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世界最強コンビハルケギニアに立つ-02


二つの月が世界を照らしている。

それをルイズの部屋からなんともいえない表情で眺めている男がいた。
暁巌である。


暁は元の世界で『トライデント』という組織に身をおいていたことがある。
太古――神話と呼ばれる時代――の文明が遺したいくつもの遺産を手に入れ、それらを元に新たな兵器を作り出そうとする巨大な兵器開発組織である。
その組織の実行部隊長として彼はいつも最前線にいた。
それゆえいくつもの超常現象にも遭遇したし、異世界にも入り込んだことがある。
だから彼は異世界に飛ばされたからといって大仰に驚くような男ではない。
それでも唐突に異世界に迷い込み、帰る手段が皆目見当がつかないというのはあまり楽しい状況ではない。

もっとも暁は「元の世界に帰りたい」という願望はさほど強くない。
言葉は普通に通じるし、探せば自分が戦闘に参加する機会くらいあるだろう。帰れずにこちらの世界で生きていくことになっても特に問題はないと彼は考えている。

彼にとっての問題は、使い魔という立場にあった。


「で、使い魔ってのは具体的に何をすればいいんだ?」

暁はルイズの方へ向き直る。
ルイズは眉間をおさえながら何事か唸っていた。

「まず主人との感覚の共有なんだけど……まったく出来ないわね。何も見えないし聞こえない」
「俺と感覚共有して楽しいと思うか?」
「まったく思わないわ」

即答される。
それがどんなものか暁には想像することしかできない。
しかし他の人間と感覚を共有して普段何をしているのか見るのも見られるのも、あまり楽しいことではない気がした。
と言うより見たくないし見られたくもない。

「他は主人の望む物を見つけてくること。例えば秘薬とか」
「秘薬?」
「特定の魔法を使うときに使用する触媒よ。硫黄とかコケとか……でもあんたそんなの見つけてこれないでしょ?」

秘薬という言葉に反応し、少し期待した暁だったがすぐに落胆に変わる。

「その程度の物なら見つけてきてやれんこともないが……それくらい買えよ」
「その程度って……ていうか売ってないわよ」

コケや硫黄など暁の世界では探せばすぐ手に入る。と言うか売っている。
難易度の高いモノであれば取りに行くのも問題はないが、その程度の物を苦労して探しに行く気には到底ならない。

「あんた世間知らずが過ぎるわ……いったいどんな田舎から来たのよ」
「とてつもなく遠いところだよ」

暁は視線をルイズから外し、空を見上げる。
相変わらず月の数は二つだった。

「例えば俺のいた場所は月が一つしかない」
「はぁ?月は二つでしょ」
「こっちではそうだろうが俺のいた場所は違う。なんせ異世界だからな」


暁は簡単に自分の世界について説明した。
どんな場所で、どんな物が存在し、人々がどう生きているか。
そして魔法やそれに近いことをできる人間がほとんどおらず、魔法の利便性もさほど存在しないことを付け加えた。

「どんな世界よそれ。魔法が無くても生活が成り立つなんて信じられないわ」
「それに代わる技術が存在するからな。魔法なんて御伽噺でしか存在しないと思ってる奴がほとんどだ」

暁自身、トライデントに所属し太古の遺産の争奪戦に身をおくまで魔法や神秘の類が実在するなど知らなかった。
魔法を使える連中も確かに存在するが、それこそ片手で数える程度しか存在しないしそう言った連中も日常生活で魔法を使う機会はないといっていい。
だがどうやらこちらの世界ではほとんどの人々が魔法に依存した生活を送っているらしい。彼にとってはそのほうが信じられないことだった。

「こっちにいる人間は全員魔法が使えるのか?」
「そんなわけないでしょ。魔法を使える者――貴族が平民の生活を助けてるのよ」

今度は暁がルイズから簡単な説明を受ける。
どうやらこの世界では魔法を使える者は貴族として、魔法を使えない多くの人々は平民として暮らしているらしい。
そして一応火薬やら銃の類は存在するようだが、どうも聞く限り中世ヨーロッパ程度の技術しかないようだ。

(ボーが気に入りそうな世界だな)

今はおそらく医務室のベッドで寝ているであろう妙に偏った選民思想を持つ相棒のことを思い浮かべながら暁は苦笑した。



「とまぁこんなところよ。やっぱり知らないことばっかり?」
「そうだな、ハルケギニアって大陸もお嬢ちゃんがいくつかあげてくれた国名も聞いたことがない」

暁のこの世界に対する知識は世間知らずを通り越して何も知らないに等しい。
かといって別な世界から来たと言う彼の言葉を信じることができるかといえば無理である。
魔法の存在しない世界など、ルイズにとっては荒唐無稽以外の何者でもなかった。

「まぁ無理に信じろとは言わない。お嬢ちゃんの反応が普通の反応だとは思うぞ?」
「当たり前よ。信じられるわけないでしょ……」

ルイズは大きなため息を吐いた。
暁の言うことが本当だとして、そもそも異世界から使い魔を召喚した事例など過去にあったのだろうか。
人間を使い魔としたなどと言う話も聞いたことが無いのだからきっと無いだろう。
これもいつもどおりの『失敗』だったのだろうか。そう考えるとルイズの心はどんどん重苦しくなる。

「んじゃあ話を戻そうか。使い魔の仕事は感覚の共有と物探し、この二つで終わりか?」

ルイズは顔を上げる。苦笑している暁の顔が目に入った。
気でも遣ってくれたのだろうか。話題を変えてくれたことに彼女は少し感謝した。

「あとは主人の護衛だけど……あんた強いの?」
「傭兵をやってたからな、腕に覚えはある」

暁が自信ありげに言った。彼曰くそこそこ名の知れた傭兵であったらしい。
確かに彼の体は大きく平民としてはなかなかに強そうである。
メイジや幻獣の相手は酷だろうが、多少なら頼れそうな気がした。

「じゃあ少しだけ頼りにさせてもらうわ。その他は――雑用をお願いするわね」
「雑用かよ」
「それくらいはできるでしょ」

そう言うとルイズは欠伸をした。だいぶ遅くまで話し込んでしまったようである。
服を脱ぎ、ネグリジェに着替える。
それを暁が不思議そうな顔で見ていた。

「この世界の貴族様は男の前で着替えるのは問題ないのか?」
「あんたは使い魔でしょ、使い魔の目なんか気にしないわ。これ明日洗っておいて」

何か言いたそうにしている暁の方へ下着を放り投げる。
そして布団に包まると指を鳴らし、部屋の明かりを消した。

「朝は起こしてね。じゃ、おやすみ」

よほど疲れていたのか、目を閉じるとすぐにルイズは眠りに落ちていった。



布団に包まってすぐ寝息を立てはじめたルイズを暁は眺めていた。
ここまで自分が男性であることを否定されるといっそ清々しい。

(5年後には精神的にもレディに成長していただきたいもんだ)

苦笑し、カチャカチャと装備を外し始める。
そして外し終わったそれらを部屋の隅にまとめ、先ほどルイズが投げてよこした下着を拾い上げた。

「……これを俺が洗うのか」

女性物の下着を洗濯している自分が浮かんだのをすぐに思考の隅に追いやる。
頭痛がした。もしかしてしばらくこんな生活なのだろうか。
だとしたら最悪である。

(で、俺はどこで寝るんだよ)

ふと気づき、部屋を見回すが明らかに自分の分の寝具はない。
これはもしかして床で寝ろと言うことだろうか。
別に文句はないが、微妙に嫌な気分なのは何故だろう。人として見られていないような気がしたからか。


そして暁は何かを諦めたように大きなため息を吐くと、下着を放り投げ床に寝転がった。


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