あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

魔法少女リリカルルイズ44


大地は足下にあり盤石なもの。
それは浮遊大陸アルビオンにおいても変わらない。
この空に浮かぶ巨大な岩塊がなんの支えも無く浮いているにもかかわらず、それが落ちるなどと考えるものはハルケギニアのどこにもいない。
アルビオンを遠くから見た時には、それは浮いて当然のものとして見えた。
アルビオンを空から見下ろした時には大地に等しく不動のもとして見えた。
その上に立った時には、揺るぎないものとして感じた。
キュルケはそれらを特別意識していたわけではないが、常識、当たり前のものとしていた。
だが今はわずかに疑念を覚えている。
こうしてアルビオンを間近で下から見上げると、盤石さの根拠となる巨大さ、堅牢さが逆にいつ落ちやしないかという不安の根拠となってのしかかってくるようだ。
そのわずかの不安を胸に見上げる岩盤の向こうには、ニューカッスル城がある。
そこにはルイズがいるはず。
「間違いない。この上だ」
そして、それは岩盤に向かって鼻を上げているヴェルダンデがルイズの持つ宝石の位置をかぎつけたと傍らにいるギーシュに伝えたことで確信となった。
地上から穴を掘るとレコン・キスタが邪魔をしてどうやっても長すぎるトンネルの中を這わなければならない。
だったら、他に道はないのか。
──あった。
アルビオンの浮遊大陸という特性が他の道の可能性を作っていた。
大陸の下から掘ればいいのだ。それなら、わざわざ戦場を避けて遠くから穴を掘る必要はない。
しかも地上のニューカッスル城に集中しているためかレコン・キスタはこの近辺にはいない。
「タバサ、お願い」
タバサが頷くとシルフィードは翼を羽ばたかせる。
大陸の岩盤ギリギリまで接近するし、シルフィードは翼の動きを変えた。
小さく、何度も羽ばたいて首筋を岩にくっつけて空中に静止する。
その飛び方はシルフィードにとってはかなり辛いのか、きゅいきゅいと鳴き声を上げていた。
「今度は僕らだね」
ヴェルダンデはシルフィードの首筋から大陸にしがみつく。
爪を立てた前足を何度か動かすと、そこにはもう四つん這いになれば人が入れるほどの穴が口を開けていた。
「よし、いいぞ。ヴェルダンデ。そのままルイズのとこまで掘っていくんだ」
そう言う頃にはヴェルダンデの姿はカーブを描くトンネルの奥に隠れ、土をかき分ける音でしかどこにいるかわからなくなった。
「では、ミス・ツェルプストー。どうぞ」
レディファーストというやつだ。
ギーシュは不安定なシルフィードの背中にあってもそれなりに紳士的にトンネルの方に促す。
それをキュルケは黙って殴った。
「あたたたっ!」
「馬鹿なこと言ってると殴るわよ」
ギーシュに悪気や下心があるかどうかは置いておくとして、いくらキュルケでも学院制服の短いスカートでトンネルを潜るのに男を後から着いてこさせるような感性は持ち合わせていない。
相当いいのが入ったらしく、頭を押さえるギーシュがまずはトンネルに潜り込む。
次に入ったキュルケはタバサに手を貸そうとしたが、それに対しをタバサは首を横に振った。
「どうしたの?」
「私はここで待っている」
タバサはルイズの救出に随分熱心だった。
それなのに、ここで待つと言うのはどうしてだろう。
そう訝しむキュルケに気付いたのか、タバサは言葉を続けた。
「シルフィードがいる」
空中に静止するのはシルフィードにとってかなり辛いことのようだ
周りを適当に飛んでいて、ルイズを助けた後にトンネルの入り口に戻って来るようにした方がずっといいだろう。
それに、今はいないが万が一レコン・キスタに発見された時には逃げる必要がある。
そういった時の細かな指示はタバサ意外にはできそうにない。
「わかったわ。こっちは任せて」
口を開かずタバサは首を縦に振る。
後ろ髪を引かれる思いもしたが、今はルイズを助ける方が大事とキュルケは魔法の光を灯してトンネルの奥に進んだ。

アルビオンを見上げる少女は耳に入る音が風だけになるのをじっと待っていた。
高空にあるアルビオンの周りでは常に風が吹いている。
それでも近くに何かいるのなら耳を澄ませば音が聞こえてくるものだ。
風に交じってわずかにがさごそと土を削る音が聞こえていた。
それは遠ざかり、やがて風の音にまじりって彼女の耳に届かなくなる。
少女はゆっくりと顔を上げ胸元に手を当てた。
「お姉様。行くの?」
その声に少女は頷いて答えた。
「1人じゃ危ないのね。私も行くのね」
少女は首を横に振り、否定を伝える。
「みんなが帰ってきた時に」
「でも危ないのね」
少女の意志は変わらない。
それに気付いた少女の語りかけていたものは、不満げなうめき声を上げながらも渋々賛同した。
「待ってて」
少女は呟く。
自分の持つこの世界のものではない力を使うための言葉を。
「……アップ」


3万人のレコン・キスタの中を駆け抜け、その先にあるニューカッスル城の城壁にとりつき、よじ登って城内に侵入する。
それが人間であれば不可能であろうが、ユーノは違う。
フェレットに変身した彼を見とがめるものは誰もいなかった。
野生の小動物が戦場から逃げだそうとしていると思うのがせいぜいで、勘の良いメイジでやっと誰かの使い魔だと考える。
それにしても、まさかニューカッスル城内のメイジの使い魔だとは誰も看破できなかったし、したとしても小動物の使い魔に何ができると気にもしなかっただろう。
「相棒、ちょっと落ち着け」
小さくなっているデルフリンガーの言葉を聞いても、ユーノははやる心を抑えきれず、さらに足を速めようとした。
(ルイズ……ルイズ)
ユーノの叫びは声ではなく念話となって広がる。
小さな城でも声ならば石造りの壁に遮られてしまうが、念話なら関係ない。
(……ルイズ……どこにいるの?返事してよ)
ワルドはラ・ロシェールで襲撃を仕掛けてきた。
その彼がルイズに同行している。
もしや、という思いがユーノの頭をよぎった。
(ユーノ、ユーノなの?)
やっと帰ってきたルイズの声は驚きの色を含んでいたものの落ち着いていた。
それはずっと心配していたような危険に、ルイズが直面しているわけではないということだ。
(ルイズ、今どこにいるの?)
ほっとしながらもユーノは立ち止まり、念話が聞こえた方向を見た。
いくつかの建物があるが、どれがルイズのいる建物かまでは分からない。
(礼拝堂よ。これから結婚式を挙げるの。ユーノも早く来て)
その念話でルイズのいる場所は分かった。
だけど、ユーノ再び嫌な予感に襲われる。
ラ・ロシェールでのワルドとルイズが話していたこと。それとルイズが今言ったこと。
そこから浮かぶ想像がユーノの体を締め付けた。
(結婚式って、誰と?)
(もちろんワルドよ)
音の立つ早さで血の気が顔から引いていくようだった。
フェレットでなければ、顔が青ざめているのが分かったかもしれない。
「だめだルイズ!」
その言葉をユーノは念話だけでなく、口からも出した。
「その人はルイズの味方じゃない。ラ・ロシェールで襲ってきたのはその人なんだ!」
地面を蹴るユーノは礼拝堂を目指して空を飛び、その姿をフェレットから人間へと戻した。

「どうしたのだね、ラ・ヴァリエール」
突然、石のように動きを止め、目を見開いたルイズに結婚式の媒酌人たる礼装に身を包んだウェールズが問うた。
礼拝堂で行われているたった3人の結婚式が終わるまであと少し。
ワルドが始祖ブリミルにルイズを妻にすることを誓い、後はルイズがワルドを夫とすることを誓う。
それで2人の婚姻は成立する。そのはずだった。
なのにルイズは誓いの言葉を口にする寸前にその口を閉じた。
その上、今は体と唇を小刻みに震わせ、その顔には絶望と驚愕と怒りと……それらを交ぜて作った絵の具で塗りたくったような表情をあらわにしていた。
「どうしたんだい、ルイズ」
ワルドは身をかがめ、冠の下のルイズの顔をのぞき込んだ。
それを見返すルイズの顔には、さらに疑念という絵の具が加えられた。
「どういうこと?どういうことなの?ワルド」
ルイズは後ずさりブリミルの祭壇と、そしてワルドから離れる。
それは明らかに拒絶を表していた。
「どういうことだと?いったいなにを言っているんだ?ルイズ」
ワルドの手が伸ばされる。
それを払いのけ、ルイズはさらに後ずさった。
「とぼけないで。ラ・ロシェールの事よ。私たちを襲ったのはあなただったんでしょ」
「なに?待つんだ、ルイズ。それはどういうことなんだ?」
新婦の証したる冠、それと純白のマントをかなぐり捨ててルイズは叫んだ。
「ユーノが教えてくれたわ」
「ユーノだと?それはキミの使い魔なのか?それともあの少年か?君は私よりあんな素性の分からない少年の方を信用するというのか?」
「信用するわ。だって……」
ルイズはその言葉を確信を込めて言い放った。
「ユーノは絶対、私に嘘をつかない!」
その時、礼拝堂の扉が開かれ日の光が射し込んできた。
床に映る光は道のように祭壇まで伸び、それは一つの影によって二つに分断されていた。
影を作るもの。それはデルフリンガーを手に持つユーノ・スクライアだった。


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