あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロ執事-02


「今年の一番の大物はドラゴンかー」
「予測が外れたな……あ、人間ってのもあったか」
「あれは別だろー」
「俺もサラマンダーみたいな派手なのがよかったな」
わいわいがやがや。
各々が今年の儀式の感想を言い合いながら、魔法を使って学校へと戻っていく。
生徒達が次々と、何も道具を使わずに飛んでいく光景というのは、当然セバスチャンには馴染みがない。
それどころか人間が空を飛んでいる光景などお目にかかった事がない。
本来なら頭を抱え込むべきであるが、周りの生物達を見た時点である程度諦めはついていた。
元の世界よりのそれよりも、自分の世界のそれに近い、動物というより怪物達の群れを見ていると懐かしい気分にもなる。

自分が何であるかを考えると、魔法があってもおかしくはないのだろう。
そもそもここが異世界であるというなら、召喚された身はそれに従うまでだ。
「ではお嬢様、我々も向かいましょうか」
「……え? ああ、そうね。貴方飛べたりしないものね」
「お疲れですか? 顔色が悪いですが……」

「しかし―――魔法というのは便利なものですね」
「何よそれ。魔法が使えない私への当てつけ?」
「いえ。ただ……馬車や自動車も無しにこの距離を移動するとなると、やはり魔法の利便性が際立ちますから」
セバスチャンの元居た世界も、移動には自動車や馬車を用いるのが一般的だった。
自身のみ移動する際は"少しだけ迅く走ったり"してはいるが、それは例外である。
「自動車? 何だか解らないけど、メイジはみんなフライの魔法を使うのよ、知らないの?」
「いえ……私の知っている範囲では、これほど多くの人間が魔法を使っているのは見たことが無かったので」
―――それも、こんな幼い子供達が。
元の世界では皆が夢を見る「空を飛ぶ」という事を、いとも簡単にやってのけているのを見て、またこれはとんでもない世界に呼び出されたものだと実感した。
悪魔という身の上、召喚自体に驚きはないもののやはり別の世界というのは予想外である。
「そういえばあんた、どこから呼び出されたのよ。執事って事はどこかの貴族に仕えてたんじゃないの?」
「倫敦という所に主人が居ます。この契約を見る限り―――」
左手の魔方陣の上に刻まれたルーンを晒しながら、セバスチャンは少々困ったように続けた。
「こちらの世界の契約の方が、優先順位が高いようです。私はファントムハイヴ家執事であり、かつお嬢様の執事でもある、という……少々、複雑な事になっています」
「倫敦?何よそれ、どこの国?」
「英国という国です。こちらの世界ではない、別の世界の」
「……」
別の世界と言う執事の言葉に、ルイズの脳裏にある光景が蘇った。

◆◆

契約時。
唇を触れあわせた時セバスチャンは左手に熱さを感じたが、同時にその瞬間、ルイズの脳内に流れ込んだある映像があった。
雨の中で見ているような荒い映像で、断片的なものでしかない。
それでも、少なくとも自分の知っている世界でないことは解った。
「ぐずぐず―――もう――仕留め―――」
ハルケギニアとは比べものにならない程大きな町並み、それを覆う深い霧。
「―――私は――執事ですから」
何か赤い者と戦う血まみれの執事と、傍らの少年。
「幾千にも――も――ごきげん――――」
登場人物も舞台も設定もわからない映像を見せられ、わかったのはそれが彼に関係すると言う事だけ。
その映像が何によるものなのか、何故こうして頭に入ってくるのかはすぐにはわからなかったが、
今となってはあれがある意味視覚の共有だったのではないだろうか?
こうしてその映像の中の人物が目の前に居る以上、それを信じさせる要素としては十分だろう。
ルイズはそう考え、彼の事について深く考える事を止めた。
「前の主人が、別の世界に?」
「前の、ではなく、現行も主人ですよ。お嬢様。確かに私はあなたに仕えていますが―――真の主は、元の世界のシエル・ファントムハイヴという方です」
おそらく契約の印が消えずに存在している事もその証拠でしょう、とセバスチャンは付け加える。
「しかし契約は契約です。お嬢様の願いを叶えるまでは、私は執事としてあなたにお仕えします」
「一人前のメイジになる……」
「そうです。お嬢様がどこの貴族の前に出しても恥ずかしくない実力と功績を上げ、一人前のメイジとなる時まで」
深く頭を下げながらそう言うと、また前に向き直った。
「傍を離れるなという命令があったのですが……まあこのルーンによる契約が他の契約を反故にするような無粋なものでなければ、元の世界に戻った際になんらかの辻褄合わせがあるでしょうね」
「……何の事かわからないけど」
「では、急ぎましょうか。あの建物の方に向かえばよろしいのですね?」
「トリステイン魔法学院よ。この国のメイジは、みんなここで魔法を学ぶのよ」
話ながら歩いているうち、二人の足は石造りのアーチに差し掛かっていた。
「そういえばあんた、執事として扱えばいいのかしら? 使い魔の方がいいかしら」
「できれば執事として使役していただければ。執事たるもの、主人の命はどんな事でも遂行します」
「ふーん……じゃあそうしようかしら。同じようなものだものね」
「では……ここの事について、色々とお聞きしたい事があるのですが」

「"この世界"ではまず、使い魔とはどういう存在なのですか?」
「生徒は一人一匹、使い魔を召喚するの。」
「使い魔の役割は―――まず、主人の目となり耳となる、感覚の共有があるわ」
「感覚の共有?」
「契約の時にどっかの街が見えたのがそうかしら……まあいいわ。次は主人の望むものを手に入れてくる事」
「こちらの知識を手に入れ次第、お嬢様の望むものは手に入れて参ります」
「……そうか、何にも解らないんだっけ」

契約についてはすんなり受け入れた執事であるが、知識については全く異なることを思い出す。

「知識もそうですし、その前にまず文字が読めませんしね」
「じゃあ……明日はまあ私と一緒に授業に来なさい。明後日辺りには図書館で文字の勉強でもしましょう」
「かしこまりました」
「疲れたわね……今日はもう休もうかしら」
「では、お部屋の方へ」

その後も情報を教えられながら寮へと向かっていく。
執事として働くにあたり、服などは同じで良いのだろうか、という不安があったものの解消された。
ルイズのローブの下の服を見る限りでは全く構造が異なると言うわけでもない。
そもそも彼女は自分が来るまでは自分でやっていたようなので、解らなくとも何とかなるだろう。

セバスチャンが考えていたのは、むしろ食事の方である。
この学院ではきちんとしたメイドがしっかりと働いていて、その上シェフも焦げていない食事を作るらしい。
いつもの屋敷での騒ぎを懐かしく思いながら、きちんと働く使用人の姿に何故か感動すら覚えてしまう。

「……では、私は平時何をすればよろしいのですか?」
「そうね……何かあるまでは私に付いていてくれれば良いわ。まあしばらくは文字とか覚える為に図書館とか学院内を回っていてもいいわよ」
「明日のご予定は?」
「予定も何も……ただ普通に授業があるだけよ」

時計を取り出してから時間の進みが違うのを思い出して溜め息を付く。
ここには正確な時計が存在しているのだろうか?
存在していなければ、時間を確かめる為に他の手段が必要になる。

「では今晩中に明日の用意を致します。学院内を回るのは……夜間回るというのは些か迷惑になるかもしれませんし、明日の空いた時間に図書館で基本的な書物を借りれられば解決します」
「……執事って居たことないんだけど、どこの執事もこんなにテキパキしてるの?」
「執事は主人の為に存在します。その命令を果たす為なら、まずどんな知識も持っておかなければなりません」


部屋内にて、ルイズによる説明は続く。
とりあえず子供が教わる程度の
世界自体が全く異なるので、知識はいくらあっても不足状態なのだ。
時には羊皮紙に簡単な図を書きながら、ルイズの知識がセバスチャンに教えられていく。
休む筈が深夜遅くまで講義を行う事になってしまっていたが、

「この世界は一つの大陸で、ここがトリステイン。隣の国がゲルマニア。他にもガリアとか……」
「ここは、島なのですか?」
「アルビオンは島じゃなく、大陸。浮遊大陸よ。宙に浮いてるの」
「……」
「まあ今日はこの辺にしておくわ」

そもそもの問題はこのように、大陸が浮いているという非常識な事が、こちらでは常識なのである。
人間の思考などはそのままなのに対して、魔法が最初からあったこの世界の文化は根本からそういうようにできている。
そう言った事を全て飲み込んだ上で話を聞かなければ、知識を吸収する妨げになる。
執事の苦労は、どこの世界に行こうが絶えない。

◆◆

―――深夜。
寝入ってしまったルイズを確認してからセバスチャンは外に出た。
悪魔である彼には睡眠は必要ないため、夜間は翌日の準備に当てられる。
今日の講義によって基本的な部分については学べたが、文字が読めないのはやはり障害になりそうである。
これ以上主人を煩わせるのも相応しくないと考えたセバスチャンは図書室へ向かうため闇の中に姿を消した。



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