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虚無のメイジと双子の術士-01


光が弾ける。
この不自然なまでに明るい場ではさして目立たなかったが、それは明らかに周囲の物と違っていた。
解りやすく言えば、威力がある。
それが弾けた場所は爆撃でも受けたかのように吹き飛んでいる。
見ればその焦げ跡はその場所のそこら中にあった。
焦げ跡に限定しないのならば、もっと破壊の痕跡はあった。
柱は鋭く斬り倒され、固形化した雲とでもいうのか――白い床は所々消し飛んでおり、
階段は何かに食われたかのように削り取られ、粉々になった瓦礫が空中で静止している。
それらはこの場所に致命的な変化をもたらしていた。

別に、悪いと言うことではない。
もとより、『彼ら』はそのためにここに来たのだから。

破壊の跡は、ある一点に向かうほど、その密度を増している。
その一点で―――この場所の一番奥深くで、ふたつの存在が戦っていた。
片方は、人間。もう片方は、適当な呼び名があるとするなら、魔王だろうか。
人と禍々しさを混ぜたようなその姿は、この場所に似合わないようにも見えるが、何故かそうではない。
対して、ローブを纏い、剣を携えたその人間は、その魔王に挑むには非力なように見える。

ただ、どちらも同じぐらい桁外れな存在なようだった。
人間――術士が高らかに唱え、空に腕を一振りすると、彼方より光が膨れあがり、破滅的なものとなって吹き荒れる。
が、何か――言うならば空間そのものが光の嵐を受け止めて、それを止めてしまう。

光の嵐が消えたころには、魔王――『君主』がその手の奇妙な形の剣を振りかざしていた。
剣の間合いなど遙かに離れてるにも関わらず、『君主』はそれを振り抜いた。
そして、その剣はその刃よりも遙か遠く、広くを消し飛ばした。
その範囲の内には、術士の姿もあった。剣の力を受けて、その姿がかき消える。
剣の威力を見れば、彼が塵も残さず消えたとも思えなくない。
だが、『君主』は慌てて――そんな感情があるかどうかは解らないが、慌てたように、振り返ろうとする。
そして、振り返ったときには、闇を凝縮させたような球が、『君主』の右肩を喰らっていた。

術士はいつの間にか『君主』の背後に位置どっていた――術を放った構えをとかないまま、呟き始める。
彼が唱えるよりも先に、『君主』が、先ほどの剣を振るう。
しかし、その破壊が及ぶか及ばないかの所で、その力が、空振りしたかのようにすり抜けた。
そして、いつの間にか自らの眼前まで迫っていた光の矢を避けようとしたのか、
少し身を揺らせて、その頭の横を削られる。

『君主』が、吼える。
紫、もっと単純に黒――とにかく暗さを押し固めたような電光がその身を包み込んで、覆い隠す。
それに合わせて、何処までも明るかったその場所が変化する。
純粋さはそのままに――明るさの代わりに、何処までも禍々しく。
場所の変化が止まったとき、それに合わせるように覆いも散って、
『君主』はより怪物じみた、竜のような姿に変化していた。
場所に合わせたのか、或いは場所が合わせたのか。
ただ、先ほどの術の傷を癒せるわけでもないのか、右前足と頭から血を流している。
弱っているとみたのか、術士が両手の間に黒い球、先ほど『君主』に一撃を与えたそれを作り出し、距離を詰め、至近で放とうとする。
しかし『君主』はそれを避けようともせず、傷ついていない方の足でそれを迎え撃った。

ぶつかり合いの結果、爪は容易く球を切り裂き、術の護りをも打ち砕いて、吹き飛ばした。
切り裂かれてはいない――爪が届く直前に、虚空から出でた光の剣が爪を受け止めた――が、その勢いをも殺せる物ではない。
地面を何回か跳ねて、柱にそれが砕ける程の勢いでぶつかってようやく止まる。
流石にそこまで化け物じみてはいないのか、打たれ強くは無いらしい――術士は動きを止めている。
死んだのかも知れないし、気絶しているだけかも知れないし、単に動けないだけ、或いは死んだふり。
どれでもありそうだったが、
『君主』は少なくとも、肉が残っているものには攻撃を加える価値があると考えているようだった。

術士の正面に向き直ると、その口を開いて、息を深く吸い、炎として吐き出す。
術士は身動きも取らず、その炎に包まれる。
後ろの柱も溶け落ちる程に炎を吐いて、ようやくそこで”君主”は息を止めた。
息を止めても炎は止まらず、空を焦がすかのように、立ち昇っている。
『君主』も、流石にこれ以上は必要ないと判断したようだった――つまり、誤った。

炎は自ら立ち昇っているのではなく、流れに巻き上げられているだけで、
天に届いているのは炎ではなく、煌めくものだった。
炎が消え、術士の姿が見える――傷一つ無いどころか、万全の状態で何かを唱えている。
『君主』が気づき、再び炎を吐くよりも早く、煌めきの全てが天に至り――そして、落ちてくる!

「――――――!」

何かを術士が叫ぶ。雷と言うには生やさしすぎる、
光の柱の轟音と閃光でその言葉も表情も読み取れはしなかったが――

~~~~~~~~

その場所の中心は、『君主』と共に消し飛ばされ、もはや跡形もない。
静まり返っていた――戦いが終わったからではない、この場所が主を失ったからだ。
術士は、目的を果たしたのを確認……というよりは噛みしめて、振り返った。
そして、笑いを浮かべた――苦笑いだ。

「……さて……どう、する?」

主を失っても、場所は失われていない。
その場所の住人はまだ存在していた――天使の様に見える怪物。
頂きから、中心から眺めてみれば、それは未だに多くいた。
この場所から這い出ようとしているのか、脱出口の近くに特に多く。
とはいえ、『君主』が消えた以上、それほどの強敵ではない。
術の力の殆どを使い切っていても、ただそれだけなら戦って抜ける自信が彼にはあった。
しかし、使い果たしているのはそれだけではない。今すぐにも倒れてもおかしくないぐらいだ。
そして、仮に戦い抜けたとしても、帰るまでには相当な時間が掛かるだろう。
残念に思うべきか、誇りに思うべきか、この場所の力が弱まったのを知れば、再封印に取りかかるだろう。
ある程度は待つかも知れないが、危険なまでに待つほど、愚かではないはずだ……。
まず帰れない。生き残れるかどうかも危うい。

そう言う状況になって考える事が幾つもあったわけではなかった。
もとより、明確な目的を持って――持たされて、それを果たした命だけに、それほど執着もなかった。
ただ、絶望や諦観を抱いていたわけでは無かった。
少なくとも、目の前の状況から、無力な自分を思わず遠ざけてしまう程度には。
そして、崩落した地面を踏み損ねそうになって、思わず振り返る。

「…………えーと」

振り返ったら、その眼前には――何というか、光り輝く鏡があった。
一瞬、この場所の産物かとも思ったが、そうでは無いような気がした。
この明るさには熱がある。
ついでに言えば、陽術の試練の出口にも似てるような気もする……。
それを連想するのは、自身が脱出の方法を求めているからだろうか?
そう思いながら手を伸ばし、鏡に触れてみる。
触れはしなかった……と言うより、通り抜けてしまったのか――少しばかりのピリッとした感触が、指先にあった。
つまり、消えてしまったりはしない……とも言える。
後ろを振り返り、見下ろすと、僅かながら、怪物がここに近づいてきていた。
そう立たないうちに、此処に来るだろう。
悩むにしても、生き抜くにしても、死ぬにしても、時間はあまりないようだ。

彼は振り向く。いや、向き直る。
後ろに数歩下がる。当然、退くためではない。
下がった数歩を駆けるようにして、彼は光り輝く鏡に飛び込んだ。
先ほどの感触を何倍にもしたようなショックを受けて、彼は意識を手放した―――

~~~~~~~~~

光が弾ける。
この明るい場所ではさして目立たなかったが、それは明らかに周囲の物と違っていた。
解りやすく言えば、威力がある。
それが弾けた場所は爆撃でも受けたかのように吹き飛んでいる。
見ればその焦げ跡はその場所のそこら中にあった。
焦げ跡に限定しないのならば、もっと破壊の痕跡はあった。
木は半ばから折り倒され、『固定化』した外壁だとか――草地は所々荒れ地になっており、
岩は爆ぜたかのように砕け散り、頭にたんこぶを作った生徒がうつ伏せに静止している。
それらはその場所に致命的な変化をもたらしていた。

別に、悪いとは言い切れない。
もとより、『彼女』はしたくてやっているわけでは無いのだから。

破壊の跡は、ある一点に向かうほど、その密度を増している。
その中心で―――その集団の一番奥深くで、ふたつの存在が戦っていた。
片方は、少女。もう片方は、適当な呼び名があるとするなら、ハゲだろうか。

「……ミス・ヴァリエール?」
「な、何でしょうか?ミスタ・コルベール」

ヴァリエールと呼ばれた彼女は、素直にハ……コルベールへ返事をした。
奇妙なことに、戦っているのは確かにこの二人だが、戦ってる相手は同じだ。

「もういい加減に……いや、そろそろ時間もあれですし、終わりに……いえ、明日にしましょう」
「い、いや、でもきっと次には成功しますっ!」

具体的には、キレそうになっている自分自身と戦うコルベールと、
何とかコルベールから延長を勝ち取ろうと戦う少女である。

「……じゃあ、次でおしまいですよ、成功しても失敗しても今日はここまで。いいですか?」
「は、はい!」

二人とも、同じ手段を取った。
守るべき最低限を決めて、それ以外は何というか――切り捨てる方法。
もっとも、少女がそのルールを守れるかどうかは怪しい。
コルベールの方は間違いなく遵守しそうである。

ハルケギニア、トリステイン魔法学院、春の使い魔召喚の儀式。
習慣のようであったが、それ以上の意味を持っている。
二年生に進級する際に、生徒は『サモン・サーヴァント』をとなえ、自らに相応しい『使い魔』を召喚する。
そして、相応しい使い魔から、自らに相応しい属性を知るわけだ。
彼女以外は、既に終えている。残るは彼女だけだ。
終えた生徒達が遠巻きに見物する中、少女は、杖を構える。
歌うように、とは行かない――必死だから――高らかに唱えた。

「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
 五つの力司るペンタゴン、我の運命に従いし、『使い魔』を召喚せよ!」

その言葉の何処にも、それを連想させる言葉はなかった。
彼女――ルイズの言う所のペンダゴンには確かに『火』があり、それから連想出来なくもないが、
もはや連想ゲームのレベルであり、普通はこうなるとは思わない。

杖を振り下ろした先に光が収束して、何故か爆発する、と言う事態になるとは。
もっとも、慣れていれば話は別なのだろう。
遠巻きに眺めていた生徒達がやじを上げる。

「また失敗かよ!」
「何度やっても無駄でしょうに、ゼロのルイズ」
「さて、言ったとおり終わりだぞ!」

ルイズは、崩れ落ちて地面に両手を突く。
爆発が巻き上げた粉塵が風に流れていくのを眺めて、項垂れる。

「……また、駄目?」

次は大丈夫、とでも言えれば気力も保てたかも知れないが、
残念ながら、それは禁じられていた。
これを最後の一回にする、と彼女自身うなずいたのだから、撤回するわけにはいかない。
――いやでもどうしようかな、こっそりもう一回ぐらい……
そんな風に悩んで居たためか、一番近くにいながら、それに気付いたのは一番後だった。

「……ん?あれは」
「って、え?」
「何か、いる?」

みんなが騒ぎ出してから、ようやく気付いた。
騒ぎが嘲笑から呆然とした物に変わったのに気付いて、辺りの生徒を見回そうとする。
その時に、煙の中に影があるのがルイズに見えた。

「……もしかして成功したっ!?」

当然、ルイズは喜んだ。
何十回も失敗を重ねた上での、もしかしたらの成功だ。
立ち上がって、駆けよろうとする。
しかし、煙が薄らぐにつれて、だんだんと影がはっきりとしてくる。
――まるで、人のような?
頭の中に浮かんだ疑問符は、少しばかり強い風が解決してくれた。
煙が押し流されて、影が顕わになる。

ぼろぼろになったローブを身に纏って、倒れ伏しているその影は、
人のようなも何も、その姿はどう見ても人のそれであった。
どう反応して良い物か――ルイズは困惑して黙り込む。
それは周りで騒いで居た生徒達も同じだったのか、暫く場が止まる。
コルベールは冷静に、倒れ伏している人影の側にしゃがみ込んで、調べていた。

「……はて?衣服の損傷……極めて最近の物に見えるが……
 体には傷が全くないな。どういう事だろう?――しかし、衰弱している……」

コルベールがその――男?を調べている間に、
何人かの冷静な生徒は状況を把握できたのか、再び騒ぎ出す。

「ははは、いやぁ、一時は驚いたが、『ゼロ』は『ゼロ』だなやっぱり!」
「平民を呼び出しちまうなんて、予想の斜め下を行ってくれるな!」
「うるさいわねッ!」

嘲りに律儀に叫び声を返してから、倒れている男の傍らでしゃがんでいるコルベールに駆けよる。

「あの、先生?」
「極めて強力な『治癒』の呪文だろうか?自分自身に掛けたというなら――何だね、ミス・ヴァリエール」

ぶつぶつと独り言を呟いていたコルベールは、どこか上の空で答えた。

「その――私が召喚したんですか?その平民」
「平民かどうかは解らないが……ただ、君が召喚したと考えて良いだろう」
「えーと……それじゃあ……もしかして」
「ああ……この彼が君の使い魔と言うことになるね、うん」

ルイズの方を向きもせずコルベールは杖を取り出し、短く呟いた。
淡い光の粉……『探知』の魔法が杖先から漏れ出して降り注ぐ。
すると、男が身につけている装身具やら、傍らに散らばっている道具やらが反応した。

「ふむ……ずいぶんと多くのマジックアイテムを持っているんだな……」
「あの、先生……?」
「何だねミス・ヴァリエール」
「何してるんですか?」
「調べてるんだ」
「えーと……なにを?」
「それは勿論、この銃のような物――」

ルイズの方に振り返って、返そうとする。
が、コルベールが言いかけた言葉に対して、ルイズは冷たい視線を浴びせかけた。
思わずコルベールも言葉を切って目をそらすが、残念ながら、周囲の生徒の殆どが冷たい視線を浴びせかけていた。
その全てを避けるように、コルベールは赤くなって下を向いた。

「もとい……その、あれです……この彼を」
「……で、何か解りましたか?」
「えーと……そうですね……まぁ、いいじゃないですか」

そう言いながら、コルベールは手に持っている銃?を自然な動作で懐にしまう。
自然すぎて生徒達も反応が遅れる。
それに先んじてコルベールが声を上げた。

「さて!ミス・ヴァリエール、儀式を続けなさい」
「いや、先生今何か」
「早く!次の授業が始まってしまうじゃないか!hurry up!」

釈然としないまま、急かされるままに男の側に立つ。
男を見下ろして、ルイズはため息をついた。
ドラゴンとか、グリフォンとか、そう言う使い魔が来るのを期待していたわけではない。
現実的なところで言うのならば、鷲だとか、梟だとか、その辺りなら納得も出来ただろうと思う。
だが、人間だとは予想もしない。
もう一回やれば、自分の望んだような使い魔も来るのではないだろうか。
そんな事を考えないでもないが、やり直しが許される儀式でないことは理解していた。

「……まぁ確かに、ドラゴンとかが実際に来たとしても、契約できるかどうか解らないけど――ッ!?」
「どうかしましたか?」

ルイズはそこで、一つ閃いていた。


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