――ある森に、とても優しい心を持つ少女が居た。
美しい美貌も、優しい心も、艶やかな肢体も全て持つその少女にも、得られないものがあった。
それは『生まれ』であり、『立場』でもあった。
王族に生まれ、しかしその血は人間にとって忌むべきもの。
その地を追われた少女は、しかしそれでも、日々を平和に、にこやかに過ごしてきた。
『お友達がほしい』そう願った少女の気持ちを、誰が責められようか。
『お友達』が欲しい……しかし現れた『それ』は、決してそのような穏やかなものではなかった。
ある森で、そう、穏やかな風が吹くその場所で、生気を持たない右目が、少女を見つめていた。
「ここは……どこだね?」
美しい美貌も、優しい心も、艶やかな肢体も全て持つその少女にも、得られないものがあった。
それは『生まれ』であり、『立場』でもあった。
王族に生まれ、しかしその血は人間にとって忌むべきもの。
その地を追われた少女は、しかしそれでも、日々を平和に、にこやかに過ごしてきた。
『お友達がほしい』そう願った少女の気持ちを、誰が責められようか。
『お友達』が欲しい……しかし現れた『それ』は、決してそのような穏やかなものではなかった。
ある森で、そう、穏やかな風が吹くその場所で、生気を持たない右目が、少女を見つめていた。
「ここは……どこだね?」
二つの月が、別の地で、『鬼』と『悪』を惑わせていた――
豪鬼は戸惑っていた。
自分が居た世界には、月は一つしかない筈。
ではこれは何だ?このルイズとか言う者の部屋の窓からは、月が二つ、間違いなく二つ輝いて見えた。
これは現か幻か。『また』別世界に来てしまったと言うのか。
思考にふける豪鬼。
だが、ルイズはそれを許してはくれる筈も無く。
「ちょっと……ちょっと!聞いてるの!?」
「……何だ」
「使い魔についての説明よ。聞いてなかったみたいだから、と・く・べ・つ・に!もう一回だけ説明してあげるわ」
「うむ」
豪鬼はいったん思考することをを止め、ルイズの話を聞くことにした。
なにしろ、一応とはいえ自分の生業となることだ。聞かなければ後々困る。
使い魔……あの巫女服の女の狼と鷲のようなものか?
「まず、使い魔は主人の目となり、耳となる能力が与えられるわ」
「どういうことだ」
「使い魔が見たことは、主人も見ることができるのよ」
「ほう」
「でも、あんたじゃ無理みたいね。わたし、何にも見えないもん!」
「……ああ」
豪鬼は感情を込めずに言った。
しかし、こんな年端もいかない少女に、自分達の死合いが見れるはずは無い。
豪鬼はそう思っていたし、ルイズにそんなに威張れる様な実力は無く、地位のみで威張り散らすような人間には強者は居ないとわかっていたため、特に思うところは無かった。
「それから、使い魔は主人の望むものを見つけてくるのよ。硫黄とか、コケとか……」
「ふむ」
「あんた、そんなの見つけてこれないでしょ! 秘薬の存在すら知らないのに!」
「ああ」
正直、そんなことはいくらでもできた。
現代に生きながら現代の文化に染まらず、勿論現代医学になど全く世話になったことは無い豪鬼だ。
そんなものが必要なかったとは言えど、少なくとも自らの住んでいた島の全ては掌握していたと言える。
しかし、そんなことをしてしまえば自身の修練に使う時間がなくなってしまう。
「そして、これが一番なんだけど……、使い魔は、主人を守る存在であるのよ! その能力で、主人を敵から守るのが役目! でも……」
「あんたじゃ無理」と言おうとしたルイズだが、あることを思い出し、それをやめた。
そういえば、豪鬼はさっきファイヤーボールを片手で弾いていたではないか。
ひょっとしたら、この男は結構強いんじゃないか?
「強い幻獣だったら、並大抵の敵には負けないんだけど……。 いいわ、あんたはあんたの出来る限りでわたしを守りなさい」
「いいだろう」
「何よその態度……。 まあいいわ、あとはあんたに出来そうなことをやらせてあげる。洗濯。掃除。その他雑用」
豪鬼はとっさに断ろうとしたが、思いとどまった。
洗濯、掃除……、かなり細かい手先の動きを要求されるものだ。
思えば、自分があの大阪城で敗北したのも、動きが雑だったからではないか。
あの不可思議なオロチの力を注入され、多大なる力は得たものの、理性は崩壊し、動きが力任せになっていたのではないか。
『殺意の波動』だけならまだしも、『オロチ』の力の制御は完全ではない。
しかも、この世界に来てからというもの、オロチの力が更に大きくなっている。 いや、正確には『何かに共鳴して、活発になっている』。
ならば、洗濯や掃除は絶好の修行方法ではないか。
「よかろう」
「それでいいわ。 ……次は、あんたの事聞かせてよ」
「我は、此処とは別の世界から来た」
「……は?」
「我の世界には、月は一つ。 それがゆるぎぬ事実」
「いや、そんな……」
そんなはずは無い。 ルイズはそう思ったのだが、なぜかこの男が嘘をつくとは思えないのだ。
よくよく考えたら、ただの平民が魔法を弾けるわけ無いじゃないか。
そう思うと、豪鬼の言っていることが本当のことのように思えた。
「……証拠は?」
「無い」
無いのかよ、と突っ込みそうになるが我慢する。
「じ、じゃあ、あんたの居た世界はどんなだったのか聞かせてちょうだい。 内容次第で信じてあげるから」
「……我の世界には、魔法など存在しない。 あるのは、科学」
本当は、魔法まがいの力はあったが、あくまで一般の話である。 魔法など信じられていなかった。 殺意の波動もであるが。
「は? 何? カガク?」
「うむ。 草木は絶え、人は力を持たず、しかし平穏なる世界。 それが我の居た世界『地球』」
「……にわかには信じがたいわね。 でもいいわ、とりあえず信じてあげる」
「……」
「さてと、しゃべったらねむくなっちゃった」
ルイズはあくびをした。
「我はどうすればいい」
ルイズは、床を指差した。
「ベッドは一つしかないから」
ルイズは一枚毛布を豪鬼に投げた。
「要らん」
「あ、そ」
それからブラウスに手をかけ、脱ぎ始める。
下着があらわになる。 豪鬼はなんとも思わなかった。
「じゃあ、これ、洗濯しといて」
「うむ」
ルイズが指を鳴らすと、部屋のランプが消える。
豪鬼の使い魔としての生活が始まった。
自分が居た世界には、月は一つしかない筈。
ではこれは何だ?このルイズとか言う者の部屋の窓からは、月が二つ、間違いなく二つ輝いて見えた。
これは現か幻か。『また』別世界に来てしまったと言うのか。
思考にふける豪鬼。
だが、ルイズはそれを許してはくれる筈も無く。
「ちょっと……ちょっと!聞いてるの!?」
「……何だ」
「使い魔についての説明よ。聞いてなかったみたいだから、と・く・べ・つ・に!もう一回だけ説明してあげるわ」
「うむ」
豪鬼はいったん思考することをを止め、ルイズの話を聞くことにした。
なにしろ、一応とはいえ自分の生業となることだ。聞かなければ後々困る。
使い魔……あの巫女服の女の狼と鷲のようなものか?
「まず、使い魔は主人の目となり、耳となる能力が与えられるわ」
「どういうことだ」
「使い魔が見たことは、主人も見ることができるのよ」
「ほう」
「でも、あんたじゃ無理みたいね。わたし、何にも見えないもん!」
「……ああ」
豪鬼は感情を込めずに言った。
しかし、こんな年端もいかない少女に、自分達の死合いが見れるはずは無い。
豪鬼はそう思っていたし、ルイズにそんなに威張れる様な実力は無く、地位のみで威張り散らすような人間には強者は居ないとわかっていたため、特に思うところは無かった。
「それから、使い魔は主人の望むものを見つけてくるのよ。硫黄とか、コケとか……」
「ふむ」
「あんた、そんなの見つけてこれないでしょ! 秘薬の存在すら知らないのに!」
「ああ」
正直、そんなことはいくらでもできた。
現代に生きながら現代の文化に染まらず、勿論現代医学になど全く世話になったことは無い豪鬼だ。
そんなものが必要なかったとは言えど、少なくとも自らの住んでいた島の全ては掌握していたと言える。
しかし、そんなことをしてしまえば自身の修練に使う時間がなくなってしまう。
「そして、これが一番なんだけど……、使い魔は、主人を守る存在であるのよ! その能力で、主人を敵から守るのが役目! でも……」
「あんたじゃ無理」と言おうとしたルイズだが、あることを思い出し、それをやめた。
そういえば、豪鬼はさっきファイヤーボールを片手で弾いていたではないか。
ひょっとしたら、この男は結構強いんじゃないか?
「強い幻獣だったら、並大抵の敵には負けないんだけど……。 いいわ、あんたはあんたの出来る限りでわたしを守りなさい」
「いいだろう」
「何よその態度……。 まあいいわ、あとはあんたに出来そうなことをやらせてあげる。洗濯。掃除。その他雑用」
豪鬼はとっさに断ろうとしたが、思いとどまった。
洗濯、掃除……、かなり細かい手先の動きを要求されるものだ。
思えば、自分があの大阪城で敗北したのも、動きが雑だったからではないか。
あの不可思議なオロチの力を注入され、多大なる力は得たものの、理性は崩壊し、動きが力任せになっていたのではないか。
『殺意の波動』だけならまだしも、『オロチ』の力の制御は完全ではない。
しかも、この世界に来てからというもの、オロチの力が更に大きくなっている。 いや、正確には『何かに共鳴して、活発になっている』。
ならば、洗濯や掃除は絶好の修行方法ではないか。
「よかろう」
「それでいいわ。 ……次は、あんたの事聞かせてよ」
「我は、此処とは別の世界から来た」
「……は?」
「我の世界には、月は一つ。 それがゆるぎぬ事実」
「いや、そんな……」
そんなはずは無い。 ルイズはそう思ったのだが、なぜかこの男が嘘をつくとは思えないのだ。
よくよく考えたら、ただの平民が魔法を弾けるわけ無いじゃないか。
そう思うと、豪鬼の言っていることが本当のことのように思えた。
「……証拠は?」
「無い」
無いのかよ、と突っ込みそうになるが我慢する。
「じ、じゃあ、あんたの居た世界はどんなだったのか聞かせてちょうだい。 内容次第で信じてあげるから」
「……我の世界には、魔法など存在しない。 あるのは、科学」
本当は、魔法まがいの力はあったが、あくまで一般の話である。 魔法など信じられていなかった。 殺意の波動もであるが。
「は? 何? カガク?」
「うむ。 草木は絶え、人は力を持たず、しかし平穏なる世界。 それが我の居た世界『地球』」
「……にわかには信じがたいわね。 でもいいわ、とりあえず信じてあげる」
「……」
「さてと、しゃべったらねむくなっちゃった」
ルイズはあくびをした。
「我はどうすればいい」
ルイズは、床を指差した。
「ベッドは一つしかないから」
ルイズは一枚毛布を豪鬼に投げた。
「要らん」
「あ、そ」
それからブラウスに手をかけ、脱ぎ始める。
下着があらわになる。 豪鬼はなんとも思わなかった。
「じゃあ、これ、洗濯しといて」
「うむ」
ルイズが指を鳴らすと、部屋のランプが消える。
豪鬼の使い魔としての生活が始まった。
今日の「滅殺!」必殺技講座
- ブロッキング
正確には技ではなく、防御システムである。
もとは『ストリートファイターⅢ』シリーズのシステムである。
相手の攻撃を完全に無効化し、ガードよりも迅速に次の行動に移れる。
初心者にはタイミングが非常にシビアであるうえ、失敗すれば攻撃が直撃してしまうのが玉に瑕か。
コマンド「(右向きのとき)上段の場合、相手の攻撃が当たるタイミングで右。 下段の場合、上段のときと同じタイミングで下。 空中の場合、上記二つと同じタイミングで右」
もとは『ストリートファイターⅢ』シリーズのシステムである。
相手の攻撃を完全に無効化し、ガードよりも迅速に次の行動に移れる。
初心者にはタイミングが非常にシビアであるうえ、失敗すれば攻撃が直撃してしまうのが玉に瑕か。
コマンド「(右向きのとき)上段の場合、相手の攻撃が当たるタイミングで右。 下段の場合、上段のときと同じタイミングで下。 空中の場合、上記二つと同じタイミングで右」
「完全に無効化って……」
レッツゴージャスティーン
レッツゴージャスティーン