あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

世界最強コンビハルケギニアに立つ-01


「心配するな、奴と決着をつけるまでこの私が死んでたまるか。早速弱者を助けに行かねば・・・急ぐぞ!」

夜の森の中に、二人の男がいた。
片方の男は血まみれで、息も絶え絶えだった。
それでも立ち上がり、歩き出した彼をもう片方の男が気遣っている。

「おまえ本当に大丈夫なのか?」

「しつこいぞ!私は不死身なのだ!この程度の傷で死ぬはずが――」

そのとき唐突に二人の前に巨大な鏡が現れ、眩い光があたりを包んだ。

そして鏡が消えたとき、彼らの姿も世界から消えていた。




「我の運命に従いし使い魔を召喚せよ!」

爆発が起こる。
それはまた一つ、少女が失敗を積み重ねたことを意味していた。


ここはトリスティン魔法学院。
各国の貴族の子弟に魔法をはじめとした様々な教育を行う、由緒ある魔法学校である。

少女――ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは2年次への進級のため、春の使い魔召喚の儀式に臨んでいた。

彼女は焦っていた。
同級生たちが次々と召喚を成功させる中、彼女だけが10回以上の失敗を積み重ねているのである。
使い魔を召喚できなければ留年か、下手をすると実家に連れ戻されてしまう。

周りからは容赦ない野次が飛ぶ。
彼女の手は怒りで震えていた。それは無神経な級友たちへの怒りであり、彼女自身への怒りだった。

「ミス・ヴァリエール、力を抜きなさい。深呼吸して心を落ち着かせるのです」

傍らに立つコルベールが優しくルイズを促す。
はい、とルイズは頷く。
一度大きく深呼吸し心を落ち着かせ、今一度召喚の呪文を唱える。

「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。我の運命に従いし使い魔を召喚せよ!」

再び爆発が起こる。また失敗か――と落胆しかけたとき、彼女はそこに何かが存在していることに気付いた。


二人の男が倒れていた。
片方は黒髪を逆立てた男。もう片方は金髪の、ミノタウロスのような体格をした男。

黒髪の男のほうは一瞬呆けた後、警戒するようにこちらを見ていた。しかし金髪の男のほうは起き上がる気配がなかった。

気でも失っているのだろうかと思い金髪の男をよく見たとき、ルイズはようやく気付いた。
彼は血まみれだった。ルイズでも危険な状態だとわかるほど、彼の体はボロボロだった。

「し・・・死んでる?」
ギャラリーの誰かがかすれた声でつぶやいたのが聞こえた。

ルイズたちへの警戒を解いたのか、もはやそんな余裕もないのか。
黒髪の男が金髪の男の肩を揺すりながら何事か叫んでいた。

コルベールも慌ててそちらに駆け寄る。

ルイズはただ呆然とその光景を見ていた。



黒髪の男は壁にもたれかかり、腕を組んで目を閉じている。ルイズは正面の椅子に座り、男のほうをじっと見ていた。
二人は医務室の中にいるコルベールを待っている。
金髪の男はあのあとすぐさま皆によって学院の医務室に運ばれた。
けっこうな時間が経過したが、まだ金髪の男がどうなったのかはわからない。

「ねぇ、あんた名前なんていうの」

ルイズは沈黙に耐えかねて男に尋ねた。男は閉じていた目を開き、少しだけ微笑んだ。

「暁巌(アカツキ イワオ)だ。もう一人のほうはボー・ブランシェ。お嬢ちゃんは?」

「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ。ルイズで良いわ。それでアカツキ、あんたたちどこから来たの?」

暁の出で立ちはルイズから見て明らかに妙だった。地味な色の衣服にベルトを巻きつけてあり、ベルトには何か変なものが色々とくっついている。
平民なのは間違いないのだろうが、暁のような出で立ちをルイズは見たことも聞いたこともなかった。

「日本だよ、さっきまで富士山のふもとにいた。それでここはどこなんだ?変な能力を使う子供やら見たこともない生き物がいるってことはアーカムかトライデントの施設か何かか?」

気付いたらさっきの場所にいたからな、と言って暁は肩をすくめた。

「ここはトリステイン王国のトリスティン魔法学院よ。ていうかニホンってどこ?アーカムカトライデントって一体何?そもそも魔法を知らないってどういうことよ」

ニホンだのフジサンだの、ルイズのまったく知らない単語が乱舞していた。
それに暁のいう『変な能力』はどうもボーとか言う男を運ぶ際に皆が使った『レビテーション』と『フライ』のことを言っているらしい。妙に驚いていたのを覚えている。
初歩の魔法すら知らないなんて、一体どんな田舎から来たというのか。

二人はしばらく見つめあった。
目の前に珍獣がいたらこうなるに違いない表情で。



「なるほど、よくわかったわ」
「ああ、俺もよくわかった」

二人は簡単に地理や魔法について話し合った結果、一つの結論に至る。

こいつが何を言っているのかわからない。と言う結論である。


ただ、ルイズにとっては「とんでもない田舎から来たのだろう、東方かもしれない」と考えれば済んだのに対し、暁にとっては非常に頭の痛い状況だった。

(下手するとここは異世界か……)

暁は商売柄、帰らずの森のような『異世界』としか表現できない場所をいくつか知っている。
まったく知らない地名、当たり前のように変な能力を使った子供たち、見たこともない生物。
短時間で暁自身が得た情報から考えて、ここがアーカムかトライデントの施設でない限り『異世界』と言われても納得ができる。
もっとも『異世界』で生きた人間たちが普通に生活していたなどと言う話は聞いた事が無いのだが。
ルイズが自分を騙して遊んでいてくれればどれほど気が楽か。暁は眉間を指で押さえながらそんなことを真剣に考えていた。

「まぁ、あんたたちがどんなへんぴな所から来た平民でもこの際気にしないわ」

ルイズが不服そうな顔でそう言った。
こっちは気にするんだ、と暁は言いたかったが我慢した。

そしてルイズが何かを言いかけたとき、医務室の扉が開き中から頭髪の寂しい男が現れる。
男は暁に微笑み、言った。

「お連れの方は、大丈夫ですよ」

ここに飛ばされて以来ずっと緊張していた暁の肩からようやく力が抜けた。



「それで、俺に使い魔になれと?」

暁は頭髪の寂しい男――ここの教師でコルベールと言うらしい――から現状について説明を受けていた。

自分たちは使い魔召喚の儀式でこの場所に召喚されたこと。
その儀式で呼び出された生物と使い魔の契約をしなければならないということ。
人間が呼び出された前例がないこと。
そして、召喚した使い魔を送り返す手段がないこと。

暁は考える。
何か飼い犬になるようで若干嫌だったが、ここの連中にはボーの命を救ってもらった借りがある。
金で返せるあても無い。もし自分が使い魔になることで借りが返せるのであればそれでいいかもしれない、と思った。

「いいぜ、仲間の命を救ってもらったわけだしな」

「おお、同意してくださいますか」

「ただし帰還する方法が本当にないか調べておいてくれ。お嬢ちゃんが俺を必要としなくなるか仲間の命の分働いたら、できれば帰りたいんでな」

その言葉にルイズが何か反論しようとしたが、コルベールによって制される。

「それで構いません、ありがとうございますミスタ・アカツキ。ではミス・ヴァリエール、早速契約の儀式を」

コルベールに促され、ルイズがこちらに歩み寄ってくる。
かがむように言われたので目線の高さまで腰を屈めてやる。
今まで意識していなかったが、良く見ると整った顔立ちだなと、暁は思った。
それだけに今の不機嫌な表情は少し残念だった。

「なぁ、お嬢ちゃん。何でそんなに不機嫌なんだ?」

「うっさいわね!当然じゃない平民の、それもあんたみたいな野蛮そうな男が相手なんて!」

悪かったな、野蛮人で。と笑いかけてやる。
ルイズはまだ何か言いたそうそうだったが「むぅ」とつぶやき呪文を唱え始めた。

「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我が使い魔となせ」

ルイズの顔が急接近してくる。
何をするのかまったくわかっていなかった暁は一切反応できなかった。
そして二人の唇と唇が触れ合う。

「感謝しなさいよね、あんたみたいな平民で野蛮人の男が貴族にこんなことされるなんて、普通は一生ないんだから」

そう言ったルイズの顔は赤かった。
暁は不思議そうな顔でルイズを上から下まで見た後、ため息を一つつき残念そうに言った。

「・・・・・・5年後に期待だな」

「なぁぁぁんですってぇぇぇぇぇ!!」

廊下に乾いた音が響いた。


さらに襲い掛かってこようとするルイズをコルベールが必死に抑えている。
初めてだったのに、初めてだったのにと半泣きになっているのを見て暁は若干申し訳ない気分になった。
謝っておいたほうが良さそうだ、と思い口を開こうとした瞬間、体が熱くなり左手に激痛が走る。当然ながら引っ叩かれた頬の比ではない。

「何だ畜生!」

慌ててグローブを引き抜く。
露出した左手には、何か妙な文字が浮かび上がっていた。

「ああ、使い魔のルーンが刻まれたようですな。おめでとうミス・ヴァリエール、コントラクト・サーヴァントは成功です!」

いまだに暴れているルイズを抑えながら、コルベールは彼女に賛辞の言葉を送った。
もっとも、本人は聞いていなかったようだが。


ルイズの暴走はとりあえず暁が手を合わせて謝罪したことで何とかおさまった。
どうもルイズは自分の体に非常に強いコンプレックスを抱いているらしい。

(とりあえず身体的特徴については今後触れないようにしよう)

暁は女性を怒らせるのが楽しいなどと思ったことはない。
それに、ルイズは本当に5年後に期待できるので――こんなことを口に出したらまた引っ叩かれそうだが――あまり奇抜な表情はさせないほうが良いだろう。
こちらを睨んでいるルイズを見ながらそんなことを思った。

「そ、それにしても珍しい形のルーンですな。スケッチさせて頂いてもよろしいでしょうか」

「別に構わんが。これが使い魔の印みたいなもんか?」

「ええ、そうです。見たことのない形状なのは・・・あなたが人間だからかもしれませんね」

鎖か首輪のようなものだろうか、と暁は考える。
だとしたら大失敗だったがもう色々と遅い。
自分の判断の甘さを恨みながら、本日何度目かのため息を吐いた。

「では私は失礼します。ミス・ヴァリエール、ミスタ・アカツキと仲良くするのですよ」

スケッチを終えたらしいコルベールが立ち上がり、言う。
そして「絶対無理だ」という顔をしているルイズに苦笑すると、立ち去った。

医務室の前に二人だけが残される。
非常に気まずい空気が流れる。はっきり言って重苦しい。

「まぁなんだ・・・その、これからよろしくな。お嬢ちゃん」

「ご主人様と呼びなさい・・・。はぁ、もう仕方ないわね」

ルイズは諦めたようにため息を吐き、歩き出した。

「部屋に帰るわ。案内するからついて来なさい」

「はいはい、ご主人様」

――まずは仲直りからはじめないとならないようだ。

憮然とした態度で歩くルイズの後を歩きながら、暁は苦笑した。


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