あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

最低のララバイ

「何でこうなったんだろう…」
 草原に腰掛けた男は溜息を吐く。
「そりゃおめー、自業自得って奴よ」
 男の隣に突き刺されているデルフリンガーはただ笑う。
「けっ…」

 ルイズの使い魔として召還されたものの、とにかく肉体労働はサボりまくる、態度は尊大、罵倒は数知れず、その癖飯は人2倍要求する、
ルイズに犬呼ばわりされたら激昂して殴る、ギーシュとの決闘に至っては、腹を刺されたにも拘らず鬼のような形相で発砲し、
ギーシュが撃たれて降参しても無視して馬乗りになって殴り続けたりと、とにかく自分勝手であった。
 学院で働く平民達ですら彼に余所余所しくするようになっていった。

「フーケだっけ?あの姉ちゃん捕まえる時なんざ、おめービビって破壊の杖を明後日にすっ飛ばして、娘っ子のとこに着弾してたよな。
あの後ガンダールヴに目覚めて俺っちデタラメに振り回してゴーレム切り崩してやっと止められたよなぁ。でも空になった破壊の杖構えたフーケ撃ち殺すってのは悪どいねぇ」
「あれが最善の方法だと言ったろ。戦場で敵を説得する馬鹿がどこにいる」
「ははは。軍人さんの言う事は違うねぇ」
 その一件以来、ルイズはしばらく口を利かなかった。何せ平気で殺人を犯せる人物と同じ部屋に住んでいるのだ。下手な事が言えない。

「その後もひでーやな。姫さんの依頼に前払いの報酬を要求するなんてな。娘っ子の怒る事怒る事。

「あのクソ姫のわがままで敵陣の真っ只中に行けってんだろ。金貨千枚貰っても安いくらいだよ。今後の地位だって保証してくれないと困る」
「道中の盗賊に傭兵に、あと空賊か。ガンダールヴに目覚めたからって気ィデカくなり過ぎだぜ。あれだけバンバン殺しまくるともう笑うしかねーな。
しかしウェールズまで殺っちまったのはねーよなぁ」
「仕方ねぇよ。空賊の船長に化けてるなんて判んねぇし、第一俺は皇太子の顔だって教えてもらってねぇんだ」
 その後ニューカッスルはレコン・キスタの総攻撃を待つまでもなく総崩れ、同行したワルドは失踪、
ルイズ一行はウェールズの下手人は貴族派だったと言い張ってトリステインに逃げ帰るしかなかった。
 ルイズはアンリエッタに対し、回収を依頼された手紙は既に処分されていた、ウェールズは討ち死にした、と虚実織り交ぜた報告をせざるを得なかった。
 使い魔は、主人が嘘を吐かなければならない状況を作ってしまったのだ。

 そして神聖アルビオン皇国が興り、トリステインに宣戦布告した。今ルイズと使い魔がいる戦場は、タルブの草原の真っ只中である。
完全に自軍が押されていて、もはや撤退するしかないだろうと周囲で囁かれ始めていた。
 男は、自分たちが殿を務める事になるだろうと予想はしていた。寧ろあの自称御主人様のクソガキが自分から名乗り出てもおかしくないとも考えていた。

「はぁ…」
「何溜息吐いてんのよ」
 ルイズだ。背後で仁王立ちしていた。

「何だ、クソガキか」
「いい加減その呼び方何とかしなさいよ。御主人様と呼びなさいといってるでしょ」
 ルイズはこれまで、使い魔からは「クソガキ」としか呼ばれた事がない。彼の三白眼のふてぶてしく完全に見下した顔で呼ばれる度に鞭を振り回す衝動に駆られるが、
相手が人への殺傷に躊躇しないと知った今では、ただ耐えるしかなかった。せめてこの場で冷たく言い放って張り合うのが関の山である。
「よく言うぜ、俺にあんなクソッタレた扱いしておいて、敬意を示せだ?てめーは地位だけで何もなっちゃいない、ただ威張るしか能のないクソガキじゃねぇか」
「言うわね。平民や使い魔風情が貴族に何されようと文句言う筋合いなんてないのよ」
「あぁそうかよ。俺は知ってるんだぜ?お前らが最低呼ばわりしているモット伯な、確かに平民の女囲っちゃぁいるが、
調べたらちゃんと待遇は良くしているし虐待もしちゃいねぇよ。ま、夜伽を虐待と言うならそうかもな!」
「何が言いたいのよ…」
「いちいち言わねぇと判んねぇか?おめぇは貴族の中でも最低だって事だよ。学院の貴族共だってたいがいだが、お前はその中でもぶっちぎりで最低だって事だよ」
 別にルイズがそこまで学院に住む平民を無下に扱っているなんて事はないのだが、彼女の使い魔への待遇は、他の生徒と較べ、公平に見ても良いとは言えない。
しかしそれは殆どが使い魔本人の人格や行動に起因する。
 それに理論武装し根性の捻じ曲がった大人に対し、口論でやり込める程ルイズは人生経験を積んでいない。ちなみにモット伯の話は彼がその場で思い付いたデタラメである。

 今度はルイズの方が溜息を吐いた。
「まぁいいわ。姫様からの勅命よ。全軍撤退が決まったわ。私達が殿を努める事になるの。で、判ってるわよね?」
「その顔は7万の敵陣に一人でさっさと突っ込んで死んで来いって言いたそうだな」
「判ってるじゃない。あんたみたいな性根の腐った奴は死んだ方が世のためよ」
「残念だな、俺は死なねぇ。召還される直前に殺されかけてこうして生き残れたんだ。殺しても死なねぇよ。死にようがねぇ」
 どこからこんなキチガイじみた自信が湧いてくるのか。本当に生き残る気がしたが、出来れば壮絶に散って欲しいというのが、ルイズの偽らざる本音だ。
 実際に召還当時、男は自分が死なないと思い込んでいた状況にあり、ミサイルの雨霰を受けて、爆発四散する直前に鏡に取り込まれたのだ。
絶対死なないという思い込みは簡単に覆そうにない。

 ルイズは去った。残るは男と、地面に刺さったままのデルフリンガーである。
 男は眼前に迫る敵陣を見据えると、デルフリンガーを構えた。体格からして戦闘どころか運動ですら限りなく不利な体だが、ガンダールヴの効果で身が軽くなる。
「おめーさん、そのデタラメな自信はどっから沸いてくるんだ?まぁ大体想像はつくけど」
「俺は何しろい…何だっけとにかく遺伝子のお墨付きで、無敵のガンダールヴ様だぜ!俺は無敵だ!」
「まぁいーや、おめーがどんな最低野郎でも、心を震わせて俺っちを使ってくれれば何だっていいぜ!」
 そして血走った目でただひたすら真っ直ぐ突っ込んでいった。
「掛かって来い!」

 しかして彼は死ななかった。
 ウェストウッド村のティファニアに召還されたからだ。召還されたのが血まみれの剣士だったため当初は慄いたものの、彼を甲斐甲斐しく看病した。
 しかし目覚めた彼の傲慢不遜な言動に手を焼く事になる。それでも笑顔を崩そうとせず相手をしたティファニアは鉄の精神を持ち得たかもしれない。

 後に村の孤児曰く、
「テファ姉ちゃんが鬼のように怒った顔始めて見た」




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