葉が書かれたであろう紙がはられていた。
大皿が置かれたつまみは殆ど無くなっており、飲み会の盛況を表している。
「けど、ニューさんの演技凄く良かったですよ
『そう言った物に憧れの一つも持っているのだ』の辺りは本当に信じちゃいましたよ」
シエスタがニューの真似をする。
その言葉は確かにルイズを動かした。
「別に嘘ではないさ、私はずっと騎士として生きて来たからね、年頃の女生と余り接点は無いのはホントだよ、もっとも、ルイズの子守りを世話するくらいなら、騎士の従者の方が十倍は楽だね」
その言葉に嘘はない。
ニューは騎士、つまり、男社会で育ってきた。訓練と遠征に明け暮れ、ルイズくらいの年の頃を余り女性と接す機会は無かった。
そして、ルイズの子守りは、ニューの世話した騎士が厳格な人物である事を差し引いても、
ずっと楽に感じられた。
「だいたい、本人が貴族の威厳を持ったつもり何でしょうけど、あれでは滑稽ですよ。
観客がいたら笑う所ですよね」
日頃から思う所があるのか、シエスタは笑いながら居ないルイズを詰る。
ニューは二人に目を向ける。


「しかし、お前達はいいよな、キュルケは何だかんだいって優しいし、タバサは特に厳しい事も言わないし、ゼータ、お前贅沢だぞ!」
二人を交互に指をさしながら絡む。
しかし、その言葉にゼータは不服を示す。
「そんな事を言うがな、俺だって不満はあるんだぞ、せっかく俺を召喚したと言うのに何もしようとしないし、何考えているのか解らないし、
普段もコミュニケーションを取ろうともしない。何考えているのか分からないし、
後、たまに変な物を食べさせるのも困っている。コミュニケーションのつもりなんだろうが、あれでは虐待だ!俺はもっと普通に主と従者で居たいのに……」
一人称が普段と違うゼータが最後の方は泣きの入った声をあげる。
どうやら、泣き上戸の素質があるみたいであった。
この間食べさせられた、ムラサキヨモギのサラダの味を思い出す。
最初、彼女を怒らせたのかと勘繰った程だ。
それを一通り見た後、泣きだしたゼータに飽きたのか、ニューはダブルゼータに絡む。
「ダブルゼータ、お前はどうなんだ、キュルケに対する不満はないのか?」
しかし、反応は鈍い。よく見ると目を細めている。
「……はぇ……キュルケの奴、この間、男に太ったなって言われていたな。
後、この間、男に色目使ったけど逃げられてたな」
明かりの無い所で、体を硬直させるわずかな音が聞こえたが、中の者は誰一人として気付かなかった。
シエスタがそれぞれの主に対する感想を聞いて、より一層笑いだす。
「あははっ、やっぱ皆さん大変ですね、では、大変な皆さんにお姉さんからプレゼントですよ」
そう言って、嬉しそうに物陰からある物を取り出す。
どうやら、余程プレゼントとやらに自信があるみたいだ。
「じゃーん」
「こっ、これは!」
酔いが醒めるかのように、目を見開きプレゼントを見やる。
シエスタの確信したように、やはり三人は驚いた。
しかし、外に居るルイズ達は、さほど驚かなかった。
なぜなら、それは口にはしないが、比較的見慣れたものであった。
「スッ、スイカ!」
ハルケギニアでも、ポピュラーでは無いが庶民の果物、緑色と黒のコントラストが眩しい
直径20サント程のスイカであった。
「ニューさん達が、スイカを欲しいと言っていたのを思い出して、マルトーさんに頼んでもらったんです」
そう言って、宴会場の中心にスイカを置く。樽の中に冷たい水で冷やしていたのか、表面を触るとひんやりとした感覚が三人の手を冷やす。
「でかした、シエスタ!よし、早速祝いのスイカ割りだ!」
「もはや、勝ったも同然!」
「スイカ割り、スイカ割り、俺の勝ち!」
ニューがどこからか取り出した白いハンカチで自分の目を隠し、
シエスタが戸棚にあった、肉を切る為の牛刀を取り出し手渡す。
ゼータは何故か持って来ていたギターでどこか懐かしいメロディを奏で出す。
「ニューさん、右ですよ、ああっ、違う今度は左」
「スイカ割り、スイカ割り、もう一つおまけにスイカ割り」
指示を出すシエスタと眠気が飛んだダブルゼータが、頻りに合いの手を入れステレオとなった音があたりに響く。
盛り上がる場の空気に押されるかの様に、ニューはスイカの元に近づいて行く。
そして、それは起こった。
「スイカ割り、スイカ割り、温室スイカもあるじゃない!」
ニューの掛け声と共に、閃光が縦に走る。そして、スイカは財宝の様な赤い輝きを露わにする。
剣の扱いが下手なニューとは思えない、見事な一撃であった。
手ごたえがあったのか、嬉しそうに目隠しを取り、成果を確認する。
「おおっ、久方ぶりとは思えない出来、これはいい事が起こる予感!」
自画自賛しながら、切り口に目を輝かせる。
宴が終わる雰囲気はまだ無かった。


「ふーん、私の子守りって、騎士の従者の十倍は大変なんだ……これは、もっと労わってあげないとね……私、本格的にお菓子作り始めようかしら」
ルイズの笑顔は優しかった。
「……ムラサキヨモギはおいしい、もっと知ってもらいたい」
タバサの顔は寂しそうであった。
「ダブルゼータって本当に良くできた使い魔だわ、ちゃんとお店に連れて行かなくっちゃ」
キュルケの微笑みは聖母か慈母の様な包容力を見せる。
顔を合わせず、それぞれは部屋に戻った。
その言葉と共に、明かりのある部屋以外、辺りは音のない闇に包まれることになる。


「ギーシュ、テメェしっかりしやがれ!」
ギーシュ&傭兵D(ダリー)ガンダム セカンド
凸凹コンビだが、いざと言う時は相性抜群
Extra


「モンモランシー、ご命令を」
モンモランシー&武者頑第刃(ガンダイバー)
水の力でサポートする
Extra


新着情報

取得中です。