あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

蒼い使い魔-41


「何よ便利屋って、どういうの?」
「言葉の通りだ、内容は問わん、様々な依頼を受けそれを遂行する」
首をかしげるルイズにバージルは簡単に説明をする、
ルイズは大体理解したのか、納得したように頷いた
「ふぅん、あんたはそれを昔やっていたんだ?」
「そうだ、わずかな間だったがな」
バージルのその言葉にルイズは「へぇ……」となにやら意外そうな表情でバージルを見つめた。
「何だその顔は」
「いえ、あんたが働いていたなんてね、ちょっと意外だったわ」
「何故だ」
眉を顰めるバージルにルイズが肩をすくめた。
「だって、想像できないんだもん、あんたが働いてるとこ」
「……まぁいい、ともかくだ、あの部屋は言うなれば事務所だ、寝るための部屋ではない」
バージルは不愉快そうにそう言うと、踵を返し屋根裏部屋を後にしようとした。
慌てたルイズは、バージルのコートの裾を握りしめる
「まだ用があるのか? 俺はこれから部屋の準備に取り掛かる。お前は昼には起きて店の掃除だろう、早く寝ろ」
バージルが鬱陶しそうに振り向く、視線を下に向けると、ルイズが口をへの字に曲げ、何やら言いにくそうに口を開いた。
「ぅ……、あ、あの部屋があんたの事務所なら、あんたも寝るときはこの部屋よ、
ご主人さまがこの部屋なんだもの、あんたもここで寝るのは当然でしょ……それと……」
ここで寝ろ、との言葉にバージルはあまりいい表情をしなかったが……黙って聞いた。
「それと、何だ」
「じ、準備はわたしが起きてからにしなさい!」
「それまでどうしろというんだ」
「うぅ~~……いいからここにいる!」
バージルのその言葉にルイズは顔を真っ赤にしながら言うと、
そそくさとベッドに横になると毛布をかぶってしまった、
バージルは仕方なく、適当に積まれた木箱の上に腰かけると腕と脚を組み目をつむる……。
「ちょっと」
毛布から顔を出したルイズに声をかけられ、再び目を開ける。
「こっち来なさい」
「一々注文の多い女だ」
バージルはうんざりしたように呟き床に腰を下ろす、そしてルイズの眠っているベッドに背を預けた。
横になる気配がないバージルにおずおずとルイズが声をかける。
「……寝ないの?」
「必要ない」
「そ……おやすみ……」
ルイズはそう言うと、バージルの背中に頬をくっつける。
確かにひどい場所だが……、一つだけうれしいことがあった。
ここにはあのバカ竜がいない、忌々しい惚れ薬の効果もようやく切れたと思ったのに!
まったく、この冷徹傲岸不遜でどこまでも朴念仁で空気を読まないバカ使い魔のどこがいいのだろうか?
他にもバージルを好いているであろう連中がいない、それは素直に喜ばしい。
わたしはー、別にー、こんなバカ悪魔ー、好きじゃないけどー……。
とかなんとか小さな声で呟きながらルイズはちょっぴり幸せ気分で頬を摺り寄せて目をつむる。
頬を染め、この長期休暇ぐらい、もっと構ってもらうんだから……と呟く。
それと……、街の噂を逐一拾って姫さまに報告しなきゃね、
忙しいことになりそうだと思いながらルイズは眠りに落ちて行った。
しかし。
ルイズのささやかな願いと幸せは、様々な意味で打ち砕かれることになる。
それが判明したのは、翌日の夜のことである。
その日も『魅惑の妖精』亭は繁盛していた。
ルイズはげんなりしながら、先日のように料理やらを運んでいた。
ルイズを見た酔っ払いの反応は二通り、まずは、この店ではこんなガキを使っているのか、と
いろいろな部分が小さいルイズを見て怒る連中である。
こういうお客様にはルイズはワインをたっぷりサービスすることにした。
壜を逆手に持ち、背筋を伸ばしお客様の前に立つと、何かの儀式なのか、壜を持った左手を水平に伸ばし、右手を左上腕部に添える。
そして壜を両手にもち、顔面目がけ振り抜き、壜ごとプレゼントするのである。
もう片方は特殊なご趣味をお持ちのお客さまだ。
ルイズは容姿だけはバカみたいに可愛らしいので、その筋の人達にとっては逆に喜ばしいらしい。
そういう連中は黙っていればおとなしそうに見えるルイズをナめ、決まって小さなおしりや太ももを撫でようとする。
ルイズはそう言う連中には足技をサービスすることにした。
そんなに触りたきゃ好きなだけ喰らわせてやると言わんばかりに、魔人化キック13を受けていただくのである。
そんなわけでお愛想の一つも言えないルイズは、当然一枚もチップをもらえない。
スカロンに呼ばれ、「ここで他の子のやり方を見学しなさい」と、店の隅に立たされた。
なるほど、他の女の子達は巧みであった。
ニコニコとほほ笑み、何を言われても、されても決して怒らない。
すいすいと上手に会話を進め、男達を褒め……、
しかし触ろうとする手をやさしく握って触らせない。
すると男達は、そんな娘たちの気を引こうとしてチップを奮発するのであった。
あんなことできるわけないじゃない、とルイズは唇を歪めた。
メイジは貴族のこの世界、生まれたお家はヴァリエール、おそれ多くも公爵家!
領地に帰ればお嬢様! のルイズである。
明日世界が終わると言われても、あんなお愛想はかませない。
しかも、こんな恥ずかしい恰好で……。

格好?
その時、ルイズは改めて今の自分の姿を確認する、昨日と同じキャミソール姿である、
中身は確かに自分でもダメダメだと自覚しているが、外見はかなりの線いってるんじゃないかしら。
ちらっと店に置かれた鏡に気がつく、その前で何度かポーズをとってみる。
親指などをくわえて、ちょっと上目づかいにもじもじなど、してみた。
うん、恥ずかしいカッコですけど、わたし可愛い。
腐っても貴族、あふれ出る高貴さにはここにいる女の子の誰だってかなわない。わよね、きっと、たぶん。
この姿をみたらバージルも見とれるんじゃないだろうか?
そう考えると、ルイズはちょっとうれしくなった。
なによばか、今頃わたしの魅力に気が付いたっておそいんだから!
なんだその格好は、そうか、ご苦労なことだ、せいぜい稼いで早く金を返せ、期待はしていないがな。
……うん、だめだ、想像上ですら、こんなことしか言ってくれないやあいつ……。
がっくりと肩を落として溜息をつくと、ふと壁に張られた羊皮紙が目に入った。
そこには『依頼、なんでも引き受けます、詳しくはミ・マドモワゼルまで』、とだけ書かれていた。
「あの……ミ・マドモワゼル、この張り紙は?」
ルイズは壁に張られた羊皮紙を指差し、スカロンに尋ねる、店ではこう呼ぶ決まりだ。
「え? あぁこれ? 昨日バージルくんと話してたでしょ? 
その時に頼まれたの、こうやって宣伝しておけば、依頼が来るかもしれないってね」
ルイズはなるほど、と小さく頷いた、酒場には多くの情報とともに、様々な人々が集まる。
こうして張り紙を張っておけば、依頼が舞い込む可能性もあるのだ。
スカロンが了承したのは、便利屋が評判になればその分、酒場の利益も上がるから、という理由だった。
もちろんきちんと部屋代も払い、仲介料として報酬の一割を払う、そう言う約束もあるらしい。
ルイズにとって驚きだったのはそれらは全てバージルが自分から提案したことだ、
やはり昔、便利屋をやっていたことが少なからず影響しているのだろうか。
「それで、何か依頼は来たんですか?」
ルイズが尋ねるとスカロンは小さく首を横に振った。
「まぁ、まだ始めたばかりだから、仕方がないわ、さ、それよりルイズちゃん、お兄さんの心配よりもっと他の子を見てお勉強なさい」

「バージルぅ……終わったわよ……」
空が白み始めるころ……ようやく仕事から解放され、ふらふらな足取りでルイズがバージルがいる"事務所"のドアを開けた。
部屋の中はすっかり改装されており、二つあったベッドは撤去され、部屋の奥にはよく言えばアンティークの机、
応接のための二対のソファとテーブルが置いてある。
ただ、その事務所の主はというと、偉そうに机と同じ、古びた椅子に腰かけ、机に足を投げ出し本を読んでいた。
ドアが開かれても眉ひとつ動かさず、反応すらしなかった。
ルイズが客だったらどうするつもりなのだろうか? 接客する気ゼロ、酒場で働いているルイズといい勝負である。
「あんたね……私が客だったらどうするつもりだったの? 無愛想にも程があるわよ?」
ルイズがそんなバージルを見て呆れたように呟く。
「どの口がほざく」
バージルは冷徹に切り捨てると読んでいた本を閉じ、掛けていた椅子から立ち上がった。
「やっぱり仕事は来てないみたいね」
「まだ始まったばかりだ、いつまでこの状態が続くか分からんがな」
バージルはあまり気にしていないのか、しれと答えた。
「あ~~、本当、空の上は涼しいわねぇ……」
キュルケがシャツのボタンを全て外し、手で凹凸のはっきりとした身体を仰ぎながら呟く。
場面は唐突に切り替わり、翌日……
タバサとキュルケの二人は、シルフィードに跨りトリスタニアへ向かっていた、
夏の容赦ない日差しのおかげで寮塔の部屋の中はまるで蒸し風呂、
キュルケはタバサの部屋で、彼女の生み出すキンキンに冷えた氷の粒が混じった風を堪能していたのだが、
読む本がなくなった、とのことで、街への買い出しの付き合いに来ていたのだった。
「それにしても」
キュルケはじっと本を読み続けるタバサを見つめる。
「ねえ雪風。あなたってばまるで新教徒みたいに本が好きなのね。
それってもしかして新教徒の連中が夢中になって唱えてる『実践教義』ってやつ?」
――実践教義、始祖ブリミルの偉業とその教えを記したと言われる書物『始祖の祈祷書』の講釈を忠実に行うべしと唱える一派だ。
タバサは本を閉じると、キュルケに手渡す、タイトルは『悪魔学の実際』と書かれていた。
「ずいぶんアレなタイトルね、どうしたのこれ」
「もらった」
短く返すタバサを横目で見ながらキュルケが本をあけ中身に目を通す。
なるほど、中身は悪魔に関する解説、あるいは研究書のようだ、悪魔と対峙する際の心構え等が書かれていた。
「信仰は尊き支え、でも直接の力にはならない」
本の中身を引用したのか、タバサが呟く
「ま、そうよね、あなたが新教徒なワケないわよね」
キュルケはそう言うと、本をタバサに手渡し、自慢の髪の毛をかきあげた。

「おねえさま~……お腹がすいたのね~……」
そうこうしながらトリスタニアの城下町にやってきた二人……、
否、変化を使ったシルフィードを含めた三人はブルドンネ街から一本入った通りを歩く。
時刻は夕方に差し掛かったばかり、うっすらと暮れゆく街に、魔法の明かりを灯した街灯が彩りを添えてゆく。
買い物も終え、夕食でも食べていこうと、三人はチクトンネ街を歩いていた。
そんななか後ろをふらふらと歩いていたシルフィードがついにだだをこね始めた。
「もういい加減許してほしいのね! シルフィはここ最近お肉やお魚を食べてないの! 野菜ばっかり! おなかすいたおなかすいた!」
流石に哀れに思ったのか、シルフィードの懇願を無視しているタバサにキュルケが囁きかける。
「ねぇ、ああ言ってるけど、そろそろ許してあげたら?」
タバサはそれすらも無視しすたすたと歩みを進めていく、反逆の罪は重い。
「ふぅ……それじゃどこにしましょっか、なにか変った店とかないかしらねぇ……」
キュルケはそんなタバサを見ながら小さくそう言うと、あたりを見回した。
その様子を見たシルフィードはしょぼんと肩を落とす、
そうやってしばらく歩いていると……一軒の店の前で急にシルフィードが顔をあげ、くんくんと鼻を鳴らし始めた。
「タバサ、どうしたのこの子?」
「……?」
何かおいしいものの匂いでも嗅ぎつけたのだろうか、シルフィードはしきりに匂いを嗅ぐ仕草をすると、突然表情を輝かせた。
「きゅいきゅい! おにいさまのにおいがする! きゅい! 行ってくるのね! ええい、おどきちびすけ!」
そう叫ぶや否や、タバサを突き飛ばし店の中へと猛然と駆けこんでいく、
「ちょっ! どこ行くのよ! タバサ、大丈夫?」
倒れ伏したタバサを抱き起こし、キュルケは店の看板へと視線をやる
「……『魅惑の妖精』亭?」

「いらっしゃいませぇ~~~~!」
シルフィードを追い、店内に足を踏み入れた二人を、背の高い、ぴったりとした革の胴着を着た男が出迎えた。
「あら! こちらはお初? しかも貴族のお嬢さん、まあ綺麗! なんてトレビアン! 店の女の子が霞んじゃうわ!
わたしは店長のスカロン、今日は是非とも楽しんでくださいまし!」
「今入ってきた青い髪をした女の人を探してる」
そう言って身をくねらせて一礼するスカロンにタバサが尋ねた、
「あら、さっきの子のお知り合い? でしたら上の便利屋へ駆けあがって行きましたわ」
スカロンはにこやかにそう言うと奥の階段を指差した。
「便利屋?」
タバサとキュルケはお互いの顔を見合わせる、そして奥の階段を駆け上がって行った。
――一方そのころ、二階の便利屋では……
「今日は仕事がくりゃいいなぁ、相棒?」
壁に立てかけられたデルフリンガーがおもむろに口を開く。
バージルは椅子に腰かけ、机に足を投げ出しながら本のページをめくった。
「期待はしていないがな」
「まったく、働く気があるんだかないんだか……、とりあえずよ、暇なら店に名前でもつけたらどうだ?」
「必要ない、この店も今だけ、一時的なものだ、この先続ける予定はない」
「いいじゃねぇか、名前! そうだなぁ、『DevilMayCry』は流石にアレだから……『SuperUltraViolet』ってなぁどーだ!?」
「却下だ、どっから出てきたその単語は、それに狙い過ぎだ」
かなりメタな単語にバージルが眉を顰める。
「店の名前など必要ない、この話はこれで……」
これ以上は危険と判断したのか、バージルがデルフとの会話を打ち切ろうとしたその時
「おにいさまぁ~~~!!」
聞き覚えのある声と、階段を勢いよく駆けあがる音にバージルの表情が険しくなる。
――バターン!! と勢いよく事務所のドアが開け放たれた。
「.......Damn you!」
バージルは呻く様に呟くと、ドアを開け現れた人物……シルフィードを睨みつけた。
「おにいさま!! きゅいきゅいきゅい!! 逢いたかったのね~~!!
シルフィさみしくてひもじくて死んじゃうところだったのね!! きゅいきゅい!」
シルフィードは一気にまくしたてると、険しい表情のバージルに構わず、彼の胸に飛び込んだ。
バージルは即座に反応し机を蹴りあげる、一見して相当な重量があるとわかる古い机は軽々と宙に舞い
飛び込んできたシルフィードに直撃、下敷きになってしまった。
「きゅぅ~……ひどいのね~……」
「なぜこいつがここにいる……」
バージルが忌々しそうに呟くと、ドアの方向に視線を送る、
「やはりお前達か……」
「ダーリン! なにやってるのこんなところで?」
そこにいたのはやはり、シルフィードの主人であるタバサとキュルケであった。
「こっちのセリフだ、なぜここにいる」
「あたしはこの子の買い物の付き添いよ、帰る前に夕食でも済まそうと店を探してたのよ、そしたら急にその子がここに入っちゃうんだもの」
バージルは一応納得したのか、小さく鼻を鳴らすと、シルフィードの上にのしかかる机をもう一度蹴りあげた、
机はくるくると回転し正しい位置に収まる、そして椅子に腰かけると、先ほどと同じように机に足を投げ出した。
「それで? ダーリンはここでなにしてるの? 便利屋って聞いたけど」
キュルケとタバサが応接用のソファに腰掛ける、もう一対のソファにはシルフィードが倒れていた。
「言葉の通りだ」
バージルは短く答えると、ルイズと同じように簡単に説明をした。
「ふぅん、なんでも依頼をこなす……ねぇ……」
「主に荒事……悪魔退治専門、と言いたいところだが、そう言う類の依頼がないのが現状だ」
バージルはそう言うと静かに目を閉じる。
「気になったんだけど、なんでこんなことを?」
「ルイズに付き合わされているだけだ、俺も本来ならばこんなことはしていない」
バージルはしれと言うと、キュルケ達に、女王から情報収集の任務を授かったことを包み隠さず話した。
こいつらなら話しても問題ない、というのもあったのだろうが、実際は秘密の任務がどうとか、彼にとっては心底どうでもいいことである。
「へぇ……面白そうねぇ、で? あの子は今どこにいるの?」
「気がつかなかったのか? 下の酒場だ、妙な格好で給士をしているはずだ」
それを聞いたキュルケはこの夏初めて見せる特大の笑みを浮かべた。
「うっふふふふふ! いいこと聞いちゃったわ~、ちょっと下に行ってからかってこようかしら」
キュルケはうれしそうに立ち上がる、それに続く様にタバサもソファから立ち上がった。
「待て」
軽い足取りでドアへと向かうキュルケとそれに続くタバサをバージルが呼び止める
「タバサ、お前は残れ」
下に向かったキュルケを見送ったタバサは再びソファに腰かける。
「シルフィード」
しばしの沈黙の後、バージルは静かに目を開けると、シルフィードの名前を呼んだ。
「きゅい!」
ソファに突っ伏していたシルフィードががばっと顔をあげ復活する。
「おにいさまがシルフィのことを呼んで下さった! うれしい! きゅいきゅい!」
ソファから飛びあがり嬉しそうに腰を左右に振りながら小躍りするシルフィードを二人がジロリと睨みつける。
「少し黙れ、お前に聞きたいことがある、あの時、竜族に伝わるスパーダの伝説を知っていると言ったな? 聞かせてもらう」
シルフィードはその言葉を聞くと、そんなこともあったな、と思い出したかのように首を縦に振った。
「きゅい、ずっと昔から伝わっているのね、えーっと、たしか、むむむむ……」
そう言うと少し思い出すように目をつむっていたシルフィードが謳うように伝説を語り始めた。

――世界は闇より生まれた――

果てなき闇 混沌の坩堝 だがその世界にも一条の光が差し やがて二つの世界が生まれた。
闇の世は魔界 光の世は人界 二つの世は共にあり続けた 長い永い間
だが世界は闇へと還る 闇が光を覆う時 世界は再び混沌の坩堝と化す
人界と魔界が交わるその時、その者は現れる

――SPARDA

魔の世界の住民でありながら誇り高き魂を持った者
スパーダは同胞に仇なし 光の世の為に剣を取る 我らの為に剣を振る
その剣は世を覆う混沌すらも斬り伏せ ついには再び世界を二つに分かつ
スパーダは闇の再来を恐れ 魔剣の力を持ちて魔の世界を切り離す
闇に与した悪しき者共や 闇の世の者である己とともに
永らえた我らは彼を崇める 光の世を救った英雄と
そしていつしか彼をこう呼び始める

スパーダ ――伝説の魔剣士――

「……これが竜達の間に伝わる伝説なのですわ、きゅい! 一字一句間違ってないのね! ……たぶん」
語り終えたシルフィードはなぜか偉そうに胸を張った。
「人界と、魔界が交わる……?」
それを聞いたバージルは顎に手をあて、なにやら深く考え始めた。
この伝説が事実ならば、一度ハルケギニアは魔界と一つになり"かけた"
それをスパーダが阻止、魔剣の力で世界を再び二つに分けたと言う。
ラグドリアン湖の水の精霊も、「二つの世が再び混じり合う時スパーダが現れた」と言っていた
「闇が光を覆う時……か」
バージルは小さく呟くと顔をあげた。
「おにいさま? シルフィお役に立てたかしら? きゅいきゅい」
「……礼を言う」
「お役に立てた! おにいさまのお役に立てたのね! きゅい!」
シルフィードは感極まった様子でバージルに抱きついた。
「タバサ、用は終わった、連れていけ」
バージルがタバサを見ると、シルフィードを顎でしゃくる。
タバサはこくりと頷くと、嬉しそうにきゅいきゅい鳴きながらバージルに頬ずりするシルフィードの後頭部を杖でおもいっきり殴りつけた。
「ぎゃん!」
タバサは一撃でシルフィードの意識を刈り取ると、シルフィードの襟首を掴み、ずるずると引きずりながら部屋を後にした。

「今日もやっぱりヒマだなぁ相棒」
「やかましいのは来たがな、昨日も言ったが、始めたばかりはこんなものだ」
日もとっぷりとくれ、時刻は深夜を回った、今日の来客はキュルケとタバサの二人だけ、
しかも仕事を持ってきたわけではなく、ただ偶然入ってきたというありさまだ。
それとは逆に一階の酒場は今日も大盛況、バージルの便利屋とは大違いである。
「しっかし、お前さんが昔やってたころってのは、どういう仕事があったんだ?」
バージルにデルフがカチカチと音を立てながら尋ねる。
「俺は賞金稼ぎからの転向組だった、依頼される仕事の多くが荒事だった」
バージルはそう言うと、読んでいた本をパタンと閉じ、机の上に投げだした。
「どのみち、開業したてだ、まずは犬探しの依頼でも来ればいい方だ」
「迷い犬や猫を探す相棒ってのもなかなかに想像しにくい部分はあるぜ」
デルフが想像したのかカチカチと笑う、それには構わずバージルは椅子から立ち上がると、窓辺に立ち、外の月を眺めながら言葉を続けた。
「とはいえ、このあたりではあまりなじみがないのだろう、期待はしていない、
当分の間はくだらん依頼を持ってくる客も多いだろう、その辺も覚悟している」
バージルはそう言うと、ドアへと視線を向け、静かに語りかけた
「お前もそのクチか?」
その言葉に反応するように、かちゃり……と静かにドアを開け、入ってきた「くだらない依頼を持ってきた客」――タバサを見た。
「いつか来るとは思っていたが……いささか早すぎはしないか?」
呆れたような不躾な視線を送るバージルに、タバサは短く答えた。
「依頼がある」


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