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悲しき使い魔

わたしの名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
トリステイン学院の一生徒である。
幼い頃から、わたしには様々な物がなかった。
昔から足が不自由で、行動するには常に御付を一人は必要とし、体が病弱なため週に一度は医者にかからなければならない。
それだけならまだいい。一つ上の姉であるカトレアお姉さまも非常に厄介な持病を持っているのだから。
だけど一番の問題は、なぜだろうか、わたしには魔法が使えない・・・。
わたしが扱う魔法は全てが爆発へと変わった。
初めは誰もがコツを掴んでいないからだと言った。
だが、年を経るにつれて嫌でも自分のことを認めなくてはならなくなる。
わたしは、魔法の才能が乏しいのではなく・・・才能が一切無いのだと。
幼い頃は愛情を注いでくれた父様もそれがわかるにつれて、わたしに会いに来てくれることが少なくなり。
厳しくもその裏に優しさを持った言葉を放っていた母様は、今では廊下ですれ違っても無言で通り過ぎる。
常に励まし可愛がってくれたエレオノール姉さまは、仕事が忙しいのか気まずいのか家に帰ることがほとんどない。
不自由な足はわたしを遠い景色から隔絶し、病弱な体はどこかへ嫁入りすることもできず、魔法が使えないわたしは貴族という社会からもはじき出される。
ラ・ヴァリエール家、始まって以来の大汚点。全ての劣等の集大成がわたしだった。
いつも慈愛と共に受け入れてくれるのは、カトレア姉さまだけであった。
だけど、カトレア姉さまに甘えれば甘えるほど。わたしの中にある大事な芯が溶け出し、零れ落ちていくような焦燥感に苛まれる。
――わたしには自由が無い――
――わたしには強さが無い――
――わたしには優しさ無い――
――わたしには温もりが無い――
だから、トリステイン魔法学院への入学を父様母様に打ち明けたのは自分を変えたいがためだった。
もちろんのこと父様は猛反対し、母様は無言。
説得は数週間と長引き、途中で帰ってきたエレオノール姉さまも父様側に加わり大変な騒ぎだった。
だけど、カトレア姉さまの説得と、わたしの熱意を根気よく伝えることでなんとか入学を許してもらった。
ただ条件が一つだけつくことになる。
それは家からメイドを一人連れて行くことであった。
本来、学院側の規則として使用人は連れて来てならないが、わたしは足が不自由なことから特例として許可された。
選ばれたメイドはシエスタ。幼い頃からわたしを世話していたメイドの一人だった。
そうしてわたしは新たな自分へと変わるために、魔法学院へと入った。

トリステイン魔法学院での生活はそれほど悪くは無かった。
身の回りのことは大抵シエスタがやってくれる。
建物はさすがに体に障害を持つ者に優しい作りではないが、こちらはこの体と十年以上も付き合っているのだ。多少のことは一人で出来る。
さらに家以外で習う魔法の勉強は非常に興味深かった。
様々な講師、様々な解釈。十人十色の魔法の考えがあり、わたしを退屈させない。
そして領内でさえ、ほとんど家から動けなかったわたしに奇妙な友人ができた。
勉強に励み篭った図書館。席はいくらでも空いているのに、いつも目の前に座る寡黙な少女、タバサ。
どこかしらで出会うたびに気軽に声をかけてきて、なにかと付きまといこちらの笑いを誘おうとする愉快な少女、キュルケ。
タバサとは言葉はほとんど交わさないが、無言の友愛を育み。
キュルケとは初めこそ宿敵の家柄と警戒したが、その根の明るさと情熱に打ち解けていった。
確かに学院生活は悪くなかった。
意欲を、興味を、友情を。様々な物を与えられた。
だが、現実は甘くない。
わたしの目標は魔法なのだ。
一年間、壊れかけのボロボロの体を酷使して頑張った。
冗談抜きで血反吐を吐き、体に負荷をかけ過ぎて生死を彷徨ったこともある。
気を失うことなどしょっちゅうであった。
そのたびにタバサの“ヒーリング”の声を聞き、目を開ければ泣きそうなキュルケにこっ酷く怒られる。
そして怒り顔のシエスタにお仕置きという名目で、目の前で三人が(わたしの好物)クックベリーパイを美味しそうに頬張り、わたしがそれに泣きながら謝る。
元々繊細とは程遠い壊れやすい体が磨耗させた割りに、成果はまったく出ず、いつもの爆発である。
そしていつしか、わたしに付いたあだ名は「欠陥品の」ルイズであった。

キュルケはそのことに怒り、タバサは無言だったがそのことを言う者がいれば魔法で撃退した。
ただ申し訳ないがシエスタであった。元々別の場所から連れて来られた専属メイド、学院のメイドと反りが合わずわたしのこともあり、かなり扱いが酷いという。
そしてそのことはわたしの胸に重く圧し掛かる。
さらに悪いことはあった。医者の話によれば足の不自由は正体不明の病気であり、非常にゆっくりとだが最近進行しているという。
わたしは様々なものに押し潰されそうになりながら、一年を過ごした。

そしてその日はやってきた。

春の使い魔の召喚儀式。
これができなければ、留年。
わたしの場合は、実家に連れ戻されるだろう。
タバサはすでに使い魔を持っていたらしく、それは見事な風竜。
先に召喚をしたキュルケは彼女によく合うサラマンダーだった。
キュルケに祝福の言葉を送りながらわたしは緊張する。
そしてわたしの番となり、車椅子(コルベール作)をシエスタに押してもらい前に出る。
周りからは嘲笑の目、無責任な野次。
たった三人を除き、全ての人はわたしの失敗を確信する。
それはわたしも例外ではなく。
振り下ろした杖の先。起こった爆発に落胆し。
そこに現れた一冊の本に驚愕した。
更に本は自らに掛けられた錠を弾け飛ばし、独りでに開く。
『Ich befreie eine Versiegelung.(封印を解除します)』
誰もが驚きに凍りつく中。
勝手に捲られていた本が急に閉まり。
『Anfang.(起動)』
その言葉と共に、ルイズの胸から小さな光が出た。
「――っ!?」
そしてその光は本の前まで来ると。
閃光が辺りを焼いた。
そして光が収まった時、そこには巨大な魔方陣があり、そこには跪く四人の者達がいた。
小柄な目のきつい少女と長身のキリリとした女性、それに温和そうな女性にがっしりとした体躯の男。
驚きのあまり声もでないわたしに、長身の女性が厳かに言う。
「闇の書の起動確認しました」
それに温和そうな女性が続く。
「我ら闇の書の収集を行い、主を護る守護騎士でございます」
そして男が後を引き継ぎ。
「夜天の主の下に集いし者」
最後に少女が締める。
「ヴォルケンリッター。なんなりと命令を」
跪き、命を待つ四人の者達。
それが新しき楽しい日々の――そして身を引き裂くような悲劇の始まりであった。



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